「天使のくれた時間」は、2000公開のドラマ映画。クリスマスの朝、ビジネスマンとして大成功している30代の男に、もし13年前に違う道を選んでいたらと、自分の人生を振り返る転機が訪れるファンタジー映画。
自分の人生を見直す主人公の男をニコラス・ケイジが、男の元恋人をティア・レオーニが熱演している。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
本作は、映画史上最高のクリスマス映画の呼び声が高い、「素晴らしき哉、人生!」(原題: It’s a Wonderful Life、1946年公開) をモチーフにしている。『あの時あの道を選んでいたら?』という、誰の人生にも付きまとう永遠のテーマに対峙し、人生に必要なのはお金?成功?それとも大切な人との愛?という問いかけをしてくれる作品。
実は、世間で思われているほどファンタジー色が強くない本作品を、ちょっとだけ予習して行きませんか?観るか観ないかはそれから決めれば良いと思うので。
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から26分00秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧になると、主人公の身にどういう経緯(いきさつ)で何が起ころうとしてるかが見えてきます。この先をご覧になりたいかを判断できる、必要かつ最短のタイミングとしてご提案します。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「天使のくれた時間」(原題: The Family Man) は、2000年公開のヒューマンドラマ映画。若くしてニューヨークのウォール街で大成功を収めている独身貴族の男が、ある朝目覚めると、全く異なる人生に放り込まれていたというお話。
その主人公の男をニコラス・ケイジが演じ、男の元恋人をティア・レオーニが演じている。どちらも大変情感のこもった見事なパフォーマンスを見せている。
「素晴らしき哉、人生」との関係
この映画は、「素晴らしき哉、人生」(原題: It’s a Wonderful Life、1946年公開) をモチーフにしている。往年のこの名作映画の、『天使に導かれた主人公が現在とは異なる人生を体験し、人生で本当に大切なモノは何か?を見つめ直すストーリー』にインスパイアされている。
整理すると、クリスマス・シーズンの物語である点、ファンタジー要素が含まれている点、そして人生の価値観を見つめ直すストーリーである点を準えている。
評価
Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、53%とあまり高くない支持率にとどまっている(Rotten Tomatoesでは60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』という評価)。総評においても、”「天使のくれた時間」は、ニコラス・ケイジとティア・レオーニのロマンチックな相性が誠実な甘さを加えているものの、映画の観客に対する『素晴らしき哉、人生』という訴えは、露出過多で感傷主義のきらいがある” と、評されている。
商業的成果
この映画の上映時間は125分と標準的な長さである。製作費6千万ドルに対して、世界興行収入は1億2千5百万ドルを売り上げた。2.06倍のリターンである。
興行成績としては、最低限の及第点をクリアしたというところだろうか。
キャスト(登場人物)
この映画のキャストは下の表の通り。総数もそれほど多くないし、ストーリー上の出入りも激しくないので、熱心に予習せずとも混乱することは無いと思う。
役名 | 俳優 | 役柄 |
ジャック・キャンベル | ニコラス・ケイジ | 主人公。30代半ばで、投資会社の社長をしているやり手ビジネスマン |
ケイト・レイノルズ | ティア・レオーニ | ジャックが大学卒業後に分かれた元恋人 |
キャッシュ・マネー | ドン・チードル | コンビニのレジに現れた謎の強盗犯 |
アーニー | ジェレミー・ピヴェン | |
アラン・ミンツ | ソウル・ルビネック | ジャックの投資会社の重役 |
ピーター・ラシッター | ジョセフ・ソマー | ジャックの投資会社のオーナー会長 |
アニー・キャンベル | マッケンジー・ヴェガ | |
ジョシュ・キャンベル | ジェイク・ミルコヴィッチ&ライアン・ミルコヴィッチ | |
エブリン・トンプソン | リサ・ソーンヒル | |
エド・レイノルズ | ハーヴ・プレスネル | ケイトの父親 |
アデル | メアリー・ベス・ハート | 投資会社の社員。ジャックの秘書 |
ポーラ | アンバー・ヴァレッタ | ジャックの恋人 |
ロレイン・レイノルズ | フランシーヌ・ヨーク | ケイトの母親 |
サム・ウォン | ケン・レオン | コンビニの店員 |
ジャニーン | ケイト・ウォルシュ | |
ニック | ジャンニ・ルッソ | |
ビル | トム・マッゴーワン | |
トミー | ジョエル・マッキノン・ミラー | |
家の中にいる男 | ロバート・ダウニー・シニア |
あらすじ (26分00秒の時点まで)
1987年のニューヨークの空港。大学を卒業したジャック(ニコラス・ケイジ)は、就職先の銀行の長期研修を受けるためにロンドンへ旅立とうとしていた。
