この記事でご紹介する「ブルース・ブラザース」は、後世に多大な影響を与えた1980年公開のエンタメ作品。ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドの2人が、上から下まで黒い衣装で固めた ”ブルース兄弟” に扮して大騒動を巻き起こす傑作コメディ。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
元は「サタデー・ナイト・ライブ」というお笑い番組内の人気コントのキャラクターだった”ブルース・ブラザース”。番組を飛び出して、コメディ + ファンタジー + アクション + ミュージカル になって世界中で大ヒット。映画エンターテインメントのエッセンスがたっぷり詰まったこの名作の世界を、一緒にちょっとだけのぞいてみませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から21分30秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧になると、この映画のテイストが見えてきますし、”ブルース・ブラザース”の2人が、何故、何をしようとしているのかが掴めるので、この先を観るか観ないかの判断を出来ると思います。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「ブルース・ブラザース」(原題:The Blues Brothers) は1980年公開のエンターテイメント作品。コメディ要素はもちろんのこと、アクション要素、ファンタジー要素、そしてミュージカル要素がイイ感じで配合されている傑作コメディ映画。
物語の主人公となる ”ブルース・ブラザース”とは、ジョン・ベルーシ扮するジェイク・ブルース(兄)と、ダン・エイクロイド扮するエルウッド・ブルース(弟)のブルース兄弟のことで、映画ではこの2人が率いるブルース・ブラザース・バンド(←この記事では便宜上こう呼ぶ)が巻き起こす大騒動を描いている。よって、作品のタイトルもそのままの ”ブルース・ブラザース”である。
この兄弟キャラクターは、黒スーツに黒ネクタイ。黒い靴に黒いソフト帽をかぶっていて、常に黒いサングラス(レイバン製のウェイファーラー・モデル)をかけている。白いワイシャツ以外は全部黒というスタイルで全身をキメているのが特徴だ。
この個性的なキャラクターは、もともとアメリカNBC系の超長寿人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」の同名のコント・コーナーから誕生したもので、その人気コーナー内でもバンド演奏していたものを発展させて、ストーリーを付けて映画化された。よって、映画劇中のバンド演奏は生々しい迫力を持つ。
映画化に当たって監督を務めたのは、前作「アニマル・ハウス」(1978年) でもジョン・ベルーシとタッグを組んだジョン・ランディス。
ランディス監督は、3年後の「大逆転」(1983年) では、ダン・エイクロイドとタッグを組むことになるので、”ブルース・ブラザース” の2人とは、非常に縁の深い映画監督である。
サタデー・ナイト・ライブとの関連性
サタデー・ナイト・ライブは、1975年にアメリカNBC系で始まった人気深夜番組である。番組には、放映開始当初から定型化された構成フォーマットがあり、コント、その週の時事ネタの風刺、映画・ドラマ・人気番組・CMのパロディといった要素が順に放送されて行く構成であった。
新作コントは好評を博すとシリーズ化されるが、「ブルース・ブラザース」コントも、番組から誕生したそうした人気コントの1つ。上述の黒装束でキメたジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが、ブルースやソウルをバンドと共に生演奏する音楽コント・コーナーであった。
時系列を紐解くと、1978年4月に始まったこの「ブルース・ブラザース」コントが大変好評で、ライブ収録した音源を78年11月に「ブルースは絆」というタイトルでレコード・リリース。79年にこれがビルボード1位を獲得。そして、1980年には「ブルース・ブラザース」が映画化され、こちらも大ヒットを記録した格好になる。
なお、「ブルース・ブラザース」の他にも、「ウェインズ・ワールド」(1992年) や「コーン・ヘッズ」(1993年) のように、この番組の人気コントから映画化されたケースが幾つかある(参考までに)。
”ブルース・ブラザース” にも扮したジョン・ベルーシとダン・エイクロイドは、サタデー・ナイト・ライブのオリジナル・キャスト(=全部で8名いる)であり、2人が1979年に出演を辞めた後も同番組は、エディ・マーフィ、ジェームズ・ベルーシ (ジョンの弟)、ロバート・ダウニー・Jr.、マイク・マイヤーズ、アダム・サンドラー、ジミー・ファロンといった、世界的知名度を誇るコメディ・スターを次々と輩出して行った。
芸術的評価
この映画は、「アメリカ国立フィルム登録簿」(National Film Registry) に登録されている。これは、連邦政府国立フィルム保存委員会(The United States National Film Reservation Board)が毎年25作品を選定するもので、本作品が、アメリカの文化的、歴史的、芸術的に、後世に多大な影響を与えたことが公的機関からも認められた証である。
後の「メン・イン・ブラック」(1997年) の主人公たちのスタイルや、「マトリックス」(1999年) のエージェント・スミスは、この「ブルース・ブラザース」スタイルへのオマージュだと言われている。それぐらい後世に多大な影響を与えた。
商業的成功
この映画(劇場版)の上映時間は133分(現在サブスク視聴できるのはこちらの版のみ)。ちなみに、オリジナル版は148分あるが、こちらも観ていて全然飽きがこないので、もしチャンスがあればオリジナル版もご覧になって頂きたい。
製作費は2千7百万ドルと言われており、世界興行収入は1億1千5百万ドルを売り上げた。実に4.3倍のリターンである。
これだけアイコン化されたキャラクター・グッズは、公開後長年にわたって相当なグッズ販売収益をもたらしたのではないだろうか?
