この記事でご紹介する「最高の人生の見つけ方」は2007年公開のアドベンチャー・コメディ・ドラマ映画。余命6か月と宣言された初老の男性2人が、死ぬ前にやり残したことのリスト(棺桶リスト)を出来るだけやり切るための冒険旅行に出かける、涙あり笑いありの痛快な物語。
その病魔で余命半年となった男性2人を、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの名優2人が熱演する。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
生きること、死ぬこと、誰かを愛すること、誰かに愛されること。老若男女を問わずに観て頂きたい人生の普遍的なテーマを扱った名作。まだ観ることをためらっている方は、この記事を読んで観てみたいなと思ってもらえると嬉しいです。
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から29分00秒のタイミングをご提案します。
作品全体の尺(97分)に比して、ジャッジタイムまでが長いです、正直。
というのも、互いに全く異なる人生を歩んできた白人と黒人の男性があるキッカケから出会うという、構図としては分かり易すぎるぐらいのシナリオですが、少しずつ湯加減が上がっていくようなスタイルのため、まずは最低でも20分強はご覧になって、この作品が好きか嫌いか判断されることをオススメします。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「最高の人生の見つけ方」(原題: The Bucket List) は、2007年公開のアドベンチャー・ドラマ・コメディ映画。ガンで余命半年と宣告された初老の男性2人が、死ぬまでにやり残したリストをやり切るための冒険旅行に出掛ける物語。
出会った当初は反発し合いながらも、次第に打ち解け合い、ついには思い切った旅に出かけるこの男性2人を、名優ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが熱演している。
共同製作と監督を担当するのはロブ・ライナー。ライナー監督は、「スタンド・バイ・ミー」(1986年) で10代の少年たちの物語を紡ぎ、「恋人たちの予感」(1989年) でアラサー男女の揺れる恋心、「アメリカン・プレジデント」(1995年) で成熟した大人の恋愛を撮ってきた。そんな名匠が、2000年代に入って初老男性の終活に取り組んだのがこの作品である。
ライナー監督がこの映画を撮ったのは60歳に差し掛かる時。本人も年齢を重ねるのに合わせて、死を意識した作品に取り掛かったのはある意味自明だったのかも知れない。
なおライナー監督は、本作品をヒットさせた後も熟年層を主演に据えた作品を複数監督した。それらの作品間に内容的な関連性はないものの、柳の下のドジョウを狙った日本の配給会社が「最高の人生のはじめ方」(2012年) 、「最高の人生のつくり方」(2014年) と、続編風の邦題を付けて劇場公開をするぐらい、本作品は先駆けとなった映画である。
原題:The Bucket List の意味
この映画の原題は ”The Bucket List” という。これは一般的には ”棺桶リスト” と意訳される。すなわち、棺桶に入ってしまう前にやり残しのないように作る、やっておきたいことリストという意味である。
ただし英単語の方は、目を良く凝らして見て頂くと ”Bucket” という単語が入っていることに気付かれると思う。これは読んで字のごとくバケツのことである。
では、何故 “Bucket List” が ”棺桶リスト” と解されるのかと言うと、英語には ”Kick the bucket” という表現があって、実はこれには ”死ぬ” という意味の婉曲表現である。この辺りから転じて、その死のバケツをひっくり返しちゃう前に実現しておきたいことというニュアンスで、Bucket List = 棺桶リスト として使われるようになった。
キャスト(出演者)
この映画は、限られた人数の出演者がじっくりと関係を温めていく類の作品なので、キャストについて混乱を来すようなことはないと思う。この表の人物を把握しておけば十分である。
役名 | 俳優 | 役柄 |
エドワード・コール | ジャック・ニコルソン | ガンに侵された主人公の一人、病院を経営する大富豪 |
カーター・チェンバーズ | モーガン・フリーマン | ガンに侵されたもう一人の主人公。自動車整備工 |
バージニア・チェンバーズ | ビヴァリー・トッド | カーターの妻 |
トーマス | ショーン・ヘイズ | エドワードの秘書 |
ホリンズ医師 | ロブ・モロー | 主治医 |
評価
Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、41%と非常に低い支持率に留まっている(Rotten Tomatoesでは60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』という評価)。そして総評においても、”二人の主演俳優の真摯な演技でさえも、感傷的すぎる脚本から『最高の人生の見つけ方』を救い出すことはできない。” と、評されている。
どうやらRotten Tomatoes 的には、このどストレートなシナリオが、ベタで甘過ぎると評されたようだ。ただ、それは必ずしも興行成績とは連動しないのが面白いところで、次の節をご覧になっていただきたい。
商業的成功
この映画の上映時間は97分と、標準よりも短めに仕上がっている。そして、制作費4千5百万ドルに対して、世界興行収入は1億7千5百万ドルを売り上げた。これは3.89倍のリターンである。
必要以上の製作費を掛けず、期待した通りの名演技をスクリーンに焼き付けて、狙い通りに世界中で老若男女から支持を得た証左ではないだろうか。流石!ロブ・ライナー監督!
