話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】配信開始「バビロン」(あらすじ、キャストのモデルは?実話?)

この記事でご紹介する「バビロン」は、往年のハリウッドの内情を情緒たっぷりに描いた2022年のドラマ映画。1920年代のハリウッドの無反省で狂喜乱舞な舞台裏。そして、1930年に掛けてのサイレントからトーキーへと映画フォーマットが激変する様子。こうした時代の移り変わり、一時代の終焉を、「セッション」、「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼルが大胆に映像化した問題作。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

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興行成績的には大爆死になったこの作品。しかし、ハッキリ言って面白い!映画そのものへの愛情と、映画史に貢献してきた先人たちへのリスペクトが大いに感じられ、何より主要登場人物達が運命の荒波に翻弄されていく姿が丁寧に描かれていきます。このチャゼル・ワールド全開の衝撃作の世界を一緒に覗いてみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から31分40秒のタイミングをご提案します。
31分40秒

ここまでご覧になると、この映画のテイストが分かります。ただし、正直好き嫌いがハッキリ分かれると思います。それと同時に、如何にこの映画が丁寧に手間暇かけて制作されているかもご確認いただけると思います。その辺りも踏まえて、最初の30分をまずはお試しでご覧になってみるのはいかがでしょうか?

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「バビロン」(原題:Babylon) は、2022年公開のドラマ映画。ディエゴ・カルバ扮するメキシコ移民2世の目線を通して、白人男性映画スター、女性セックス・シンボル、黒人ジャズ・トランペット奏者、エキゾチックな中国人女性歌手らが、サイレントからトーキーへと大転換を遂げるハリウッドの映画制作の舞台裏で、どんな騒動に翻弄されていくかを情感たっぷりに描いた作品。

脚本、監督は、「セッション」(2014年)、「ラ・ラ・ランド」(2016年) でも脚本・監督を務めたデイミアン・チャゼル。チャゼルが、こうしたヒット作の実績を積み上げた後、長年温めてきた構想を遂に映画化したのが本作となる。

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それは確かに何年もの間、「背後で沸騰している」、または「後回しにされている」プロジェクトの一つでした。それは私が登ろうとして自分を奮い立たせても、ただただ決心が付かない山のように感じました。空白のページを見つめる多くの日々、最初の壁をなかなか乗り越えられないと感じてました。

Damien Chazelle Interview: Babylon: https://screenrant.com/babylon-damien-chazelle-interview/

チャゼルは、1920年代中盤の、サイレントと呼ばれる無声映画で黄金期を謳歌していたハリウッドが、1927年の「ジャズ・シンガー」公開を皮切りに、一気にトーキー(有声映画)へと映画フォーマットが置き換わって行く激動の様子を映像化した。

ただしそれは、時代をマクロに捉える記録映画の体を取るのではなく、時代に翻弄される何人かの特定のキャラクターの、ごくごく個人的な物語を通して、その変革期を丁寧に描写していくという形態を取っている。

その個人的なキャラクターとは、サイレント時代最高の白人映画スター(ブラッド・ピット)であったり、サイレント時代末期に突如としてセックス・シンボルに上り詰める白人女優(マーゴット・ロビー)であったり、映画の世界で何とか身を立てたいと熱望するメキシコ移民2世の青年(ディエゴ・カルバ)であったりと、全ては個人的な事情として丹念に描かれて行くのが特徴だ。

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チャゼルは、この黄金期の映画や映画制作者へのリスペクトを存分に込めつつ、時代の大きな移り変わりを縦糸にして、そこに登場人物達の複数のストーリーを横糸として絡めて行く構成でこの作品を成立させている。

時代背景

映画は1926年から始まる。この時代のアメリカは、1929年に始まる世界恐慌の前夜であり、ハリウッドに限らずアメリカ社会は、良く言えば繁栄を謳歌していた時代、悪く言えば無反省にバカ騒ぎをしていた時代である。この辺りの時代の空気感は、映画「華麗なるギャッツビー」(1974年:ロバート・レッドフォード主演、2013年:レオナルド・ディカプリオ主演)でも象徴的に描かれている。

