話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【あらすじ・ネタバレなし】最凶の風刺画 イングロリアス・バスターズ

この記事は、ブラッド・ピットとクエンティン・タランティーノが初めてタッグを組んだ映画「イングロリアス・バスターズ」の解説をします。この作品が、第二次世界大戦の歴史の裏に隠された、史実とフィクションの間の絶妙な中間地点を、どう風刺でエグって行くのかを解説します。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

映画「スナッチ (2000年)」でも見せたような、強い癖のあるキャラクターへでの出演オファーを、タランティーノがブラッド・ピットにどう承諾させたか?等、裏話にも触れながら、この映画の魅力を語って行きたいと思います。是非この作品の世界に足を踏み入れてみてください!

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

本作における、観続けるか、中断して離脱するかのジャッジタイムは、

  • 上映開始から26分30秒のポイントをご提案します

詳細は後述しますが、

  • 本作品では、2つの物語AとBが同時進行して行きます
  • 本作品は、章立てになっています
同時進行する2つの物語はどこかで交わるのか?

ご提案のジャッジポイントはその第2章の途中を指しており、第1章で物語Aの冒頭が終わり、第2章で物語Bが少しだけ進んだ箇所になります。ジャッジポイントで

  • 2つの物語のさわりをご覧いただき
  • かつ、本作品がどのぐらい暴力的かをご確認ください

「こりゃ傑作だ!」とタランティーノ・ワールドにハマるのか、「こりゃ無理だ・・・」とタランティーノ・ワールドを忌み嫌うのかをご判断頂ければと思います!

あわわっち

好き嫌いは分かれると思います、正直。

概要 (ネタバレなし)

本作品の位置づけ

「イングロリアス・バスターズ」は、2009年の戦争映画。クエンティン・タランティーノが脚本と監督を務めており、自身7作目の長編映画である。

原題は「Inglourious Basterds」であり、注意を払わなければ素直に ”不名誉な野郎ども” と訳しそうだが、目を凝らしてみるとその意味ではスペルが間違っていて、正しいつづりは “Inglorious Bastards” となる。何でこのつづりなの?という問いに対して、タランティーノは常に明確な回答をはぐらかしている。

あわわっち

たぶん、このヘンテコなつづりに意味は無いと思う。タランティーノのいつものおふざけかと・・・

タランティーノが10年以上温めてきた構想である。というのも、脚本を何度も書き直している内に筋書きが異なる脚本が複数(3つ?)出来上がったり、オマージュてんこ盛りで4時間以上の長編になったり、途中キル・ビル・シリーズの製作を優先したりと紆余曲折があり、完成までに長い時間を要したという背景がある。

構想10年以上

最終的に「パルプ・フィクション (154分)」を目安に153分にまでストーリーは凝縮され、7千万ドルの製作費に対して、世界興行収入3億2千万ドルの大ヒット!

これは「パルプ・フィクション」の2億1千万ドルをも超える、この時点でのタランティーノ最大のヒット作となった。実に4.5倍以上の収益率である。(2023年3月時点では、「ジャンゴ 繋がれざる者」が世界興行収入4億2千5百万ドル」でキャリア最大のヒット作)

4.5倍以上の収益率!

アカデミー賞にも、主要3部門を含む計8部門にノミネートされた(が、受賞したのはクリストフ・ヴァルツの助演男優賞のみ)。

あらすじ (26分30秒のポイントまで)

第1章:その昔、ナチ占領下のフランスで・・・

時は1941年。第二次世界大戦初期、ナチス・ドイツがヨーロッパ全域で権勢を振るっていた。そんなある日、ドイツ占領下のフランスの片田舎で、フランス人農夫ラパディット家に、遠方からドイツ軍のバイク2台とジープ1台が近づいてくるのが見えた。

1941年 ある日フランスの片田舎で・・・

ラパディットは、娘3人に自宅内に落ち着いて戻るよう指示し、自身は井戸水で顔を洗い、自宅前で、来訪するドイツ兵に恐怖を悟られまいと、努めて冷静に対処しようとする。

ラパディット家を訪れたのは「ユダヤ・ハンター」の異名を取る、ナチス親衛隊のハンス・ランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)だ。

