話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】ブラピが映える・女性版ロードムービー「テルマ&ルイーズ」(あらすじ)

この記事でご紹介する「テルマ&ルイーズ」は、1991年公開の映画です。一言で言えば、バディ物ロード・ムービーですが、この作品が一味も二味も違うのは、テルマもルイーズも女性だという点です。この2人が生きる姿が、抑圧的な男性社会へのアンチ・テーゼであり、遅れてやってきた”アメリカン・ニューシネマ”と評されることもあります。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

女流脚本家カーリー・クーリの脚本を、名匠リドリー・スコット監督が、注意深く、そしてスタイリッシュに描き上げたこの名作を、より味わい深く鑑賞するために、少しだけ予習情報を仕入れてみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から23分30秒の時点をご提案します
23分30秒

ここまでご覧になると、テルマ(ジーナ・デイヴィス)とルイーズ(スーザン・サランドン)の2人の女性が、普段どんな生活を送っていて、どんな事件に巻き込まれて行くのか?が見えます。

この映画のテーストも見えて来ると思うので、好き嫌いを判断し、観続けるかを見極めるのに十分な情報が得られると思います。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「テルマ&ルイーズ」(原題: Thelma and Louise) は、1991年に公開された映画。ジーナ・デイヴィス扮するテルマと、スーザン・サランドン扮するルイーズの女性2人が、あるキッカケから逃避行をすることになる様を描いた作品。よって、文字通り”テルマとルイーズ”のバディ物の側面もあるし、いわゆるロード・ムービーの側面もある。

一方で、物語の下敷きとして、男性優位社会の抑圧への反抗、女性も自分で生きる道を選んで良いという自己解放、そして性暴力への強い批判といった、ともするとタブー視されがちな題材も含めた深遠なテーマ設定がなされていることから、1991年という時代に遅れてやって来た、かつての”アメリカン・ニューシネマ”と評されることもある。

いずれにせよ、エンターテイメント作品としても十分楽しめる作品であるが、20世紀の最後の10年間という時代の流れにマッチしたこともあり、女性のためのフェミニズム作品の先駆けとして、世の女性たちからも高い支持を受けている作品でもある。

本作で監督と製作(ミミ・ポークと共同)を務めるのはリドリー・スコット。スコット監督は、この「テルマ&ルイーズ」を撮るまで、「エイリアン」(1979年)、「ブレードランナー」(1982年)、「ブラック・レイン」(1989年) 等を撮って来ており、深遠なテーマを扱いながらも、アクション色が強い作品を制作するのが特徴であった。

ところが1990年代に入ると、この「テルマ&ルイーズ」(1991年) しかり、「G.I. ジェーン」(1997年) しかり、女性が女性であるだけで不利益を被るような状況下で、その女性がその逆境にどう対応して行くかをテーマにした作品を2作撮っているところが興味深い。

商業的成果

この映画は、上映時間129分と標準的で、1千7百万ドルの製作費に対して、北米だけで4千5百万ドルを売り上げている。これは2.75倍のリターンであり、既成の価値観に支配されがちなハリウッド映画界において、挑戦的な作風でありながら十二分な成果を上げたと言えるのではないだろうか?

芸術的評価

この映画は、「アメリカ国立フィルム登録簿」(National Film Registry) に登録されている。これは、連邦政府国立フィルム保存委員会(The United States National Film Reservation Board)が毎年25作品を選定するもので、本作品が、アメリカの文化的、歴史的、芸術的に、後世に多大な影響を与えたことが公的機関からも認められた証である。

脚本が女性目線であることに加え、テルマとルイーズというの2人の女性キャラクターを丁寧に描いた点、女性2人のバディ物であるにも関わらず(という認識・表現が、既に差別的だと認識しておりますが…)緊張感と開放感が巧みに織り交ぜられている点等が、エポックメーキングであったと高く評価されてのことだと思う。

そして、アカデミー賞でもカーリー・クーリが見事脚本賞を受賞している。

あらすじ (23分30秒の時点まで)

ダイナーでウェイトレスとして働くルイーズ(スーザン・サランドン)と、専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)は、女2人で2泊ほど小旅行に出掛けることを計画している。恋人と喧嘩中のルイーズは身軽だが、夫のいるテルマは、支配的な夫ダリルに、家を不在にする旅行の件をなかなか切り出せないでいる。

結局テルマはダリルが不在中に置手紙だけを残し、2人はルイーズの車に乗り込み、目的地へと向かう。

ルイーズ(スーザン・サランドン)は、ちょっとスレたところがあるもののシッカリ者。これに対してテルマ(ジーナ・デイヴィス)は、ちょっと天然で、妹タイプであり、夫との生活と距離を置けるこの小旅行に浮かれまくっている。必要以上の着替えを詰めた旅行鞄に、何故か非常用のオイル・ランプ、そして、念のためにと銃まで持ってきている。

