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【ネタバレなし】90年代最高の青春映画「リアリティ・バイツ」(意味・キャスト・あらすじ)

この記事でご紹介する「リアリティ・バイツ」は、1994年公開の青春映画。今(2023年)を生きる21世紀型の若者がZ世代(ジェネレーションZ)と呼ばれるように、1990年代の若者はX世代(ジェネレーションX)と呼ばれていた。そんなX世代の男女4人が、それぞれの人生の行く手に立ちはだかる厳しい現実(リアリティ・バイツ)を前にして、どうもがきながら生きるかを描いた秀作。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

本作品は、X世代(一般的に1965年~1981年生まれを指す)の最年長世代に当たるベン・スティラー(1965年生まれ)が、28歳の時に初監督をした作品である。イーサン・ホーク(1970年生まれ)、ウィノナ・ライダー(1971年)ら若手俳優を従えて、若者を等身大に切り取った青春映画として幅広い年齢層から支持されている。

今、青春真っただ中の人も、そうでない人も、かつて青春真っただ中だった人も、若者の息遣いまで聞こえて来そうなこの秀作の世界に、ちょっとだけ足を踏み入れてみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から29分40秒のタイミングをご提案します。
29分50秒

ここまでご覧になると、何よりこの映画のテーストが見えてきます。そして、4+1 人の主要な登場人物と、その関係性がつかめてくるので、この作品が好きか嫌いかを判断するのに必要十分な情報が得られると思います。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「リアリティ・バイツ」(原題: Reality Bites) は、1994年公開の青春映画。一般的に1965年~1981年生まれの世代を指す X 世代 (ジェネレーション X)の若者男女4人組が、大学卒業直後の20代前半に、どう生きる道を見つけるか模索する姿を描く青春ドラマ。

1990年代前半とは、1960年代(反体制・ヒッピー文化)、1970年代(ベトナム敗戦による挫折と厭戦)、1980年代(大量消費社会の成立)を経験した時代である。アメリカ社会が、確固たる理念を掲げにくい状況にあり、そんな価値観が崩壊した時代に、大学を卒業して社会に放り出されてしまった若者の葛藤を、一人の女性(ウィノナ・ライダー扮するリレイナ)の目線を通して切り取って行く。

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監督は、ベン・スティラーで、キャリア初監督作品。1965年生まれの彼は1993年の撮影当時28歳。大学を卒業したばかりの主人公の女男にウィノナ・ライダー(同22歳)、イーサン・ホーク(同23歳)を起用し、スティラー自身も既に一定のキャリアを積んだ先輩社会人の役どころで出演している。

Reality Bites の意味

“Reality Bites” とは、Reality(名詞)という主語が、動詞のBite(噛み付く)をする(更に英文法の三単現のSが付く)という意味である。つまり、Reality(現実)が噛み付いてくる、すなわち「現実(の世界)は厳しい」という意味である。

既述の通り、1960年代、1970年代、1980年代も、それぞれ生きるのは大変であったが、時代が向かう方向感は比較的明白で、それに沿って生きるか?(テーゼ)、それに反して生きるか?(アンチ・テーゼ)の旗色さえ判断すれば良かった。イデオロギーの構図としてはシンプルであった。

ところが、時代が1990年代ともなると、より多様な価値観が叫ばれるようになった一方で(← 今となって2010年、2020年代と比較すると、1990年代も十分画一的な時代だったのだが…)、統一された時代の方向感が失われてしまい、それはともすると”価値観の崩壊”であり、そんな社会の無風状態の中で、若者は夢や希望を持ち、自らのアイデンティティを確立できるのか?という切り口が、血肉の通った描写で紡ぎ出されていく。

