この記事でご紹介する「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」は、1994年公開の映画。タイトルからも分かるように、いわゆるヴァンパイア(吸血鬼)物の作品だ。しかし、ヴァンパイア役としてトム・クルーズ、ブラッド・ピット、アントニオ・バンデラスが起用されており、ヴァンパイアを単に醜悪な吸血鬼として描くのではなく、背徳的で甘美な存在として描き上げている。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
この年のアカデミー美術賞や作曲賞にノミネートされるなど、芸術作として評価の高い本作が、何故これほどまでにファンの心を惹きつけるのか?この記事で予習情報を仕入れて、より味わい深くこの映画を鑑賞しませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から24分30秒の時点をご提案します。
この辺りまでご覧になると、”インタビュー”・ウィズ・ヴァンパイアの意味も理解できますし、ルイ(ブラッド・ピット)がどのようにヴァンパイアになったかの経緯も分かりますし、そこにレスタト(トム・クルーズ)がどう関与するのかも見えてきます。
当然この映画のテーストも見えますので、この作品が好きか嫌いか、観続けたいと思うか、ハッキリと分かると思います。
概要 (ネタバレなし)
本作品の位置づけ
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(原題:Interview with Vampire) は、1994年公開の映画。アン・ライスが1976年に出版しベストセラーとなった小説「夜明けのヴァンパイア」(原題:Interview with Vampire)の映画化作品。
アン・ライスが執筆した続編は、後に「ヴァンパイア・クロニクルズ」(全6作品・11冊)としてシリーズ化された。この中の1作品が「呪われし者の女王」(1988年出版)であり、本映画「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の続編映画「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」の原作である。
原作者アン・ライスは、映画「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の脚本も務めており、そういう意味では本映画は、原作に非常に忠実な映画作品となった。
特徴的な対話形式
「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の最大の特徴は、物語がインタビュー形式で語られて行く点である。これは原作小説も同様で、プロのインタビューアーであるダニエル(クリスチャン・スレーター)が、日常的な取材活動の一環で、その日たまたま対象に選んだ相手がヴァンパイアのルイ(ブラッド・ピット)であったという設定が取られている。
そして、そのヴァンパイアが、インタビューアーの投げかけに対して自身の半生を淡々と語って行く様子が、独特のストーリー・テリングとなって行く。上述の「ヴァンパイア・クロニクルズ」の中でもこの形式が取られているのは本原作作品のみである。
なお、このインタビュー役は、当初リヴァーフェニックスが演じる予定であったが、公開前年の1993年に急死してしまったため、クリスチャン・スレーターが演じている。
芸術的評価
この映画は、当該年のアカデミー美術賞と作曲賞にノミネートされている。これは実際に本作品をご覧になると一目瞭然なのだが、劇中には18世紀末のアメリカ南部の瀟洒な大邸宅が登場したり、その後ろで荘厳な音楽が奏でられていたりと、完璧な舞台装置の上で物語は紡がれて行く。
そこに、トム・クルーズやブラッド・ピット、そしてひいてはアントニオ・バンデラスと、美しい男たちが登場してくる。見目麗しさという観点でいうと満点の芸術作品である。
商業的成功
上映時間は123分と極めて標準的である。6千万ドルの製作費に対して、世界興行収入は2億2千4百万ドルと、3.73倍のリターンをもたらしている。ともするとグロテスクになりがちなこの意欲作において、キッチリとこれだけの利益を回収している辺りに、トム・クルーズとブラッド・ピットの高い集客力を感じる。
