話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】リバー・ランズ・スルー・イット(意味、28歳のブラピ、実話、あらすじ、原作)

この記事でご紹介する「リバー・ランズ・スルー・イット」は、1992年公開の映画です。1910 ~ 1920年代のモンタナを舞台に、大自然に囲まれたある家族の物語が描かれます。物語は、クレイグ・シェイファー扮する”兄”の目線で綴られますが、監督を務めたロバート・レッドフォードの若い頃と瓜二つの、28歳のブラット・ピットが奔放な”弟”を演じる姿が画面一杯に映し出されて行きます。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

兄、弟、両親、恋人と言った家族。田舎で、あるいは都会で暮らすこと。そして何より自分が選んだ人生を生きること。これらを美しいモンタナの大自然を背景に描いた叙情詩。しかも、実話に基づく話。これをロバート・レッドフォードが完璧なまでに映像化。アカデミー撮影賞にも輝いたこの芸術作品の世界に、ちょっとだけ足を踏み入れてみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から29分50秒のタイミングをご提案します
ジャッジタイムは29分50秒

家族、特に兄弟の物語であるこの映画において、兄弟がそれそれどんな人生を歩み始めたのかが見えて来るのがこのタイミングです。この時点までで、この作品の雰囲気、映像、語り口を見て、好き嫌いを判断いただくのが良いと思います。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「リバー・ランズ・スルー・イット」(原題: A River Runs Through It) は、1992年公開の映画。この映画の語り手でもある実在する小説家ノーマン・マクリーンが、1976年に70歳を過ぎてから出版した「A River Runs Through It and Other Stories」(邦題: マクリーンの川) に収められた「A River Runs Through It」を映像化したのが本作品。

原作小説 “A River Runs Through It”

この映画は、”A film by Robert Redford” と冒頭にクレジットされている。ロバート・レッドフォードにとって3作目の監督作品であり、4作目の製作総指揮作品である。ロバート・レッドフォード、本作品公開時56歳。また、本作品は、ブラット・ピットの大出世作としても知られている。この映画のヒットによって、ブラピの知名度は世界的に高まった。ブラット・ピット、本作品公開時28歳。

多くの映画ファンが、この作品が公開された時こんなことを考えた。50代半ばで流石に美貌が衰えて来たロバート・レッドフォードが、(出来れば自分で演じたいだろう役回りを、)自身に容姿が良く似た美青年を起用し、雄大な大自然をバックに映像化したのがこの作品なんだろうと。

あわわっち

この美青年は誰だ!というのが、当時のこの映画に対する第一印象でした

あっつ

ロバート・レッドフォードとブラピの年齢が、当時丁度半分なんですよね!(56歳と28歳)

実話に基づくストーリーとナレーション

既に述べたように、この映画はノーマン・マクリーンの「A River Runs Through It and Other Stories (マクリーンの川)」という小説に基づいて作られている。この本には、著者ノーマン・マクリーンが、過去の実体験を振り返った3つの作品が収められており、その内の1つ「A River Runs Through It」を中心に映像化したのがこの映画である。

よって、映画「リバー・ランズ・スルー・イット」の内容は実話に基づいている。

実話に基づくストーリー
  • 小説の中では、ノーマン・マクリーンが1人称の形態で物語を綴っているが、
  • 映画の中では、(ナレーションとしてクレジットされていないが)ロバート・レッドフォードが1人称でナレーションを付けている

この辺りの事実が頭に入っていると、映画の一番最初から入るナレーションの言葉の意味もシックリくると思う。

昔、私が若かった頃、父は私に言った「ノーマン、 お前は物語を書くのが好きだろ

いつか、その準備が出来たら、私たち家族の物語も書くと良い。そうすれば、何が、何故、起こったのか、ようやく分かることだろう」

Long ago, when I was a young man, my father said to me…

“Norman, you like to write stories.” And I said, “Yes, I do.”

Then he said, “Someday, when you’re ready… you might tell our family story. Only then will you understand what happened and why.”