とにかくスタイリッシュなんですよね
あらすじ (21分30秒の時点まで)
強盗の罪でシカゴ郊外のジョリエット刑務所に収監されていたジェイク・ブルース(ジョン・ベルーシ)は、刑期が3年過ぎたところで仮釈放となった。
看守に付き添われて出所の手続きを進めるジェイク。
刑務所まで出所の出迎えに来たのは、弟のエルウッド・ブルース(ダン・エイクロイド)。
ただし、エルウッドが迎えに乗って来た車が、シカゴ警察から払い下げられた、白と黒のパンダカラーの元パトカーだったため、”刑務所から出所する日に弟にパトカーで迎えられるなんて” 笑えないジョークだとジェイクはご機嫌ナナメだ。
しかし、この”ニュー・ブルース・モービル” の馬力を、シカゴ東95丁目橋で目の当たりにして、ジェイクの溜飲も若干下がる。
そう、このジェイクとエルウッドの2人は、ブルース・ブラザースと呼ばれるブルース・ミュージックをこよなく愛する兄弟なのだ。
そして兄弟は、孤児だった2人を育ててくれた聖ヘレン孤児院に出所の挨拶に向かう。ところが、経営に窮するこの孤児院が、残り11日の間にクック郡に5,000ドルの固定資産税を納めないと、施設は差し押さえられ、強制退去の憂き目に遭うことを知らされる。
故郷(ふるさと)のピンチに際し、「5,000ドルなんて朝飯前だ」とうそぶくジェイク(ジョン・ベルーシ)であったが、超厳格な孤児院院長のシスター・”ペンギン”(キャスリーン・フリーマン)に「汚れた金は要らない」とこっぴどく叱られてしまう。
それでも何とか孤児院を救いたい兄弟は、子供の頃から自分達を可愛がってくれた師匠のような存在カーティス(キャブ・キャロウェイ)に相談すると、カーティスからは、クリオファス牧師の礼拝に行き、神の御心を知れとアドバイスされる。
兄弟が渋々と、クリオファス牧師(ジェームス・ブラウン)の礼拝に出席すべくトリプルロック教会に向かうと、そこでは、クリオファス牧師の先導の下、何ともファンキーな礼拝が行われていた。当初は懐疑的な目でこの様子を眺めていた2人であったが、突然天からジェイクに一筋の光が当たり、ジェイクは神の啓示を受ける。
「そう!バンドだ!」
と。
この「バンドだ!」という啓示はエルウッドにも伝播し、2人はこれを受け入れ、踊り狂って喜ぶ。
そして兄弟は、ブルース・ブラザース・バンド(←本記事では、便宜上こう呼ぶ)の再結成は ”神の使命” と受け止め、その活動による収益で聖ヘレン孤児院の固定資産税を支払うことを決意する。その為には、各職場に散っているバンド・メンバーを集めなければ・・・
果たして兄弟は、再びメンバーを集めてブルース・ブラザース・バンドを再結成させることが出来るのだろうか?そして、めでたく11日間以内に5,000ドルを稼ぎ出し、聖ヘレン孤児院を救うことができるだろうか・・・
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つの観点に絞って書いてみたいと思います。どれもネタバレなしで書きますので、予習情報としてお役立て下さい!
確立されたとぼけたキャラクター
ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが扮する”ブルース・ブラザース”の確立された、ちょっととぼけたキャラクターがとにかく面白いです。誰が何と言おうと、この映画のダントツの見どころです。
2人は全身を黒の衣裳でキメていて、かつサングラスを掛けています。その上、性格的にも寡黙なキャラクターを貫いていきます。これが、存在全体からして明らかに ”ボケ” なんですが、同時にスタイリッシュでカッコいいです。
サングラス姿のそんな彼らの表情を読み取るには、自ずとその一挙手一投足に着目する必要が出てきます。ところが、そこは一流のコメディアン。2人は、サングラスの上からのぞく眉毛の動きや、顔や首の角度、ボディ・ランゲージで巧みに感情の動きを表現して行きます。
そして特に私たちを惹きつけるのが、その動作のリズムと独特の間合いです。言うなれば音楽のグルーブと同じです。ただしこれは、能や狂言の伝統を持つ我々日本人の方が、その微妙な趣を味わえるんじゃないでしょうか?楽しみにしていてください!
