話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】クズ主人公映画「ナイトクローラー」(あらすじ、評価)

この記事でご紹介する「ナイトクローラー」は、2014年公開のクライム・スリラー映画。事故現場、犯罪現場を映像に収めてニュース局に売るフリーランスの男が、より過激な事件を求めて常軌を逸して行く姿を描いた作品。

衝撃映像を欲して、夜のロサンゼルスを徘徊する主人公の男を、ジェイク・ジレンホールが怪演する。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

監督・脚本を務めたのは、本作が監督デビュー作となったダン・ギルロイ。新進気鋭の監督が、怪優を主演に迎えてどんな映像を作り上げたのか?この記事でちょっと覗いてみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から26分30秒のタイミングをご提案します。
26分30秒

この辺りまでご覧になると、主人公がどんな経緯(いきさつ)で、フリーランスの報道カメラマンになったのかが掴めます。そして、どんな類の事件・事故を追おうとしているのかも理解できます。

この先も観続けるかをジャッジするのに最短なタイミングだと思います。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「ナイトクローラー」(原題:Nightcrawler) は、2014年公開のクライム・スリラー映画。視聴率争いを繰り広げるニュースTV局と、そこに特ダネ映像を売り込むフリーランスのジャーナリストを題材に、日々”ニュース”が商品として消費されて行くテレビの暗部を描いた作品。

より過激な事故現場、犯罪現場を求めて、次第に常軌を逸して行くカメラマンを、ジェイク・ジレンホールが怪演している。

監督・脚本は、本作が監督デビュー作となるダン・ギルロイ。

ギルロイは、約20年間脚本家として活動してきた後、2012年の「ボーン・レガシー」で共同脚本を務めたことを弾みに、本作での監督デビューに漕ぎ着けている。主演にジェイク・ジレンホール、助演にベテランのビル・パクストン、そして妻のレネ・ルッソをキャストに加え、更には兄のトニー・ギルロイが製作に加わり、この作品を完成させている。

評価

Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、95%とこの上ないほど高い支持率を得ている(Rotten Tomatoesでは60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』という評価)。

そして総評においても、”落ち着きがなく、視覚的に洗練され、ジェイク・ジレンホールのしなやかな演技に力づけられ『ナイトクローラー』は、ダーク、考えさせられるスリルを提供する” と、評されている。

商業的成果

この映画の上映時間は118分と極めて標準的な長さである。そして、製作費8.5百万ドルに対して、世界興行収入は4千7百万ドルを売り上げた。実に、5.58倍のリターンである。

5.58倍のリターン

絶対額としては、決してインパクトのある数字を残したとは言い難いが、製作費に対しては十二分なリターンをもたらしたと言える。

あらすじ (26分30秒の時点まで)

時は現代、場所はロサンゼルス。地価は下がり、失業率も高まる中、職にあぶれたルイス・ブルーム(ジェイク・ジレンホール)は、慣れない窃盗で食い繋ごうとしている。今夜も闇夜に紛れて工事現場に盗みに入ったところを、巡回の警備員に見つかったので、とっさに警備員を殴り倒し、その男の腕時計と、目当ての金網とマンホールを持ち去る。

スクラップ屋にその金網とマンホールを持ち込むも、そこの社長に盗品だと足元を見られ、安く買い叩かれてしまう。とっさの思い付きで、その社長に薄給でも良いから自身を雇って欲しいと直談判するも、「コソ泥は雇わない」と拒絶される。

その帰路、ブルーム(ジェイク・ジレンホール)がハイウェイ110号線を車で走っていると、自損事故の交通事故現場に遭遇する。ブルームは、とりあえず車を近くに停車させ、警官2人が女性運転手の救助に当たっている現場に所在なく歩み寄って行く。

するとそこに、猛スピードで1台のバンが到着し、中からテレビカメラを抱えた2人のクルーが走り出してきて、「一番乗りだ!」と事故の怪我人を一心不乱に撮影し始めた。

彼らは怪我人救助の手伝いをしないどころか、救助の邪魔になってもお構いなし。ベストなタイミング、ベストなアングルで現場の映像をカメラに収めていく。その後ようやく各種専門車両が現場に到着し始め、交通事故は収束を見せて行く。

このTVクルーに興味を持ったブルーム(ジェイク・ジレンホール)が、リーダー格の男(ビル・パクストン)を捕まえて幾つか質問をする。明確な返答は得られなかったものの、どうやら彼らはフリーランスの報道カメラマンで、事故・事件の映像を撮影しては、それをTV局に売り込んでいるようであった。

バンの中には撮影・編集機材がギッシリと積み込まれ、ブルームが自身も雇ってくれるように頼んでみたが、その会話の最中にも、傍受している警察無線で新たな事件の情報がもたらされ、彼らは次の現場へと走り去ってしまう。

翌朝早朝、ブルームが自宅のTVでニュースを観ていると、昨夜の交通事故の様子がほんの数十秒程度だが放映される。映像は、事故現場の様子を生々しく伝え、2人の警察官が献身的に女性を救助する姿、怪我人に命の別状はなかった事実が、編集でコンパクトにまとめられ報道されていた。

日中ブルームはビーチまで出掛け、そこで目に付いた競技用ロードレーサー(=高級自転車)を盗み、リサイクルショップに持ち込む。店主との買取価格の交渉では望んだ値段は付かなかったが、代替案として家庭用ビデオカメラと無線傍受機との物々交換に交渉を持ち込み、最低限の目的は達成するブルーム。