ドキュメンタリーとの二重構造

そして、そうした時代のリアリティを描くに当たって、この作品の特徴的な点は、(主に前半だけだが、)ドキュメンタリーとの二重構造になっている点だ。

どういうことかと言うと・・・

映画の中で、映画や芝居が制作・上演される様が描かれる ”劇中劇”という構造は決して珍しくない。この劇中劇の狙いは、母屋の劇と劇中劇とのテーマが、整合すれば映画全体のメッセージが増幅させるし、矛盾すれば観客にそのギャップを疑問として投げかける効果を生んだりする。

この「リアリティ・バイツ」では、主人公のリネイナ(ウィノナ・ライダー)が、劇中で自らビデオカメラを手に取り、自身の周囲の友人の等身大の生活や、言動、そして想いを切り取るシーンが度々挿入され、それが母屋の劇と継ぎ目なく映し出されて行く。

そもそも母屋の映画全体が、リネイナ(ウィノナ・ライダー)の目線中心で描かれている設定に加え、度々リネイナ撮影のホームビデオ品質のシーケンスが挿入されることで、”X 世代の若者の手によって、その体温が感じられる距離から、X 世代の肉声を切り取った” 映画という立ち位置が、このドキュメンタリーとの二重構造によって巧みに強調されていく。

登場人物

物語は、テキサス州ヒューストン近郊の(架空の)大学を卒業したばかりの男女4人組を軸に進行して行く。

この物語の主人公であり、物語の主観を担うのはリネイナ・ピアース(ウィノナ・ライダー)。大学の卒業式で卒業生総代を務めたほどの才女だが、念願のTV局には契約社員としてしか就職できず、初老のタレントがホストを務める時代遅れの中高年向け番組のアシスタント・ディレクターに甘んじている。ホームビデオで撮りためた素材で、若者世代に迫るドキュメンタリーを制作して発表したいと望んでいる。

相手役のトロイ・ダイア―(イーサン・ホーク)。IQがずば抜けて高いが、育った家庭環境に難があり、特にガンで闘病生活を送る父親との折り合いが悪く、現代の資本主義社会を斜に構えて見ている。そんな背景もあり、周囲に知性を鼻に掛けた上から目線の皮肉ばかりを言う。卒業間近で哲学科を中退しており、定職にも就かず、バンド活動をしている。異性にモテるので手あたり次第女性と関係を持っているが、実はリネイナに想いを寄せている。

ヴィッキー・マイナー(ジャニーン・ガラファロー)。現代においては、女性の側がセックスの相手となる男を選ぶ時代だと考えており、豊富な男性経験を持つ。大学卒業後は、堅実にGAPに就職し、店員として真面目に働き、早々に店長への昇進を果たす。

サミー・グレイ(スティーヴ・ザーン)。比較的物静かで内向的なキャラクターだが、リネイナ、トロイ、ヴィッキーとの関係は常に良好である。実はゲイであり、そのことで両親との関係に頭を悩ませている。

マイケル・グレイツ(ベン・スティラー)。小さいながらも地元のMTV局で編成局長を務めている。この物語では、少し年上で、既に経済的自立を果たした大人の男性として描かれる。ひょんなことからリネイナと知り合い、付き合うようになる。

商業的成功

この映画の上映時間は99分と、少し短めである。製作費は1千1百万ドルで、世界興行収入は3千3百万ドルだったと言われている。3.3倍のリターンをキッチリともたらしたスマッシュ・ヒット作と言って良いのではないか?

3.3倍のリターン

あらすじ (29分50秒の時点まで)

時は1990年代。テキサス州ヒューストン近郊の大学の卒業式。

卒業生総代を務めるのは、リレイナ・ピアース(ウィノナ・ライダー)。彼女は卒業生代表の答辞として、「現代の若者は、BMW欲しさに週80時間働くような真似はしません。では、どう生きるべきか?その答えは・・・その答えは・・・分かりません」と述べる。