あらすじ (24分30秒の時点まで)
時は現代(1990年代)。場所はサンフランシスコの街中のアパートの一室。
FM放送のインタビューアーであるダニエル(クリスチャン・スレーター)は、街で見かけた男ルイ(ブラッド・ピット)に惹かれ、後を付けてインタビューへと漕ぎ着ける。ダニエルの動きを全てを察知した上でその依頼に応えるルイ。
ダニエルの「職業は何?」という問いに、「ヴァンパイア」という前例の無い答えをするルイ。ルイの話を信じないダニエルに対し、ルイは部屋の中を目にも留まらぬ速さで移動して見せて驚かせた上で、自身は血と肉はあるが、人間を辞めて既に200年が過ぎたと告げる。
ルイ(ブラッド・ピット)の人間離れした動きに恐怖を覚えながらも、その落ち着き払った身のこなしへの好奇心から逃れられなくなったダニエル(クリスチャン・スレーター)はインタビューを続ける。こうして、ルイの独白が始まって行く。
話は1791年へと飛ぶ。当時24歳だったルイは、ニューオーリンズ郊外のリッチな農場主であった。半年前に妻をお産で亡くした彼は、生きる希望を失い、ギャンブルと女に溺れて、死に場所を探しているような有様だった。
そんなルイに目を付けたのが、レスタト(トム・クルーズ)であった。レスタトは、無慈悲に人を殺すヴァンパイアであり、その特殊な能力で人間など、赤子の手をひねるように殺してしまう。彼はルイの首筋に自身の牙を突き立て血をすすりながら、「まだ死にたいか?」と問う。
この問いに、生き続けることを選択したルイは川に放り出され、レスタトはその場を立ち去る。ルイは溺れることもなく、翌朝川から歩み出て、自宅の屋敷までも自身の足で帰り着く。
しかしその晩、ルイが具合が悪くてベッドに横たわっていると、不敵な表情を浮かべたレスタトが再び忽然と姿を現し、病気や老いとは無縁の、驚くような新しい人生をルイにプレゼントすると言う。
この申し出を受け入れたルイ(ブラッド・ピット)は、翌朝、最後の陽の光をその目で拝んだ。レスタト(トム・クルーズ)はルイの首筋に再び自身の牙を突き立て、今度は致死量まで血を吸いつくす。そして、その代わりに自身の手首に傷を付け、血を滴らせる。瀕死のルイはその手首の血を貪るように吸う。
ルイの人間としての肉体は死に耐えようとしており、強い苦しみが襲ってくるが、それを乗り越えると、遂にヴァンバイアとしての再生となる。
ヴァンパイアとなり、物の見え方がガラリと変わったルイには、夜の闇がこの上なく美しいものと映るようになっていた。ルイの一連の話にすっかり夢中になったインタビューアーのダニエル(クリスチャン・スレーター)は、ヴァンパイアにまつわる言い伝えの真贋を知りたがる。十字架や心臓への杭は致命傷になるのか?眠るのに棺が必要になるのか?など。
それらの質問に丁寧に答えるルイ。そして引き続いて、ルイの屋敷に住み着いたレスタトとの新しい生活の日々について語り始める。
彼らは強烈な喉の渇きを癒すために、夜な夜な街へと繰り出し、若い女の生き血を吸う。人間の心を失っておらず、女に致命傷を与えるような血の吸い方を避けるルイに対し、レスタトは一切の容赦をせず女の血を吸いつくし、結果次々と人を殺して行く。
社交界にも繰り出し、一晩に若い女、金持ちの男、陰で罪を犯した者など、次々と血を吸い人を殺していくレスタト。そんな彼を目の当たりにしながらも、どうしても人を殺せないルイは、代わりに犬やニワトリなど、身の回りの小動物の生き血を吸うことで、何とか人殺しの一線を越えないように耐え続ける。
ルイ(ブラッド・ピット)は、いつまで人殺しをしないで済むのか?ルイとレスタト(トム・クルーズ)の蜜月はいつまで続くのだろうか?何故ルイは、自身の半生をインタビューアーのダニエル(クリスチャン・スレーター)に語る気になったのだろうか…?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを、幾つか順に述べてみたいと思います。
”インタビュー”・ウィズ・ヴァンパイア
既に軽く述べましたが、この映画はインタビュー形式で進んで行きます。この対話によって醸し出される独特の緊張感が、最大の見どころの1つだと思います。
かつ、インタビューをされる側が、ブラッド・ピット扮するルイというキャラクターなのですが、上記の「あらすじ」をご覧になれば分かるように、ルイはレスタト(トム・クルーズ)に巻き込まれるようにヴァンパイアになった立場です。
