この記事でご紹介する「交渉人」は、1998年公開の刑事サスペンス映画。シカゴ市警東分署に勤める名うての”交渉人”ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)は、署内の何者かが仕掛けた罠にハマり、殺人と横領の罪を着せられてしまう。
東分署の同僚は誰一人信用できない逆境の中、内務調査局に人質を取って立て籠もるという強硬手段に出るが、自身との交渉役には面識の無い西分署の”交渉人”(ケビン・スペイシー)を指名する。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
興行的には成功とは言えなかった本作ですが、全編通してスリル満点のサスペンス・アクションに仕上がっています。是非おススメしたい一本ですので、この記事でちょっと予習してみませんか?見限るのはそれからでも遅くはないはず!
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から31分30秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧になると、この映画のテーストが完全につかめると思います。そして主人公の日常生活と、急転直下どんな窮地に陥ったのかも見えて来ると思います。
好き嫌いを判断し、観続けるかを判断する最適・最短のタイミングとしてご提案します。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「交渉人」(原題:The Negotiator) は、1998年公開の刑事アクション・サスペンス映画。昨今では国産ドラマのヒットもあり、日本でもその存在が広く知られるようになった”交渉人”。本作品は、警察組織において立て籠もり犯や誘拐犯との折衝役を務める、この“交渉人”を題材にした映画である。
その主役となる交渉人を演じるのはサミュエル・L・ジャクソン。サミュエル・L・ジャクソンは、1981年に「ラグタイム」で映画デビューして以来、この「交渉人」制作までに40本以上の映画に出演してきたが、前年の1997年に「187」で映画初主演。同じく1997年の「ジャッキー・ブラウン」で脇役ながらベルリン国際映画祭銀熊賞(男優賞)を受賞。
キャリアの乗りに乗っているこの時期に、満を持してこの「交渉人」という大作でも主演を務めることになった。相手役はオスカー俳優ケヴィン・スペイシー(1995年の「ユージュアル・サスペクツ」でアカデミー助演男優賞を既に受賞していた)が務め、刑事アクションの要素もありながら、演技派の2人が競演する骨太のサスペンス作品となっている。
「交渉人」のプロット
シカゴ市警東分署に勤めるダニー・ローマン刑事(サミュエル・L・ジャクソン)は、立て籠もり犯との交渉を担当するプロの交渉人。しかし、この東分署では、署員の誰かが警察官の障害年金基金を横領している事件が起き、その横領犯の陰謀により、ローマンがその基金横領と、横領事件を探っていた刑事殺害の濡れ衣を着せられてしまう。
犯人が周到に偽造した証拠により、弁明の余地無く有罪へと追い込まれて行くローマンは、逮捕直前の最後の足掻き(あがき)として、横領の内偵を進めていたはずの内務調査局に押し入って人質と共に立て籠もり、自身の手で真犯人を探り出す時間を稼ごうとする。
東分署の誰も信用できない孤立無援の逆境の中で、普段とは全く逆の立場である”立て籠もり犯”となる”交渉人”のローマン。そのローマンが自身との交渉役に指名するのは、シカゴ市警西分署の名うての交渉人クリス・セイビアン(ケヴィン・スペイシー)。
交渉する側からされる側への逆転。ベテラン刑事 vs SWATの包囲戦。黒幕が判らないサスペンス。プロの交渉人同士の心理戦。こういったスリリングな要素が折り重なった刑事アクション・ドラマがこの映画「交渉人」である。
主なロケ地
映画の主な舞台となる、ローマン刑事が立て籠もるビル(地方検事局と内務調査局が同居しているという設定)は、シカゴのダウンタウン・ループ・エリアの北の外れにある、シカゴ川に面した223 North Clark Streetという住所のビルである。Google Street Viewでご覧になっても「ああ、このビル出て来た、出て来た!」と確認頂けると思う。