リレイナは、現代(1990年代)の若者が生きる等身大の姿に迫るドキュメンタリーを制作したいと考えており、ちょくちょくホームビデオで友人たちを撮影している。最も頻繁に登場するのは、仲良し4人組、リレイナ自身と、GAPの店員をしているヴィッキー(ジャニーン・ガラファロー)、哲学科を中退したトロイ(イーサン・ホーク)、そして心優しいサミー(スティーヴ・ザーン)だ。

リレイナの両親は既に離婚し、それぞれ別のパートナーと再婚を果たしている。卒業の祝いに、両親とそれぞれの再婚相手と祝いのディナーに出掛けるが、リレイナはバランスを取るために、やはり両親が離婚をしているトロイを自身のエスコート役に伴って祝いの席に着く。

その席上で、リレイナの父親は、自身のお古のBMWをリレイナに譲り、あるガソリン・スタンド・チェーンで使える、ガソリン代専用のクレジット・カードも合わせてリレイナにプレゼントし、向こう1年間のガソリン代は、自分が払うと約束する。

卒業後の生活だが、リレイナはTV局に契約社員として就職し、昔ながらのホスト主導型のトーク・ショー番組でADとして働いている。トロイは新聞スタンドの店番アルバイトで食いつなぎ、とっかえひっかえ女と寝るような荒れた生活を送っている。ヴィッキーもまた、昼は真面目にGAPで働いているが、夜は名前もろくに知らないような男と、とっかえひっかえ寝ることを趣味にしている。

そんなある日、トロイはバイト先の売り物であるスニッカーズを無断・無銭で食べたことが発覚しクビになる。結果、アパートの家賃も払えなくなり、リレイナとヴィッキーがルームシェアする部屋に転がり込んできた。

そしてリレイナは、ヴィッキーを助手席に乗せて、父から譲り受けたBMWを運転している際に、自身の不注意な振る舞いから、マイケル(ベン・スティラー)が運転する車と、軽い衝突事故を起こしてしまう。

マイケルは、若いながらも地元の小さなMTV局で編成局長を務めるやり手で、リレイナの不注意を不問に付し、これをキッカケに2人はデートをすることになる。

リレイナとマイケルのデートは想像以上に上手く行き、2人は意気投合して付き合うことになる。リレイナをアパートまで車で送り届け、アパートの前に停車した車でキスをする2人。これを偶然このタイミングで帰宅したトロイが目撃してしまう。

トロイは、密かにリレイナに想いを寄せているが、プライドが高いのでこれを認めない。そして、マイケルをいけ好かない奴だと決めつけ、マイケルと急接近するリレイナを非難する。リレイナは、この理不尽な非難に対して、トロイが寝ているような女たちより遥かにマシなはずだと応戦し、2人の仲は険悪になる。

果たして、4人の若者の生活は、この後どうなって行くのだろうか?マイケル – リレイナ – トロイの三角関係はどうなって行くのだろうか?

見どころ (ネタバレなし)

この魅力的な映画の見どころを、4つの観点にフォーカスして述べてみたいと思います。ネタバレはしてませんので、予習情報としてお考え下さい。

青春真っただ中の若者の描写

再三再四述べた、もしくは示唆したように、この映画はジェネレーションXの若者が、1990年代前半に大学を卒業し、社会に放り出された直後の時期に、仕事や恋愛、そして自らの生きる道を見つけることに悪戦苦闘する様を描いています。これは、既述のドキュメンタリー形式の織り交ぜも手伝って、その葛藤する姿はよりリアルに、生々しく炙り出されて行きます。

しかし、そんな彼ら彼女らの青春劇は、一歩下がって眺めると、決して1990年代特有の物でもなければ、ジェネレーションX特有の物でもないんですよね。大同小異。どの年代の大人だって、多かれ少なかれ似たような状況を通り過ぎて来たと思うんです。

不本意な相手に頭を下げることとどう折り合いを付けるかとか、そもそも仕事に就くこと、自らの生活費を自分で稼いでくることの意義とか、好きな人に、別の好きな人ができちゃう嫉妬心とか、男女の間に友情は成立するのかとか。

