話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】her/世界でひとつの彼女(あらすじ、内容、キャスト)

この記事でご紹介する「her/世界でひとつの彼女」は、2013年の近未来SF恋愛映画。妻と別居中の孤独で内気な男性が、AI が作り上げた女性キャラクターと次第に心を通わせていく物語。

ホアキン・フェニックスがその内向的な男性を繊細に演じ上げ、スカーレット・ヨハンソンが声だけの演技でAI キャラクターの人物像を見事に具現化していく。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

https://www.facebook.com/herthemovie/ より

俳優陣の素晴らしい演技に、スパイク・ジョーンズの温かみのある演出が加わり、近未来SFが見事に血肉の通ったヒューマンドラマへと落とし込まれて行く本作。

この記事で、この個性的な傑作の世界にちょっとだけ足を踏み入れてみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から25分10秒のタイミングをご提案します。
25分10秒

ここまでご覧になると、この映画のテーストと、ゆったりとしたスピード感がつかめると思います。そして、主人公のキャラクターと生活、そして、AI の仮想女性キャラクターとの出会いが見えます。

この先も観たいか観たくないかを判断できる、最短のポイントとして、このタイミングをご提案します。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「her/世界でひとつの彼女」(原題: Her) は、2013年に公開された近未来SF恋愛映画。妻と別居中の内気な男性が、人工知能の作り上げた仮想女性キャラクター・サマンサと毎日を過ごす内に、次第に心惹かれていく物語。

これだけ聞くと、根暗なオタクが2次元キャラクターに恋をするヤベェ話のように聞こえるが、主人公の内向的な男性をホアキン・フェニックスが熱演し、AI の女性をスカーレット・ヨハンソンが声の出演だけでリアルに演じ上げ、更に撮影監督のホイテ・ヴァン・ホイテマの美しい映像も加わって、切ないぐらいに生々しい情景が繰り広げられて行く。

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脚本、製作(他2名と共同)、監督を担当したのはスパイク・ジョーンズ。ジョーンズは、何本かの映画に俳優として出演しているが、基本的なバックグラウンドは映像作家。1990年代からミュージック・ビデオやテレビCMの監督として活躍した。

長編監督デビュー作の「マルコヴィッチの穴」(1999年) 、続く「アダプテーション」(2002年) で高い評価を得て、「かいじゅうたちのいるところ」(2009年) を挟んで、本作「her/世界でひとつの彼女」(2013年) の制作に至っている。

キャスト(登場人物)

本作の登場人物は、下の表の通りだ。パッと見多い様に見えるが、上から4人、もしくは5人を把握しておけば、事前情報としては十分だ。

役名 俳優 役柄
セオドア・トゥオンブリー ホアキン・フェニックス 主人公。手紙の代筆ライター
キャサリン ルーニー・マーラ セオドアの妻。離婚協議中
サマンサ スカーレット・ヨハンソン 人工知能が作った仮想女性キャラクター(声のみ)
エイミー エイミー・アダムス セオドアの古い友人
チャールズ マット・レッシャー エイミーの夫
ポール クリス・プラット セオドアの会社の同僚
代筆係1 リン・アドリアナ セオドアの会社の同僚
代筆係2 リサ・レニー・ピッツ セオドアの会社の同僚
代筆係3 ゲイブ・ゴメス セオドアの会社の同僚
セクシーキトゥンの声 クリステン・ウィグ ネットのチャットルームで会話する相手
テキスト音声 アート・バトラー OS1起動前のPCの声
エイリアンチャイルドの声 アダム・スピーゲル TVゲーム内のキャラクターの声
ブラインドデート オリヴィア・ワイルド
イサベラ ポーシャ・ダブルデイ
アラン・ワッツの声 ブライアン・コックス
her の登場人物

芸術的評価

本作は、第86回アカデミー賞の脚本賞(スパイク・ジョーンズ)に輝いている。

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Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、94%と非常に高い支持率を得ている(Rotten Tomatoesでは60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』という評価)。そして総評においても、”甘く、心がこもり、賢い「Her」は、少しだけ未来的なシナリオが、現代人の人間関係について、軽妙でユーモラスな知恵を与えてくれている” と、大変好意的に評されている。

商業的成果

この映画の上映時間は125分と、極めて標準的な上映時間である。製作費2千3百万ドルに対して、世界興行収入は4千7百万ドルを売り上げたとされる。2.0倍のリターンである。

2.0倍のリターン

商業的には、最低ラインをクリアしたぐらいの感じだろうか。

あらすじ(25分10秒の時点まで)

セオドア・トゥオンブリー(ホアキン・フェニックス)は、手紙代筆サービスを提供するハートフル・レター社に勤めるライターだ。他のライター達と同様、いや、他のライター達以上に、心の琴線に触れるような手紙を依頼人になり代わって書きあげ、プリントアウトして投函する仕事を担っている。

仕事では、依頼人それぞれの背景に即した、詩的で情感がこもった文章を次々と創出しているセオドアであったが、一歩オフィスを出ると、誰とも会話をすることなく独り暮らしの家に帰り、一人侘しく(わびしく)簡素な夕食をとって眠る。

