話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】スタローン映画「ランボー」(あらすじ・原作小説情報も)

この記事でご紹介する「ランボー」は、1982年公開のアクション映画。ロッキー・シリーズ以外のヒット作を求めていたシルベスター・スタローンが、文字通り体当たりで”ジョン・ランボー”に挑戦して、結果シリーズ化させるほどの大ヒット。ただし、本作はシリーズ中で唯一、ヴェトナム戦争や、復員兵の置かれた境遇に深く切り込み、アメリカの矛盾を描いた意欲作でもある。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

ランボー・シリーズがスタローンお得意の脳筋映画に模様替えする前の秀作であるこの第一作目。その意義、狙いと言った辺りも踏まえた上で、襟を正してこのアクション映画を鑑賞してみませんか?初見の人も、2回目以降の人も、この映画を真正面から見つめるお手伝いをさせてください。

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から23分10秒の時点をご提案します
23分10秒

ここまでご覧になると、この映画のテースト、主要登場人物のキャラクター、そして事の発端が見える頃だと思います。この辺りで、本作品が好きか嫌いかを判断するのはいかがでしょうか?

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「ランボー」(原題:First Blood) は、1982年公開のアクション映画。ランボー・シリーズの記念すべき第1作目である。特殊部隊(グリーンベレー)の兵士としてベトナムを戦い抜いた孤独な男が、本国帰還後たまたま訪れた田舎町で、地元の保安官から受けた謂れなき”よそ者扱い”に頑固に応じたことが発端となり、遂には町中を巻き込む大戦闘へと発展する物語。

主演は、シルベスター・スタローン。彼は、本作脚本の共著者としてもクレジットされている。スタローンは、1969年映画デビューから不遇の時代が続き、1976年の「ロッキー」のヒットで大スターの仲間入り。しかし、「ナイトホークス」(1981年)、「勝利への脱出」(1981年) 等の意欲作へ出演するも、興行的には成功と言えず、”ロッキー” 俳優の一本足打法から抜け出すために、自ら望んで本作に出演した。

商業的成功

本作は、上映時間97分とかなり短めな部類に入る映画である。製作費は1千5百万ドルで、世界興行収入は1億2千5百万ドルと大ヒットを記録し、実に8.3倍のリターンであった。

リターン8.3倍の大ヒットを記録!

この成功により、続編の制作が決定し、その続編も成功してシリーズ化。シルベスター・スタローンは、本作契約時に目論んだ通り、”ロッキー・バルボア” の他に ”ジョン・ランボー”というハマり役のキャラクターを手にすることになる。

原題 “First Blood” について

まず事実確認。この映画の原題は「First Blood」である。本作が世界で公開された時に、同じ英語圏であっても「Rambo」というタイトルで配給した国と、「First Blood」で配給した国があり、日本は「Rambo」にならい「ランボー」という邦題で公開した。この映画が”ランボー・シリーズ”として認知されるに従い、この第1作目は一般的に「Rambo(ランボー)」で親しまれるようになった。

では、原題の “First Blood” とはどういう意味だったのか?という話であるが、直訳すると”最初に流された血”という意味である。相手に最初に血を流させること、すなわち、相手に最初に身体的ダメージを与えることを英語では”Draw the First Blood” という言い回しをする。

本作品のテーマとして、劇中、田舎町で勃発した戦闘のキッカケを作ったのは、保安官側なのかランボー側なのかというのがストーリー上焦点となる。よって、原題が「First Blood」なのである。

なお、この言葉のニュアンスを良く理解するには、Jon Bon Jovi が西部時代の伝説のガンマン、ビリー・ザ・キッドを歌った ”Blaze of Glory” の歌詞(の一部)を見ると、スッキリ理解できるかも知れない。分かりやすく意訳すると、

Load, I never drew first
But I drew first blood

神様、俺は先(最初)に銃を抜いたことは無いのに、
いつも相手に 先に血を流させることになっちまった

銃をホルスターから”抜く(Draw)”ことと、”Draw” the first Blood を掛けて、ビリー・ザ・キッドが如何に早撃ちだったかを示唆している歌詞だが、Draw the first Blood のニュアンスが伝わるだろうか。

原作ありきの作品

この映画には原作小説が存在する。その名も「First Blood」。1972年に発表されたデヴィッド・マレルによる作品。邦題は「一人だけの軍隊」である。筆者は中学生の時に、隣家の幼馴染にこの日本語翻訳版を借りて読んだと記憶している。

