話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】映画「TIME/タイム」(あらすじ、キャスト、吹き替え)

この記事でご紹介する「TIME/タイム」は、2011年公開の近未来SF映画。近未来社会において人類は、高度に発展した遺伝子操作によって、25歳で老化が止まる肉体を手に入れた。しかし、これでは人口が無尽蔵に増えてしまうので、寿命”時間”を通貨にして日常生活でも消費させ、寿命”時間”残高がゼロになった者は死亡する遺伝子操作も、同時に人体に埋め込んだ。

これにより、富裕層は手にする潤沢な寿命”時間”で永遠の25歳を手に入れ、貧困層は日雇い労働で翌日までの生存”時間”延長に四苦八苦するという、極度に二極分化した階層社会が成立する。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

アンドリュー・ニコル監督は、進化するテクノロジーの危険な側面をヒューマンドラマに絡める名手で、本作ではジャスティン・ティンバーレイクを主演に迎え、”時間”を主題にしたSFスリラー作に仕上げることを試みた。

この作品の独特な世界観を持つので、観るか決める前にこの記事で予習しておくのはいかがでしょうか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から25分10秒のタイミングをご提案します。
25分10秒

ここまでご覧になると、この映画の世界観が概ねつかめると思います。そして、主人公の置かれた境遇を知り、彼が行動を起こす経緯(いきさつ)も掴めるんじゃないかと思います。

この先も観たいかを判断するのに最短のタイミングとして、この時点をご提案いたします。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「TIME/タイム」(原題:In Time) は、2011年公開の近未来SF映画。”時間”の価値に焦点を当てたドラマ作品の側面も持つ。製作(他2人と共同)・脚本・監督をアンドリュー・ニコルが務める。このことからも分かるように、本作はアンドリュー・ニコル色が非常に強い作品となっている。

アンドリュー・ニコル作品の特徴

アンドリュー・ニコル作品の持ち味は、高度化したテクノロジーはその扱い方を誤ると、人類にとって多大なマイナスとなるリスクを、鋭く問題提起するところにある。

その目線で、アンドリュー・ニコルが携わった作品を見てみよう。

公開年 邦題 原題 原案 監督 脚本 製作 製作総指揮
1997年 ガタカ Gattaca
1998年 トゥルーマン・ショー The Truman Show
2002年 シモーヌ S1m0ne
2004年 ターミナル The Terminal
2005年 ロード・オブ・ウォー Lord of War
2011年 TIME/タイム In Time
2013年 ザ・ホスト 美しき侵略者 The Host
2015年 ドローン・オブ・ウォー Good Kill
2018年 ANON アノン Anon

デビュー作「ガタカ」(1997年) では、遺伝子優生学がもたらす閉鎖的な差別社会を、「トゥルーマン・ショー」(1998年) では、Live配信技術が個人の私生活を食い物にするリスクを、「シモーヌ」(2002年) では、コンピューターが作り上げた仮想キャラクターに人々が翻弄される姿を描いてみせた。

本作「TIME/タイム」(2011年) では、遺伝子操作による不老不死と階層社会、そして人生における”時間”を題材としている。

本作の設定(世界観)

この映画で設定されている世界観は、若干難解だ。以下になるべく簡潔に整理しておきたい。

25歳以上老化しない身体

本作では、遺伝子学の高度な発展により、人類は不老不死の身体を手に入れたという設定になっている。これが物語全体の下敷きとなっている。

そして、全ての人類がその遺伝子操作を受けていて、人は誕生から25歳までは肉体的に年齢を重ねるが、25歳になるとそれ以上は老化しない。よって、この世界の住人は全て、外見は25歳か、それ以下の若者/子供だけが存在している。

タイマーとしてセットされる寿命 ”時間”

ただしこれでは、世界は肉体25歳の住人で無限に溢れてしまうため、人口抑止の仕掛けも同時に制定されている。

それは、不老不死と同時に施された遺伝子操作であり、誰もが手持ち ”時間” がゼロまで減ると即死し、二度と蘇生できないというものだ。このある種のタイマーのような寿命 ”時間” は、各人の左腕にデジタル表示され、毎秒毎秒、時が経つごとに、着実に1秒ずつ減って行く。