Norman Maclean “A River Runs Through It” より

すなわちこの映画は、冒頭のこのナレーションで、回想スタイルの作品であることが提示されている訳だ。具体的には、ロバート・レッドフォードの声が演じる老年期のノーマン・マクリーンが、過去に自身の家族に起きた「何故?」と問いたくなるような出来事を振り返るというもの。

そして、この映画はノーマン・マクリーンの目線を通じて、物語が綴られて行くことも示唆されている。

主人公の子供時代を演じた子役

主人公ノーマン・マクリーンの青年期を演じたのは、クレイグ・シェイファー。そして、老年期(の声だけ)を演じたのはロバート・レッドフォード。

では、少年期を演じたのは?というと、ジョセフ・ゴードン=レヴィットである。後に「インセプション」や「ダークナイト・ライジング」で大活躍するこの名俳優が、子役時代から信じられないような名演技を披露してくれている。

評価

この映画では、フィリップ・ルースロの撮影が、アカデミー撮影賞を受賞している。フィリップ・ルースロは、2020年代の現在に至るまで引っ張りだこの撮影監督だが、1992年の本作品でアカデミー賞を受賞したのがキャリアの転機になったのは間違いないと思う。

モンタナの大自然、大自然と人との関係、そして人の表情を、的確に、でも情緒豊かに切り取って行くその映像は、まるで絵画の連続。ブラット・ピットの美しさと相まって、これを観ているだけでも楽しい。

美しい ”絵” が映し出されて行く

商業的成功

この映画は上映時間124分と極めて標準的な長さ。製作費は1,200万ドルで、世界興行収入は4,300万ドルと言われている。特段派手さの無いこの芸術作品で3.6倍ものリターンを生んだのは、流石ロバート・レッドフォード!としか言いようがない。

3.6倍のリターン

あらすじ (29分50秒の時点まで)

時は20世紀初頭。モンタナ州ミズーラの片田舎に暮らすマクリーン一家は、長老派の牧師を務める父(トム・スケリット)と専業主婦の母(ブレンダ・ブレッシン)、そして長男ノーマンと次男ポールの4人暮らし。スコットランド出身のマクリーン牧師は、質素を旨としており、4人は慎ましく暮らしていた。

兄弟は学校には行かず、日々自宅の書斎で週末の説教の準備をするマクリーン牧師に読み書きを習っていた。ただし、それは午前中だけで、午後は兄弟で外遊びをするのが日課。特に、川で行うフライ・フィッシングによるマス釣りに兄弟は夢中だった。

それもそのはず、マクリーン牧師は、兄弟に魂の糧となる宗派の教えと同等に、”フライ・フィッシング” を神聖な営みと教えていたからだ。神の恩寵の賜物であるマスを、磨かれた技なくして得ることは神に対する冒涜と捉え、力と美に裏打ちされた神のリズムに即したフライ・フィッシングを兄弟に仕込んでいたのだ。

フライ・フィッシングが2人のお気に入り

1917年にアメリカが第一次世界大戦に参戦すると、国内は男手が不足し、兄ノーマン(クレイグ・シェイファー)は森林局で材木生産の仕事に就き、弟ポール(ブラット・ピット)はプールの監視員の仕事に就いた。

ある晩2人は、いつものように夜中に家をコッソリと抜け出し、地元の仲間たちと酒を飲む。ところがポール(ブラット・ピット)が、川の急流と滝をボートで見事に下り切ったら地元の有名人になれるのではと言いだす。仲間たちが怖気づく中、兄弟2人だけがこれに挑み、使った盗難ボートは壊れたが、2人は無事にこのチャレンジに成功する。

2人が意気揚々と家に帰ると、心配で憔悴しきった母の横で、父のマクリーン牧師が2人を冷静に、でもきつく叱り、最低限の償いとしてボートの弁済を2人に課す。兄ノーマン(クレイグ・シェイファー)は事の重大さに気付き素直に反省するが、弟ポール(ブラット・ピット)は、自分が言い出したことだと兄を庇い、あまり反省の色は示さない。

急流をボートで下り切った兄弟であったが…

翌朝、後悔から気落ちする兄ノーマンを、弟ポールが普段通りからかった為に、諍いから殴り合いの喧嘩に発展する。これが生涯唯一の兄弟喧嘩となるが、2人はその後仲直りし、いつも通りに連れ立って釣りに出掛ける。そこでは、いよいよポール(ブラット・ピット)は、父マクリーン牧師の教えを凌駕するほどのフライ・フィッシングの美技を披露するに至る。兄ノーマン(クレイグ・シェイファー)も、これは才能だと認めざるを得ない。

