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【ネタバレなし】雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(あらすじ、キャスト、意味)

この記事でご紹介する「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」は2015年公開のドラマ映画。交通事故で妻を亡くした優秀なビジネスマンが、その死を素直に悲しめない自分の心に気付き、得も言われぬ気持ちから奇行を繰り返すようになるという物語。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

興行成績も芳しくなく、批評家からの評価も今一つの本作。しかし、観る側が自由に解釈して、自由に思いを馳せる余白が大いに残されている、大変味わい深い一作です。ご自身は何を感じるでしょうか?この記事で少しだけその世界に足を踏み入れてみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から23分30秒のタイミングをご提案します。
23分30秒

ここまでご覧になると、この作品のテーストとテンポが掴めると思います。そして、主人公の元の生活ぶり(仕事、両親、義両親との関係)と、そこで何が起きたか?の端緒が見えるので、本作品が好きか嫌いかをご判断できると思います。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」(原題:Demolition) は、2015年公開のドラマ映画。監督は、「ダラス・バイヤーズ・クラブ」(2013年) を監督したジャン=マルク・ヴァレ(本作では他の5名との連名で製作も務めている)。ヴァレ監督は2021年に急逝したため、本作が遺作になる(享年58歳)。

主演のジェイク・ジレンホールが扮するのは、妻を交通事故で亡くす優秀なビジネスマン。劇中では、妻の死を素直に悲しめていない自分に気付いて心のバランスを崩し、奇行を繰り返すようになる男を好演している。

ジェイク・ジレンホールは俳優としてこの時期、「ミッション: 8ミニッツ」(2011年) 、「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年) 、「プリズナーズ」(2013年) 、「複製された男」(2013年) 、「ナイトクローラー」(2014年) と、サスペンス色が非常に強い作品に立て続けに出演してきた。

そこでキャリアのバランスを取ろうと考えたのだろうか、2015年はヒューマンドラマ系に積極的に出演しており、本作もその一本。孤独な男の心情を丁寧に描写して行く演技を見せている。

原題 ”Demolition” の意味

原題の ”Demolition” とは英語で ”解体” という意味である。劇中でジェイク・ジレンホールが演じる主人公は、妻の突然の死後、執拗に物を解体する欲求にとりつかれてしまう。そして、実際に生活や仕事に支障を来すほど、身の回りの物の ”解体” を繰り返す様が描かれる。タイトルはこの事象を指している物と思われる。

日本の配給会社が、”Demolition = 解体” だけではピンと来ないと判断したのか、「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」という邦題をひねり出した訳だが、その言葉の意味はここでは述べない。本編を観てのお楽しみ。

興行的結果

この映画の上映時間は101分と標準より短めの作品である。ただし、主人公目線の描写が淡々と続くので、体感的には短いとは感じないかも知れない。製作費は1千万ドル。しかし、世界興行収入は4百万ドル強にとどまり、製作費すら取り返せていない興行大爆死を起こした。

世界興行収入が製作費を割り込む結果

この影響もあるのか、ジャン=マルク・ヴァレ監督は、本作以降亡くなる2021年まで、映画の監督はしておらず、テレビドラマでしかメガホンを取っていない。

評価

この映画に対する批評家からの評価は賛否両論分かれるものになっていて、Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)の支持も52%にとどまっている(Rotten Tomatoesの評価は60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』)。

その根拠を筆者なりに整理すると、この映画は、ステレオタイプ的な反応を示す多くの人たちに紛れて、繊細で複雑な心情を持つ登場人物が何人か現れ、そんな彼らが戸惑いながらも交錯するストーリーになっている。俳優たちはそこで高い演技力を発揮したが、(監督が)物語を深遠に描こうとした結果、描き切れていない箇所が多く消化不良に終わっている、ということなんだと思う(かなり意訳しています)。

余白の多い物語を楽しめるか?がこの作品に対する好き嫌いを分けるポイントになりそうである。

キャスト

一見すると登場人物が多いように感じるストーリーだが、主要な登場人物数名とその家族(含む同居人)が関わり合う物語だと思えばスッキリすると思う。

役名 俳優 役柄
デイヴィス・ミッチェル ジェイク・ジレンホール 義父の会社に勤める優秀なビジネスマン。交通事故で妻を亡くす
ジュリア ヘザー・リンド デイヴィスの妻。交通事故で亡くなる
フィル・イーストウッド クリス・クーパー ジュリアの父親で、デイヴィスの雇用主
マーゴット・イーストウッド ポリー・ドレイパー ジュリアの母親
カレン・モレノ ナオミ・ワッツ 自販機の顧客窓口担当。デイヴィスに共感する
クリス・モレノ ジュダ・ルイス カレンの息子
カール C・J・ウィルソン カレンの恋人で雇用主
デイヴィスの父親 マラキー・クリーリー デイヴィスの父親
デイヴィスの母親 デブラ・モンク デイヴィスの母親
「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」キャスト