ランボー・シリーズが2作目以降、主人公補正がモリモリに効いて、超人戦闘員が敵をバッタバッタと倒して行く単なる”スタローン映画”に堕落して行く中で、1作目の「ランボー」だけは、原作本の雰囲気を忠実に踏襲していて、非常に意義深いと思っている。「一人だけの軍隊」という邦題も、言い得て妙だと思う。

この小説は、ベトナム戦争開戦時(1964年)と小説が発表された頃(1972年)では、ベトナム戦争に対するアメリカ国民の感情が全く異なり、1970年代のヴェトナム厭戦の社会情勢が下敷きとなっている。それに伴い、国の為に命を賭して戦ったベトナム帰還兵も国内では冷遇されてしまう様子がつぶさに描かれている。

状況を概観すると、Blood を結局 Draw されたのは、ヴェトナムだったのか、アメリカだったのか、そんな大きな問題提起も”First Blood” というタイトルには込められているように思う。

あらすじ (23分10秒の時点まで)

舞台は1982年12月のワシントン州。ヴェトナム復員兵のジョン・ランボー(シルベスター・スタローン)は、本国帰還後の生活が上手く行っていないこともあり、久々にヴェトナム時代の戦友の家を訪ねてみる。しかし、その戦友は戦中の化学兵器の影響で前年ガンで死去していた。おまけに残された戦友の母親からも露骨に冷たいを対応をされる。

気落ちしたランボーは、最も近いホープという町(←架空の町。ロケ地はカナダ国内実在のホープ)まで徒歩で辿り着く。

ところが、たまたま出くわした町のティーズル保安官(ブライアン・デネヒー)に一目で目を付けられ、更に”トラブルを起こす流れ者”というレッテルを貼られ、そのまま半強制的にパトカーに乗せられて町の反対側の外れまで搬送されてしまう。

無愛想なランボーは、釈明も抵抗もしない代わりに、ティーズル保安官の指示を完全に無視して、今通り過ぎて来たホープに向けて歩き出してしまう。怒った保安官は公務執行妨害と難癖を付けてランボーを逮捕する。不運なことにランボーは、軍隊時代から愛用しているサバイバル・ナイフを携行していたため事態をより悪化させてしまう。

保安官事務所に連行されたランボーは、そのまま窓の少ない署の地下に連れて行かれ取り調べを受ける。頑固で無口なランボーの態度を、取り調べ担当の警察官たちは反抗的と決めつけ、彼らは態度をより硬化させていく。

取り調べの様子を見に来た保安官の暗黙の指示もあり、ランボーは丸裸にされ、”洗う”と称して消火用の放水で拷問を受ける。その後、複数人でランボーを羽交い絞めにし、”身だしなみ”と称して無理やり髭を剃ろうとする。剃刀を目の前でチラつかされたランボーは、ヴェトナムで捕虜になった際にヴェトコンから受けた拷問のトラウマがフラッシュバックし、遂に暴れ出してしまう。

ランボーは、その場にいた警察官全員を肉弾戦で制圧し、駆け付けた保安官も倒し、没収されていたサバイバルナイフを取り戻して署外へと脱出。目の前を通りかかったオフロード・バイクを奪って、そのまま山へと逃走。保安官のパトカーを先頭に警察官たちも追跡するが、ランボーは一旦彼らを振り切ることに成功する。

怒る保安官は、ドールベルマンを伴う山狩りを指示し、ヘリコプターの支援も要請する。

果たしてランボーは、この追跡を逃げ切ることが出来るのか?この事態は、どのように展開し、どのように収束されるのか…?

見どころ (ネタバレなし)

原作本「一人だけの軍隊」(原題:First Blood) を基にしたこの物語の、見どころを掘り下げてみたいと思います。もちろん予習が目的であり、ネタバレはしません。本作品をより味わい深く鑑賞して頂くことを企図しています。

スタローン新たなハマり役”ジョン・ランボー”

ヴェトナム帰還兵”ジョン・ランボー”は、まさにシルベスター・スタローンのハマり役だと思います。精悍な顔つき、物憂げな目付き、そして鍛え抜かれた肉体。更に役作りとして無造作に伸びた髪の毛や無精髭が加わって、”現状の生活が上手く行っていないヴェトナム帰還兵”が完全に出来上がっています。