あらすじ (29分00秒の時点まで)
ベテラン自動車修理工として働くカーター・チェンバーズ(モーガン・フリーマン)。彼は学歴こそ無いものの、腕の良い技術工であり、博識で温厚な人物として仲間からの信頼も厚い。
ところが愛煙家であったせいだろうか、検査でガンが見つかり、入院を余儀なくされてしまう。
エドワード・コール(ジャック・ニコルソン)は、15の病院を経営するコール・グループの総帥で、金を稼ぐことを何よりの生きがいにしてきた男。そのせいか、今ではスッカリ典型的な頑固で皮肉ばかり言い、鼻持ちならない白人の大富豪といった男である。
コール・グループの病院経営は財政的には芳しくなく、理事会でも大問題となっていた。この突き上げに対してエドワードは、経営の合理化がまだ足りないせいだと反駁し、コール・グループ傘下の病院では、一切の例外なく入院患者は2人1部屋で入院する規則を厳命する。
ところが、そんなエドワードにもガンが見つかり、緊急入院を余儀なくされてしまう。
自身の病院へ入院したエドワード(ジャック・ニコルソン)は、自身が厳格に定めたルールに則り、別の入院患者との1部屋2床の相部屋へと収容される。そして、そのルームメートとなったのがカーター(モーガン・フリーマン)である。
秘書のトーマス(ショーン・ヘイズ)のことも家来のように扱う人物であるエドワード(ジャック・ニコルソン)は、ところ構わず不平不満をまき散らし、当然の如く同室のカーター(モーガン・フリーマン)に対しても不遜な態度で接してくる。こうした振る舞いを冷静に醒めた目で眺めるカーター。
ガンが脳にも転移していたエドワード(ジャック・ニコルソン)は、入院後日を開けずして脳外科手術を受けた。この手術は一応の成功を見たものの、ガンが全身に転移していることが判明する。
おまけに、エドワードのこれまでの人生を反映しているのだろうか、大手術の後なのに彼を病室に見舞う友人は一人も現れない。日々妻バージニア(ビヴァリー・トッド)や息子の見舞いを受け、家族の近況を聞かせてもらっているカーター(モーガン・フリーマン)とは対照的である。
そんなカーターとエドワードであったが、一向に好転しない体調と、判然としない病状、そんな中でも容赦なく襲ってくる化学療法の副作用。こうした得も言われぬ辛い経験を共にする内に、2人は少しずつ互いのことを話すようになり打ち解けあっていく。
そんなある日、遂に様々な検査の結果が出そろい、2人の病状が明らかになる。2人とも余命半年から1年という結果が出てしまうのだ。
果たしてカーターとエドワードは、このまま座して死を受け入れるのか?病室の2人は、話し合い、ある決意を固める・・・
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つの観点に絞って書いてみたいと思います。どれもネタバレなしで書いていきます。この作品をより味わい深く鑑賞するためのお手伝いができると嬉しいです。
異なる背景を持つ2人の交流
この映画は、ここまで再三書いてきたように、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンという二大名優の競演作です。
では何故この2人がキャスティングされたのかというと、端的に言えば黒人代表と白人代表の名優だったからということだと思います。
映画冒頭の数シーケンスを観るだけで、モーガン・フリーマン扮するカーターは、知性は高いが教育機会に恵まれなかった初老の自動車整備工という設定が見て取れます。ステレオタイプ的な黒人の庶民として描かれているわけです。