あらすじ (23分30秒の時点まで)

デイヴィス(ジェイク・ジレンホール)は妻ジュリア(ヘザー・リンド)と結婚して数年。子供はいない。表面上は夫婦仲は悪くなかったが、お互いへの興味は薄れ始めており、会話が疎かになる機会も増えてきた。ジュリアに頼まれた冷蔵庫の水漏れの修理も、頼まれたことすら覚えていない始末で、もう2週間も放置してしまっていた。

デイヴィスの勤務先は、ジュリアの父フィル(クリス・クーパー)が経営する投資銀行で、デイヴィスの働きぶりが優れていたこともあり、デイヴィスは社内で要職を与えられ、夫婦は若くしてとても裕福な暮らしを送っている。

そんなある日、ジュリアが運転し、デイヴィスが助手席に乗る車が、市街地へと向かう途中で交通事故に遭い、2人は病院に救急搬送される。デイヴィスはほぼ無傷で済んだが、ジュリアは救急救命措置の甲斐も無く亡くなる。

デイヴィスが、突然の事故と妻の死のショック状態から抜け出せないまま、病院内の自販機でお菓子を買おうとすると、機械の不具合により、小銭だけを取られてお菓子は出てこない。近くに居たナースにこのことを申告したが、自販機の運営は専門業者に完全にアウトソースされており、病院側は全く取り合ってくれない。

後日、ジュリアの立派な葬儀が執り行われた。憔悴し切ったジュリアの両親や、自身の心配をする自分の両親をよそに、デイヴィスはどうしても悲しい気持ちになれない。頭をよぎったのは、先般の自販機に対する不満のみ。そこで、件の自販機を運営するチャンピオン社の顧客窓口宛に、苦情の手紙を書くことにした。

ところが一旦手紙を書き始めると、筆が止まらなくなってしまう。最初は不具合発生時の詳報のつもりが、その直前に妻が交通事故で亡くなったこと、自身の勤務先や業務内容、仕事に対する虚無感、そして、妻との馴れ初めから結婚生活、義父との関係性など、ついにはそんなことまで書き綴って投函した。

ジュリアの死を悲しめないデイヴィスは、早々に日常を取り戻し、周囲が驚くほど早期に仕事に復帰した。しかし、ジュリア喪失の哀しみを共有したい義父は、今まで以上に距離を詰めて来て共感を求めるし、自身の家に滞在し続けている実の両親は、同情から必要以上に自身の世話を焼こうとする。

そうした周囲の反応を、また手紙にしたためてチャンピオン社の顧客窓口宛に送った。

そんなある朝、通勤途中の電車で、過去5年間ほぼ無視してきた乗客と、初めてまともに世間話をした。しかし軽口を叩いているうちに、自身がジュリアの死で泣けなかった理由は、ジュリアを愛していなかったからであることに気付く。そして、その事実を認識した途端、衝動的に電車の緊急停止レバーを引いてしまう。

その日以来、デイヴィスの世間を見る目が変わる。まず、空港を行き交う人々の荷物の中身が気になるようなる。そして、空港警備の州兵の機関銃、ヘアブラシに付いた抜け毛、道路わきの倒木の根。今まで気にも留めなかったあらゆることが、何かの象徴のように思えて、それらを見過ごせなくなってしまう。

そして、そんな心情をまた、手紙にしたためてチャンピオン社の顧客窓口宛に送った。

そんなデイヴィスを、日中密かに尾行している人物が現れる。

そして、ある晩、デイヴィスは冷蔵庫の水漏れを思い出し、そのまま衝動的に冷蔵庫を解体してしまう。

デイヴィスがバラバラになった元冷蔵庫を眺めていると、午前2時に、チャンピオン社の顧客窓口のカレン・モレノと名乗る女性から携帯に電話が掛かってくる。

果たして、この顧客窓口のカレンの意図は何なのだろうか?デイヴィスは、このカレンの問い掛けにどう応じるのだろうか…?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころを3つの観点に絞って述べてみたいと思います。

ポイントは、この作品が他の映画作品と何が違うのか、どういうところが個性的なのかという論点にしたいと思います。この作品の独特の空気感はどう作られたのか?に考えを巡らせてみたいと思います。

もちろんネタバレなしです。そのため、この映画の序盤に重心を置きます。安心してお読みください。

知的で冷静な狂人

見どころとして、まず注目頂きたいのはジェイク・ジレンホールの演技です。

では、その演技のどの辺りが注目ポイントかと言うと、ズバリ!知的で冷静な狂人ぶりです。

ここまで何度か書きましたが、ジェイク・ジレンホールが演じるデイヴィス・ミッチェルという主人公は、妻の死をキッカケに心のバランスを崩してしまいます。しかしそれは、亡き妻への喪失感に起因するものではなく、妻の死を素直に悲しめない自分に対する混乱によるものです。

