この記事は、クリストファー・ノーランとクリスチャン・ベールのタッグによる「ダークナイト三部作」の三作目「ダークナイト ライジング」について解説します。大ヒットシリーズの最終章にどんな見どころがあるかに触れて行きますが、特にシリーズのシンボルにもなった前作「ダークナイト」と、どの辺りが異なるのかを中心に掘り下げて行きます。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
チェックタイム (ネタバレなし)
本作における、観続けるか、中断して離脱するかのチェックタイムは、
- 上映開始から29分30秒をご提案します。
ここまでご覧になると、本作の話の構図が見えてくると思います。「本作も面白い!」と思うのか、「こういうの向いてないわー」と思うのか、ここでご判断頂くのが良いと思います!
概要 (ネタバレなし)
本作品の位置づけ
「ダークナイト ライジング」は、2012年に公開されたバットマンを主人公とするヒーロー・アクション物です。バットマン映画としては、1943年公開の「バットマン」から数えると11作目。1989年公開のティム・バートン監督の「バットマン」から数えると8作目に当たります。
史上初めてタイトルに “Batman” という単語が入らない映画作品となった前作「ダークナイト」に引き続き、本作も「ダークナイト ライジング」(原題: The Dark Knight Rises)と題され、”Batman” という単語は入らず、Dark Knight (暗黒の騎士)物語は引き続いて行く格好になります。「バットマン ビギンズ」「ダークナイト」と合わせて「Dark Knight Trilogy (ダークナイト三部作)」が完成することになります。
なお本作でも前作に引き続き、クリストファー・ノーランが、原案(デヴィッド・S・ゴイヤーと共同)、製作(他2人と共同)、脚本(弟、ジョナサン・ノーランと共著)、監督の4役を務めている、またまたノーラン作品です。
僕ら親子が大好きなノーランはバットマンが大好き!
製作費は2.5億ドルと前作の1.85億ドルから激増!しかし、世界興行収入は前作の10.1億ドルを超える約10.8億ドルとなる2作連続の特大ヒット作となった。2023年現在、クリストファー・ノーランのキャリア最大のヒット作である。
あらすじ (29分30秒の時点まで)
某所で傭兵に誘拐されそうになったパヴェル博士(アロン・アブトゥブール)はCIAによって奪還され、チャーター機で帰還の途に付く。しかし、CIAが傭兵を脅して誘拐の黒幕を暴こうと功を焦ったため油断が生じ、逆に謎のマスク男ベイン(トム・ハーディ)とその一味に機上で襲撃され、パヴェル博士はベイン一味に奪い返されてしまう。
ゴッサム・シティでは、8回目のハービー・デント・デーを祝う式典がブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)邸で行われていた。ハービー・デント・デーとは、ジョーカーとの闘いで命を落とした地方検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)を記憶にとどめるための祝日で、逆にバットマンはハービー・デントを殺害した罪人として人々に認識されている。
ハービー・デントの死後、”デント法”が施行され警察権力の強化が図られ、これには賛否両論はあるものの組織犯罪は一掃され、ゴッサム・シティに平和が訪れた(結果、ブラックゲート刑務所には凶悪犯が1,000人収容されるに至った)。
式典に参列していたウェイン産業の重役ミランダ・テイト(マリオン・コティヤール)やジョン・ダゲット(ベン・メンデルソーン)は、ブルースに面会を求めるが、執事のアルフレッド・ペニーワース(マイケル・ケイン)に断られてしまう。ブルースは、屋敷の外に出ないばかりか、居室に閉じこもるばかりで、その姿を見る者は皆目いない状態だ。
メイド衆に紛れて屋敷に忍び込んでいたセリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)は、ブルースの居室に食事を届けた機会を利用して、ブルースの母の形見である真珠のネックレスを見事に金庫から盗み出す。その企みに気付いたブルースだったが、杖を突く必要がある程の怪我人のため、敢え無くセリーナに逃げられてしまう。奪われたのはネックレスだけでなく、自身の指紋も採取されたことにブルースは気付く。
犯罪の減ったゴッサム・シティでは、警察の要職が官僚主義的な者に占められるようになり、大功労者のジム・ゴードン本部長(ゲイリー・オールドマン)への評価は徐々に低下してきている。そんな折にゴッサム市警の屋上では、若手警官であるジョン・ブレイク巡査(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)がゴードン本部長に、8年前の事件の真相について投げかける。
一方セリーナは、実はコソ泥の常習犯で、第三者に雇われブルースの指紋を採取したのだが、取引場所である場末のバーでその雇い主に騙され殺されそうになる。しかし、それは想定の範囲内で、予め仕掛けておいたトリックで警察をも巻き込む銃撃戦を引き起こし、そのどさくさに紛れて姿を消す。
その現場に急行したゴードン本部長は、犯人を追ってマンホールから下水道に潜入する。しかし、そこで不意を突かれて囚われの身となってしまう。下水道を支配しているのは実はベイン一味だった。一瞬の隙をついて下水道に飛び込むゴードン。逃走には成功するが銃で撃たれて怪我をしてしまう。
機転を利かせ下水道の下流で瀕死のゴードンを回収したブレイク巡査は、翌朝ウェイン邸にブルースを訪ねる。執事アルフレッドの制止を突破しブルースとの面会を果たしたブレイクは「あなたの助けが必要だ。バットマン」と投げかけ、自身の生い立ちについて静かに話し始める・・・
ジョセフ・ゴードン=レヴィットの存在が、本3作目の新たなスパイスです。その静かな演技に注目です!
見どころ (ネタバレなし)
豪華キャストの競演です!
ノーラン三部作の最終章となった本作では、第1作に引き続き豪華キャスト競演感が再燃してます。2作目はとにもかくにもヒース・レジャーのジョーカーが目玉だったので、このメリハリが良いですね!
