この記事では、『レインマン』のヴァリー・レヴィンソン監督の、実話をもとにしたとされる、クライム・サスペンス・ドラマ『スリーパーズ』の解説をします。全米を巻き込んで物議を醸した実話か否かの議論や、演技、映像など語っていきます!
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
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ネタバレOKで、実話なのか?実話だとしたら”どこまでが実話か?”にフォーカスして知りたい方は、こちらの記事をどうぞ!
「スリーパーズ」という言葉に秘められた深い意味の説明もします。是非この作品の世界に足を踏み入れてみてください!
ジャッジタイム (ネタバレなし)
本作品における見続けるか、やめるかの判断となるジャッジタイムは
- 上映開始から43分30秒のタイミングをご提案します。
若干長めのジャッジタイムになりましたが、ここまでで本作の美しい映像や世界観と、過激な描写のどちらも理解していただけると考えています。
概要 (ネタバレなし)
この映画の位置づけ
映画「スリーパーズ」は、1996年に公開されたクライム・サスペンス・ドラマ。法廷物の側面も持つ。「グッドモーニング・ベトナム」「レインマン」「バグジー」で有名なバリー・レヴィンソンが製作(共同)・脚本・監督を務めている。レヴィンソンが監督を引き受ける場合は、必ず製作と脚本も担うのが彼の映画製作のスタイルであり、本作品もそうした一本。
レヴィンソンは、本作を製作するに当たって、原作の舞台となった1960年代のニューヨークの街並み、景色、雰囲気を再現することに腐心したようだ。また、原作の全体構成を見渡し、4人の主要登場人物の子供時代や、少年院での辛い体験に特に重きを置いて映像化したとも言われている。
実際に本作をご覧になると分かるように、それらは見事に成功したと言えるんじゃないだろうか?何故なら、4千4百万ドルの製作費で、世界興行収入1億6千6百万ドルの大ヒット作となったからだ。
上映時間は147分。これを長いと感じるか、あっという間と感じるかは評価が分かれるところだと思う
キャスト(子役・青年役対比表)
- 主要キャラクター4人
役名 | 少年時代 | 青年時代 |
シェイクス (ロレンツォ・カルカテラ) | ジョー・ペリーノ | ジェイソン・パトリック |
マイケル・サリバン | ブラッド・レンフロー | ブラッド・ピット |
ジョン・ライリー | ジェフリー・ウィグダー | ロン・エルダード |
トーマス”トミー”・マルカノ | ジョナサン・タッカー | ビリー・クラダップ (ビリー・クルーダップ) |
- その他の重要なキャスト
役名 | 俳優 |
ボビー・カリロ(神父) | ロバート・デ・ニーロ |
ダニー・スナイダー(弁護士) | ダスティン・ホフマン |
ショーン・ノークス | ケヴィン・ベーコン |
キャロル・マルチネス | ミニー・ドライヴァー |
実話なのかフィクションなのか論争
本作の原作となる同名小説”Sleepers”は、1995年1月1日にフィクション小説として出版された。
しかし、著者のロレンツォ・カルカテラは、この小説は、自身や自身の友人の少年院における実体験に基づいているとインタビューで述べている。その衝撃的な発言がどのぐらい影響を与えたのかは分からないが、この本は出版から1年以上もの間、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに君臨し続けるロングセラーとなった。
では映画の方はどうだろうか?本映画作品は、1996年10月18日に、あくまでもフィクション作として公開された(← ”実話に基づく”という記述はしていない)。しかし、カルカテラによる上述の発言があったために、各方面から実話なのかフィクションなのか論争が巻き起こった。
これは当然の結果である。というのも、物語があまりにも重い題材を扱っている上に原作者が実話宣言をし、小説も映画も大ヒットして多くの人の耳目に触れることになったのだから。言い換えると、それだけ社会への影響度が高く、関係者、組織の名誉に関わる問題となってしまった。
結論を急ぐと、ニューヨーク弁護士会が調査をした結果、カルカテラが学校を退学した、長期欠席した、あるいは少年院に収監されたというような記録は見あたらず、「カルカテラが少年院で虐待を受けた」という証拠は見つからなかった。つまり、フィクションだという一応の決着がついた格好になっている。
なお、”Sleepers” とは、「少年院上がり」を意味する隠語だ。劇中でも語られているが、犯罪を起こした未成年の更生と将来を考え、少年院に収監された記録は基本的に公にされない。つまり、少年時代の汚点をヒッソリと隠したまま、まっとうな社会生活を送っている者を”眠っている者”という意味でSleepers と呼ぶのだ。
僕らはエンタメとして見ればいいからそこまで気にしなくていいか!