この闇落ちヴァンパイアが、映画序盤にインタビュアーに対して、淡々と職業は”ヴァンパイアである”と語るギャップ、底知れない不気味さが、この映画の雰囲気を定義付けています。是非、冒頭から緊張感を持って作品に臨んでいただけると、更に楽しめると思います。
「職業は?」
「ヴァンパイアだ」と答えるパワーワード
美し過ぎる男たち
この映画は、男も女もとても美しく描かれます。セットや照明、衣裳やメイクが壮麗なのもさることながら、若くて綺麗な女性の手首や首筋の血管が大変美しく描かれたり、それを見つめるヴァンパイアが怪しい表情をしたり。もちろん、それらは性的魅力や性的衝動のメタファーな訳ですが、必要以上に淫らに描かれていないところに監督ニール・ジョーダンのセンスを感じます。
そして、そのギリギリのラインを維持しているのが、トム・クルーズ、ブラッド・ピット、アントニオ・バンデラスの演技とその美しさです。彼らの端正な顔立ちが、ヴァンパイアを美しいものとして創造し、この映画を支えています。
リヴァ―・フェニックス
そして、インタビュアー役に、更にリヴァー・フェニックスが居てくれたら、どんなに素晴らしかったことでしょう…
クリスチャン・スレーターも大好きな俳優さんですけど
不老不死であること
この映画のテーマであり、最大の見どころの1つなのは、「不老不死であること」の意味だと思います。不老不死であることの虚しさや孤独。裏を返せば、老いること、病めることにより見えて来る生きることの価値、意義。そんなことを考えさせられるんじゃないかと思います。
そして、それを映画の冒頭で「200年間ヴァンパイアとして生きて来た」と口火を切ってから物語をスタートする点に、作品の意図を明確に感じます。是非是非、その辺りを感じながらご覧になると、より興味深い作品になると思います。
ガンズ・アンド・ローゼスの主題歌
主題歌が、ローリング・ストーンズの名曲「悪魔を憐れむ歌」(原題: Sympathy for the Devil) をガンズ・アンド・ローゼスがカバーしたバージョンです。
正直この曲の雰囲気、曲調が、この映画にマッチしているとは思わないのですが、この曲の歌詞の内容が、200年生きて来たヴァンパイアの独白と重なる部分は多いです。
「悪魔を憐れむ歌」は、「巨匠とマルガリータ」というロシア文学にインスパイアされたミック・ジャガーが歌詞を書いたと言われていて、一人称の “I” が、キリストの処刑、ロシア革命におけるロマノフ王朝の虐殺、第二次世界大戦時のドイツによるペテルスブルグへの侵攻、ヨーロッパで100年続いたとされる宗教戦争、そして、ケネディ兄弟の暗殺事件と、人類の歴史の転換点で、それを引き起こし傍観して来たという内容になっています。
美術の美しさ
衣裳、メイク、照明、セットと。中世の絵画から飛び出して来たかのような美しさです。受賞は逃しましたが、アカデミー美術賞にノミネートされました。
音楽の荘厳さ
エリオット・ゴールデンサールのオリジナル楽曲が、この映画に厚みを加えてくれます。受賞は逃しましたが、アカデミー作曲賞にノミネートされました。
実際に観て、感じて頂くことが全てかとは思いつつも、予習情報として頭の片隅に置いて頂いて、より味わい深く本作品を鑑賞するお手伝いが出来ると嬉しいです。
まとめ
いかがでしたか?
事前に少し意識しておく、情報として仕入れておくことを幾つか述べさせて頂きました。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 3.5 | 総合的に判断するとこういう感じです |
個人的推し | 3.5 | ヴァンパイア物はあまり強くオススメしないかも |
企画 | 4.5 | インタビュー + 独白 という形式は面白いです! |
監督 | 3.0 | ちょっと単調なような気が… |
脚本 | 3.0 | 同上 |
演技 | 4.0 | トム・クルーズとブラピの演技がリアリティを与えてくれます |
効果 | 4.5 | 美術が本当に美しいです |
このような☆にさせて貰いました。
要は、好きか嫌いかと自問した時に、そんなに好きな作品じゃないんだなというのが全ての回答です。良い面は沢山ありますが、強くお勧めはしない感じです。根幹には、ヴァンパイア物があまり得意じゃない感性があるんだと思います。
リヴァーフェニックスだったら違ってたかも…