話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】シャロン・ストーンに注目「トータル・リコール」(あらすじ)

この記事でご紹介する「トータル・リコール」は、1990年公開のSFアクション映画。アーノルド・シュワルツェネッガーを主演に迎え、ポール・バーホーベン監督が、記憶を消された平凡な労働者が、記憶取り戻しながら巨悪と戦っていく様を描く。近未来の地球や火星を見事に映像化している。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

視覚効果の高さからアカデミー特別業績賞を受賞した圧巻の映像を背景に、記憶を消された人間のアイデンティ(自己認識)が揺らぐ姿を描いた、実は奥行きの深いこの秀作を、一緒に予習してみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から28分40秒の時点をご提案します
28分40秒

ここまでご覧になると、主人公の日常と、その日常に対する違和感の正体が見えてきます。当然、本作品のテーストも掴めてきますので、好き嫌いかを考え、観続けるかをご判断頂ける状況になると思います。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「トータル・リコール」(原題: Total Recall) は、1990年のSFアクション映画。原作は、フィリップ・K・ディックによる1966年出版の「追憶売ります」(原題: We Can Remember It for You Wholesale) である。原作小説は(も)、記憶を消された元宇宙飛行士のダグラス・クエイルが、REKALL 社で火星旅行の疑似記憶を植え付けられる直前から、記憶が呼び覚まされ始めるという内容になっている。

そういう意味では、プロットは原作に忠実であるが、原作本は短編小説なので、これを3人の脚本家が映画シナリオとして大いに膨らませ、かつ、近未来をイメージした大道具・小道具を配して見事に映像化したのが本作品である。

監督はポール・バーホーベンで、前作「ロボコップ」(1987年) の成功により、この「ロボコップ」(製作費:1千3百万ドル)の5倍の予算(製作費:6千5百万ドル)を獲得して、この「トータル・リコール」の制作に漕ぎ着けている。

なお、ポール・バーホーベンの本作の次回作は「氷の微笑」(原題: Basic Instinct・1992年) で、本作でローリー役を好演したシャロン・ストーンを大胆に起用し、大成功を収めた両者の大出世作となる。

フィリップ・K・ディック原作らしい作風

フィリップ・K・ディック作品の映画化は、「ブレードランナー」(1982年) に引き続く2作目で、どちらもディック作品らしい内容となっている。というのも、どちらも近未来を描いたSF物であるにも関わらず、扱っている主題は人間のアイデンティ(自己認識)だからだ。

ディック作品が我々に問いかけてくるのは、所詮は人間の自己認識なんてものは、自身の過去の記憶に立脚しているに過ぎず、その論拠となる記憶が改ざんされた物と分かった際に、人はどんな反応を示し、自身を何者と認識するのか?という問答が示唆的に描かれている。

芸術的評価

本作品は、視覚効果が高く評価されて、アカデミー特別業績賞を受賞している。この特別業績賞は、毎年必ず授与されるというわけではなく、特別な業績を上げた作品が出た際に与えられる賞である。

本作品が1990年(第63回)に特別業績賞を受賞した前回は、3年前の1987年(第60回)に音響効果編集で「ロボコップ」が受賞しているので、(担当者はそれぞれ異なるものの、)ポール・バーホーベンは、この特別業績賞と縁が深いのかもしれない。

商業的成功

本作品は、上映時間113分と標準的な長さで、(既述の通り)製作費6千5百万ドルに対して、世界興行収入が2億6千1百万ドルを上げる大ヒット作品となった。4倍強のリターンである。

4倍強のリターン!

あらすじ (28分40秒の時点まで)

未来の地球に暮らす建設作業員のダグラス・クエイド(アーノルド・シュワルツェネッガー)は、愛する妻ローリー(シャロン・ストーン)と仲睦まじく暮らしているが、何故か毎晩のように火星の夢を見る。そこでは、ブルネット・ヘアの別の女性と恋人同士で、ちょっとした油断からダグラス自身が瀕死の目に遭うところで目が覚める。

実際の火星では、クアトー率いる自由軍団が政府に対して独立を求めて暴動を起こしたが、軍隊の介入で武力鎮圧されたと、TVのニュースは告げている。また、コーヘイゲン火星長官(ロニー・コックス)は、今後も軍隊による治安維持に努め、火星におけるエネルギー鉱石の生産を維持すると宣言したとも伝えられる。

