この記事でご紹介する「バックドラフト」は、1991年公開の映画。火災現場での消防士たちの活躍を下敷きにしているが、知能犯による連続放火事件を追うサスペンスが折り重なっている作品。
公開当時、ストーリーの面白さに加え、火災現場のリアリティ、特に炎の描写のクオリティが話題を呼び、世界中で大ヒットを記録した。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
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後にUniversal Studioのアトラクションにもなった本作。アクションシーンの迫力のみならず、豪華俳優陣競演の一級のドラマ作品に仕上がっている本作。名匠ロン・ハワード監督に手腕にも触れつつ、この大ヒット作の予習を一緒にしてみませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から22分00秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧になると、この映画の世界観が大枠掴めている頃だと思います。そして、主要な登場人物の関係性もほぼ一通り触れられるので、この後物語が転がり始める準備が整うと思います。
この先もご覧になるか判断する最短のポイントとしてご提案します。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「バックドラフト」(原題:Backdraft) は、1991年公開の消防士の活躍を描いた映画。パッと見は、主人公のイケメン兄弟を軸に、消防隊の火災現場での活躍をリアルに描くアクション映画に思われがちだが、実際はストーリーに知能犯による連続放火事件が複雑に絡み、その犯人の正体と動機を追う、十分怖いスリラー作品に仕上がっている。
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主人公兄弟を演じた2人
主人公兄弟の兄スティーブンをカート・ラッセルが、弟ブライアンをウィリアム・ボールドウィンが演じている。
カート・ラッセルは、後年のアクが強いイメージとは違って、この1990年前後は「デッドフォール」(1989年) 、本作「バックドラフト」(1991年)、「不法侵入」(1992年) 、「スターゲイト」(1994年) 、「エグゼクティブ・ディシジョン」(1996年) と、割と正統派イケメン主人公ポジションで映画に出演していた。
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ウィリアム・ボールドウィンは、ボールドウィン四兄弟の三男坊。この1990年前後は、その甘いマスクを武器に(ぶっちゃけエロ・キャラで)「フラットライナーズ」(1990年) 、本作「バックドラフト」(1991年) 、「硝子の塔」(1993年) 、「フェア・ゲーム」(1995年) 等に出演して活躍していた。
そういう意味では、当時乗りに乗っていた俳優2人を主演に据える配役になっている。
ロン・ハワード監督
監督を務めたのはロン・ハワード。撮影時36歳。
元々は、ジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティ」(1973年) で俳優デビューを飾ったロン・ハワードであったが、1977年に「バニシングIN TURBO」で監督デビューを飾ってからは、監督業に完全に活動の軸足をシフト。
本作「バックドラフト」(1991年) は、監督9作目の作品であり、「コクーン」(1985年) と合わせて監督キャリア2本目のヒット作であった。
公開年 | 邦題 | 原題 |
1977年 | バニシングIN TURBO | Grand Theft Auto |
1982年 | ラブ IN ニューヨーク | Night Shift |
1984年 | スプラッシュ | Splash |
1985年 | コクーン | Cocoon |
1986年 | ガン・ホー | Gung Ho |
1988年 | ウィロー | Willow |
1989年 | バックマン家の人々 | Parenthood |
1991年 | バックドラフト | Backdraft |
1992年 | 遥かなる大地へ | Far and Away |
1994年 | ザ・ペーパー | The Paper |
1995年 | アポロ13 | Apollo 13 |
1996年 | 身代金 | Ransom |
1998年 | エドtv | Edtv |
2000年 | グリンチ | How the Grinch Stole Christmas |
2001年 | ビューティフル・マインド | A Beautiful Mind |
2003年 | ミッシング | The Missing |
2005年 | シンデレラマン | Cinderella Man |
2006年 | ダ・ヴィンチ・コード | The Da Vinci Code |
2008年 | フロスト×ニクソン | Frost/Nixon |
2009年 | 天使と悪魔 | Angels & Demons |
2011年 | 僕が結婚を決めたワケ | The Dilemma |
2013年 | ラッシュ/プライドと友情 | Rush |
2013年 | メイド・イン・アメリカ | Made in America |