これらは、現代の現役若者にも、元若者の大人にも、非常に共感しやすいテーマだと思うんですよね。

イーサン・ホーク / ウィノナ・ライダー / ベン・スティラー の演技

イーサン・ホーク、ウィノナ・ライダー、ベン・スティラーの演技が特に素晴らしいです。

イーサン・ホークは、才能・容姿に恵まれているのに、社会を斜に見て皮肉ばっかり言っているトロイ・ダイヤ―という役を熱演しています。ともすると、単なる嫌な奴に成り下がってしまうこの複雑な役柄を、イーサン・ホークがギリギリのラインで演じることによって、共感”も”出来るキャラクターに仕上がっていると思います。是非ご自身の目でご確認ください。

ウィノナ・ライダーは、この映画に主観を提供するリレイナ・ピアースという役を演じています。両親(特に父親)はリッチなのに、そこからは距離を置いて自立して暮らしており、現代(1990年代)の若者の苦悩を一本のドキュメンタリー・ビデオにまとめるという野望も抱いています。彼女が、この映画の主題である若者の苦悩・葛藤を、もっとも象徴的に体現しており、その繊細な演技に注目です!

ちょっと年上で、大人のズルい面も垣間見せて来るマイケル・グレイツ役を、監督も兼ねるベン・スティラーが好演しています。この年長者が登場することで、社会に放り出された直後の世代特有の感じ方、想いが際立ちます。スイカにかける塩の塩分が、スイカの甘みをかえって際立たせるように、この年長者の存在が、主人公たちの忸怩たる思いを浮き彫りにするスパイスになってきますので、注目です!

ヘレン・チャイルドレスの脚本

この映画は、ベン・スティラーの初監督作であるのと同時に、実はヘレン・チャイルドレスが初めて手掛けた映画脚本でもあります。ヘレン・チャイルドレス自身も、1969年生まれのジェネレーションX。テキサス州生まれの彼女の実体験が、ヒューストン近郊を舞台にしたこの映画のストーリーに盛り込まれていることは想像に難くないと思います。

彼女が生み出したウィットに富んだ会話が、トロイのセリフを中心に劇中に飛び出すことで、この作品を単なるウェットな青春映画と一線を画す要因になっているんだと思います。是非お楽しみください!

音楽

印象的な楽曲が、映画の要所要所に散りばめられています。特に4曲をピックアップしておきますので、映画鑑賞時の参考になると嬉しいです。

この青春映画の秀作の見どころ、4つの観点に絞ってお伝えしてみました。皆さんがこの映画をより味わい深く鑑賞するお手伝いが出来ると嬉しいです。

まとめ

いかがでしたか?

ジェネレーションXの人じゃなくても、今はもう若者じゃなくても、この青春映画は一見の価値ありです。筆者は、「リアリティバイツ」と「グッド・ウィル・ハンティング」が、1990年代を代表する青春映画だと思っています。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 4.0 減点要素が見当たりません!
個人的推し 4.5 秀作青春映画イチオシ作!
企画 4.0 劇中ドキュメンタリーの生々しさと来たら
監督 3.5 これが初監督作だって!
脚本 3.0 個人的には、もう少し長くても
演技 4.0 若者の等身大で繊細な演技が見もの!
効果 4.0 映像の色がとても綺麗
こんな感じの☆にさせて貰いました

このような☆の評価にさせて貰いました。

減点要素が見当たらない秀作なんですよね。

強いて言えば、上映時間が少し短いかなと。短いこと自体は別に問題ないのですが、尺に余裕があるのであらば、トロイとリレイナのキャラクター、そして2人の初期の関係性を、もう少し時間を掛けて描いても面白かったかも知れませんと、素人は勝手なことを思ったりもします。

あわわっち

老若男女問わず、一度はご覧になってみてください!

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