流通する ”時間”

この寿命 ”時間” は、携帯電話を充電するように”時間”を人体に注ぎ足せば、どこまでも伸ばすことができる。すなわち、理論上は、25歳の肉体で永遠に延命することが出来る。これが不老不死のカラクリである。

この注ぎ足し行為は、専用の機械から”時間”を受け取ることでも可能だし、個人間の握手を介して”時間”を受け渡すことでも可能だ。

”時間” が統一通貨

では、永遠に注ぎ足して貰えば良いではないか?と考えたくなるが、もう一つの社会制度がこれを阻んでいる。それは、この社会では、この”時間”が統一通貨になっていることだ。給与は”時間”で支払われ、物は全て”時間”で買う。すなわち、日々支払う以上に ”時間” を稼がなければ、着実に寿命 ”時間” は減って行く。

1日の衣食住に費やされる分と、何もしなくても経過消費する24時間の分との合計以上の”時間”を、毎日稼ぎ出せる人間は、手持ち ”時間” が純増する。そうでない者は純減する。言い換えると、稼ぎが良いものは長生きし、悪いものは短命に終わる。

極端な階層社会

その結果この映画では、労働者を搾取する資本家は莫大な ”時間” を貯蓄し、不老不死を優雅に楽しむ特権階級として描かれる。一方で低賃金(低”時間”)の労働者は、自分や家族がその日の24時間を何とか生き抜く”時間”を確保しようと、命懸けの毎日を送っている。

社会全体に目を向けると、特権階級の既得利権を守るためだけに公安警察(タイムキーパーと呼ばれる)が機能している警察国家的な姿も描かれ、警察が介入しないスラム地域では、他人の”時間”を強奪するギャングも暗躍している。

上記のようなディストピア世界を描いたのが「TIME/タイム」である。

商業的成功

この作品の上映時間は109分と標準的な長さである。製作費は4千万ドルで、世界興行収入は1億7千4百万ドルを売り上げたと報じられている。実に4.35倍のリターンである。

4.35倍のリターン

絶対額としても、相対額としても十二分な大ヒット作である。

評価

Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、37%の支持率しか得られていない(Rotten Tomatoesでは60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』という評価)。評価を要約すると ”この映画の設定は興味深くキャストは魅力的だが、ストーリーテリングが野暮ったく不器用だ” となっている。

正直筆者も同感で、この辺りは後述する「見どころ」でもう少し掘り下げたい。

キャスト(登場人物)

この物語は登場人物が多く、ちょっと混乱しそうだが、下表の上から8人を押さえておけば、ストーリーには付いて行けると思う。

役名 俳優 役柄
ウィル・サラス ジャスティン・ティンバーレイク 主人公。工場労働者
シルヴィア・ワイス アマンダ・サイフリッド 銀行家の娘
タイムキーパー・レイモンド・レオン キリアン・マーフィー タイムキーパー(時間警察)
レイチェル・サラス オリヴィア・ワイルド ウィルの母親
ヘンリー・ハミルトン マット・ボマー 自殺願望のある富豪
フォーティス アレックス・ペティファー 時間を強奪するギャング
ボレル ジョニー・ガレッキ ウィルの親友
フィリップ・ワイス ヴィンセント・カーシーザー 裕福な銀行家。シルビアの父
マイア シャイロ・オーストワルド
ジャスミン クリスティアン・カステジャーノス
カレラ レイチェル・ロバーツ
コンスタンティン イーサン・ペック
グレタ ヤヤ・ダコスタ ボレルの妻
ミシェル・ワイス ベラ・ヒースコート シルビアの母
タイムキーパー・コース トビー・ヘミングウェイ タイムキーパー(時間警察)
レビ神父 オーガスト・エマーソン 神父
レイラ メリッサ・オードウェイ
クララ サーシャ・ピヴォヴァロヴァ シルビアの祖母
エデゥアール ジェシカ・パーカー・ケネディ
タイムキーパー・イェーガー コリンズ・ペニー タイムキーパー(時間警察)
ニクソン クリストフ・サンダース
TIME/タイムの登場人物