劇中でも、このビルの外観、ビル1Fのロビー、シカゴ川、そして目の前にあるClark Street Bridgeが度々登場する。
商業的成果
この映画の上映時間は139分と、標準よりやや長め。ただし、スリリングなサスペンスが続くため、体感的には短か目に感じる。製作費は5,000万ドルで、世界興行収入は4,900万ドルと赤字であったと伝えられる。
映画の商業的成果は、広告費・配給費まで加味すると、製作費の2~3倍を売り上げて初めて損益分界点を越えると言われているので、ハッキリ言って大赤字の結果となってしまっている。
評価
映画評論サイト Rotten Tomatoes(ロッテントマト)では 74%の肯定的な評価を得ており、かつトップ批評家(Top Critics)の一人であるロジャー・イーバートはこの作品を評して、「物語よりもスタイル、キャラクターよりも演技の勝利」と呼び、サミュエル・L・ジャクソンとケビン・スペイシーの間の化学反応を賞賛している。
加えて、映画の多くの部分が2人の会話で構成されているにもかかわらず、俳優たちがその会話に熱意と緊急性をもたらし、この年に公開された作品の中で最も巧みなスリラーと評した。
商業的成果に反して、批評家からの評価は決して低くなかったことが伺える。
あらすじ (31分30秒の時点まで)
シカゴ市警東分署に勤めるダニー・ローマン刑事(サミュエル・L・ジャクソン)は、立て籠もり犯を交渉によって説き伏せる、もしくは油断させて、事件解決に導いてきた歴戦の交渉人。今日も娘を人質にして自宅アパートにショットガンを持って立て籠もる中年男との交渉に従事している。
この事件は、ローマンが、包囲する仲間のSWAT部隊と連携を取りながらも、最後は独断で自分の身を危険に晒してギリギリのところで解決させた。こうしたローマンのスタンド・プレーは、地元TV局に名指しで賞賛される一方で、新妻のカレン(レジーナ・テイラー)を心配させ、SWAT隊の隊長ベック(デヴィッド・モース)からは足並みが乱れると不評だ。
そんな中、相棒のネイサン・ローニック刑事(ポール・ギルフォイル)に呼び出されたローマン(サミュエル・L・ジャクソン)。ネイサン曰く、東分署内で警察官障害年金基金を200万ドル近く横領している警官がいる。これは内部調査局からの内偵者に聞かされた確かな情報だが、内務調査局も買収されている恐れがあり、この話は行き場を失っているという。
その場は第三者の邪魔が入り2人の会話は終わるが、その日の夜中近くに、ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)はネイサンからフランクリン公園に再度呼び出される。ローマンがフランクリン公園に着き、停車しているネイサンの車に近付くと、ネイサンは既に頭を銃で撃ち抜かれて殺されていた。
内務調査局も入った捜査が進む中、ネイサンの警察葬が行われる。
数日後、ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)が朝早く自宅で寝ていると、同僚の警官たちから突然の家宅捜索を受ける。すると、ローマンには全く身に覚えの無い、海外の銀行口座への送金履歴が戸棚から発見され、ローマンに向けられた障害年金横領とネイサン殺しの疑いの目が強くなってしまう。
ローマンにすれば明らかに何者かにハメられた状況であるが、ローマン自身が障害年金基金の職場委員であること、ネイサン殺しに使われた拳銃が、かつてローマンが犯人から押収したものであったことなど、不利な状況証拠が重なり、あっという間に犯人に仕立て上げられてしまうローマン。
遂には東分署の署長や同僚からも疑いの目を向けられ、停職処分に処せられたローマンは、地方検事局のあるビルへと妻のカレンを伴い出頭する。ここでも誰もローマンの言明には耳を貸さず、弁護士も非協力的で、とうとう地方検事には、司法取引に応じるのは残り1日間だけだと最後通牒を突き付けられてしまう。
八方ふさがりのローマンは、妻のカレンを1階に残して、同じビルの上層階に入る内務調査局にアポ無しで押しかける。
