この記事では、2014年公開の鬼才クリストファー・ノーランのSFアクション三部作の2作目「インターステラー」について解説します。宇宙を描いているようで、実は人間の普遍的な愛を描いているドラマ作品。でも科学的な考証はノーベル物理学賞受賞の科学者も巻き込んで、仕事キッチリよ!そんなスペクタクルな世界観が、どうしたらこんな感動作に仕上がったのか?を一緒に考えてみたいと思います。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
「ダークナイト」(2008年) 、「インセプション」(2010年)、「ダークナイト ライジング」(2012年) とキャリアの中でも特に乗りに乗っていた時期のクリストファー・ノーランが、満を持して解き放った感のある本作。この独特な世界観をちょっとだけ一緒に覗いてみませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から23分00秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧になると、ストーリーがどう転がって行きそうかの方向が掴めると思います。「これは面白いわい!」と興味をそそられるのか「う~ん、こういうの疲れるから付いて行けない・・・」と見切るか、まずは最初の23分間を観てみてください。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「インターステラー」(原題:Interstellar) は、2014年に公開されたSFアクション映画。クリストファー・ノーランが製作、脚本、監督を担当している。この事実からも分かるように、ノーラン・ワールドが全開の映画だ。他の多くのノーラン映画と同様に「時の流れ」が劇中の重要なテーマの一つとして扱われる。
インターステラーの意味
本作の原題である「Interstellar」とは、「惑星と惑星の間」という意味。この映画では、近未来の地球、宇宙、他の惑星を舞台にして、「時の流れ」「地球資源の枯渇」「知性探求の意義」「フロンティア・スピリッツ」「自己犠牲」「家族愛」といったテーマが、折り重なるように描かれて行く。
ハッキリ言って、テーマの大渋滞と言っても差し支えないと思うw
前提知識 ”ウラシマ効果”
視聴に当たって知っておくべき前提知識がある。
それは、人を乗せて遥か彼方まで光速で旅する宇宙船は、相対性理論にのっとりウラシマ効果を起こす点だ。ウラシマ効果とは、AさんがBさんを残して宇宙旅行に行くと、AさんよりもBさんが早く歳を取る現象。すなわち、2人の間で歳を取るスピードに大差が出てしまうのだ・・・
これにより、愛し合う者の間で距離と年齢に埋めがたい隔たりが生じて行く・・・果たして「愛」や「信頼」とは、この時空の隔絶を超越することが出来るのか?というチャレンジが登場人物達に突き付けられていく。
そう、本作は、壮大な宇宙を背景に描かれるSFアクション超大作なのだが、実はそこで描かれようとしているテーマは、人類が大ピンチの状況下でも、知恵と勇気を総動員すれば「愛」「信頼」そして「信念」を貫けるのか?というヒューマンドラマである。
とにかく「どうせお金を掛けたアクション映画でしょ?」という色眼鏡だけは外して観てください!
映画の最後まで一緒に完走しましょう!
あらすじ (23分00秒の時点まで)
近未来の地球。異常気象により砂嵐が頻繁に発生し、農作物の生育が致命的に妨げられ、人類が地球上で恒常的に生息することが不可能になってきた。
元テストパイロットのジョセフ・クーパー(マシュー・マコノヒー)は、15歳の息子トム(ティモシー・シャラメ)、10歳の娘マーフィー・”マーフ”(マッケンジー・フォイ)、義父ドナルド・クーパー(ジョン・リスゴー)との4人暮らし。
クーパーは義父と2人で農場を営んでいた。しかし件の異常気象で小麦は全滅し、残るトウモロコシのみが頼りという苦しい状況に追い込まれている。
砂は、あらゆる家庭生活や人々の健康を蝕んでいた。
そんなある日、マーフの部屋の本棚の本が、頻繁に落ちるという怪現象が起きるようになった。
偶然とか幽霊とかで片付けられそうな話ではあったが、父ジョセフと祖父ドナルドは、規則性を見つけて幽霊の仕業ではないことを証明してみろとマーフを焚き付ける。この提案を喜んで受け入れるマーフ。
実は、トム(ティモシー・シャラメ)は成績はそこそこだが性格は大変素直で、ハンター的なフロンティア・スピリッツよりも、ファーマー的に農産物を生み出すことを是とする、この時代に適応が出来そうだった。
一方のマーフ(マッケンジー・フォイ)は、成績は大変優秀だが頑固で、真理の追究に好奇心を刺激されるタイプだった。よって、真実の為には友人とケンカをすることも厭わない。