なお、アマンダ・サイフリッド扮するシルビア・ワイス役の、日本語吹き替えを篠田麻里子が演じたが、その演技力についてネット上では度々話題になる。

あらすじ (25分10秒の時点まで)

近未来の世界。人類は、遺伝子操作の発展で、25歳以上老化しない肉体を手に入れた。しかし同時に、その不老不死を実現するためには、統一通貨でもある”時間”を寿命の分だけ保持している必要がある。そして、賃金上昇を上回るペースで物価上昇が続くので、労働者階級にとっては、その日その日を生き抜くための”時間”を確保することは、文字通り死活問題であった。

ウィル・サラス(ジャスティン・ティンバーレイク)は、そんな労働者の家庭に生まれた工場労働者。母一人子一人で暮らしている。暮らし向きは楽ではないが、母子とも真面目に働いて生きており、直近では母レイチェル(オリヴィア・ワイルド)の50歳の誕生日を祝うことを楽しみにしている。

ある日ウィルは、日中の工場労働の後、親友のボレル(ジョニー・ガレッキ)と近所のバーに寄った。

するとバーには、この辺では見かけない富豪のヘンリー(マット・ボマー)が居て、周囲の客に大盤振る舞いをしていた。ウィルが暮らすこの貧困地域で、このように金持ち(”時間”持ち)であることを誇示するのは、非常に危険な行為だ。何故なら、ギャングに見つかれば着実に襲われて、時間を奪われるからだ。

見かねたウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)が、ヘンリー(マット・ボマー)に慎むようにアドバイスをするが、ヘンリーは聞く耳を持たない。そうこうしている内に、ヘンリーは地元のギャング団のボス、フォーティス(アレックス・ぺティファ―)に絡まれてしまう。

このままではヘンリーがフォーティスに殺されるであろうことに疑いの余地はなく、これを見過ごせなかったウィルは、自身の身も危険に晒しながらヘンリーを救い出す。

フォーティスたち追っ手から何とか逃れ、命からがら逃げ込んだ廃屋で、ウィルとヘンリーは色々と会話を交わす。ヘンリーは大富豪で、まだ100年以上の寿命 ”時間” を所持しているが、もう十分長生きしたので、もうこれ以上は生きる意欲が無いと言う。

毎日を生き抜くことに精一杯なウィルには、これは受け入れがたい話であったが、ヘンリーが続いて話してくれた話には、驚くのと同時に憤りを覚えた。

それは、”時間”という社会の富は、社会体制を支配する一部の富裕層が独占しており、彼らはニューグリニッジという街で、不老不死を謳歌している。一方で、労働者階級には常時過度な物価上昇を課すことで、一定数の人口が間引かれるように調整し、世界の人口をコントロールしているというのだ。

いつの間にか廃屋で眠ってしまった二人であったが、ウィルが目覚める前に、ヘンリーは数分だけを手元に残し、その他の100年以上の ”時間” をウィルに一方的に譲り渡し、その場を立ち去る。しばらくしてウィルが目覚め、ヘンリーの後を追うが、ヘンリーの寿命時間はゼロになり死んでしまう。

突如として100年以上の ”時間” を手にしたウィルは、妻子持ちの親友ボレル(ジョニー・ガレッキ)に10年分の ”時間” を分け与える。そして夜になると、50歳を迎えた母レイチェル(オリヴィア・ワイルド)が、勤務先から戻るのを出迎えるため、母が降車するバス停で待ち受けることにする。

ところが母レイチェルは、勤務先から公共バスに乗ろうとしたが乗車を拒否されてしまう。というのも、手持ちの寿命 ”時間” が1時間半しか残っていないのに、バス代が日中の間に1時間から2時間に値上げになったからだ。

