この記事では、「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督と、怪しい魅力を放つ名優ティム・ロスが、エンニオ・モリコーネのオリジナル楽曲に乗せてお届けする不思議な世界、「海の上のピアニスト」について解説します。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
ジャッジタイム (ネタバレなし)
本作において、観続けるか、中断して離脱するかのジャッジタイムは、
- ずばり最初の49分00秒までは腹を決めてご覧になって頂きたい!
ストーリーが本格的に転がり始めるのにこれだけの時間を要します。ここまで観た上で、見続けるのか、離脱するのかを決めて頂ければと思います。
ファンタジー(非現実的要素・演出)はお好きですか?その辺りも少し意識して観ていただくと良いかも知れない。
概要 (ネタバレなし)
映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989年)で有名なジュゼッペ・トルナトーレ監督が、「ニュー・シネマ・パラダイス」から10年の時を経て世に送り出した作品(1999年公開)。原題:The legend of 1900
「ニュー・シネマ・パラダイス」と同様、トルナトーレが監督だけでなく脚本も担当しており、かつ音楽も全面的にエンニオ・モリコーネのオリジナル楽曲で構成されていて、トルナトーレ・ワールドを存分に楽しみたい人にお勧めの作品。
ストーリーは、ティム・ロス扮する1900(ナインティーン・ハンドレッドと読む)という一風変わった名前の天才ピアニストが、ニューヨークとヨーロッパとの間を定期運航する豪華客船内で生を受け、そのまま船上で育てられ、更に船の楽団の一員として他の追随を許さないピアノの才能を乗客に披露し続け、遂には一度も船を降りることなく生涯を過ごすのか?という、数奇な運命が描かれて行く。
ストーリー展開や描写において、本作は幾分非現実的なファンタジー要素が含まれており、そこもひっくるめて楽しむことを覚悟してからご覧になった方が良いかも知れない。要はファンタジーが好きかどうかって話ですね。
また、2023年2月現在においては、オリジナルのインターナショナル版(125分)を鑑賞できるのは、非常に限られた配信サービス(におけるレンタル配信)のみなので、本投稿ではより多くの配信サービスで鑑賞できる、上映時間170分のイタリア完全版を前提に書かせて貰いたいと思います。
見どころ (ネタバレなし)
ピアノの演奏シーン
本作品は、上述のようにティム・ロス扮する天才ピアニストの話なので、ピアノの演奏シーンがふんだんに登場する。特にイタリア完全版でマシマシ増量になった一つがこの演奏シーンなので、これが何と言っても最大の見どころ。
特に、歌詞無し、ナレーション無し。音楽だけで状況を描写するシーンは、ファンタジー要素とも相まって、ミュージカル風のテイストだと思って貰うと丁度良いかも知れない。
ティム・ロスの役作り
ティム・ロスは撮影前に数か月に渡ってピアノの猛特訓を受けたとのことで、彼の演奏シーンは、本当に彼が演奏しているようにしか見えないリアルさです!(実際に彼自身が演奏した音源も採用されているシーンも一曲ある!)
また、ティム・ロスの演技については、トルナトーレ脚本によるユーモア溢れる会話はもちろんのこと、台詞が無いカット割りにおいても、その豊かな表情の変化で雄弁に心の機微を表現していて、これが時に切なく、時に笑えます。
この顔芸のチャーミングさを楽しんで貰えれば。それ以前はともすると、「作品に彩を添える怪演が光る」に留まっていたような気もするティム・ロスが「あんたが主役!」という存在感を発揮しています!
エンニオ・モリコーネの楽曲 (全21曲・曲一覧)
楽曲は、エンニオ・モリコーネによるオリジナル楽曲です。このブログの存在を否定することに繋がりますが、その素晴らしさを言葉でお伝えするのは野暮ってもんですね。本当に素敵です。トルナトーレ監督がモリコーネに全幅の信頼を寄せて、この映画を作り上げていったであろうことがよぉーく分かります。
豪華客船の描写
本作の舞台はその大半が、一度に千人単位が船旅をする船上になるんですが、その広くもあり、同時に狭くもある、豪華客船という特殊空間の描写が、とても緻密かつ豪華絢爛です。ほぼ同時期に制作・公開された「タイタニック」と同様、この公開当時がCGを含めた特殊撮影技術が飛躍的に進歩した時期だったんですよね。
「船の上には、この世界の全てが詰まっているのか?」という、本作のテーマのようなものを説得力を持って描き出すのに十分な舞台装置となっています。ご注目です!
その他の情報
筆者のおススメ度合いは、 3.5/5.0 です。
正直、後半のストーリー展開が若干ダレるので、その結果上映時間の170分を長く感じてしまいます。あと、主題である「船上で生涯を過ごすことに意義があるのか?」という部分に、どれだけ共感を持ってストーリーに没入できるかが賛否が分かれるところではないかと思います。