2人が、道中目に付いた道路脇の大きなバーで一息付いていると、早速地元のハーラン(ティモシー・カーハート)という男が下心見え見えの声の掛け方をして来る。警戒を怠らず男と距離を置こうとするルイーズ(スーザン・サランドン)に対して、羽目を外す気満々でいるテルマ(ジーナ・デイヴィス)は、そんなハーランに対しても好意的だ。

ロックバンドが生演奏をする店内のフロアで、テルマはハーランに、ルイーズは他の男に声を掛けられてダンスを踊る。羽目を外したテルマは、酒とダンスで急速に酔いが回る。そろそろ店を後にして旅を続けたいルイーズが、トイレに寄っている隙に、酩酊したテルマはハーランに店外に連れ出されてしまう。

ハーランの目的は、人気の少ない店の駐車場でテルマとセックスをすることで、テルマがこれを拒絶すると、ハーランはテルマを自動車のボンネット上に力ずくで押さえつけ、コトに及ぼうとする。間一髪のところでルイーズが駆け付け、テルマが持参した銃でハーランを抑止する。

「ふざけていただけだ」とその場を取り繕うハーランに対して、ルイーズ(スーザン・サランドン)が”そうは見えなかった”と反論すると、逆切れしたハーランがルイーズに卑猥な言葉を投げつける。遂にキレるルイーズ。ハーランに対して銃を一発発砲してしまう。弾は左胸を貫きハーランは即死。2人は、ルイーズの車でその場を慌てて立ち去る。

ハーランから受けた暴行のせいで鼻血を垂らし、取り乱しながらも警察に行くことを勧めるテルマ(ジーナ・デイヴィス)に対して、フロアでテルマとハーランが仲睦まじくダンスを踊る様子を目撃している人間は数え切れず、不利な状況証拠が多過ぎると悲観的な判断を下すルイーズ(スーザン・サランドン)。

果たして2人の運命はどうなっていくのだろうか…?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の「見どころ」をネタバレなしでご紹介します。奇をてらわず、監督、脚本、出演者という観点で、この映画の素晴らしさを、順に積み上げて行ってみたいと思います。

リドリー・スコットの計算し尽くした構成

名匠リドリー・スコット監督が、計算し尽くした映画の構成をしていきます。

というのも、「あらすじ」を書いた23分30秒までは、徹底したリアリティを持って、テルマとルイーズの日常生活や、2人の身に降りかかった事件を描いていきます。

例えば、上映開始から、必要最小限のシーケンスでルイーズ(スーザン・サランドン)を、ちょっとスレてるけど人懐っこい女性として描き上げ、必要最小限のシーケンスでテルマ(ジーナ・デイヴィス)を、家庭に縛り付けられ、高圧的な夫にモノ申せない非力な女性として描いて見せます。

こうした序盤の容赦ないリアリズムとのバランスを取るためか、映画が始まった直後に謎のカットが挿入されます。それは、広大な砂漠の荒野に遠方まで続く未舗装の道路を映したカットで、画面の色も白黒からカラーになり、そして白黒に戻ってフェイドアウトします。

この何も遮る物がない大自然が、自由への解放を意味しているのでしょうか?そして、カラーは一瞬の煌めきを、前後の白黒は陰鬱を意味しているのでしょうか?いずれにせよ、大変抽象的で象徴的なカットなので、もし覚えていたら気を付けて観てみてください。そして、ここから何を感じるか?を考えて頂けると味わい深いかも知れません。

「ブレードランナー」(1982年) のオープニングでは眼球に映った未来都市の様子。「ブラック・レイン」(1989年) のオープニングでは日章旗(日の丸)に模した地球儀と、示唆的なカットの挿入を好むスコット監督。次は何で幕を開けるのかな?とオープニングに臨むのも、リドリー・スコット作品の楽しみ方の一つかも知れません。

カーリー・クーリの脚本

生活の中に埋もれる女性像を、女性の目線で描くことで、女性には「あるある」を、男性には「そうなのか!」を提供してくれるのが、本作のカーリー・クーリの脚本です。

本作では例えば、象徴的なアイテムを用いて、効果的に登場人物にキャラクター付けをして行くアイデアが見事です。

ウェイトレスのルイーズ(スーザン・サランドン)が、若い女性客に”タバコはセックスに良くない”とアドバイスを送りつつ、直後のカットで美味そうにタバコを吸ったりする。それに対して妹キャラのテルマ(ジーナ・デイヴィス)は、火を付けていないタバコを咥えて「私ルイーズよ」と、ルイーズへの憧れを示唆させたりする。