一方のジャック・ニコルソン扮するエドワードは、金も権力もあり、コーヒーをはじめ身の回りの物も一流の品を嗜好する傲慢な男。ステレオタイプ的な白人富裕層として描かれているわけです。
分かり易過ぎるぐらいの図式で、異なる背景を持つ2人が交流する人物配置です。
ただ両者の共通点は、一つはどちらも叩き上げだという点。白人エドワードも親の資産を受け継いだ親ガチャ勝者ではなく、自身で稼いだ金でこの地位まで上り詰めた。もう一つは、どのどちらにも病魔は襲い掛かってくる点。
分かり易く背景の違う2人を準備しながらも、共通点もしっかりと準備し名優二人の心の演技を撮る。素直にこのストーリーに乗っかっていけばよいと思います!
エドワードというキャラクターのフェアネス
ジャック・ニコルソンが演じるエドワード・コールというキャラクターは、プライドが高く傲慢で、嫌みや皮肉を連発する面倒くさいジーサンです。
ところが、こうした周囲に対する口撃に対してエドワードは、その相手からもウィットに飛んだ反撃を受けた場合は、それを正当に評価し、好敵手のように受け入れる公平性も持ち合わせています。これが実は映画の中で重要な役割を果たします。
というのも、この映画は、常識人カーター(モーガン・フリーマン)の目線を通して、エドワード(ジャック・ニコルソン)の傍若無人な振る舞いを描写して行くのが基本線です。ところが、エドワードのこのフェアネスが肝心なところで重石となるので、私たちは彼の過激なジョークも安心して楽しむことが出来ます。
この辺りのバランス感覚が抜群なんですよね。見どころです!
名言の数々
何せこの映画は、死、あるいは終活をテーマにしていますから、数々の名言が飛び出してきます。それらを逐一述べてしまうのは野暮なので、一つだけ紹介させてください。それは、カーター(モーガン・フリーマン)のセリフですが、
- 「人生で喜びを得たか?自分の人生は他人に喜びをもたらしたか?」(Have you found joy in your life? Has your life brought joy to others?)
というものです。
死を強く意識しながら自分の人生を振り返った時に、”自分は自分の人生を謳歌できたのか?あるいは、他人が人生を謳歌するのを手助けできるような存在だったのか?”って短い文章ですが、的を射ているなぁと思います。
こういった名言や、痛切な問いが出てくるのも、この映画の大いなる見どころです!
まとめ
いかがでしたか?
名優2人の、このド直球なヒューマン・ドラマ作品を観てみたいと思って頂けると嬉しいです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.0 | サクッと観られちゃうので、観ない理由はないです! |
個人的推し | 4.0 | ロブ・ライナーの新境地という観点でも見もの! |
企画 | 4.0 | 企画の勝利です! |
監督 | 3.5 | オーソドックスを貫いている |
脚本 | 3.5 | テンポが良い |
演技 | 3.5 | 演出の要求にキッチリ返答! |
効果 | 3.5 | アクションシーンも結構迫力あり! |
このような☆の評価にさせて貰いました。
テーマに対してオーソドックスな演出をコンパクトにまとめたという意味においても、素晴らしい作品だと思います。主演の2人もキッチリいい仕事をしています。97分なので、あまり深く考えずにご覧になって、素直に泣き笑いをするのが、正しいこの作品への向き合い方だと思います。