この記事では、マフィア映画の金字塔ゴッドファーザー・シリーズの第2作目「ゴッドファーザーPARTⅡ」について解説しています。(原作にあった)PARTⅠの前日譚と、(新たに書き起こした)P後日譚を交互に挿入する斬新な編集についても解説しています。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
ジャッジタイム (ネタバレなし)
本作における、観続けるか、中断して離脱するかのジャッジタイムだけど、
- 開始から45 分00秒までは、このストーリーにお付き合いいただきたい
というのも、この45分の時点で主要な登場人物が出揃うから。是非最低でもここまでは鑑賞いたたいた上で判断を下して欲しい。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
1974年に公開されたシリーズ 2作目 (原題:The Godfather Part II)である。上映時間200分の超大作でありながら、前作Part Ⅰ (1972年公開) の僅か2年後に公開されていることから、(コッポラが監督を引き受けるか否かのひと悶着があったらしいが、)総論制作陣が1作目との整合性を持って2作目の作業に入ることで、このスピード感に繋がったのではないかと想像する。
その成果もあってか、一般的に 2作目以降の続編が1作目の評価に並ぶこと、増してや超えることは稀だが(※)、この PART Ⅱ は PART Ⅰ を超えたと評価されることが多く、人生最良の映画にこの「ゴッドファーザー PARTⅡ」を挙げる中高年の映画ファンは少なくない。
その成功要因は数え上げたらキリが無いわけだが、脚本を1作目に引き続き原作者のマリオ・プーゾと監督のフランシス・フォード・コッポラのコンビが務めたこと、1作目でプロデューサーを務めながらも2作目の制作には加わらなかったアルバート・S・ラディの代わりに、コッポラ自身がプロデューサーに名を連ねたことの、この2点が大きかったのではないかと筆者は勝手に思っている。
アカデミー賞の受賞部門が、PARTⅠ(3部門)から PARTⅡ(6部門)に倍増するという、成果が目に見える形にハッキリと現れている。
※ 続編が1作目の品質を超えたシリーズ
芸術的評価
この映画は、「アメリカ国立フィルム登録簿」(National Film Registry) に登録されている。これは、連邦政府国立フィルム保存委員会(The United States National Film Reservation Board)が毎年25作品を選定するもので、本作品が、アメリカの文化的、歴史的、芸術的に、後世に多大な影響を与えたことが公的機関からも認められた証である。
見どころ (ネタバレなし)
斬新な映画の構成
まず挙げられるのは、その斬新な構成。
本作 PARTⅡは、PARTⅠ(=1945年から数年間の世界)のいわゆる前日譚と後日譚の2つの時間軸が交互に入れ替わりながら進行して行く。
- 前日譚
- 主人公たちコルレオーネ・ファミリーの成立の過程が描かれる。すなわち、(PARTⅠではマーロン・ブランドが演じた) 先代のドンであるビトーの幼少期から青年期までの話だ。本作PARTⅡで、そのビトーの青年期を演じたのはロバート・デニーロ。
- 後日譚
- PARTⅠから10年程経過した1958年~1959年の世界が描かれる。(アル・パチーノ扮する)当代のドンであるマイケルが、今や巨大犯罪組織と化したコルレオーネ・ファミリーの困難な舵取りに迫られる様が描かれる。
前日譚と後日譚はほぼほぼ等しく丁寧に描写され、全体のストーリーが成立して行くことになるので、ザックリ言うと映画2本分の分量があると思って貰った方が良い。既述の通り200分と大変長編だけれども、時を隔てたこの2つの物語の”対比”を是非味わっていただきたい。
※ ちなみに前日譚のパートは原作に含まれる(= PARTⅠは、原作のストーリーからこの前日譚のパート他を削ぎ落して映画化された)。一方で後日譚は含まれない。よって、後日譚は本作品の脚本を執筆した、原作者のマリオ・プーゾと監督も務めたフランシス・フォード・コッポラが、PARTⅡ制作時に創作したものだと、筆者は理解している。
主題である家族の葛藤
そして、もっとも注目頂きたいのは、本シリーズ全作を通して共通する「家族」という主題(テーマ)である。PARTⅠでは、家族内の関係性の急速な変化が描かれていたけれども、PARTⅡでは家族間の葛藤がより鮮明に描かれている。
現代の企業においても、起業直後のスタートアップの段階では、気心知れた仲間でワイワイとビジネスを伸長させていたのが、一旦巨大企業になってしまうと、そのトップは大変孤独で、時に非情なまでの冷徹な判断に迫られる。それが増して同族企業で起きたらどうなる?みたいな構図を念頭に置きながら観て貰えると、本作を味わい深く鑑賞できるのではないだろうか?皆までは述べないが、上述の「2つの物語の『対比』」という意味もこれで合点が行くのではないだろうか。
アル・パチーノとロバート・デニーロの圧巻の演技
全作に引き続きアル・パチーノの演技が凄い。撮影当時34歳だったにも関わらず、恐ろしいまでの存在感を発揮して、「巨大犯罪組織のドン」に一点の曇りもない説得力を与えている。
そしてこれと同等に、いやそれ以上に圧巻なのが、ロバート・デニーロである。上述の通り、先代のドンである、ビトー・コルレオーネの青年期を演じて前日譚に登場するのだが、(詳細は割愛するが) 数か月を費やした役作りを経て、シチリア訛りのイタリア語と、マーロン・ブランドのPARTⅠ時の所作を完璧にマスターして本作PARTⅡに登場している。撮影当時、30歳 or 31歳。
この(当時まだまだ若手だった筈の)両名俳優がキャラクターにディティールを加え、ストーリーに馴染ませ、物語に説得力を与えてくれているお陰で、ここまで書いて来た”対比”と”葛藤”を何段階も高次元に昇華させてくれている。是非是非、目を皿にして、耳の穴をかっぽじってその演技を鑑賞してください。
BGM
前作 PARTⅠに引き続き、本作 PARTⅡの音楽を担当しているのはニーノ・ロータだ。よって、PARTⅠと同じ世界観をBGMという側面からも味わうことが出来るのが本作の素晴らしい点の1つだ。ただし、それは単に前作をなぞるのではなくて、本作 PARTⅡのMain Title (The Immigrant – 移民 というサブタイトルが付いている!) が、本作を前作と比してより高い次元に引き上げるのに一役買っていると思ってところを強調したい。ああ才能って恐ろしい!この年のアカデミー作曲賞です。
その他の情報
筆者のおススメ度合いは 4.0/5.0 です。
是非見て頂きたい作品なのですが、暴力シーンが苦手という方、流石に200分の長尺を考慮してこの☆です。
アカデミー賞の作品賞(2作連続)、監督賞(PARTⅠでは逃したので遂に!)、助演男優賞(ロバート・デニーロ)、脚色賞(2作連続)、美術賞、作曲賞を受賞