2015年 | 白鯨との闘い | In the Heart of the Sea |
2016年 | ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK – The Touring Years | The Beatles: Eight Days a Week |
2016年 | インフェルノ | Inferno |
2018年 | ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー | Solo: A Star Wars Story |
2019年 | パヴァロッティ 太陽のテノール | PAVAROTTI |
2020年 | ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 | Hillbilly Elegy |
2022年 | 13人の命 | Thirteen Lives |
本作(1991年)以降も、「アポロ13」(1995年) の大ヒットや、「ビューティフル・マインド」(2001年) でのアカデミー監督賞の受賞、「ダ・ヴィンチ・コード」(2006年) シリーズと、現在も現役を続ける売れっ子監督である。
バックドラフト現象
本作のタイトルにもなっている”バックドラフト”とは、化学現象のことである。
火災現場などに密閉空間があると、やがてその空間の中は酸素が不足して燃焼反応が止まる(=不完全燃焼になった火の勢いが衰える)。しかし、それは決して安定状態へと遷移した訳ではなく、不完全燃焼で生成された一酸化炭素が高温の状態で充満しているので、その密閉空間は非常に不安定な状態となる。
この密閉空間に、何らかの要因で一気に酸素が流入すると、内部の高温状態の一酸化炭素と結びついて爆発反応を起こす(二酸化炭素が生成される)。これをバックドラフト現象と呼ぶ。
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劇中では、知能的な放火犯によって、火災現場にバックドラフト現象を引き起こす部屋が仕立て上げられており、その動機がストーリーの焦点となっていく。
キャスト
本作のキャストは下の表の通り。
正直、同僚消防士は名前が分からなくてもストーリーは終えるので、下表の上から9人を把握しておけば良いと思う。
役名 | 俳優 | 役柄 |
スティーブン・マカフレイ | カート・ラッセル | 消防士。ブライアンの兄。17分隊の隊長。父デニス・マカフレイと一人二役 |
ブライアン・マカフレイ | ウィリアム・ボールドウィン | 消防士。スティーブンの弟 |
ドナルド・”シャドー”・リムゲイル | ロバート・デ・ニーロ | 火災の原因を調べる捜査官。元消防士 |
ロナルド・バーテル | ドナルド・サザーランド | 服役中の囚人 |
ジェニファー・”ジェニー”・ヴァイトクス | ジェニファー・ジェイソン・リー | 市議会議員スウェイザックの秘書 |
ジョン・アドコックス | スコット・グレン | 古参の同僚消防士。亡き父デニスとも同僚 |
ヘレン・マカフレイ | レベッカ・デモーネイ | スティーブンの妻 |
ティム・クリズミンスキー | ジェイソン・ゲドリック | 消防士。ブライアンと訓練校で同期 |
マーティン・スウェイザック | J・T・ウォルシュ | 市議会議員。市内の消防署の合理化推進派 |
グリンドル | セドリック・ヤング | 同僚消防士 |
レイ・サントス | ファン・ラミレス | 同僚消防士 |
ナイチンゲール | ケヴィン・ケイシー | 同僚消防士 |
シュミット | ジャック・マクギー | 同僚消防士 |
ペングリー | マーク・ウィーラー | 同僚消防士 |
ワシントン | リチャー・レキシー | 同僚消防士 |
評価
Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、要約すると ”本作は取り立てて深遠な内容ではないが、特別な視覚効果と強力なアクションにより、際立った作品となっている” と評価されており、73%の支持を得ている(Rotten Tomatoesでは60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』という評価)。
優れたアクション映画である!ということで良いのではないだろうか。
商業的成果
この映画の上映時間は137分。標準より長めである。製作費は7千5百万ドルで、世界興行収入は1億5千2百万ドルのヒットを記録した。2.02倍のリターンである。
配給会社は、もっと大きなリターンを期待したのかもしれないが、”バックドラフト”が後にUniversal Studioのアトラクションになったことなどに鑑みると、十分アイコン的な作品になった映画なのではないだろうか。
あらすじ (22分00秒の時点まで)
1971年、シカゴ消防局の第17分署。
デニス・マカフレイ(カート・ラッセル)率いるこの消防隊は、今日も緊急出動の指令を受けて火災現場へと出動して行く。デニスにはスティーブンとブライアンという2人の息子がいるが、デニスは今日は次男坊のブライアンを伴って現場へと急行する。
到着した火災現場は、古いアパートにボヤが出た程度に見え、消火活動は早々に終わるかに見えた。しかしその時、沈下し切れていなかった火がガス管に引火し、大爆発が発生して、デニスは同僚のジョン(スコット・グレン)を庇ったこともあり、ブライアンの目の前で殉職してしまう。