徒歩で2時間かかる帰路を全速力で走るレイチェル。ウィルに会えれば幾ばくかの“時間”を分けて貰える…

出迎えたバスに母が乗っていないことから異変を察知して、レイチェルを探しに走るウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)。なにしろ手元には100年分の“時間”がある。

しかし、二人の願いは虚しく、わずか数秒間に合わなかったことで、母レイチェルは絶命してしまう。

ウィルは翌日、怒りを胸に秘めながら、チャーターしたハイヤーに乗り込み、100年分の寿命時間と共に、単身ニューグリニッジへと向かう…

果たしてウィルの狙いは何なのか?ウィルは何かを成し遂げることが出来るのだろうか?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころを3+1の論点で書いてみたいと思います。+1はネタバレを含むのでお気を付けください。

最初の3点は、この映画のこういうところに注目してご覧になると、より楽しめそうです!というおススメポイントです。

+1点は、この映画の残念な箇所です。Rotten Tomatoes の評価が低い理由を考えてみました。

レトロフューチャリズム

この作品で、真っ先に目に付くのは、その色彩を抑えた映像美じゃないでしょうか?画面のトーンが暖色系の色に統一されていることに気付かれると思います。

そして、作中に登場する車や機械、コンピュータ・システム等が、近未来SFとは思えないぐらいシンプルでアナログチックなことにも目が行くかも知れません。

これは、レトロフューチャリズムというアプローチで、近未来を、”20世紀中盤位に人類が妄想した”(=レトロな)未来像(=フューチャリズム)で具現化する手法です。

監督のアンドリュー・ニコルは、デビュー作の「ガタカ」(1997年) でもこの手法を用いましたが、本作「TIME/タイム」(2011年) でも再度採用した格好になります。

レトロフューチャリズムは、未来を描くに当たって、観客に21世紀型の物珍しいデジタル・アイテムに気を散らさせることなく、暖かみのある色味で郷愁を覚えてもらいながら、ストーリーに集中してもらえる効能があります。

ちょっと気に留めて貰えると、楽しいかも知れません?

ジャスティン・ティンバーレイク と アマンダ・サイフリッド

主役の2人の演技のご注目ください。この物語のうねりの中で、この2人がどんな演技を見せてくれるかが最大の見どころです!

労働者階級出身のウィル・サラスに扮するジャスティン・ティンバーレイクは、上述の「あらすじ」の段階から大活躍します。

一方のアマンダ・サイフリッドは、もう少し後に登場します。果たして、どんな役柄で登場するでしょうか?それは本編をご覧になってからのお楽しみ!

近未来の特殊な社会で生まれ育った2人。彼らがどんな運命に巻き込まれて行くか?が最大の見どころです。

設定の面白さと気付き

上述の「本作の設定(世界観)」で書いたように、この映画は設定が非常に凝っています。

そのお陰で、私たちが日常生活ではあまり意識しない暗黙の了解のようなものを再認識できるように思います。その辺りも、この作品を観る楽しみだと思うので、”容姿”を例にとって述べてみたいと思います。

ルッキズム(≒ 外見だけで人を値踏みすること)はもちろん良くありませんが、誰かを認識、理解するに際して、私たちはその人の”容姿”を重要な手掛かりにしているんだということに、改めて気付かされます。

というのも、本作では、主人公ウィル・サラス(ジャスティン・ティンバーレイク)の母親役をオリヴィア・ワイルドが演じているのですが、オリヴィア・ワイルドによる母親役の役作りが、やたらと若いし、美人だし、セクシーなんですよね。

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劇中では、母親の50歳の誕生日を祝福すべく、親子でハグをするシーンがあるのですが、その抱擁に凄く違和感を感じちゃいます。有体に言うと、エロく見えちゃうんです。

それもそのはずで、ジャスティン・ティンバーレイクは1981年生まれ、オリヴィア・ワイルドは1984年生まれなので、撮影時は30歳と27歳だった男女が抱き合っている訳です(親子の実年齢が逆!)。