テルマもルイーズも、テルマが持って来てしまった夫ダリルの拳銃を、汚物を触るように扱う。この銃への嫌悪感を丁寧に描写しておきながら、後にその拳銃がテルマを暴行から救出する。そして、ルイーズに致命的な事件を引き起こさせる。

タバコや拳銃と言う、男性や男性社会のメタファーになり得るアイテムをストーリーに巧みに忍ばせることで、2人のキャラクターと、男性優位の社会への距離感を示唆して行くあたりが、カーリー・クーリ脚本の優れたところだと思います。

物語は「あらすじ」を書いた時点以降も、加速するようにどんどんと続いて行きますので、是非楽しみにしてください!アカデミー脚本賞受賞にも、納得のシナリオだと思います。

スーザン・サランドンとジーナ・デイヴィスの演技

カーリー・クーリの脚本に、リドリー・スコットの演出が加わり、その土壌の上に、スーザン・サランドンとジーナ・デイヴィスは素晴らしい演技を積み上げていってくれます。

「あらすじ」や、「見どころ」のここまでのところで述べたように、設定されたキャラクターを2人の女優さんは見事に演じています。そして、姉御気質のルイーズ(スーザン・サランドン)と妹キャラのテルマ(ジーナ・デイヴィス)という化学反応も加わり、2人の人物とその関係性は、非常に生々しく、手を触れると体温を感じられるような血肉の通ったものとして描かれていきます。

この投稿をInstagramで見る

Susan Sarandon(@susansarandon)がシェアした投稿

これが、ストーリーが進行するに従い、ある種の共犯関係に変貌を遂げます。それに伴い、2人のキャラクターが急速に成長する。それまでの抑圧された生活から、自分自身を解放する。いわゆるロード・ムービーの醍醐味も提示されて行きますので、是非楽しみにしていてください。

2人の女優さんが、今現在も公私共々良好な関係にあることは、2人のインスタグラムのアカウントからも窺い知ることが出来ます。

脇役ブラッド・ピット

映画が進行すると、ブラッド・ピットがJ.D. という役で出てきます。脇役は脇役ですが、非常に存在感があるキャラクターです。

詳細は控えますが、ブラッド・ピットのカッコ良さがあるからこそ成立する、不思議な役回りです。

ブラッド・ピットは、本作への出演がキッカケとなって、この後俳優としてのキャリアが開けたそうです。ある意味納得の演技ですので、ご期待ください!

ハンス・ジマーの音楽

リドリー・スコット監督作品ですので、本作でもオリジナル楽曲を提供しているのはハンス・ジマーです。

このロード・ムービーの中で、緊張や絶望、解放や喜びといった喜怒哀楽が錯綜して行く中で、ストーリーの邪魔をすることなく、分をわきまえて映画をアシストするBGMに脱帽です。

皆さんがこの映画をこれから視聴されるに当たって、より味わい深く鑑賞するための予習情報となっていると嬉しいです。

出演:スーザン・サランドン, 出演:ジーナ・デイビス, 出演:ハーヴェイ・カイテル, 出演:マイケル・マドセン, 監督:リドリー・スコット

まとめ

いかがでしたか?

女性二人のバディ物であり、ロード・ムービーであり、フェミニズム映画として、抑圧的な男性優位社会における女性を描いたこの映画、ほんのさわりをご紹介しました。ネタバレなしの予習情報になっていると嬉しいです。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 4.0 エポックメイキングな作品。一回観ておくべし
個人的推し 3.0 エンタメ作としてどこまで楽しめるか
企画 4.5 正しいテーマを正しい時代に選択
監督 4.5 映像美、リアリティ、演出のバランス良!
脚本 3.0 観ていると辛くなる…
演技 4.5 デービスもさることながらサランドン流石!!
効果 3.5 荒野の切り取りが美しい
こんな感じの☆にさせて貰いました

僭越ながら、このような評価にさせて貰いました。

1990年代初頭に、女性目線の映画を制作し、女性の解放へ挑戦していることにエポックメーキングなセンスを感じます。エンタメ作としての色は薄れますが、正しい時代に正しいテーマに、先駆者として臨んだといえるんじゃないでしょうか?

リドリー・スコット監督の映像は、リアリティと映像美がバランス良く配置されていて、流石だなーと思います。

スーザン・サランドンの存在感、リアリティ、演技、そして品の良さが堪りません。本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされましたが受賞には至りませんでした。ちなみに彼女は、「デッドマン・ウォーキング」(1995年) に5回目のノミネートで悲願の受賞となります。

あわわっち

映画ファンは1回は観ておくべき作品かも知れません。エンタメかどうかは別として…

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次