特に映画産業は、現在のようなサブスク・サービスや YouTube も無ければ、ケーブル・テレビもレンタル・ビデオも無いこの時代において、大衆娯楽の王様として黄金期を迎えていた。その富が集まる映画の都ハリウッドにおいては、映画制作者やスターが、その大豪邸で連日のように酒池肉林の大騒ぎを繰り返していたというのが、本作のスタート地点となっている。

そして、映画は1927年の「ジャズ・シンガー」の大ヒットを皮切りに、フォーマットが一気にサイレントからトーキーへと置き換わって行く。そうなれば当然、必要となる撮影・録音技法も変わるし、演者に求められる演技も変わる、そして何より、映画そのものに大衆が求める幻想も移り変わって行く。この価値観の大転換に、対応できる者も居れば、対応出来ない者も・・・となるのが、当然の理(ことわり)となる。

個人的物語を紡ぎ出す主要キャスト

マニー・トレス – ディエゴ・カルバ

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物語は、メキシコ移民2世のこのマニー青年の目線を通して進んで行く。映画業界に憧れ、幸運もあって映画の世界に飛び込む。立身出世を目指すこの青年の物語を軸に、様々な人間模様が描かれて行く。

ジャック・コンラッド – ブラッド・ピット

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サイレント時代の最大の男性映画スター。ブラッド・ピットが、ジャック・コンラッドというキャラクターのカリスマ性を存分に体現している。

このキャラクターのモデルは、実在したジョン・ギルバートだと言われ、ギルバート自体はトーキーには対応することが出来なかった。若くして心臓発作で死んだのは失意によるものとも言われている。

ネリー・ラロイ – マーゴット・ロビー

サイレント時代末期に彗星の如く現れ、一躍時代のセックス・シンボルに上り詰める女性スター、ネリー・ラロイを、マーゴット・ロビーが大胆に演じていく。

このキャラクターのモデルは、実在したクララ・ボウだと言われている。複雑な家庭環境で育ち、その後母親は精神病院に収容される。出演したお色気映画からチャンスをつかみ、一気に人気女優に上り詰めるといった半生だったと伝えられる。果たして、ネリー・ラロイの場合はどうであろうか?

レディ・フェイ・ジュ― – リー・ジュン・リー

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中国系のミステリアスな女性。サイレント映画において、撮影された動画と動画の間に挿入される字幕の制作者。同時に魅惑的な歌手でもある。

このキャラクターのモデルは、実在した中国系アメリカ人女優アンナ・メイ・ウォンだと言われる。ハリウッドで人気を集めたウォンは、後にヨーロッパに移住したが、レディ・フェイ・ジュ―の場合はどうであろうか?

シドニー・パーマー – ジョヴァン・アデポ

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映画がサイレントからトーキーになり、音楽が一気にフィーチャーされるようになる。そんな中ジャズ・トランペット奏者として人気を博すのが、ジョヴァン・アデポ扮するこのシドニー・パーマーだ。

このキャラクターには特定のモデルが存在する訳ではないが、当時このパーマーと同じ境遇を体験したジャズ奏者は大勢存在し、このシドニー・パーマーはその総体として具現化されたと考えられる。

興行的な失敗

この映画は、上映時間185分という事実からも分かるように、長編大作である。製作費は8千万ドル近くが費やされたと言われている。ところが、世界興行収入は6千3百万ドル程度と言われていて、興行的に断じると製作費すら回収できない大失敗作である。

通常映画は、製作費の他に、配給と広告宣伝に費やされる P&A (Printing & Advertising) 費が必要になる。これは、ざっくり製作費と同等程度の額が必要だと考えられるため、映画は製作費の2倍売り上げて初めて損益分岐点を越えることになる。

本作品では、1倍すら回収できていない訳なので、大赤字、大爆死である。高い芸術性に比して興行的には失敗した大問題作とも言える。

あらすじ (31分40秒の時点まで)