その後、兄ノーマンは、マクリーン家の収入レベルを超える東部のダートマス大学に、父の後押しもあって進学する。在学中の6年間は殆ど実家に帰らずに過ごす。その間、弟ポールは、地元の大学に進学し、引き続きフライ・フィッシングを楽しみ、そして卒業後には、ヘレナ市に引っ越して新聞記者となった。

それぞれの道に進み始める2人

いつも一緒に育ってきた兄弟は、相変わらず関係性は良いが、徐々にそれぞれの感性や才能に応じた道へと歩み始める。2人はどんな大人になって行くのだろうか…?

見どころ (ネタバレなし)

見どころは、”監督”ロバート・レッドフォードの良く練られた演出に尽きます。そのストーリーテリング力に感服してしまいます。そこを多少意識してご覧になれば、この映画は更に楽しめると思います。監督の演出を後方支援する要素として、映像とBGMの美しさが続くというフォーメーションなので、その辺りをちょっと頭に置いておいて頂ければ、より味わい深い作品になってくると思います。

整理すると、1(演出) + 2(映像 と 音楽)+ 1(本作品のテーマ)= 4つ の観点で「見どころ」を予習情報としてお伝えします。

良く練られた演出

監督ロバート・レッドフォードの演出が冴え渡ります。実は原作の「A River Runs Through It」は、3本の小説が1冊の本に収められた内の1つという事実からも分かるように、長編作ではないんです。中編作にカテゴライズされる長さで、2時間の映画を構成するにはいささか短めだったんです。

そこで、ロバート・レッドフォードと、脚本を担当したリチャード・フリーデンバーグは、2時間(最終的には124分に仕上がる)の映画を構成するに当たり、これを逆手にとって、キーとなるシーンは存分に脚色をします。具体的には、

  1. 雄大なモンタナの大自然や、登場人物たちの表情を描写するのに十分なコマと時間を割く
  2. 逆に、簡潔な説明で済ませたい箇所は、その構図だけでストーリーを物語る色褪せた写真をインサートし、そこにナレーションを付け足し、観る側が状況を一目で飲み込める状況を作る

工夫を施してくれます。つまり、1と2のメリハリが非常にハッキリしているんです。1については、「映像の美しさ」に説明を譲るとして、ここでは2について掘り下げます。

北野武監督は、究極の2時間映画は、1枚1枚それぞれがストーリーを物語る優れた構図の写真が10枚あれば、それを繋げるだけで映画は作れる。それが理想だと言っていますね。この映画ではそれに近い状態が実現されます。

「あらすじ」を書いた冒頭に限定してご説明すると、マクリーン兄弟の写真や、家族4人の写真に引き続いて、発展途中のモンタナ州ミズーラの街の写真が、ロバート・レッドフォードのナレーションと共に挿入されます。これだけで、どんな時代のどんな町で兄弟は生を受け、どんな両親の下で育てられたかが一目瞭然に伝わります。

兄ノーマンのダートマス大学在学中の様子も、楽し気に東部での学生生活を送る数枚の写真、そしてナレーション。弟ポールの学生時代から、新聞社に就職するまでの様子も、両親の傍で地元の大学に通った様子が、同じく写真とナレーションで簡潔に綴られます。2人が、まるで趣の異なる大学生活を送り、弟は既に両親から独立し、溌剌と仕事をし始めている様子が、短い時間に明瞭に伝わります。

構図にこだわり抜いた写真に、色褪せた加工を施して並べるだけで、完璧にその数年のストーリーを物語っています。これが後から述べる、美しい動画との良い緩急になっていて、この映画が持つ”郷愁”を高める仕掛けとなっていきます。是非、ご自身で感じてみてください。

映像の美しさ

映像の美しさですが、まずは何と言っても、その ”絵” が美しいですね。モンタナの山、平原、そして川。それからブラット・ピットの美貌と立ち姿。個々の ”絵” が絵画のようです。

そして、それだけではなく、コマ割りも工夫されています。ここぞ!というシーケンスでは、名も無き登場人物達の表情も”寄り”の絵で丁寧に映し出し、彼らの目にマクリーン兄弟がどう映っていたのかを丹念に描写します。そして、主要登場人物であるマクリーン兄弟の表情は更に”寄って”細やかに表情を映し出す。