果たしてローマンは、この絶体絶命のピンチをどう切り抜けようとしているのだろうか…?障害年金基金を横領し、相棒のネイサンを殺害した真犯人は誰なのだろうか?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つの観点に絞ってご紹介したいと思います。
結論を急ぐと、この映画は、ドラマであり、サスペンスであり、アクション映画です。総合的にはそれらがバランス良く配されているエンターテイメント映画なので、ハラハラドキドキのスリルを楽しんで観ることを第一義に考えて頂くのが良いと思います。
その中でも背骨となるのは、”交渉人” vs ”交渉人”の構図を2人の名優が支えている点だと思うので、その辺りに重点を置いて書いてみます。いずれにせよネタバレなしで書いていきますので、予習情報として安心して読んだください。
”交渉人” vs. ”交渉人”
この映画の最大の見どころは、上述の「『交渉人』のプロット」にも書いたように、ストーリーの展開が ”交渉人” vs “交渉人” の構図になって行くことだと思います。
そもそも交渉人とは、立て籠もり犯と対峙する事件では、警察官としての現場経験、SWATチームの戦術理解、心理学の知識、巧みな会話術、展開を先読みする勘といった多彩な能力を総動員して職務に当たるエリート職です。ポッと出の誰かが真似できるような仕事ではありません(ということも、この映画で描かれて行きます)。
主人公の交渉人ダニー・ローマン(サミュエル・L・ジャクソン)は、ある意図を持って自身との交渉窓口にクリス・セイビアン(ケヴィン・スペイシー)を指名して、”交渉人” vs “交渉人” の構図を敢えて作り出します。この高度な頭脳戦が繰り広げられる様が実にスリル満点です。これを大いに楽しんで下さい!
サミュエル・L・ジャクソン vs. ケヴィン・スペイシー
この2人の”交渉人”対決を演技面で支えているのが、サミュエル・L・ジャクソンとケヴィン・スペイシーの2人の名優です。
両者が演じるキャラクターは、どちらも高度な知能を有するプロの交渉人という共通点を持ちながらも、同時に、
- 東地区担当 対 西地区担当
- 黒人 対 白人
- より行動派 対 より知能派
という対比の構図をも鮮明にすることで、物語を盛り上げて行きます。ただ、両者とも自身の妻とのネゴには苦心する辺りは、キャラクターに人間味が滲み出て来て、この作品のドラマ性が強まり、アクション性とのバランスを取ってくれます。
2人が相手を言い負かそうと繰り出す会話劇は必見です!
詰まるところバランスが良い
では、この映画はサミュエル・L・ジャクソンとケヴィン・スペイシーの会話劇、心理合戦に終始するかというとそんなこともなくて、そもそも犯人は誰なんだ?誰が信用できるのか?というサスペンス・ストーリーが秀逸ですし、要所要所に登場するSWAT隊のアクションもちゃんと派手ですし、見どころはバランス良く配されています。
詰まるところバランスが良い作品なんですよね。
もっともっと世の中から評価されても良い映画だと思うんだよなぁ…
まとめ
いかがでしたか?
この骨太のエンタメ作品の魅力を、なるべく簡潔に書いたつもりです。皆さんがこの映画をより味わい深く鑑賞するお手伝いが出来ると嬉しいです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 3.5 | 手放しでおススメできるエンタメ作です! |
個人的推し | 4.0 | もっと愛されて欲しいという感情移入あり |
企画 | 4.0 | 交渉人 vs 交渉人という構図の秀逸性 |
監督 | 3.5 | バランスの良い演出! |
脚本 | 3.5 | 初見では相当ハラハラするストーリー |
演技 | 4.0 | 主人公2人の演技は見もの! |
効果 | 3.0 | 何に5,000万ドルの予算を使ったんだろう |
このような☆の評価にさせて貰いました。
唯一の難点は、5,000万ドルの予算を使った感じがあんまりしないことでしょうか?(主演2人のギャラ?)
それ以外は、サスペンスのストーリーも面白い、アクションもそれなりに迫力があるし、演技も見ものだし、総合的に戦闘力が高い作品だと思います。サミュエル・L・ジャクソンとケヴィン・スペイシーの演技をキッチリ引き出した監督が素晴らしいです!