また、2人は兄弟キャラですが、性格に違いがあるように描かれていて、チビデブ担当の兄ジェイク(ジョン・ベルーシ)の方が、よりハチャメチャな性格をしており、
ヤセノッポ担当の弟エルウッド(ダン・エイクロイド)の方がニヒルでちょっと引いた性格をしているところが、更に面白さを引き立てて行きます!
黒人文化への敬意・人種に関してボーダーレス
そもそも映画のタイトルが「ブルース・ブラザース」ですし、劇中でも、ブルース、ソウル、ゴスペルといったブラック・ミュージックがふんだんに登場します。黒人音楽を始め、黒人文化に対する最大限のリスペクトが払われています。
そして何より清々しいのは、当たり前のように登場人物には黒人と白人が、そして男性と女性が出てきます。その辺りが非常にボーダーレスなんですよね。
ちょっとだけネタチラをしてしまうと、劇中で ”イリノイ・ナチ” という白人至上主義者集団が出てきます。しかし物語では、ブルース・ブラザースは彼らの偏った主張なんてこれっぽっちもマトモに相手にせず、徹底的にコケにして行きます。
映画での扱いとしては、愚かな集団として風刺的に皮肉って無視を決め込むわけです。
また女性陣も、ベタな言い方をすると強い女が描かれています。ただしそれは、男性化した女性ではなく、女性的な魅力も兼ね備えた強いキャラクターという意味です。
徹頭徹尾一級のエンタメ作品たるこの映画の、隠れた矜持を見るような気がします。お楽しみに!
超豪華なキャスト
カメオ出演も含めて、何でこんなに集められたの?というぐらい豪華なキャストが揃っています。
まずは、ブルース・ブラザース・バンドから行きましょう。当然のごとく、黒人、白人混在のビッグ・バンド構成です。
役名 | 俳優名 | 担当楽器 |
ジェイク・ブルース | ジョン・ベルーシ | ボーカル |
エルウッド・ブルース | ダン・エイクロイド | ボーカル/ブルース・ハープ |
カーネル | スティーブ・クロッパー | リード・ギター |
ダック | ドナルド・ダン | ベース |
マーフ | マーフィー・ダン | キーボード |
トゥーピッグ | ウィリー・ホール | ドラムス |
ボーンズ | トム・マローン | トロンボーン |
ブルー・ルー | ルー・マリーニ | サックス |
ギター | マット・マーフィ | ギター |
ミスター・ファビュラス | アラン・ルービン | トランペット(下の写真) |
豪華ゲスト・キャストをご紹介しましょう。
トリプルロック教会のクリオファス牧師は、ジェームス・ブラウン(下の写真は、ジェームス・ブラウン、キース・リチャーズ、ジョン・ベルーシでセッションをした際の写真)。
シカゴの下町でソウルフード・レストランを経営している女店主は、アレサ・フランクリン。
楽器店の店主がレイ・チャールズ。
武装して襲撃してくる謎の女がキャリー・フィッシャー。
その他にも、フランク・オズ(スターウォーズのヨーダ)、チャカ・カーン、ジョン・リー・フッカー、ツイッギー、スティーブン・スピルバーグ、ジョー・ウォルシュ(イーグルス)がカメオ出演しています!
まとめ
いかがでしたか?
この超一級のエンターテイメント作品の素晴らしさがちょっとでも伝わっていると嬉しいです。ネタバレしないように細心の注意を払ったつもりですので、この予習情報を基に、皆さんがより味わい深く本作を鑑賞してくださると嬉しいです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.5 | 子供も12歳過ぎたら必須科目として皆観るべし! |
個人的推し | 4.5 | 最高のエンタメ作品! |
企画 | 4.5 | コントが映画に! |
監督 | 4.0 | 随所のコマ割りがスリリング! |
脚本 | 4.0 | 固定資産税のために!! |
演技 | 4.5 | 文句ないでしょ? |
効果 | 4.0 | 映像・音楽・効果最高! |
このような☆の評価にさせて貰いました。
返す返す残念なのは、主演のジョン・ベルーシが、本作公開の2年後に、33歳の若さでドラッグの過剰摂取で急逝したこと。生きていたら、どんなコメディを私たちに見せてくれたのでしょうか…
人気コメディ番組の1コーナーからバンド結成、レコード・リリース、さらに映画化と、夢のようなストーリーを背景としたこのエンターテイメント作品。是非一度はご覧になっていただきたい名作です!
148分のオリジナル版がホントはおススメです!