さらに、バストアップぐらいの構図で ”大自然の中の人間” という絵を切り取ったり、そして、”引き”の絵では雄大な大自然そのものを描写したりしていきます。

これらのカットを、アングルも変えながら細やかに編集で繋ぎ合わせて行くことで、特撮技術は何も使わなくても、スリリングで没入感の高いシーケンスに私たちを引きずり込んでいきます。

他にも、兄ノーマンが東部からモンタナに汽車で帰郷するシーンでは、車窓の外に広がるモンタナの景色との再会を喜ぶノーマンを、車窓の外側に設置したカメラからノーマンを映すことで、ガラス越しのノーマンの表情とガラスに反射したモンタナの景色を重ねて映すなど、細かなテクニックも駆使して私たちを楽しませてくれます。是非、期待して観てみてください。

音楽の美しさ

マーク・アイシャムが手掛けたオリジナル・ソングの数々も大変美しいです。バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの弦楽器の調べがとても印象的です。目を閉じると、雄大な大自然の中を川が静かに流れる情景が瞼の裏に浮かぶようです。

本作品のテーマ

詰まるところ、この映画のテーマは何なんでしょうか?

この映画には、政府転覆を企むテロリストが出てくる訳でもなく、難病に不屈の精神で立ち向かう患者が出てくる訳でもありません。ただただ、美しい自然の中で兄弟、親子がフライ・フィッシングをして、家族の物語が紡がれて行く。そんな詩的な叙情詩です。

ただし、この”フライ・フィッシング”が大きな意味を持つメタファーになっています。牧師一家であるマクリーン家の、特に男三人(牧師の父と兄弟)は、兄弟の成長に伴いそれぞれ別々の道を歩み始めます。そして、家族ですから諍いが起きることもあります。

しかし、どんな時でも天の恵みであるマスを捕まえて食す ”フライ・フィッシング” は、家族の宗教的な儀式であり、家族を繋ぎとめる鎹(かすがい)であり、家族を平等に競わせる公正さの象徴であり、そして、その技能と美しさを示す自己表現の場として位置付けられているように思います。

バラバラになりそうな家族、バラバラにしてしまいそうな事件、その真ん中には象徴としての”フライ・フィッシング”がいつだって存在した。そのためのモンタナの川はいつだって悠然と流れていた。そんな姿を丁寧に描いた作品。だから、この映画は “A River Runs Through It” というタイトルなんだと思います。

ここまで述べた、演出、映像、音楽の全てがこのテーマを映し出すために存在しているのは間違いないと思います。

出演:ブラッド・ピット, 出演:クレイグ・シェイファー, 出演:トム・スケリット, 監督:ロバート・レッドフォード

「午前10時の映画祭」で再上映決定!

本作品は、午前十時の映画祭でリバイバル上映されることが決定しています!

2024年の2月です!胸アツです!あの美しい映像を大画面で観られるなんて!詳細は下のリンクをどうぞ!

まとめ

いかがでしたか?

美しいこの映画の雰囲気が少しでも伝われば嬉しいです。「見どころ」を予習情報として、この作品をより味わい深く楽しんで貰えたら幸いです。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 3.5 数ある作品の中から選ぶ優先順位は低いかも
個人的推し 4.0 色んな意味で”美しい”作品
企画 4.5 この話を映像化しようと思ったことが凄い
監督 4.0 書ききれない細かな演出の工夫が
脚本 4.0 メリハリの利いたストーリーテリング
演技 4.5 美しいだけじゃないブラピの才能
効果 映像と音楽が雄大な自然を映し出す
こんな感じの☆にさせて貰いました

本当に美しい芸術作品です。単に美しいだけじゃない、ブラピが纏う不思議な魅力が画面を通して溢れ出て来て、この雰囲気が楽しめる人とは相性が良いと思います。

娯楽作ではないので、数ある作品の中からどんな優先順位で観るかは、皆さん個人個人の選択だと思います。

あわわっち

ブラピは、本作品のオーディションを2回受けて、故リバー・フェニックスに競り勝って、本作品の出演を勝ち取ったとか…

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