この記事では、鬼才クリストファー・ノーランが、壮大なSFアクションにチャレンジした記念すべき1作目「インセプション」について解説します。ノーラン監督は本作で、人間の夢の中を映像化するのと同時に、時系列(タイムライン)をイジり倒しています。スッキリ理解できるように図解解説も加えているので、参考にしてください!
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
ジャッジタイム (ネタバレなし)
本作における、そのまま見続けるのか、見るのを止めるのかのジャッジタイムですが、
- 上映開始から22分00秒をご提案します
148分という長尺の作品を好き嫌いを、22分で判断するのはリーズナブルだと思うがいかがでしょうか?「この映画をもっと観たい」と思うか「こういうの疲れる・・・」と見切るか、まずは22分間観て、この独特の世界観が楽しいか感じてみてください。
概要 (ネタバレなし)
インセプションは、2010年に公開されたSFアクション映画。クリストファー・ノーランが製作、脚本、監督を担当している。この事実からも容易に想像が付くように、ノーラン・ワールドが全開の映画。他の多くのノーラン作品と同様に「時の流れ」が劇中の重要なテーマとして扱われる。
本作では、この「時の流れ」に「夢」と「潜在意識」という要素が加わる。具体的には、人は「夢」の中では、現実世界の20倍の速さで「時の流れ」を意識するという設定がなされている。つまり、睡眠中の「夢」の中で100分間の体験をしたような気になっても、それは目が覚めた現実世界では5分間が経過したに過ぎないという寸法だ。
ここまでで十分に独創的な世界観なのだが、更に突拍子もない設定が追加され、その夢の中で更に眠って夢の中に入ると、更に20倍の時間拡張が発生するので、元の現実世界と比較すると 20 x 20 = 400倍の感覚のズレが発生する。すなわち、現実世界の5分の間に、夢の中の夢(=2階層下の夢世界)では約33時間(5分 x 20 x 20 = 2,000分 = 1日と9時間20分)の体験を味わえるという訳だ。
劇中冒頭、レオナルド・ディカプリオ扮する主人公コブのチームは、フリーランスでプロの産業スパイとして活動している。これは、クライアントからの依頼に応じて、意図的に眠らせた調査対象者の夢の中に潜入し、その対象者の「潜在意識」に隠された企業秘密を盗み出しクライアントに渡す(=エクストラクト)という仕事である。
本作のシナリオでは、この仕組みを逆手に取って、潜入した夢の中で対象の要人に、スパイ側が意図したアイデアを伝えることが出来れば、要人の「潜在意識」にそのアイデアを刷り込むことになり、結果的に目覚めた後の要人の行動を変容させられる(=インセプション)のではないか?という発想へと転換されていく。
この大胆なミッションを成功させるには様々な条件を整える必要があり、そんなことは本当に可能なのか?とスリリングなストーリーが展開されて行くのが本作品だ。
「時の流れ」「夢」「潜在意識」どうですか?観たくなりましたか?
見どころ (ネタバレなし)
オールスターチームが生み出すリアリティ
本作品では(も)上述のようにクリストファー・ノーランが創造した突拍子もない世界が構築されて行く訳だが、ストーリー内では、インセプションを成功させるための幾重もの条件が設定され、これらをクリアするために各種専門技能を持った登場人物によるスペシャル・チームが編成される。
その個性的なキャラクター達を演じる役者陣の演技が手堅いので、チームの存在意義を実感でき、よってクリアすべき条件が現実の物に感じられ、結果創造された世界観が信憑性を帯びてくる。後述する映像技術の高さもあるのだが、まずは人にフォーカスした演出をすることで、この独創的な世界を「人の物語」として”実感”させるノーランの手腕を体験して頂きたい!
映像の凄さ
「映像の凄さ」という、既に描写を放棄した陳腐な表現をしているが (汗)、そうとしか表現できないような圧倒的な映像が展開されるので楽しみにして欲しい。何せ夢の世界は想像の産物であり、現実世界と比較して20倍の時間拡張が起き、かつ夢の主が現実世界で受けている影響が夢の世界にも反映される。
よって、夢の世界では空間が歪んだり、空間の上下の概念が変異したりする。この変則的な時空をリアルに映像として再現する技術の高さに当然のことながら注目いただきたい。厳密に言うと、映像技術に注目するというより、その技術によって生み出される、変幻自在だがリアリティのある空間を素直に味わって頂ければ良いんだと思う。
人生の現実を生きるということ
ここまで述べてきたように、本作の設定においては、夢の中で夢を見るという、夢の階層を掘り下げて行くことで、時間を20倍の階層乗 (=20 x 20 x 20 x 20…) 引き延ばして行くことが出来る。つまり、現実世界の5分間の間に、その深化した夢の中では何時間も何日も何年も過ごすことが理論上は可能になる (理論上って何だよ・笑)なんて議論が出てくる。
ただ、その夢の中でどんなに望み通りの夢想を貪ろうとも、目が覚めたら現実の5分間が過ぎているだけだ。本作品では、この夢想と現実のギャップを可視化することで、人生の現実を生きるとは何か?というテーマを視聴者に示唆的に投げかけているように思うのは筆者だけだろうか。
まぁ、こんな小難しいことを考えなくても本作は十二分に楽しめるので、もし頭の片隅にでも残っていて、視聴後に振返って頂けると幸いだ。
シンプルにアクションを楽しむのもアリ。様々な含蓄に思いを巡らすのもアリ。
1回目と2回目で観る姿勢を変えて繰り返し見るのもアリ。そんな味わい深い作品だと思います!
その他の情報
筆者の本作に対するおススメ度合いは、 4.5/5.0 です。
唯一のネックは、長く(148分)て難解という点です。ここをどう捉えるか・・・
アカデミー賞の撮影賞、視覚効果賞、音響編集賞、録音賞を受賞しています。
ノーラン監督は、作家性と娯楽性を両立させている、世界でも稀有な映像作家と評されていますね。これだけ長尺(=上映回数が減る)の作品で、2010年の年間興行ランキングで4位になったというのだから、流石の一言です。
この映画、構想に足掛け20年掛ったらしいんだよね。夢の中で考えれば 1年で済んだのにね???w