ランダ大佐は、ヒトラーの特命を受けて行方不明になったユダヤ人やユダヤ人一家を捜索するのが任務である。今回は、ラパディットの酪農仲間でありユダヤ人一家であるドレフュス家に関する調査が、ラパディット家訪問の目的であった。

9か月前の調査も切り抜けたラパディットは平静を装ってランダ大佐を自宅に招き入れ、何とかこれに対応しようとする。

しかし、表面上は紳士的な振る舞いを見せながらも、巧妙に相手を揺さぶって行くランダ大佐の精神的圧力に、ラパディットが遂に耐え切れなくなり、床下にドレフュス家を匿っていることを自白する。

ランダ大佐の部下3人がラパディット家の床下を機関銃で機銃掃射するも、ドレフュス家の一人娘ショシャナだけが奇跡的に銃弾を逃れ、屋外に這い出してそのまま逃走する。ランダ大佐はこれを深追いせず「またなショシャナ」と叫ぶ。

第2章:名誉なき野郎ども(イングロリアス・バスターズ)

アメリカ軍将校アルド・レイン中尉は、ユダヤ系アメリカ人のみからなる8名の特命部隊を編成し、フランスに潜入してゲリラ攻撃を繰り返しながら、ドイツ兵に恐怖を与える任務を宣言する。部下全員に1人当たり、ドイツ兵の頭の皮100枚を剥いでくるように厳命する。

執務室で激高するヒトラー。レイン中尉率いる特任部隊に部下が次々と殺されるので、ドイツ兵が彼らを魔人の如くと噂をし、彼らを恐れて士気が落ちていると不平を述べる。

そして、レイン中尉の部隊に襲撃されながらも唯一生き残ったラハトマン軍曹をこの執務室に呼びだし、自ら事情聴取を開始する。

ナチス・ドイツを恐怖のズンドコに叩き落すイングロリアス・バスターズ

ラハトマン軍曹が目の当たりにした、レイン小隊の襲撃の手口とは・・・

見どころ (ネタバレなし)

主演ブラッド・ピット

何はともあれブラット・ピットが主演していることが大きな見どころだろう。本作品への出演を熱望していたタランティーノは、ブラピと酒を飲みに行き、ベロンベロンになるまで深酒をして、その勢いで出演を承諾させたという。

泥酔したブラピが翌日「記憶に無い」と言い逃れをするのを避けるため、飲みのテーブルにあった紙ナプキンに一筆書かせたという。

ブラッド・ピットが演じたアルド・レイン中尉は、大変癖のあるキャラクターである。製作のある段階では、タランティーノは自身がこの役を演じることも想定していたという。

なので、プラピがちょっとアゴをシャクレ気味にさせた表情を作るのも、タランティーノの顔を意識しているからだという説もある。

あっつ

とにもかくにも、このレイン中尉が超面白いので、是非是非楽しんでご覧ください

クリストフ・ヴァルツの演技

もーねー、クリストフ・ヴァルツ扮するハンス・ランダ大佐がムカつくんですよー!とにかくムカつく、ムカつく(笑) 凄いです!この他人を苛立たせる演技。本作品でアカデミー助演男優賞を受賞したのも頷けます

ハイ!彼は、3年後の「ジャンゴ 繋がれざる者」でもアカデミー助演男優賞を再度受賞してますので、タランティーノ作品との相性が抜群なんでしょうね。

タランティーノは、このキャラクターがピタっ!とハマらないと本作品は完成しないと考えていたほど重要な役どころで、ヴァルツに最初にオファーした時は、自信が持てなかったヴァルツに一旦断られているという。

演技力云々もさることながら、語学力も必要になるキャラクター。まさにハマり役です!

あわわっち

ヴァルツが2年後に演じた「おとなのけんか」での、鼻持ちならない不愉快な夫役は、この「イングロリアス・バスターズ」からの系譜?