1926年のロサンゼルス。メキシコ移民2世の青年マニー・トレス(ディエゴ・カルバ)は、キネスコープ社の重役ドン・ワラックの屋敷で働く使用人であった。黄金期を謳歌しているハリウッドでは、映画で財を成した富豪たちの邸宅で、連夜のように乱痴気パーティーが繰り広げられていた。

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マニーが今日主人のワラックに命じられたのは、パーティーに生きた象を連れてくること。この言いつけを守るために、マニーはとんでもない苦心をする。

こうしたセレブ達のパーティーには、何とかコネを見つけて招待されようとする者や、何とか警備の目をかいくぐって潜り込もうとする者が少なくなく、今夜も駆け出し中の新人女優ネリー・ラロイ(マーゴット・ロビー)が、邸宅に侵入しようとして警備員と諍いを起こしていた。マニーが使用人の特権を使ってネリーを邸宅に招き入れると、ネリーは存分にこの酒池肉林のパーティーを謳歌する。

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パーティーでは、中国人女性歌手レディ・フェイ・ジュ― (リー・ジュン・リー)がパフォーマンスを披露したり、黒人トランペット奏者シドニー・パーマー(ジョヴァン・アデポ)が属するジャス・バンドその腕前を披露する一幕もあり、大いに盛り上がる。

マニー(ディエゴ・カルバ)とネリー(マーゴット・ロビー)は、パーティーの合間に、将来は映画の世界で身を立てたいとお互いの夢を語り合い、意気投合して友達となる。

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マニーは、映画業界で職を得る具体的な手立てとして、キネスコープ社の重役である主人のドン・ワラックに、同社で何か職が無いかと直談判するが、ワラックに冷たくあしらわれてしまう。一方ホールで踊りまくっていたネリーは、そのワラックに気に入られ、パーティー中にドラックの過剰摂取で倒れた女優の代役として、翌日の撮影に抜擢されることになった。

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こうして運が開け始め、明け方の大邸宅の前で大はしゃぎするネリーと、まだまだキャリア開拓は一筋縄では行かなさそうなマニー。果たして、二人の運命はどうなっていくのだろうか?また映画業界にはこれからどんな風が吹いて行くのだろうか?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころを、4つの観点に絞ってご紹介したいと思います。ネタバレは含みませんので、安心してご覧ください。

圧倒的な映像美

デイミアン・チャゼル監督がこだわり抜いたと思われる映像美が、とにかく圧巻です。圧倒的です。

「あらすじ」を述べた冒頭の30分間に出て来るパーティー・シーンがその最たる例です。映画の舞台が1920年代ということもあり、アメリカがもっとも無反省に繁栄を謳歌していた時代に、富が集中していたハリウッドの権力者が催したパーティー。

人々が悦楽に興じる様子は、豪華絢爛を飛び越して、酒池肉林の映像として描かれます。計算し尽くされた構図、何度もリハーサルを重ねたと思しき緻密なシーケンス。そして細心の注意を払って施された編集により、ずーーーっとロングショットを観ているような錯覚を覚え、我々もこのパーティーの乱痴気騒ぎに身を置いているかのような没入感があります。

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そうかと思えば、大人数のエキストラを投入した兵隊たちの戦闘シーン(の撮影シーン)や、夕陽を背景にしたラブシーンなど、かくも映画とは美しきもの也という主張をこれでもかと見せつけてきます。

チャゼル監督の映画に対する想いを、是非その目でご確認ください。

ブラッド・ピットのカリスマ的存在感

ブラッド・ピットのカリスマ的存在感がヤバいです。

出演料の多寡や、名前がクレジットされる順番の議論を脇に避けておけば、この映画の主人公はディエゴ・カルバ扮するマニー・トレスだと思うんです。だって、物語は彼を軸にして、彼の目線で描かれて行くんですから。

決して世界的な知名度があるとは言えないこの俳優を中心に据えなお、この映画が成立するのは、彼を取り巻くキャラクターたちが、シッカリとした柱となってそれぞれが個性的な磁場を作っているからだと思うんですよね。そして、その最たる例がジャック・コンラッドというサイレント時代の映画スターに扮するブラット・ピットだと思うんです。

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特に、脚本も担当したデイミアン・チャゼル監督が、この映画を通じて発したかったんだろうなというメッセージは、ことごとくこのジャック・コンラッドのセリフとして言語化されている気がしますので、彼の一挙手一投足に注目です!

