この記事でご紹介する「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」は、2019年のミステリ映画。監督・脚本・製作を担当したライアン・ジョンソンが、アガサ・クリスティー風のミステリー作品を作りたいと練り上げたオリジナル・ストーリー。ただし、本格ミステリーだがコメディ作品でもあり、全編楽しく鑑賞できるエンタメ作品に仕上がっている。
主演の名探偵を演じるダニエル・クレイグを筆頭に、クリス・エヴァンス、ジェイミー・リー・カーティス、ドン・ジョンソンら豪華キャストが名を連ね、謎の死を遂げた大富豪の親族が全員怪しい、ハラハラドキドキのストーリー。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
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アガサ・クリスティー風を目指しただけあって、私利私欲にまみれた曲者が次から次へと登場する本作。キャスト情報も含めて、この記事でシッカリ予習し、この秀作を存分に楽しみませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から26分00秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧になると、この映画のテーストの一端がつかめると思います。そして事件のあらましと、関係者の一通りの紹介シーケンスが終わるので、この作品が好きか嫌いか、この先も観たいかを判断するのに最低限の情報は揃うと思います。この時点をジャッジタイムとしてご提案いたします。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」(原題:Knives Out) は、2019年公開のミステリー・コメディ映画。製作(ラム・バーグマンと共同)、脚本、監督をライアン・ジョンソンが務めている。ちなみに、2022年には続編「ナイブズ・アウト:グラス・オニオン」も制作されている。
「LOOPER/ルーパー」(2012年) や「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(2017年) の監督・脚本で実績を積み上げてきたライアン・ジョンソンが、それらの次回作としてアガサ・クリスティー風ミステリー作品を標榜し、オリジナル・ストーリーとして練り上げたのが本作である。
自宅の大豪邸で、喉を切られた状態で死んでいるのを発見されたベストセラー・ミステリー作家の老人。警察は自殺と断定して捜査を打ち切ろうとするが、そこに何者かに雇われた私立探偵が乗り込んできて捜査に本格着手するという物語。
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主演の名探偵役にダニエル・クレイグを迎え、個性的な豪華キャストが、どいつもこいつも殺人犯として微妙に怪しいという見事な演技を披露し、最後まで目の離せないスリリングな推理劇となっている。
キャスト(登場人物)
この作品は、登場人物がとにかく多く、把握はちょっと手強いが、グループ毎に背景色を変えてみたので、参考にしていただきたい。
役名 | 俳優 | 役柄 |
ブノワ・ブラン | ダニエル・クレイグ | 主人公。探偵。事件を捜査する |
エリオット警部補 | ラキース・スタンフィールド | 捜査を担当する地元の刑事。 |
ワグナー巡査 | ノア・セガン | 捜査を担当する地元の警官 |
ワネッタ・“グレート・ナナ”・スロンビー | K・カラン | ハーランの母親 |
ハーラン・スロンビー | クリストファー・プラマー | 事件の被害者。ミステリー作家 |
ジョニ・スロンビー | トニ・コレット | ハーランの亡き長男ニールの未亡人。ライフスタイル・インフルエンサー |
メーガン・“メグ”・スロンビー | キャサリン・ラングフォード | ニールとジョニの娘。大学生 |
リンダ・ドライズデール | ジェイミー・リー・カーティス | ハーランの長女。リチャードの妻。自身で興した不動産会社を経営 |
リチャード・ドライズデール | ドン・ジョンソン | リンダの夫。妻の不動産会社に勤める |
ヒュー・ランサム・ドライズデール | クリス・エヴァンス | リンダとリチャードの息子 |
ウォルター・“ウォルト”・スロンビー | マイケル・シャノン | ハーランの次男。ハーランの出版物の管理会社を経営 |
ドナ・スロンビー | リキ・リンドホーム | ウォルトの妻 |
ジェイコブ・スロンビー | ジェイデン・マーテル | ウォルトとドナの息子 |
アラン・スティーヴンス | フランク・オズ | ハーランの弁護士 |
カブレラ夫人 | マーリーン・フォルテ | マルタの母親 |
マルタ・カブレラ | アナ・デ・アルマス | ハーラン専属の看護師 |
フラン | エディ・パターソン | ハーランの家政婦 |
Mr. Proofroc | M・エメット・ウォルシュ | ハーラン邸の管理人 |
探偵ハードロック | ジョセフ・ゴードン=レヴィット | 劇中DVDで再生されるドラマの登場人物(カメオ出演) |
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上の写真の登場人物は、下の表の通り。
マルタ (ハーラン専属の看護師) | ランサム (長女家の孫) | リンダ (長女) |
ウォルト (次男) | ジョニ (亡き長男の未亡人) | ジェイコブ (次男家の孫) |
リチャード (長女の夫) | メグ (長男家の孫) | 犬 |
評価
Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、97%とこの上ないほど高い支持率を得ている(Rotten Tomatoesでは60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』という評価)。そして総評においても、”脚本と監督を担当したライアン・ジョンソンの煌めくアンサンブルによって、古典的な殺人ミステリーの常識を覆した” と、評されている。
商業的成功
この映画の上映時間は130分と標準プラス・アルファぐらいの長さ。4千万ドルの製作費に対して、世界興行収入は3億9百万ドルを売り上げた。実に7.73倍の特大リターンである。
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(2017年) で賛否両論の大論争を巻き起こしたライアン・ジョンソンも、本作の高評価、高収入に正直安堵したのではないか?
