この記事でご紹介する「リーサル・ウェポン4」は、1998年公開の刑事アクション映画。リーサル・ウェポン・シリーズの4作目であり、現在のところ映画最新作。本作でもメル・ギブソン扮する無鉄砲な刑事とダニー・グローヴァ―扮する温厚な刑事のデコボコ・コンビは健在だが、前作公開から6年を経て、物語は2人のライフ・ステージの変化を描き、よりドラマ色が強い作品に仕上がっています。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
本作では、敵役にジェット・リーが起用され、そのカリスマ性により前三作には無かった”敵役としての異様な輝き”を魅せてくれます。これはリーサル・ウェポン・シリーズには無かった新しい魅力です。
また、本シリーズの音楽を一貫して務めてきたエリック・クラプトンの「ピルグリム」が主題歌として採用され、エンディング曲として登場します。これが公開当時結構注目を集めました。
1作目~3作目をご覧になった方を中心に、この集大成的な4作目の世界をちょっと一緒に予習しませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から22分10秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧になると、この第4作目が、これまでの3作とは若干テイストが違うことを感じて頂けるのではないかと思います。そして、今回のストーリーがどのように転がり始めるかの端緒もご確認いただけます。好き嫌いをご判断いただく最短のタイミングではないでしょうか?
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「リーサル・ウェポン4」(原題:Lethal Weapon 4) は、1998年公開の刑事もの、バディもの、アクションもの映画。リーサル・ウェポン・シリーズの4作目であり、目下のところ映画最新作。ただし、続編制作の話は出ては消えてを長年繰り返し、遂に2021年に本シリーズの牽引役リチャード・ドナー監督が亡くなったこともあり、ほぼピリオドが打たれた格好だ。
なお、そもそもこの4作目の公開(1998年)は前作公開(1992年)から6年の時を経ていたこともあり、作品のテーマが、主人公マーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)とロジャー・マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)が次なるキャリア/ライフ・ステージを模索するような内容に軸足を移している。
また、これまで無茶をするのはリッグス刑事の専売特許と決まっていたが、本作ではマータフ刑事が自身の信念に基づいて無茶をする…
すなわち、この4作目は、新たな地平の可能性を探りつつも、一方でシリーズの総決算も少なからず意識していて、いずれにせよ、リーサル・ウェポン・ファミリーそれぞれにスポットライトを当てたヒューマン・ドラマの色が濃い秀作である。
敵役を十分にフィーチャー
その一方で、本作では敵役にジェット・リーを起用している。これまでの三作の敵役も、悪役に相応しい癖のある俳優が常にキャスティングされて来ていた。しかしその掘り下げ方は、ある意味ステレオ・タイプ的な中ボス、もしくはラスボスの範疇からはみ出るものではなかった。
ところが、本作におけるジェット・リー扮するワン・シン・クーというキャラクターは、ジェット・リーの悲し気な眼が醸し出す陰鬱な香りが怪しい魅力となり、「この男が犯罪を犯すには、それなりの理由がある」と思わせるような、妙な説得力があって大変不気味である。
四作目にして対決の構図の再定義を図っていて、これまた興味深い。
商業的成果
この映画の上映時間は127分と標準的な長さになっている(これはシリーズを通した共通の特徴)。製作費は1億4千万ドルと初のビッグ・バジェット(=1億ドル以上の予算)を獲得。しかし、世界興行収入は2億8千5百万ドルに留まった。
作品 | 制作費 | 世界興行収入 | リターン |
1作目 | 1千5百万ドル | 1億2千万ドル | 8.0倍 |
2作目 | 2千5百万ドル | 2億2千8百万ドル | 9.12倍 |
3作目 | 3千5百万ドル | 3億2千2百万ドル | 9.2倍 |
4作目 | 1億4千万ドル | 2億8千5百万ドル | 2.04倍 |
絶対額でみると大ヒットであるのだが、上の表のように前三作と並べて比較すると手放しで喜べないの状況であった。というのは、これまでの3作は予算は増えて行っても、売上も伸びて行っていたのでドル箱シリーズであった。しかし4作目では売上が急ブレーキ、莫大な予算と比較すると2倍強のリターンしか得られず、恐らくこの4作目単独で見たら総合的には赤字だったのではなかろうか。
あらすじ (22分10秒の時点まで)
ある日ロサンゼルス市街に、鉄板と強化ガラスで全身を覆い、火炎放射器と自動小銃で完全武装した無差別破壊犯が出現する。ロサンゼルス市警察のデコボコ・コンビ、マーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)とロジャー・マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)はただちに現場に急行し、苦労しながらも何とかこの場を制圧する。
その銃撃戦のさなか、2人はどちらの方が守る者が多いかという会話を交わすうちに、マーティンは恋人のローナ(レネ・ルッソ)の妊娠を、ロジャーは長女のリアンの妊娠を知る。つまり、それぞれが父と祖父になることを自覚するのである。
9ヶ月後、いよいよ妊婦たちに臨月が近づいて来たある晩、マーティン(メル・ギブソン)、ロジャー(ダニー・グローヴァ―)、レオ・ゲッツ(ジョー・ペシ)の3人は夜釣りに出掛ける。ところがそこで、中国からの大型密航船に遭遇してしまい、銃撃戦が勃発。
苦労の末、密入国者たちの身柄は拘束するも、先導していた中華系マフィアのメンバーは取り逃がしてしまう。