早速その晩から警察無線を傍受し始め、その情報を頼りに現地に車を急行させ、ホーム・ビデオで現場を撮影するブルーム。見よう見まねで幾つかの現場を経験する内に、カージャック犯による殺害現場の生々しい映像を撮影することに成功する。そして、先輩フリーランス・カメラマンの振舞いを盗み見て、映像の売り込み先を知る。

そんなローカルTVニュース番組、KWLA6に、ブルームが飛び込みでビデオ映像を持ち込むと、番組プロデューサーのニーナ(レネ・ルッソ)が、ブルームのセンスを高く評価し、彼のビデオを250ドルで買い取ってくれた。

ニーナの報道テーマは非常に過激なもので、”善良な市民が悲惨な目に遭う刺激的な映像”であった。それは例えば、ダウンタウンのような治安が悪い地域で必然的に起こる犯罪ではなく、治安が良い筈の郊外住宅街で、白人がマイノリティー犯罪者の餌食になり、”都市型犯罪の恐怖が郊外にも蔓延”的に、視聴者の不安を煽れる類の犯罪だ。

あるいは、車、バス、飛行機といった交通手段の事故、もしくは火事でも良い。

要約すると、何も悪くない人がある日突然辛い目に遭う様子にこそ、ニュースバリューがあるという考え方だ。

ブルームは、警察無線を徹底して傍受して研究し、ロサンゼルス市警の無線コード(数字の羅列)が、何タイプの事件を指し示しているのかを理解できるようになる。

それと同時に、アシスタント募集の広告を出し、ファミレスで採用面接を行っていく。

ここに現れたのが、キャリアも無く、定職に困り、半ばホームレスのような生活を行っていたリック(リズ・アーメッド)だ。

こうして、一晩30ドルという薄給で、半分騙されるかのように部下になったリックを引き連れ、ブルームはその晩から警察無線に耳を傾け、めぼしい事件・事故を選り分けて、そこに急行する生活を開始する。

2人に明るい未来は待っているのだろうか・・・?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころを3つの観点で書いてみたいと思います。どれも解説を加えるというような意図ではなく、この秀作のこんなところに着目すると、作品の良さがより際立って見えそうですよというご提案のつもりです。

全てネタバレなしで書いていきますので、安心してお読みください。

ジェイク・ジレンホールの狂気の演技

この映画の一番の見どころは、何と言ってもジェイク・ジレンホールのイカれた演技だと思います。

「あらすじ」で触れた映画冒頭に範囲を限定しても、その場しのぎの暴力を厭わない倫理観や、盗品の持ち込み先で『自分は勤勉で忍耐強い』と言い放つ厚顔無恥な姿勢、目的のためには手段を選ばず、むしろ興奮すら覚えてる?という精神性など、根本的に人としての倫理観が欠損しているようにしか見えないキャラクターが、静かに、でもジワジワと可視化されて行きます。

その目の奥には、社会に対する怒りもなく、貫きたい正義がある訳でも無く、平坦な表情に若干の快楽が垣間見える不気味さが、彼の抱えた矛盾をより強調して行くように思います。

このイカれた様子は、ストーリーが進むにつれて少しずつ加速して行きますので、是非楽しみにしてご覧になってみてください!

ニュースとは消費されて行くものなのか?

この作品は、現代社会の”報道”の在り方を鋭く批判しているように見えます。そこがやはり見逃せない見どころになると思います。

少なくとも、ニュース映像を売買し、それを次から次へと”商品”のように消費して行く。そんなニュース番組の舞台裏に物語は切り込んで行きます。

ジェイク・ジレンホール演じる主人公ルイス・ブルームが、この狂気のゲームにのめり込んで行くと何が起きるのか?目が離せません。

映像の美しさ

本作は、社会派スリラーなんですが、大変映像が美しい芸術作にも見えるんですよね。この辺りにも目を配って頂けると面白いかも知れません。

特に、宵や夜のロサンゼルスが凄く美しく描かれています。

人物を描写する際も、周囲にスモークがたかれ、そこに横から当てられる照明が美しい。なんだか幻想的。あれ?リドリー・スコット風?

でもその実態は、大都会で毎晩のように起こる事件や事故。そこに群がる自称ジャーナリストたち。そして、金でそのニュースを買い取るニュース番組関係者。

その美醜のギャップを強調するために、映像の見せ方に凝ってるんでしょうか?監督のダン・ギルロイのセンスが冴え渡ります。

あわわっち

脚本作品だけでなく、もっと監督作品を観たくなる、監督さんです!

まとめ

いかがでしたか?

社会派クライム・スリラーであり、芸術性も非常に高い本作。ダン・ギルロイの監督デビュー作ということで、強い意気込みも感じます。この記事を読んで観てみたいなと思って頂けると嬉しいです。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 4.0 バランスの取れた秀作!
個人的推し 4.0 J・ジレンホール出演作にハズレ無し!
企画 2.5 時代的に斬新な企画ではない
監督 3.5 癖が無く、素直に入り込める
脚本 4.5 豊富な情報量がテンポ良く伝わって来る
演技 4.0 J・ギレンホールの狂気の演技
効果 3.5 夜のLAの美しさ、不気味さ
こんな感じの☆にさせて貰いました

このような☆の評価にさせて貰いました。

”TV”のニュース番組を題材にしている点が、ネットやSNSが既に隆盛を極めた2010年代の時代に合致するのか?という疑問が残りますが、ニュース番組自体がメタファーで、ニュースを”商品”として”消費する”ことそのものが問題の本質なんだと捉えて、本作をご覧になられるのが良いと思います。

ジェイク・ジレンホールの映画にハズレなしです!おススメ映画です。

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