そして、主演を演じたダニエル・クレイグも、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2021年) で007シリーズを卒業したので、その卒業と並行して大ヒットに恵まれて、キャリアの伸長と言う意味で一安心なのではないか。
あらすじ(26分00秒の時点まで)
マサチューセッツ州の大邸宅。この家の主は、ハーラン・スロンビー85歳。ベストセラー・ミステリー作家だ。
ある11月の朝、家政婦のフラン(エディ・パターソン)が、いつものように朝食をハーラン(クリストファー・プラマー)の自室に持っていくと、ハーランは喉をかき切られた状態で死んでいた。
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ハーランの死の1週間後、葬儀も済んだタイミングで、自殺で片が付いていたはずの今回の一件を、警察は再捜査のために関係者をスロンビー邸に集めていた。改めて1人ずつ事情聴取を行うというのだ。その一環で、移民一家の長女で、故人ハーランの専属看護師だったマルタ(アナ・デ・アルマス)も、スロンビー邸に呼び出される。
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屋敷では、ハーランの孫娘メグ(ハーランの長男の娘:キャサリン・ラングフォード)が出迎える。姉妹のように仲の良い二人は、悲しみを分かち合うが、直近で特に故人と心を通わせてきたマルタの方が心痛は大きい。
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屋内に入ると、遺族とは思えない真っ赤な装いをした、ハーランの長女リンダ(ジェイミー・リー・カーティス)が出迎えてくれた。
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そして、その夫リチャード(ドン・ジョンソン)も。
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エリオット警部補とワグナー巡査による再度の取り調べは、不動産会社を経営する長女リンダ(ジェイミー・リー・カーティス)から始まり、その夫のリチャード(ドン・ジョンソン)へと続いて行く。
事情聴取の中で、改めてハーランが亡くなった日のことを振り返って行く。ハーランが亡くなったのは11月8日。晩に、故人の85回目の誕生パーティーが行われた日であった。
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誕生パーティーの場に居合わせたのは、家族と家政婦のフラン。そして故人専属看護師のマルタ。そこには、ハーランの母親(K・カラン)も居たし、リンダとリチャードの息子ランサム(クリス・エヴァンス)も少しだけ顔を出していた。
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取り調べは、ハーランの出版物を管理する会社の経営者である、次男ウォルト(マイケル・シャノン)へと移って行く。
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ウォルトは、誕生パーティー当日は、妻のドナ(リキ・リンドホーム)と息子のジェイコブ(ジェイデン・マーテル)と参加していたと供述する。
続いて取り調べは、亡きハーランの長男の未亡人ジョニ(トニ・コレット)へと移る。ジョニは、ライフスタイル全般を消費者に提案するインフルエンサーだ。
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そして続いて、ジョニの大学生の娘のメグ(キャサリン・ラングフォード)が取り調べを受ける。
各人の事情聴取が進むにつれて、誰も彼もが故人との関係を美化して供述しているのが見て取れて、かつ、親族間の仲も決して良くないことは明白だ。一方で、この警察の再捜査の裏には、匿名の依頼人によって雇われた著名な私立探偵、ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)の関与があることも明らかにされる。
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一通りの事情聴取を終えて、自殺の線を押す刑事2人に対して、ブラン探偵は納得の行かない様子である。
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そこでブラン(ダニエル・クレイグ)が目を付けたのが故人専任の看護師だったマルタ(アナ・デ・アルマス)だ。マルタは故人と非常に馬が合い、毎日のようにこのスロンビー邸に通っていた。だから、スロンビー一族の家長として君臨していた故人を介して、親族の裏事情に通じていると踏んだのだ。
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しかも、マルタは生理的に自分の嘘を受け付けず、嘘を付こうとするだけで嘔吐してしまうという特異体質の持ち主なのだ。
こうして、名探偵ブランは、マルタという歩くウソ発見器を使いながら、容疑者たちから嗅ぎ取った欺瞞の裏取りをして行く…
大富豪ハーラン・スロンビーの死は、自殺か他殺か?他殺なら誰が犯人なのか…?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころをを3つの観点に絞って書いてみたいと思います。くどくどとした解説は極力避けて、”是非こういうところに目を配って観てみてください、より一層楽しめますよ” というご提案にしたいです。
ネタバレは一切しませんので、安心してお読みください。鑑賞のお邪魔をせず、より味わい深くこの作品を楽しむお手伝いをさせてください。
シリアスとコメディの絶妙なライン
この映画の最大の見どころは、シリアスとコメディの間の絶妙なラインに作品のトーンを着地させていることではないでしょうか?