彼らは、仮に密入国に成功しても、多額の渡航費を中華系マフィアから借金として背負わされ、その結果入国後も奴隷のように働かされる境遇にある。あるいは今回のように密入国に失敗すると、本国に強制送還される憂き目に遭う。心優しいロジャーは、この悲しい現実に心を痛めてしまう。
アメリカの歴史、アフリカ系アメリカ人の歴史を思い返した時に、移民こそがこの国の礎を築いたのではないかと。
そんな中、移民管理局の目を逃れて、ある中国人一家数名が救命ボートの中に身を潜めていることを、ロジャーだけが見つけてしまう…
果たして、ロジャーはこの移民一家にどのような対応をするのだろうか?この密入国を手引きしている中華系マフィア蛇頭(スネークヘッド)の真の狙いはどこにあるのだろうか?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを5つの観点に絞って述べてみたいと思います。どれもネタバレなしで書いていきますので、皆さんがこの映画をより味わい深く鑑賞する一助になると嬉しいです。
リッグス – マータフ・コンビの新たなステージへの進化
毎度のことながら、この映画シリーズの魅力を語る際には、まずマーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)とロジャー・マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)のデコボコ・コンビの進化について触れなくてはなりませんね。
この記事でも既に軽く触れてきたように、本作ではマーティンもロジャーも(更に)守るべき者が増えるという状況に立たされます。特にマーティンはこれまで命知らずのハチャメチャ刑事で鳴らして来たものが、自分の身体は自分だけのものではなくなったことを初めて自覚していきます。そして、そこに加齢による衰えも加わって・・・
2人が愛らしいのは、自分のことよりも、まずは守るべき者が増えた相棒の身を先に気遣っちゃうところです。そして本作では、マータフがアフリカ系アメリカ人という自身のルーツに思いを馳せた時に、マーティンでも二の足を踏むような大胆な行動に打って出ます・・・
第4作目にして、リッグス – マータフ・コンビの新たなステージへの進化が観られるのが、この作品の最大の見どころだと思います。
”Lethal Weapon = 殺人兵器” からは離れて行くけど、キャラクターはまだまだ進化しています!
”ヴィラン” がシリーズ初登場
既に述べたように、この作品の敵役ワン・シン・クーをジェット・リーが演じています。前三作の敵役も、立派な敵役として描写されていましたが、それはステレオタイプ的な悪役の域を出ませんでした。
ところが、本作のジェット・リーは”ヴィラン”として丁寧に描写されていきます。言い換えればダーク・ヒーローとしての描かれ方をするという意味です。
ジェット・リーの表情、演技、そしてカリスマ性によって、極悪な犯罪組織のボスなのに「彼には彼の正義がある」と思わせる何かがあります。これはリーサル・ウェポン・シリーズの前三作には無かったテーストです。是非これを楽しんでください!
リー・リン・チェンとして「少林寺」で”ハー、ハー”って言ってた時代とは大違いの存在感です!
新キャラクター登場
クリス・ロック扮する新キャラクター、リー・バターズが登場します。これは、2作目でのレオ・ゲッツ(ジョー・ペシ)、3作目でのローナ・コール(レネ・ルッソ)の登場に続く系譜ですが、このリー・バターズについては若い次世代のキャラクターという意義があります。
正直クリス・ロックの魅力がリー・バターズというキャラクターで発揮し切れているとは思えないのですが(←ちょっと空回りしている)、4作目、5作目に向けてシリーズが世代交代をちょっぴり模索していたのかもと考えると、したたかで頼もしいです。是非、その目でお確かめください。
VFX も登場するアクション・シーン
シリーズも1998年に入ってVFX(デジタル加工による特殊映像技術)が活用されています。特に本作品では、炎や爆発シーンのエフェクトにおいてVFXが用いられています。ストーリーの本筋とはちょっと外れますが、前3作とは若干趣の異なるアクションシーンに目を凝らすのも、この映画の楽しみ方の一つだと思います。
また、伝統的な実写によるカーチェイス・シーンとかも、潤沢な予算を使ってスケールアップしています。是非是非お楽しみください。
エリック・クラプトンによる主題歌
シリーズ全作で音楽を共同担当してきたエリック・クラプトンの「ピルグリム」が本作の主題歌として採用されています。
本シリーズは、マイケル・ケイメンとエリック・クラプトンが共同して音楽を担当してきたものの、主題歌はジョージ・ハリソンやエルトン・ジョンの曲が採用されてきました。本4作目にして初めてエリック・クラプトンの曲が採用された格好になっています。
まとめ
いかがでしたか?
リーサル・ウェポン・シリーズの最新作にして、事実上の最終作について書いてみました。4作目であっても進化を模索している良作の魅力が伝わっていると嬉しいです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 3.5 | トータルでは勢いに陰りが・・・ |
個人的推し | 4.0 | 3まで観たのなら4も観よう! |
企画 | 4.0 | 新境地の開拓に余念なし |
監督 | 4.0 | テンポの良さは相変わらず! |
脚本 | 3.5 | 人間ドラマに深みが・・・ |
演技 | 3.0 | でも団体芸にも陰りが・・・ |
効果 | 4.0 | 更にド派手なアクション |
このような☆の評価にさせて貰いました。
結果論ですが、リーサル・ウェポン・シリーズはこの第4作目で幕引きで良かったのではないでしょうか?貪欲なこの映画シリーズらしく、新しい試みが随所に見られますが、賞味期限という意味ではここらがピークだったように思います。
3作目まで楽しくご覧になった方は、この4作目まで観てケジメを付けても良いのでは?