眠れぬ夜は、ネットのチャットルームにログインし、同じように寂しい夜を過ごしている女性ユーザーとテレフォン・セックスをすることもある。そんな孤独な毎日だ。

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ある日セオドアは、世界初の人工知能型OSという謳い文句の”OS1”というソフトの広告を目にし、特に深く考えもせずにこれを購入する。OS1は、AI によって人格化されたキャラクターがヒューマン・インターフェースになっていることが売りである。

自宅のPCにOS1をインストールすると、機械的な男性の声のインターフェースが立ち上がり、幾つかの質問への回答を求められた。

セオドアが、音声の性別は女性を選択すると、そこにはサマンサと名乗る女性キャラクターが現れ、早速インタラクティブな会話が始まる。彼女の声は時折かすれたりするなど、極めて人間味があり、ソフトウェア・プログラムとは思えないほど、受け答えもカジュアルで自然だ。

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そう、セオドアは、突然自分の前に出現した、この”人物”に驚いたのだ。しかもサマンサは、今後も経験を積み重ねることで、更に学習効果を発揮して行くという。

セオドアはサマンサに、手始めとしてPC内のファイル・ドキュメントの整理を依頼する。サマンサは異次元の秘書能力を発揮し、PC内のファイルやメールを大胆に整理して行く。そんなやりとりをする際も、サマンサはユーモラスな口ぶりでセオドアに接し、あっという間にセオドアの心を掴んで行く。

セオドアは、サマンサの能力の高さを信頼し、職場でも力を借りることを思い付く。イヤフォンを介してサマンサとリモート通話し、自身が代筆する手紙の校正をサマンサに頼んだのだ。サマンサは、依頼された綴りや文法のチェックのみならず、常連客に対するセオドアの細かな気遣いを褒めるなど、良き理解者としての側面も見せて行く。

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セオドアが、友人がセットアップしてくれたブラインド・デートの申し出を受けるか迷っていると、サマンサはユーモアも織り交ぜながら、セオドアの背中を押し、デート相手とのアポイントのメールを代筆し、レストランの予約まで請け負う。

休日の昼間、セオドアが旧友のエイミー(エイミー・アダムス)と、その夫チャールズと過ごしていると、申し訳なそうにサマンサが割り込みの連絡をしてきて、離婚協議中の妻キャサリンの弁護士から急ぎの連絡が来たことを伝える。

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こうして人工知能の女性キャラクター、サマンサは、公私ともにセオドアを支え、友人のように励まし、能動的にも受動的にもセオドアの用事を仰せつかって行く。

セオドアとサマンサの関係は、この後どうなって行くのだろうか・・・?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころを3つ書いてみたいと思います。こういう観点でご覧になると、この映画をより味わい深く鑑賞できるのでは?というご提案のつもりです。予習情報としてお役に立てると嬉しいです。

全てネタバレなしで書いていきますので、安心してお読みください。

ビジュアル・コンセプト

映画が始まると、直ぐにこの作品のビジュアルの強さに気付かれると思います。大きな見どころの1つです。

特に赤系統のカラーパレットが効果的に使われ、象徴的な舞台装置として機能していきます。

内気で気難しいけど感受性が強く、誰にも真似できないようなエモーショナルな手紙を書くセオドア(ホアキン・フェニックス)。彼は度々赤系統のシャツを着ています。そして、彼が務める会社のオフィスも、赤を効果的に配した内装になっています。

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どうやら本作では、この”赤”が、人の”感情”を象徴する色として設定されているようです。

感情を持つに至るOS1のイメージカラーも赤(少し朱色に近いかな)です。

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ただし、この映画に登場する”赤”は、決して派手でも攻撃的でもなく、とても上品で落ち着いた色合いで、私たちを何だか優しい気持ちにさせてくれます。

一方でセオドアが独りで暮らす部屋は、広々として高級なインテリアに囲まれているものの、赤系統の家具は殆どないです。例外は、セオドアのシャツと、OS1の画面ぐらい。都会的で洗練されており、セオドアの恵まれた経済状況を読み取れますが、如何せんシンプル過ぎて暖かみを感じません。

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この寒々とした色合いが、セオドアが精神面では社会から隔絶し、孤独を感じていることを象徴しているのかも知れません。

こうした、画面画面における色合いによる演出は、監督のこだわりが見えるところなので、是非ご注目ください。

アナログとデジタルの間(はざま)

本作は近未来SF作品の範疇に入ると思います。近未来社会を下敷きにしているからこそ、AI が作り上げたデジタル・キャラクターであるサマンサが、人間らしい感情を持つに至る姿に、私たちは現実味を覚えることができます。

一方で、生活の全ての営みを、未来のスタイルへ置換えてしまっているかと言うと、それが意外とそうでもなく、妙な部分にクラシックな所作、言い換えるとアナログ文化が残っています。このお陰で、私たちはこの物語を、遠い未来のおとぎ話ではなく、”自分達の身近な物語”と感じることができます。

その象徴が手紙です。

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主人公の職業は手紙の代筆ライター。その執筆は音声入力で行われます。すなわち、先進的デジタル技術が取り入れられていることになります。ところが、その手紙の字面には手書きのようなフォントが用いられ、手紙はわざわざ便箋に印刷され、封筒に入れられ、最後は投函されます。劇中でも頻繁に電子メールのやりとりが登場するにも関わらず。

人がデジタルに合わせる生活スタイルが強制されるのではなく、デジタル側がアナログ・ライフに溶け込んで、血肉の通った人間を支援している様子が描かれます。このヒューマン・セントリックな描写にはちょっとホッとされるんじゃないでしょうか?どんな風にご覧になりますか?