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製作・脚本・監督を担ったライアン・ジョンソンが、アガサ・クリスティー風のミステリーを撮りたいと言って創作し始めた本作。結果、見事なミステリーに仕上がっていますが、救いが無くて後味の悪い作風にしたくはなかったようですね。コメディ作品としても一級品に仕上がっています。その絶妙なラインを存分に楽しんじゃうのが良いと思います。
特に、容疑者たちの供述内容(ナレーション)と、画面上の描写(画面上の演技)にズレを作って、その間ダニエル・クレイグの表情を度々挿入することで、探偵が被疑者の嘘を見抜いて行く様子を示唆する演出は、オーソドックスですがパワフルです!
ダニエル・クレイグの圧倒的な才能
15年間ジェームズ・ボンドのお姿を観てきたため(「カジノ・ロワイヤル」(2006年) ~ 「ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2021年))、シリアスでクールな印象が強かったですが、クレイグさん、ごめんなさい。16歳から正規の演技のレッスンを受けて来た方は別格です!
コメディの演技が超面白いんですよね。それも、面白く見せようと崩した演技をするのではなく、シリアスに演じれば演じるほど、観ているこっちは面白くなっちゃうという上質なコメディ。
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これはご自身の目で確かめてお楽しみください!
画面を埋め尽くす色鮮やかさ
とにかく画面が色鮮やかで美しいんですよね。ビジュアルの強さが半端じゃないです。
主演のダニエル・クレイグに負けず劣らず、この映画には、名優たちが続々と出てきます。彼らが一癖も二癖もある個性的な演技を見せてくれるのですが、それを際立たせるように、衣装が色とりどりで鮮やかなんですよね。
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これは、各キャラクターのイメージカラーが決まっている訳ではなくて、その都度その都度好きな服を着ているっぽいんですが、良く言うと個性的、悪く言うと統一感が無い。一族がバラバラな方向を向いて生きていることを視覚的に表しているんじゃないでしょうか。
そして、物語の舞台となるスロンビー邸の外装と内装、そして置かれている調度品がどれも美しいんですよね。
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幾つか奇抜な置物も目に付くものの、全体的に高級感に溢れ、全体としての調和は保たれている。こちらも、なんだかんだ言って一族が、屋敷の最上階で暮らしていたハーランの影響下で暮らしていたことを視覚的に表しているんじゃないでしょうか。
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総じて言うと、ビジュアルはカラフルで色鮮やかなんだけど、決して下品になっていない。監督のライアン・ジョンソンのセンスの良さが光ります。
一見すると上級社会に属しているように見える人たちが、揃いも揃って傲慢か私利私欲にまみれている。そんな中、高潔な心を保ち続けているのは移民2世の看護師だけ…
そういった皮肉めいたメッセージも、これらの美術で示唆しているようにも思います。いずれにせよ、ビジュアル面でこの作品の芸術性を高めているのは間違いないと思います。皆さんの目にはどのように映りますか?
まとめ
いかがでしたか?
ある意味オーソドックスな大富豪殺害事件の体(てい)を取りながら、二重三重に工夫を施し、かつ絶妙なラインでコメディに着地させている名作です。概要と見どころを上手にご紹介出来ていると嬉しいです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.0 | ミステリー好きは是非! |
個人的推し | 4.0 | 掛け値なしにおススメです! |
企画 | 4.5 | ミステリー x コメディ!! |
監督 | 4.0 | 一貫したテンション |
脚本 | 4.0 | シンプルに面白い! |
演技 | 4.0 | 百花繚乱とはこのこと! |
効果 | 4.5 | 衣装・美術・カメラワーク |
このような☆の評価にさせて貰いました。
文句を付けたくなるところが見当たりません。掛け値なしに面白いし、おススメです!続編が作られるのも納得です。
ダニエル・クレイグさん、今後も目が離せないです!