章立て・2つの物語

既に書いた通り、本作品は2つの物語が並行して進みます。章立てによって、両者を行ったり来たりしながら物語が進行して行く訳ですが、それがある段階で・・・

その辺りの”構成の妙”も大いに楽しんで頂きたいです!

あわわっち

ちょっと凝った作りをするけど、決して難解ではないのがタランティーノ作品の良いところですよね。

第1章がどう見ても・・・

上述の通り、本作品は章立て構成になっています。タランティーノはこの構成によって、章ごとに演出のタッチを変えることが出来たと言っていますね。そして、上記の箇所を絞ってあらすじを書いた第1章ですが、ご覧になって頂くと分かるんですが、どこからどう見てもマカロニ・ウェスタンなんですよね。特に、特に冒頭のラパディットの表情を抜いて行くシーケンスがまんまマカロニ・ウェスタンなんですよ(笑)

こう言う遊び心とオマージュが、本作品でもてんこ盛りです!

マカロニ・ウェスタンと言えば、エンニオ・モリコーネの音楽を連想しますが、タランティーノは本作品の音楽にモリコーネを起用したかったようですね。でもスケジュールの都合で叶わなかったので、代わりにモリコーネの既存の楽曲を何曲も本作に使用しています(モリコーネは、映画音楽を引き受けたら全てオリジナル楽曲を提供する)。

あっつ

モリコーネに6度目のノミネートで悲願のアカデミー作曲賞をもたらしたのは、タランティーノの後の作品「ヘイトフル・エイト」です

どこで出てくる常連俳優?

タランティーノ作品の常連俳優である、サミュエル・L・ジャクソンハーヴェイ・カイテルが、本作品でも一風変わった出演をしてきます。どこで出てくるか探しながら観て頂くのも面白いかも知れません。

あわわっち

告白します。初見では全く気付きませんでした・・・

出た!裏設定

作品のストーリーとは全く関係ありませんが、本作の途中で英国軍のアーチー・ヒコックス中尉(マイケル・ファスベンダー)というキャラクターが出てきます。これが、「ジャンゴ 繋がれざる者」でティム・ロスが演じた「ピート・ヒコックス」という英国人の孫という裏設定なんですって!この裏設定についてはティム・ロス本人も認識していて、その事実を認めているようです。

あわわっち

どうでも良いっちゃー、どうでも良いんですけどね(笑)

出演:ブラッド・ピット, 出演:メラニー・ロラン, 出演:クリストフ・ヴァルツ, 出演:ミヒャエル・ファスベンダー, 出演:イーライ・ロス, 出演:ダイアン・クルーガー, 出演:ダニエル・ブリュール, 出演:ティル・シュヴァイガー, 出演:ギデオン・ブルクハルト, 出演:ジャッキー・イド, Writer:クエンティン・タランティーノ, 監督:クエンティン・タランティーノ, プロデュース:ローレンス・ベンダー
¥1,500 (2024/04/24 17:11時点 | Amazon調べ)

その他の情報

本作品に対する☆ですが、

総合的おススメ度 3.5グロいシーンがあります。あと長尺だし。
個人的推し 4.5タランティーノ好きにはハマると思います!
企画 5.0歴史に裏ストーリーを乗せるって面白い!
監督 4.5製作費に対して興収が4.5倍のリターン!
脚本 4.0実は気に入らない箇所があります
演技 5.0出てくる俳優さん、皆素晴らしい!
効果 4.5文句なしです
こんな感じの☆にさせて貰いました

ブラッド・ピット扮するアルド・レイン中尉の部隊がドイツ兵に制裁を加えるシーンが正直グロテスクなので、そこはおススメ出来ないですね。グロい上に長尺作品なので、冷静に判断するとおススメ度は下げざるを得ません

後は本当にタランティーノ作品が好きかどうかです。個人的にはタランティーノ作品の中でも相当好きな部類に入ります

繰り返しになりますが、クリストフ・ヴァルツがアカデミー助演男優賞を受賞しています。納得の演技です。作品全体としては、作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、録音賞、音響編集賞にもノミネートされていたのに受賞ならず。整理すると合計8部門でノミネート、1部門で受賞となります。

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