20年後、立派な大人に成長したブライアン(ウィリアム・ボールドウィン)。これまでどんな職も長続きしなかった彼だが、今度こそはと心を入れ替え、無事消防士訓練校を卒業していた。
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ブライアンや同期たちが、バーで卒業を祝っていると、その近所の民家で火災が発生する。
その火事で家屋は全焼したものの、消防隊により火は無事に消火。しかし、その火災には不審な形跡も散見され、リムゲイル捜査官(ロバート・デ・ニーロ)が火災現場を慎重に検分する。
そして、ブライアン(ウィリアム・ボールドウィン)は兄のスティーブン(カート・ラッセル)が隊長を務める17分署へと配属されたことが判明する。弟をいつまでも半人前扱いする兄スティーブン(カート・ラッセル)と、兄からの自立を証明したい弟ブライアン(ウィリアム・ボールドウィン)は、反発し合うようになる。
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そんな折に、今度は17分署管轄下の古い縫製工場で火事が発生する。スティーブン(カート・ラッセル)、ブライアン(ウィリアム・ボールドウィン)、そして未だ現役のジョン(スコット・グレン)を含む分隊は縫製工場へと出動して行く。
そんな中、市議会議員のスウェイザックは、財政削減の一環で、市内の消防署員の人員削減を強行に推進していく…
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つの観点に絞って書いてみたいと思います。
結論めいたことを先に書くと、本作はエンタメ作品なので、細かいことを気にせずにどう楽しむべきか?という主旨で書いてみたいと思います。
ネタバレなしで書いていますので、安心してお読みください!
炎の描写
この映画の何が凄いって、とにかく炎の描写が凄いことが一番の見どころです。
これは、単に大掛かりなだけではなくて、炎が生き物のように動く様が作品のスリルを何倍にも増幅します。
というのも、この物語の世界観として、”火は生きている”という哲学が根底にあります。火は生きていて、呼吸して、物を食べ、そして人に襲い掛かる。だから、火を侮るな。でも、火を少しだけ愛せ、そうして火の動きを読めという話に繋がって行きます。
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その哲学を納得させるだけの説得力が、火を描いた映像に現れています。是非期待してご覧ください!
脇を固めるオジサン3人の怪演
この映画の主人公は、マカフレイ兄弟を演じたカート・ラッセルとウィリアム・ボールドウィンの2人ですが、まあこの2人の演技は、普通に良い演技だと思います。
ここで取り上げたいのは、オジサン3人の出色の演技です。
1人目は、ドナルド・サザーランド。どんなキャラクターで登場するでしょうか!
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2人目は、スコット・グレン。兄弟の17分署の同僚消防士ジョン・アドコックスとして登場しますが、兄弟の死んだ父親とも同僚だったほどの古参の消防士です。どんな味を出してくれるでしょうか?
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そして3人目は、ロバート・デ・ニーロ。ドナルド・リムゲイル捜査官、通称”シャドー”として登場します。この映画のサスペンスの側面をこの捜査官が担う感じです。安定の熱演なので、こちらもご注目です。
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ロン・ハワード監督のバランス感覚
ちょっと矛盾したことを言うようなんですが、この作品若干粗が目立つというかツッコミどころも多いんですね。ストーリーがやや雑って言うか…
でも、アクション映画であり、映像の特殊効果あり、ドラマあり、サスペンスありで、結局総合的に見ると凄くバランスが良いんですよね。
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これってロン・ハワード監督のバランス感覚の良さなんじゃないかと思うんです。多少の欠点には目をつむって、エンタメ作品として楽しめるのがこの生が最大の見どころかも知れません。
今思うと1990年代の映画ってこんな感じでしたよね…(笑)
まとめ
いかがでしたか?
消防士の活躍を描くという珍しい作品であり、ドラマ、サスペンス、そして驚くような炎の特殊映像ありで、エンタメ作品としての見どころをお伝えしたつもりです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 3.5 | 一度は観て欲しい! |
個人的推し | 3.5 | 粗はあるけど十分楽しい |
企画 | 4.0 | 消防士を題材に炎との対決 |
監督 | 4.0 | 抜群のバランス感覚 |
脚本 | 3.0 | ツッコミどころ満載(笑) |
演技 | 3.0 | 主役2人の演技が・・・ |
効果 | 4.5 | 炎の映像は圧巻! |
このような☆の評価にさせて貰いました。
脚本と主役2人の演技はちょっと・・・ですが、総合的戦闘力は高い作品だと思います!Universal Studioのアトラクションになったぐらいの時代を象徴する作品なので、是非一度はご覧になることをおススメします!
炎の描写とオジサン3人の演技は凄いですから!