ジャックを見送りに来ていたのは恋人のケイト(ティア・レオーニ)。2人は心から愛し合っているが、ジャックの将来を考えると、このチャンスは逃せないと結論付け、ケイトは恋人を快く送り出すつもりでいた。ところがケイトは土壇場になって、2人の仲がこれっきりになる予感がして、ジャックに留まるように懇願する。
しかしジャックは、彼の仕事の成功こそが2人の将来のためだと言い残し、ロンドンへと旅立っていく。
13年後。ジャックはニューヨーク・マンハッタンの高級マンションの最上階に暮らす大富豪となっていた。ただし、美人でセクシーな恋人ポーラ(アンバー・ヴァレッタ)とは深い関係ではない。そこには、翌日に控えたクリスマスに向けて互いのプレゼントを準備する喜びも、どちらかの家族と一緒に過ごす楽しみも無い。
クリスマス・イブのこの日もジャックは、高級スーツに身を固め、自慢のフェラーリで出勤する(ナンバーは、WRO 487)。30代半ばにしてウォール街の投資銀行の社長を務めるジャックには、1,000億ドル級の大型企業合併案件が2日後に控えているのだ。幹部を会議室に招集し、案件の詰めの工程に落ち度がないかを確認し、指示を出していく。
社のオーナー会長ピーター(ジョセフ・ソマー)から、合併のキーマンの気持ちが揺らいでいると聞けば、翌日のクリスマスも迷わずその人物に会いにいくアポを入れるなど、ジャックは仕事に入れ込んでいた。
そんなジャックに、秘書のアデルから伝言が届けられる。それは、13年前に別れたケイトからの突然の連絡であり、折り返し連絡を欲しいというのだ。ピーター会長の「過去の女と納税申告書は、3年過ぎたら破棄して良い」という趣味の悪いジョークに笑うジャック。ケイトの連絡先のメモは、そのままゴミ箱行きになってしまう。
この晩の業務をようやく終えたジャックは、エッグノッグが飲みたくなったので、帰宅途中のコンビニで買い物をすべく、今夜はオフィスに車を置いたまま徒歩で帰宅することにした。目当てのコンビニの棚からエッグノッグのパックを取り、レジに進もうとした時に、黒人の男性客キャッシュ(ドン・チードル)がコンビニに現れ、ロトの当たりクジ(238ドルの当選)を交換しようとする。
ところがレジの店員は、キャッシュの服装や振舞いを見て、頭からナンバー・クジを改ざんしたと決めつけ、現金との引き換えを拒否する。クジの真贋すら確認しない店員の態度に憤慨したキャッシュは、懐から拳銃を取り出してしまう。
ここで、この状況を見かねたジャックは、キャッシュにある提案をする。ジャックがキャッシュから当たりクジを200ドルで買い取る。これでキャッシュは現金200ドルを確保。ジャックは238ドル分の当たりクジを、他のコンビニで満額の現金と交換すれば38ドルの儲けとなる。「2人でこの取引を成立させて、こんな嫌な店さっさとズラかろう」とキャッシュをなだめ。三方が丸く収まるような形で事態を収拾して見せる。
店の外に出てしばらく街中を歩くジャックとキャッシュ。ジャックは、技能を身に付け真剣に働けば未来が開ける筈だとキャッシュを諭し始める。キャッシュはジャックの先程の見事な交渉術を誉めつつも、上から目線の提案は気に入らないと言う。そして、「いつか分かる時が来る」と含みを持たせた言葉を残して去っていく。
どっと疲れが出たジャックは、こうしてクリスマス・イブの夜、待つ者の居ない自宅の高級マンションに独りで帰り、ベットで眠りに就く。
ところが、翌朝目覚めると、ベッドの隣にはケイト(ティア・レオーニ)が眠っている。しばらくすると、まだ幼い長女と長男も夫婦の寝室に入って来て大騒ぎを始める。
当然の如く状況の変化に対応できないジャックは、目に付いた服に着替え、大慌てで1階へと降りて行く。そこには義両親のエドとロレインが現れるが、挨拶もそぞろにジャックは屋外に飛び出し、家の前に停めてあったミニバンに飛び乗り自宅マンションへと急行する。
しかし、自宅高級マンションのドアマンは、ジャックに見覚えが無いという態度を取り、建物内に入ることを断固拒否する。仕方がないので会社に向かうと、そちらでも警備員がジャックに見覚えが無いという態度を取り、入館を拒否する。そして、館内ロビーの案内板を見ると、自社の社長の名前が部下の名前に書き換わっている・・・
途方に暮れたジャックが、自分が乗ってきたミニバンに戻ろうとすると、キャッシュがジャックのフェラーリ(ナンバーは、WRO 487)に乗って現れる。
ジャックにも、キャッシュがこの突然の異変に関与していることは見えてきたが、彼は相変わらず「いずれ分かる」というような曖昧な言葉だけを残し、逃げるように去って行ってしまう。
果たして、突然家族を持つに至ったジャックは、この事態にどのように対応していくのだろうか?何がどうなれば、ジャックは元の生活に戻れるのだろうか・・・?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つのポイントに絞って書いてみたいと思います。こんなことを頭の片隅に置いてご覧になると、この作品をより味わい深く鑑賞できるのではないか?というご提案だとお考え下さい。
どれもネタバレなしで書いていきますので、安心してお読みください。
ニコラス・ケイジの演技
とにもかくにも、名優ニコラス・ケイジの演技に注目です!