25歳で老化が止まるというこの映画の世界観を体現するために、若い2人が親子役に配されているのですが、私たちが日常生活で出会う親子というのは、一般的に歳が十分に離れて見えます。この容姿のお陰で親子だと納得が行く。つまり、視覚情報の助けを借りて、脳内で辻褄を合わせているんだということに気付きました。

あわわっち

老化が消えたら、確実に風俗秩序が変わることの示唆なんでしょうね

【*含むネタバレ*】貨幣経済からの先祖返り

最後に、筆者が個人的にこの映画に感じた残念な箇所です。こういう工夫を施したら、もっと面白かったんじゃないかな?という勝手な妄想も少し書いています。

私たちの実社会には『時給』という言葉があります。これは、1時間当たり(の労働)の価値を貨幣価値に換算するものです。つまり、時給1,500円と言ったら、1時間当たり(の労働)の貨幣価値は1,500円ですよという意味ですよね。

こうした貨幣価値への換算、すなわち貨幣経済の凄いところは、1時間(もしくは1時間の労働)という実在の価値を、通貨という、本来は”抽象的”概念に過ぎない”数値”に ”抽象化” しちゃっている点です。

実は、この ”抽象化” と ”数値” というのが地味に重要で、実在から切り離した(=抽象化した)無味乾燥な ”数値” だからこそ、取引がしやすくなるし、新たな付加価値を創造しやすくなります。

どういうことかと言うと、例えば、大谷翔平選手のドジャースとの10年7億ドルという契約は、ある計算によると時給2364万円に相当するそうです。しかしこれは、大谷選手が毎時2364万円分の労働をするという意味でも、その労働への対価という意味でもないですよね。

この7億ドルとは、この偉大な選手が残すであろう成績に加え、向上する球団のブランド価値、そして何より存在の希少性といった、”抽象的な付加価値” もひっくるめて数値に換算すると7億ドルになったという話ですよね(もちろん、敢えて時給に換算するとナンセンスな額になるから、話のネタとして面白い訳ですが・笑)。

そして、(大谷選手は真逆の人種ですが、)こうして得られた富を用いれば、付加価値の高い装飾品、車、建物、絵画の購入、あるいは新たな事業への投資をすることが出来ます。かように現在のような高度な貨幣経済においては、実在から切り離された数値としての貨幣が、グルグルグルグルと回ります。それが現代な訳です。

映画の話に戻りましょう。この映画の世界では ”時間” が通貨で、上述の ”抽象化” が描かれているとは言えません。何故なら、労働者から搾取された富(=時間)は、どこまで行っても ”金持ちの寿命の何時間分” という扱い方しかされていないからです。

資本家が、集めた富(=時間)を再投資して、それが新たな富を創造する仕組みを作り、労働者はいつまで経ってもその大きな枠組みの中で消耗品のように使い捨てにされる捨て駒である、そんな構図が描かれれば面白かったと思うのですが、1時間はどこまで行っても寿命延長の1時間であり、その様は、貨幣経済というより、物々交換に先祖返りしているように映ります。

Rotten Tomatoes が、(初期)設定とキャストは魅力的だけど、ストーリーテリングが弱いと言ったのは、こういうことなんじゃないでしょうか?世界観の広がりとストーリーの発展性が乏しいです、正直なところ。

まとめ

いかがでしたか?

この映画の位置づけを可能な限り丁寧に整理し、そして、斬新なアイデア、美しい映像美についておススメしました。一方で物足りなかった点についてもちょっぴり書いちゃいました。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 3.0 エンタメ作として楽しめば良し
個人的推し 2.0 あんまりおススメ出来ないかも…
企画 4.5 究極のディストピア!
監督 2.5 結局何が描きたかったんだろう…
脚本 2.0 入り口と出口が違い過ぎる
演技 3.0 キリアン・マーフィーの無駄遣い
効果 3.5 映像は美しい
こんな感じの☆にさせて貰いました

このような☆の評価にさせて貰いました。

エンタメ作品だと割り切って観る分には良作だと思います。ただ、謳い文句ほど世界観は完結してないと思うので、その辺りのご自身の期待値を、鑑賞前にコントロールされた方が良いと思います。

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