現状の生活に何か違和感を覚えているダグラスは、火星への移住を真剣に検討し始めるが、妻のローリーは、何故か火星にまつわる話は全て露骨に避けようとする。

仕方が無いので、地下鉄の車内広告で見た ”REKALL 社” の、疑似記憶を植え付ける方式の仮想火星旅行ツアーへの参加を考えるダグラスであったが、今度は職場の同僚ハリー(ロバート・コスタンゾ)がやたらと反対してくる。

それでも火星への未練が捨てきれないダグラスは、仕事終わりにREKALL 社を訪れ、脳が本物と区別できないという謳い文句の火星旅行の記憶を所望する。

店員から、土星旅行や様々なオプション・サービスを提案されたダグラスだったが、あくまでも目的地は火星旅行にこだわる。ただし、別人格であるスパイになり切って、美女を相棒に冒険旅行に出掛けるというオプションには興味をそそられ、システムで何故か選択肢に出て来た、毎夜夢に出て来るブルネット女性を相棒に選び、投与された睡眠薬により眠りに落ちる。

ところが、ダグラスは記憶植え付け処置を施される前に睡眠から目覚め、自身は”ダグラス”ではないと主張し暴れ出してしまう。これに慌てたREKALL 社側は、担当医が大量の睡眠薬をダグラスに投与し、今日 REKALL 社に来た記憶ごと消し、タクシーに担ぎ込み自宅へ送り出して、全ての証拠隠滅を図る。

担当医の見立てでは、どうやらダグラスは過去に実際に火星に行ったことがあり、本当にスパイであった可能性すらあり、睡眠薬でその記憶が呼び覚まされたのではないか?ということであった。

自宅マンションの前でダグラスがタクシーから降りると、待ち受けていた同僚のハリー(ロバート・コスタンゾ)が、突然銃を取り出し他の仲間数人と共謀してダグラスを拉致しようとする。一方のダグラスはこれに対して、自然と体が動き出し、武術と奪い取った銃で、この拉致犯たちを全員倒してしまう。

大慌てでマンションの自室に逃げ込み一息ついていると、今度は妻のローリー(シャロン・ストーン)に銃撃される。間一髪でこれを交わし、格闘の末にローリーを制圧すると、彼女から思わぬ告解を受ける。

それは、それ以前の正体は知らないが、少なくとも”ダグラス”とは作り上げらえた人格に過ぎず、ローリーとの8年間の結婚生活も植え付けられた記憶に過ぎず、自分はダグラスと同居しながら監視していたというのだ。自分が一体何者なのか分からなくなり、アイデンティが完全に揺らぐダグラス(仮)。

ローリーが救援に呼んだリクター(マイケル・アイアンサイド)率いる別の武装グループが、自身の元に駆け付けていることを察知したダグラスは、ローリーを殴り倒して気絶させ、追っ手から逃走を図る。

果たして、ダグラスは無事に逃げ切れるのだろうか?彼を監視して来た一味はどんな組織なのか?彼は何故記憶を消されたのか?”ダグラス・クエイド”という人格が仮の姿なら、彼の正体は一体何者なのか?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころを、ネタバレなしで4つのポイントに絞って述べてみたいと思います。

”トータル・リコール”というテーマ

この映画の見どころは、何を差し置いても”トータル・リコール”というテーマだと思います。言うなれば”全記憶回復”です。

自身の過去の記憶を消され、新たに ”ダグラス・クエイド” としての記憶を植え付けられたアーノルド・シュワルツェネッガー扮する主人公が、自身の”全記憶を回復”出来るのか?という命題が非常に興味深い訳です。

「ブレードランナー」(1982年) ほど重い描き方になっていないのが、シュワちゃん主演の良いところで、「ダグラス・クエイドじゃないっていうなら、俺は一体全体誰なんだよ?」という自分探しの冒険を、我々視聴者も一緒に楽しめば良いんだと思います。

あっつ

いやー、フィリップ・K・ディック原作の作品は面白いですね!

あわわっち

ちょっと厨二病っぽいけど、今の自分の記憶は偽物で、その下に秘密の人格が隠れてるとかって妄想するとワクワクしません?

恐るべしシュワちゃんの存在感

アーノルド・シュワルツェネッガーが良い味を出しています。

映画冒頭では、しがない勤め人の体を取っており、それを強調するように満員電車に揺られて通勤する様子が描かれたりもします。観ているこちらとしては「こんなムキムキなサラリーマンいねーだろ?」とちょっとツッコミを入れたくなりますが、直ぐに建設労働者として重いドリルを持って地面に穴を開けている描写が出てくると、妙に説得力があります。

そして、ストーリーが進むにしたがって、どうやら単なる労働者じゃなかったらしいということが明らかになるに連れて「やっぱりね!」という説得力を感じます。

これらはアーノルド・シュワルツェネッガーの肉体とキャラクターの存在感によるものだと思います。そして、アクションシーン(=暴力シーン)が、深刻になり過ぎない(=グロテスクに描かれ過ぎない)点も、この作品を素直に楽しめる要素だと思うんですが、皆さんの目にはどんな風に映るでしょうか?