祖父ドナルド(ジョン・リスゴー)から見ると、トムは問題無いが、マーフ(やジョセフ)には、新しいことを生み出そうとする気概の無い今の時代は、生き辛いだろうと心配だった。
そんなある日、いつも以上に激しい砂嵐が発生した。自宅の中にまで舞い込んだ砂が、マーフの部屋の床の上に、偶然では片付けられない程の、人工的な模様を浮かび上がらせた。
何かの意志の存在を感じたジョセフは、徹夜でこれを解読した結果、マーフのモールス信号という仮説は正しくなく、0か1のバイナリーコードであると突き止める。そしてそのコードが示すのは座標だということも。
地図の上でその座標の位置を確認したジョセフとマーフ。ジョセフはその場所は危険かもしれないので単独で向かうと言う。納得の行かないマーフは、ジョセフの車に忍び込んで、結局、座標へは父娘2人で向かう。
果たして座標には何があるのか?この座標の信号を送ってきたのは何者なのか・・・?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つの観点に絞って書いてみたいと思います。どれもネタバレなしで書いていきますので、予習情報として安心して読んでください。皆さんが本作品をより味わい深く鑑賞するお手伝いが出来ると嬉しいです。
個性的な俳優陣
ここまで再三書いてきたように本作はヒューマンドラマです。よって、まずは俳優陣の演技がストーリーに厚みを持たせてくれます。そこが最大の見どころです!ネタバレにならない範囲で書きますが、個性的な俳優陣がそれぞれのキャラクターをキッチリと演じていて、観る側としてはどんどん引き込まれてしまいます。
まずは主演のマシュー・マコノヒー。
元空軍パイロットの役。身体能力も知性も高いし、今は農業を営んでおり、機械いじりも出来る。息子と娘の学業にも熱心で、妻に先立たれたこの家族においては、良き父であろうと必死に努力している。
マシュー・マコノヒーがこの役を演じることで、ステレオタイプ的な「アメリカの良心的父親像」から一歩も二歩もはみ出して、キャラクターが肉付けされて行くから不思議です。とにかくド本丸のこの主役の演技にご注目ください!
一昔前だったらケビン・コスナーが演じてそうな役柄かな?
脇を固める、アン・ハサウェイやマット・デイモンにも注目してください!
人類存亡の危機の中で、孤独に耐えながら、必死に知恵と勇気を振り絞る、でも個人のエゴだって出ちゃうよねという難しい役どころなのが彼ら、彼女らです。
物理だ、科学だ、テクノロジーだって言ったって、結局最後にそこに居るのは人なのよね。個性的な俳優陣が、このヒューマンドラマに奥行きをもたらしてくれるので、安心して楽しんで欲しいです!
範囲を限定してるから皆まで書いてませんが、ズバリ豪華キャストです!
科学的な裏付け
本作品には、ワームホール(≒ ブラックホール)という宇宙空間の特異点が出てくる。これは超簡単に要約して、時空構造が歪んでいる箇所なので、空間(時空?)を飛び越えられるワープトンネルですよぐらいの理解で、ストーリーには十分に付いて行けるんだけど、実はこのワームホールの映像的な描写が学術的にも正確だという高い評価を受けた。
というのも、この映画が公開された数年後(2019年)にNASAが可視化して見せたブラックホールのイメージ図と、この映画で映像化されたワームホールの整合性が高かったんだそうな。
それもその筈で、この作品にはキップ・S・ソーンという理論物理学者が、科学コンサルタント兼製作総指揮という役割でクレジットされている。
この人は映画公開後の2017年にノーベル物理学賞を受賞したほどの高名な科学者で、真理を描き出すために下敷きとなる科学考証を怠らない、クリストファー・ノーランの強い、強いこだわりを感じます。
運命なの?
クリストファー・ノーランの映画って、とにかく主人公たちが必死にもがく様を描いた作品ばっかりですよね。本作もそんな一作だと覚悟してご覧ください。
そして、そんな中でも特にこの「インターステラー」と「テネット」は、主人公が運命に導かれるように行動して行く中で、巻き込まれる状況に翻弄されて行く色が強いなぁと思ったりしました。皆さんの目にはどんな風に映るでしょうか?
鑑賞後の皆さんの感想が聞きたいです!
その他の情報
筆者の本作に対するおススメ度合いは、 3.5/5.0 です。
170分はやはり長いですよね。長尺作品はタイパ(タイムパフォーマンス)的なリスクはどうしても高まります。本作では特に、ノーラン映画特有の難解なストーリーだけではなくて、宇宙物理学的な内容にも追い付いて行く必要がある。そこへ来て描かれているテーマが渋滞気味なので、消化不良を起こすリスクは結構高いと思います。
アカデミー賞の視覚効果賞を受賞しています。
個人的には凄く好きな作品だけど、長尺映画をお勧めするのって、ホント難しいです・・・