演技も、無口で口ごもり気味で、無愛想な態度。頑固で相手の言うことに迎合しない態度。”一人だけの軍隊”への道筋が見えてきます。ランボーの内面も、ストーリーが進むに従い丁寧に描写されていきますので、是非そこまで本作品にお付き合いいただくことをおススメします。

「あらすじ」で書いた保安官事務所での大立ち回りなんて、この映画ではほんの序の口なので、実際にスタローン本人が多くのシーンで体を張ったというアクションもお楽しみください!そして、感情を静かに露わにして行くような演技にもご注目です。

保安官が体現するアメリカの厭戦ムード

ブライアン・デネヒー扮するホープ町のティーズル保安官が憎たらしいです。視聴者としてのそんな素直な感情はちょっと脇に避けておいて…

ヴェトナム戦争の実質的な終結は、1975年4月の南ヴェトナムの陥落。この映画の舞台が1982年12月ですから、戦争終結から実に7年半が経過しているという設定な訳です。ところが、ジョン・ランボーの服装は一部は軍服で、携行品やサバイバル・ナイフは明らかに軍支給の物です。

当時のアメリカにどのぐらいの割合でこのような人物がいたのか定かではありませんが、ヴェトナム戦争の後遺症の象徴として、国内で再出発を上手に切れなかったジョン・ランボー的な人物が居たのは紛れもない事実だと思います。

一方で時代も1980年代に入り、ヴェトナム戦争のことは忘れ、新しい時代を迎えようとしていアメリカもそこに存在していた訳で、多くの人々が厭戦ムードから、ジョン・ランボー的な復員兵に対して、”国に尽くした兵士”として敬意を表するのではなく、異物として除外しようとしていいた訳です。

田舎町特有の排他性、公平公正より人の繋がりによる善悪の判断、ヴェトナムにまつわる全ての物に対する拒絶反応。こういう陰湿な諸々をギュッと固めた象徴が、ティーズル保安官な訳です。ブライアン・デネヒーこそ正に敵役に適役。そんな時代背景を意識しながら、この物語を眺めて貰えると、ジョン・ランボーの抱える孤独がより高い解像度で理解できるのではないでしょうか?

サバイバル術

ジョン・ランボーは、徹底して訓練された元グリーンベレー(合衆国陸軍の特殊部隊)です。劇中では、サバイバル・ナイフ、各種の自動小銃を巧みに駆使する姿。バイク、トラックの運転など、さまざまな技能を発揮して行きます。そのリアリティがこの映画の魅力です。

アクションシーンに若干過剰な演出が掛かるキライも感じますが、2作目以降に比べれば全然マシなので、上述のランボーのサバイバル術のリアリティに免じて、手に汗握ってこの映画を楽しんで頂ければと思います。

出演:シルヴェスター・スタローン, 出演:ブライアン・デネヒー, 出演:リチャード・クレンナ, 出演:デヴィッド・カルーソ, Writer:シルヴェスター・スタローン, Writer:マイケル・コゾル, 監督:テッド・コッチェフ

まとめ

いかがでしたか?

ランボー・シリーズと聞くと、ドンパチを思い浮かべるのが通常ですが、第1作目は映画化に当たってデフォルメはあるものの、確固たる原作本に基づきテーマ設定がなされていて、そこをキチンと掘り下げていると思います。1980年前後のアメリカの空気感を捉える教科書としても、一度は鑑賞しても損は無いように思います。上映時間も97分と短いですし。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 3.5シリーズであることを間引いても秀作
個人的推し 3.5 ”スタローン映画”ではないところに好感
企画 4.0 ヴェトナム復員兵の孤独を描くなんて!
監督 3.0 もっとリアリティにこだわって欲しかった
脚本 2.5 納得できない箇所が幾つか…
演技 4.0 説得力のある演技だと思います
効果 4.5 各所の効果のリアリティは高い
こんな感じの☆にさせて貰いました

こういう評価にさせてもらいました。基本的に好きですし、おススメです。

ただ、後半で、何度見ても納得の行かない箇所もあったりして、演出、リアリティ追及にもう少し神経を使ってもよかったのでは?と思う節もあり、このような評価になっています。

武器、戦闘、サバイバル術を描くための各種効果は秀逸なので、それだけでもワクワクはしますが。

あわわっち

TV放映を含めて、この映画何回観たんだろう???

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