3人の女性キャラクターと 時間/空間/成長曲線

この物語には、セオドア(ホアキン・フェニックス)と交流がある女性キャラクターが3人登場します。この3人の立場の違いを意識しながら、3つのキーファクターに着目すると、この映画が伝えたかったメッセージが浮かび上がって来るように思います。

最終的に何を感じるかは、もちろん皆さんにお任せしますが、こんな観点で眺めてみるのはいかが?という意味で、少し提案をさせてください。

まず、その3人の女性とは、1人目は、AI が作った女性キャラクター・サマンサ(声:スカーレット・ヨハンソン)。

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2人目は、離婚協議中の妻キャサリン(ルーニー・マーラ)。

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そして3人目は、セオドアの学生時代からの友人エイミー(エイミー・アダムス)です。

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そして、3つのキーファクターとは、”時間”と”空間”と”成長曲線”です。

サマンサは、コンピュータ内に生成された仮想キャラクターなので肉体、実体はありません。しかし、24時間眠らないし、ワイヤレス・イヤホンを介して通話すれば、いつでも、どこでも、彼女と会話をすることが出来ます。つまり、『意識体』としてのサマンサとは、時間と空間を限りなく共有することができます。

ただし、肉体がないので抱き合うことは出来ません。つまり、『実在』としてのサマンサとは、お互いの存在を共有することは出来ません。よって、”あるロケーションに一緒に出掛けた”という空間共有は非常に特殊な経験となります。また、学習のスピードが人間とは全く異なるので、共に失敗を経験しながら大人になっていくという、成長曲線の共有もできません。

キャサリンとエイミーは、セオドアとの付き合いが長いので、それぞれその期間は異なるものの、セオドアと人間的に”成長する時間”を共有してきたという過去を持ちます。

キャサリンとは、別居してから1年以上会っていないので、それ以前は夫婦として濃密な時間と空間を共有し、逆にそれ以降現在に至るまで、全く共有していません。

エイミーとは、同じマンションに住んでいることもあり、都度都度声を掛け合って話し相手になってもらい、時間と空間を共有しています。

整理すると、セオドアの周囲に、サマンサ、キャサリン、エイミーという立場の異なる3人の女性を準備し、セオドアとの、時間、空間、成長曲線の共有の仕方の差分を描いてみせ、このストーリーテリングにより、人やその人生にとって、この3つのキーファクターがどんな意味をもたらすのかを描いているのかなと感じました。

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ここまで3つの見どころポイントをご紹介しました。ビジュアルによる演出。近未来のデジタル・アナログ社会。そして、それらを下敷きとして時間/空間/成長曲線。

皆さんの目にはどんな風に映るでしょうか?

まとめ

いかがでしたか?

2013年から近未来を見た作品。何だか現在(2024年)にもう実現できそうな内容なんですよね。それだけに、遠い未来の話ではなく、私たち自身の話として共感できるんじゃないでしょうか。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 3.5 映像が少しだけ幻想的過ぎるかな…
個人的推し 3.5 コロナ禍でより意義のある作品に
企画 4.0 LLM の登場を予見したような作品
監督 3.5 人の有難さと煩わしさが巧み
脚本 4.0 登場人物の配置が絶妙!
演技 4.0 スカヨハとホアキンの掛け合い!
効果 4.0 映像と音楽による世界観!
こんな感じの☆にさせて貰いました

このような☆の評価にさせて貰いました。

ホイテ・ヴァン・ホイテマの映像が超美しいのですが、映画全体のトーンに対して、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ幻想的過ぎるかなと感じます。回想シーンはこれで問題ないんですが。

先見の明がある企画力が凄いです。2013年の段階で、後のコロナのパンデミックを予見していたのか?通信コミュニケーションをデジタル技術で先鋭化させた時に、人と人との関係ってどうなっちゃうんだろう?っていうね。

それから、後のLLM(大規模言語モデル)の登場も予見していたのか?AI がより人間っぽく言葉で会話できるようになった時に、人とAI の区別がつかなくなっちゃうんじゃないの?っていうね。

正に後の人類が突き付けられる課題を、この段階(2013年)で提起していたように見えます。

声だけの出演のスカーレット・ヨハンソンが、生々しくキャラクターを演じれば演じるほど、主人公が社会から孤立する… 面白過ぎます!

あわわっち

スパイク・ジョーンズは、ソフィア・コッポラと結婚してたんですよね…

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