この映画の凄いところは、良くあるステレオタイプ的な悲劇のキャラクターではなく、極めて知的で冷静な狂人にデイヴィスを変貌させているところです。そして、その象徴が解体魔への変身です。

そんな冷静なんだけどズレてる、ズレてるんだけど冷静な男を、淡々粛々と演じ切るジェイク・ジレンホールの怪演に是非浸ってください。そして、一緒に混乱しましょう。それがこの作品の正しい楽しみ方なんだと思います。

あわわっち

目が極めて冷静なのにイカれてるんですよね…

挿入される回想シーンによるスタイリッシュな映像

この映画を一行で言い表すならば、”妻を交通事故で亡くした夫の心の混乱を描く物語” となるでしょうか。

では劇中で、その妻はどんなタイミングで亡くなるかと言うと、映画開始2分30秒であっさり死んでしまいます。死んじゃってから「Demolition」という映画のタイトルが画面に表示されるぐらいのスピード決着です。

つまり、この物語は、完全に妻の死を起点にして綴られる訳です。

それで、皆さんに見どころとしてご注目頂きたい点は、その妻が2分30秒以降に全く登場しない訳ではなく、主人公デイヴィスの回想として、サブリミナル的に過去の妻の姿が再三挿入される点です。しかもかなりスタイリッシュに編集されて。

それらは全てデイヴィスの回想なので、デイヴィスの主観としての生前の妻の姿が登場し、序盤はデイヴィスのナレーションも重ね合わされます。併せて、妻の身の回りの存在である妻の両親、特に義父のフィルの記憶も付随します。

更に、この回想は、”よーいドン”で思い出に浸るシーンが準備されている訳ではなく、病院設置の自販機に対する苦情の手紙に溢れ出るように綴られて行きます。

整理するとこういうことです。

映画冒頭で妻が息を引き取った病院に設置されていた自販機。その自販機への苦情の手紙を書き始めて以降、妻や義父との過去の記憶が溢れ出て、それと同時に、これまで蓋をして来た彼らに対する自身の本音も露わになって行く。

そうした心の”解体作業”の過程で、知的で冷静に、でも着実に狂人になっていく主人公の姿を、ステレオタイプ的な描写ではなく、短く切り刻まれた回想シーンの挿入によって、スタイリッシュに紡ぎ上げて行く世界観が、この映画の味わい深いところだと思います。

ジャン=マルク・ヴァレ監督の遺作

この作品の監督を務めたのはジャン=マルク・ヴァレ。ヴァレ監督は、2015年公開の本作品で監督を務めて以来、急逝する2021年まで映画監督は務めていません。すなわち、映画監督という括りで言うと本作が遺作となってしまいました。

「ダラス・バイヤーズ・クラブ」(2013年) で、マシュー・マコノヒーとジャレッド・レトに、それぞれアカデミー主演男優賞と助演男優賞をもたらした名匠は、この「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」でも、独特の世界観を具現化しています。

本作に対する批評家筋からの評価は、個人的にはちょっと過小評価なのではと思っています。何故なら、この作品で一番目に付くのは、怪優ジェイク・ジレンホールの演技ですが、この作品の見どころとしてもう1点挙げたいのは、主要登場人物三人の化学反応だからです。

ネタバレを避けるために多くは述べませんが、妻を亡くした男と、シングル・マザー親子との奇妙な関係性というのは、個々人の俳優力量だけで出来上がるものではなく、監督がどういう空気感を醸成したいかで決定付けられるものだと思うんですよね。

この3人の化学反応も非常に興味深いので、亡き監督への敬意も込めて見どころとして挙げさせてください。

まとめ

いかがでしたか?

見どころについては、ネタバレを避けるために、この映画のほんのさわりの部分にフォーカスを当てて述べました。物語はどんどん深化していきますので、より味わい深くなっていくと思います。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 3.5 賛否両論は分かれると思います。
個人的推し 4.5 個人的にはかなり好きです。
企画 3.0 企画としては何てことない話
監督 4.5 もっと評価されて良いと思う
脚本 4.0 コンパクトにまとまっている
演技 4.0 主要3人の演技が素晴らしい
効果 4.0 映像の美しさ、編集の巧みさ
こんな感じの☆にさせて貰いました

このような☆の評価にさせて貰いました。

正直賛否両論が分かれる作風なので、あらゆる方におススメは出来ないかも知れません。ただし、個人的にはかなり好きな作品です。是非、食わず嫌いをせずに観て頂きたいです。浸ってみて、味わってみて、何を感じたか?ご自身の中に何が残ったか?を問うてみる。そんな楽しみ方をご提案したくなる秀作です。

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