映画の冒頭では、投資銀行の若き社長として、冷静な状況判断、周囲に対する的確な指示、オーナー会長から勝ち取った絶大な信頼。向かうところ敵なしといったキャラクターを、その演技で見事に可視化して行ってくれます。
マンハッタンの高級マンション、高級スーツ、高級車、周囲の上流階級の人々といった、アイテムやキャラクター配置の助けも借りながら、”無双している男”をキッチリ演じ切ってくれるので、これが強烈な前振りとして機能し、ある日突然郊外の庶民暮らしというパラレル・ワールド(並行世界)に飛ばされた時の戸惑いが際立ってきます。
是非ここのところを存分にお楽しみください。
”The Family Man” を救うティア・レオーニの演技
本作「天使のくれた時間」の原題は、 “The Family Man” と言います。直訳すると ”家庭人” となりますでしょうか。
この物語では、ニコラス・ケイジ扮する主人公のジャックに、ある価値観の対立構造が突き付けられます。それは、映画冒頭の、プライベートを全く顧みない”パワー・エリート” と、転生された人生の、決して裕福ではないけど温かな家族に囲まれた ”家庭人” という構図です。
つまり、ちょっと乱暴に言うと、【孤独な金持ち】 vs 【家庭的な貧乏人】という対比な訳です。
さて、人生ってそんなに単純だったっけ?と、ちょっと意地悪なツッコミを入れたくなります。家庭を大事にしながらも、沢山稼いでいる人もいるよね?と反証を挙げたくなります。20世紀も終わりを告げる2000年公開の映画なのに、このステレオタイプ的な価値観はちょっと時代遅れなんじゃないの?と。
このピンチからこの映画を救ってくれるのが、ジャックの妻ケイトに扮するティア・レオーニの演技です。
日常のふとした喜びや、煩わしい雑事を分かち合うこと。周囲の親族やコミュニティに一緒に溶け込み、その責任を果たすこと。そして何より、自分のことも大切にしながら、相手の気持ちを尊重し思いやること。こういった人生の、とてもとても大切なプライスレスな宝物を、全てティア・レオーニが演技で具現化していってくれます。
話の構図はいささか雑だけど、ティア・レオーニの血肉の通った演技が、この映画に息を吹き込んでくれます。ご期待ください!
キャッシュの正体
この映画のコアなファンの中では、キャッシュ(ドン・チードル)の正体は天使なのか?論争というのがあります。
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モチーフにしている「素晴らしき哉、人生」に天使が登場すること。そして、邦題も「天使のくれた時間」と言い切っていることから、天使の存在の匂いがプンプンします。
しかし、筆者の個人的な見解を述べさせて貰うと、「天使である証拠はないかも」となります。詳細はネタバレに繋がるので割愛しますね。
ただし、一つ言えることは、明らかに天使のような超人的な存在を登場させると、ファンタジー色が強くなり過ぎて、現代(2000年に公開)においてはこの話が荒唐無稽に見えると判断したのではないしょうか?
この映画の好き嫌いを判断する結構重要なポイントだと思います。皆さんはどう判断されますでしょうか?
まとめ
いかがでしたか?
古き良き時代のファンタジーを範にしながらも、2000年という時代に適応させた、中々の良作だと思います。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 3.5 | 天使の受け止め方で好き嫌い変わるかも |
個人的推し | 4.0 | 前向きになれるから好き |
企画 | 4.0 | 夢のある企画! |
監督 | 3.0 | 確かに全体的にちょっと甘すぎる??? |
脚本 | 3.0 | 125分の割にはちょっと雑? |
演技 | 3.5 | みんな味のある演技!! |
効果 | 3.0 | 住居にもっとメリハリを付けられたんじゃない? |
このような☆の評価にさせて貰いました。
誰の人生にも、「あの時あっちの選択をしていたら、自分の人生ってどうなっていたんだろう?」は、あるのではないでしょうか?それは恋愛に限らず、家族や友人との関係、学業や就職において。それを単なる未練や懺悔ではなく、暖かく前向きな気持ちにさせてくれる映画だと思います。おススメです。