マーゴット・ロビーの悪魔的バランス感覚

マーゴット・ロビーが、ネリー・ラロイという大胆な女優を演じます。一躍セックス・シンボルとしてスターダムを駆け上がるこのキャラクターは、今度はその四方八方にまき散らされるその奔放な魅力が足枷となって、女優としてのキャリアップに苦労して行きます。

ただ、これがまんま下品な女性像として描写されてしまうと、我々観客はこのキャラクターに共感することが出来なくなると思うんですが、マーゴット・ロビーが絶妙なラインで役作りをしてくれているんでしょうね。性的アピールは存分に発しながらも、時に寂し気で、時に臆病で、往々にして大胆で、夢に向かって邁進するという、表情をクルクルと変えるこのアイコンに、我々は主人公と一緒に振り回されまくることになります。

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これは悪魔と契約するようなものです。一緒にこのジェットコースターに乗ってみてください!

個人的事情を束ねると歴史の目撃者となる

再三述べてきましたが、この映画は1920年代から1930年代にかけての、サイレントからトーキーへの激動の転換期を舞台としています。

これを「映画史」としてマクロに描いてしまうと、それは単なる歴史的な事実の羅列になってしまうし、我々もその成長痛を感じることが出来ないと思うんですよね。

この映画の凄いところは、この時代の変化を全て、主要登場人物達の「個人的な事情」として描いているところだと思うんです。全てが誰かの半径5メートルぐらいで起きた出来事の連続、積み重ねとして描かれて行くので、我々はその体温とか息遣いをずーーーっと感じながら、この映画を鑑賞することになります。

少々息苦しくもあるし、観ていて疲れますが、喜びも哀しみも、誇らしさも痛みも、共感と共に我が事のように感じながら、激動の数年間をキャラクターたちと共に過ごすこの擬似体験は、私たちが歴史の目撃者、生き証人なんだと錯覚させられるのに十分な臨場感があります。

これはチャゼル監督の手腕以外何物でもなく、この映画の存在意義であり、最大の魅力だと思うんですよね。

まとめ

いかがでしたか?

高い芸術性を持ちながら、興行的には大爆死したこの大問題作の魅力を、ネタバレなしでお伝えしてきました。初見だという方が、より味わい深く本作を鑑賞するお手伝いが出来ていると嬉しいです。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 3.5 R15+ ですが、性描写がちょっとキツイかも
個人的推し 4.5 21世紀のニュー・シネマ・パラダイスだと思う
企画 4.5 この時代を描いた勇気に乾杯!
監督 4.0 映像美が凄い!
脚本 3.5 さすがに長い
演技 4.0 ブラピとマーゴット・ロビー!!以上!
効果 4.5 圧倒的な映像美、音楽、そして衣装!
こんな感じの☆にさせて貰いました

このような☆の評価にさせて貰いました。

「ニュー・シネマ・パラダイス」が、20世紀を代表する”映画賛歌”だとしたら、この「バビロン」は21世紀を代表する映画賛歌になって欲しいと期待しています。

映画への愛情、先人たちへのリスペクト、そして哀愁・・・ 「ニュー・シネマ・パラダイス」へのオマージュと思しき演出も絡めながらも、「映画がとにかく好き!」という声が鳴り響いてきます。

性描写がちょっとキツイのが、好き嫌いを凄く分けてしまいそうなキライはあるものの、映画ファンは一度はご覧になって頂きたい秀作です。時を経ると共に、きっと評価が見直されて行くことになる作品だと思います。

あわわっち

観終わった時に胸に残る物があるんですよね。こんなの「ラ・ラ・ランド」以来だなって思いました・・・あっ!!

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