ポール・バーホーベン監督の手堅い演出

ポール・バーホーベン監督の演出がとても手堅く、素直に没入して行くことが出来ると思います。

例えば、上述の「あらすじ」にも書きましたが、映画の冒頭で、主人公のダグラス(アーノルド・シュワルツェネッガー)は毎晩のように火星の夢を見ます。それを受けて、火星への移住を妻のローリー(シャロン・ストーン)に相談すると一蹴されてしまいます。

この一連のシーケンスにおいて、妻の隣で悪夢から目覚めた直後のダグラスの顔は画面の右(映画のお約束では過去志向)を向いています。一方で、妻に火星への移住を提案する時のダグラスの顔は画面の左(映画のお約束では未来志向)を向いています。

悪夢の描写という明示だけではなく、そこから引き続く妻との会話における顔の向きによる暗示も用いて、主人公ダグラスの心理を手堅く描き、映画に厚みをもたらしてくれているように思います。

また、アクションシーンでは、ファストカット(細かなカットを編集で繋いでいくこと)を用いて、スピーディーでスリリングなアクションを演出をしつつ、暴力がグロテスクにならないように工夫されています(蛇足ですが次回作「氷の微笑」とは大違いです)。

娯楽作品として存分に楽しむことが出来ると思いますが、皆さんはどう感じられるでしょうか?

キュートなシャロン・ストーン

後にも先にも、こんなにキュートなシャロン・ストーンを観られるのは、この作品だけなんじゃないでしょうか?

主人公ダグラスを騙し封じ込めるために、監視役の妻を演じているローリー(シャロン・ストーン)。そのために、夫を愛する妻を演じているローリー(を演じてるシャロン・ストーン)の表情が、実に可愛らしく、「これなら男はみんな騙されるわ!」と妙な説得力を生みます。

そして、時折見せる”上手くこの男を騙せてるわ” という小悪魔的な表情が、この作品のサスペンス性を積み上げて行きます。この映画でポール・バーホーベンの評価を勝ち取り、「氷の微笑」へと繋げて行くんだななんてことをちょっと念頭に置きながら視聴してみると楽しいかも知れません。

巧みな未来設定

随所に”未来設定”を実感できるアイテムが出てきます。ワンタッチで色が変わるマニキュアや、当たり前のように出て来るTV電話(1990年に!)。そしてプロジェクション・マッピング!後に現実となる物、そうではない物ありますが、ちょっとした小道具で未来設定を実感させる舞台装置に、映画の楽しさが詰まっているように思います。

以上、4つの点で見どころを、ネタバレなしで述べてみましたが、皆さんがこの映画をより味わい深く鑑賞されるお手伝いが出来ていると嬉しいです。

出演:アーノルド・シュワルツェネッガー, 出演:シャロン・ストーン, 出演:レイチェル・ティコティン, 出演:マイケル・アイアンサイド, 出演:ロニー・コックス, Writer:ロナルド・シャセット, Writer:ダン・オバノン, Writer:ゲイリー・ゴールドマン, 監督:ポール・ヴァーホーヴェン, プロデュース:バズ・フェイトシャンズ, プロデュース:ロナルド・シャセット

まとめ

いかがでしたか?

近未来を映し出したSFアクション映画でありつつ、人間の自己認識という深遠なテーマを扱った秀作だということが、多少なりとも伝わっていると嬉しいです。後は、「ジャッジタイム」も参考にして頂きつつ、ご自身の目でお確かめ下さい。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 4.0 総合力高し
個人的推し 4.5 Interesting です!
企画 4.5 企画の勝利!
監督 4.0 手堅い演出素晴らしい!
脚本 3.5 良いと思います!
演技 3.5 シュワちゃん、ストーンが良い!
効果 4.0 近未来感が!(車以外は…)
こんな感じの☆にさせて貰いました

個人的にとてもおススメの作品です。企画、監督、脚本、演技と、総合力の高いエンタメ作品であり、既に述べてきたように深遠なテーマもあり、色んな楽しみ方ができる奥行きのある作品だと思います!

リメーク作品の出来は別として、リメークしようと思われる作品というのは、それだけ豊富な要素を持ち合わせているということですよね。是非、1回はご覧になってみてください。

あわわっち

シュワちゃんのカリスマ性って凄いです!

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