あらすじ(43分30秒の時点まで)
舞台はマンハッタンのウエストサイド、通称ヘルズ・キッチン。4人組の少年たちは日々いたずらを繰り返す悪ガキだったが、ギャングが力を持つ荒れた街の中でもボビー神父(ロバート・デ・ニーロ)だけは4人を見離さず可愛がってくれた。
ある日4人は、いつものように屋台のホットドッグ屋からホットドッグを盗むことにする。一人がホットドッグを持ち逃げする囮役になり、残りの3人が無人の屋台から易々とホットドッグを盗むといういつもの手口だ。
この日は、4人の内の1人シェイクス(ジョー・ペリーノ)が囮役になった。首尾よくホットドックを楽々手に入れられることになった残りの3人だったが、マイケル(ブラッド・レンフロ)が”屋台ごと無くなってたら、店員が驚くんじゃないか?”と発案し、屋台を押して移動する。
更に調子に乗った3人は、屋台を地下鉄の入り口の階段に立てかけ、焦る店員の姿を見てからかおうと企てる。ところが、屋台は想像以上に重量があり、子供3人では支えきれない。気付いた時には手遅れで、屋台は地下鉄の階段を勢い良く滑降していき、たまたま通りかかった老人を重体にしてしまう。
この罪により少年院送りとなってしまった4人。そして少年院でこの4人を待ち受けていたのは、生粋のワルが集まる劣悪な環境と、看守たちからの性的虐待だった。
彼らにとってこの体験は先の人生にどう影響するのか。そして彼らはその辛い過去とどう向き合っていくのか。”スリーパーズ”はスリーパーズのままでいるのか、それとも過去を清算するための行動を起こすのか・・・
見どころ (ネタバレなし)
先の読めないストーリー展開
まず、本作の全体の構成に関して少しだけお話しします。本作を上・中・下に分けるとすると上が少年時代、中が少年院での体験、下が大人になってからを描いています。そのうえで、次のフェーズで物語がどう動くのかがわからないところがサスペンスとしての面白さを引き出しています。
逆に、奇想天外とも言えるストーリー展開は、映画にリアリティを強く求める方には枷となってしまうかもしれません。
だからこそ、実話かそうでないかが重要な論点となるのかもしれません。
繊細な心情描写と演技
本作では、先述した上、中のパートで少年時代を、下のパートで大人になってからを描いています。上のパートでは、致死罪を犯すまでの時間に必要性を感じづらいのですが、実はこの部分がキャラクターを掘り下げるうえでとても重要になってきます。
主人公であるシェイクス(ジョー・ペリーノ)は、特にボビー神父を頼りにしていて、そこからくる信仰心がのちのストーリーにも関わってきます。マイケル(ブラッド・レンフロ)は、少し達観したキャラクターでありながら、実は情に厚く心優しい部分が、大人になってから(ブラッド・ピット)も現れてきます。
中のパートでは、少年院での辛い日々をそれぞれがどう考えているかを深く描いていて、それが下のパートでの行動にどう現れてくるのか…心理描写に着目してご覧ください。
ブラッド・レンフロ、ブラッド・ピットのブラッド・コンビが同一キャラクターを!
映像と色合い
本作では、先述した上・中・下の3パートで映像の色合いが変わります。少年時代の楽しい日々は暖色の映像です。
ところが、少年院での辛い日々は比較的寒色の冷たい印象を抱く映像で、大人になってからは影の濃い暗い映像で描かれます。4人の感情とストーリーの雰囲気をわかりやすく映し出す色合いの変化をお楽しみください。
暖色の映像好きだね
フィルムカメラのアプリが一番盛れるので笑
ケビン・ベーコンの演技
子役を含めて、各俳優さんが素晴らしい演技をしているんだけど、ケビン・ベーコン扮するショーン・ノークス看守が憎たらしいこと、憎たらしいこと。皆までは申しませんが、この存在感があるからこそ、このシナリオが成立する訳で、是非この演技にもご注目ください。
個人的にはミニー・ドライヴァーに注目です!この映画の翌年「グッド・ウィル・ハンティング」にも出てるんですよ!
まとめ
総合的おススメ度 | 4.5 | 完成度が高く面白い!題材が重いのでこれ! |
個人的推し | 5.0 | 大好きな俳優、大好きな脚本、大好きな映像 |
企画 | 4.5 | 話題性が高いという意味で商業的に勝ち |
監督 | 4.0 | 綺麗にまとめた印象 |
脚本 | 4.5 | 先が読めないハラハラするストーリー |
演技 | 5.0 | 少年時代と大人時代の対比とデニーロ神 |
効果 | 4.0 | 描写ははっきりしてるので痛々しいかも |
個人的には、ロバート・デ・ニーロの抑えめな演技と、ブラッド・レンフロとブラッド・ピットが完全に同一人物に感じられる部分の演技に注目していただきたいです。
また、筆者は脚本重視のタイプなので、ストーリーが高得点な映画は大好きです!
ちなみに余談ですが、音楽はジョン・ウィリアムスです!
前半の映像とか、ニューヨークの悪ガキ4人組とか、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカを意識しているような…