まず、謎の仮面男ベインに扮するトム・ハーディの存在感がデカいです。身長は173㎝と、イギリス人としてはそんなに大きな体躯ではないはずなのに、鍛え上げられた肉体から発せられる不気味さは、チェックタイム29分30秒まででも十分に感じて頂けるはずです!
顔の中心をマスクで覆われた役どころなので、微妙な表情による演技が不可能なこのキャラクターにおいて、舞台俳優として鍛えられた表現力が存分に生きていると思います。注目です!
ジョセフ・ゴードン=レヴィットが良いです!既に少し述べましたが、その静かな演技がとっても説得力があります。ブルース・ウェインとゴードン本部長。孤立無援に陥りがちなこのコンビに、ゴードン=レヴィット扮するブレイク巡査がストーリー上どんな刺激を与えてくれるのでしょうか?ご期待ください!
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アン・ハサウェイの刹那的な魅力も堪らないですね。常にどこかに哀しみを宿しているその表情や仕草が、映画の序盤から大きなフックになっていきますね。ご注目です!
「インセプション」の勢いがそのままに!
この他にも、怪しい魅力を放つフランス女優、既にオスカー女優でもあったマリオン・コティヤールもいます。トム・ハーディ、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マリオン・コティヤールの3人は、ノーランが本作の直前に撮った「インセプション」からの引き続く出演で、マイケル・ケインと合わせると4人もの俳優が両作品に出演していることになります。信頼を寄せた演者やスタッフは、積極的に連続起用していくノーランらしいキャスティングだと思います。
続編にありがちな惰性感無し!
続編って、通常柳の下のドジョウを狙うので、どうしたって惰性感が出ちゃうじゃないですか?あのゴッドファーザー PartⅢですら出たんですから。ただ、本シリーズに限って言うと、それは全く感じられないように思います。
確かに、ジョーカーを中心に据えた「ダークナイト」と比較すると、そのインパクトでは劣るかも知れませんが、ノーランの場合は”新たなテーマ”を必ず作品ごとに掲げてくるので、それがとても新鮮なんだと筆者は思います。
前作「ダークナイト」が完成した直後には、「皆さんはシリーズ物で、出来の良い3作目に出会ったことがありますか?」なんて弱気な発言してたらしいんですけどね。
本作で完結を迎えるノーラン三部作。皆さんはどんなふうに評価されますか?
「ダークナイト」より厚みが増している!
結局のところ、「ヒーロー」って何なの?とか、性善説 vs 性悪説とか、より重厚な雰囲気とか、よりスケールの大きなアクションシーンとか、前作「ダークナイト」より厚みが増している感じがします。この辺りが、大変大きな話題を呼んだ前作よりも、最後は興行的には上回るという結果に繋がったんじゃないでしょうか?
上映時間165分
本作の上映時間は165分です。
バットマン ビギンズ | ダークナイト | ダークナイト ライジング | |
上映時間 | 141分 | 152分 | 165分 |
ご覧の通り、シリーズを通して上映時間は段々と長くなっていっています。何か、長尺映画好きのクリストファー・ノーラン本領発揮って感じで、らしいですよね(笑)
まとめ
筆者の本作に対するおススメ度合いは、
総合的おススメ度 | 4.0 | 暴力シーンと全体的な暗さは好みの分かれるところかと |
個人的推し | 4.5 | イチオシです! |
企画 | 4.5 | 人生のどこまでが環境のせいで、どこからが自分の責任なんだろう・・・そんなことを考えさせられました |
監督 | 4.5 | 暴徒を人を使わずにエキストラで描く。これって言うほど簡単なことじゃないはず。そのノウハウが凄い! |
脚本 | 4.0 | 着地点をお楽しみに! |
演技 | 4.5 | 結局脇を固める演者さんが素晴らしいと、説得力が増してくるのと勉強させられました |
効果 | 4.5 | 言うことないでしょう? |
いつもの如く、暴力シーンがあることは人によって好き嫌いが分かれるので自動的に減点対象。後はシリーズを通して書いていますが、この独特の世界観が好きか嫌いか、個人の好みがハッキリ分かれるだろうなということを考慮してのこの☆です。
個人的には大大大好きな作品ですが、広くあまねく好みを考慮すると、この4.0が上限かな?
ちなみにですが、このダークナイト三部作の前後における、音楽、撮影、編集スタッフの入れ替わりが興味深いので下の表に整理しておきます。
ビギンズ | プレステージ | ダークナイト | インセプション | ライジング | インターステラー | |
公開年 | 2005 | 2006 | 2008 | 2010 | 2012 | 2014 |
音楽 | ハンス・ジマー | デヴィッド・ジュリアン | ハンス・ジマー | ハンス・ジマー | ハンス・ジマー | ハンス・ジマー |
撮影 | ウォーリー・フィスター | ウォーリー・フィスター | ウォーリー・フィスター | ウォーリー・フィスター | ウォーリー・フィスター | ホイテ・ヴァン・ホイテマ |
編集 | リー・スミス | リー・スミス | リー・スミス | リー・スミス | リー・スミス | リー・スミス |
音楽は、「メメント」以来採用されて来たデヴィッド・ジュリアンが、「プレステージ」で飛び地的に採用されますが、「バットマン ビギンズ」以降基本的には、ハンス・ジマーが「ダンケルク」まで採用されて行くことになります。
撮影は、「メメント」以降ウォーリー・フィスターが、「ダークナイト ライジング」まで鉄板で採用されています。しかし、「インターステラー」以降はホイテ・ヴァン・ホイテマに交代します。ウォーリー・フィスター自身が、映画監督としてのキャリアを築きたくなったんですって。
編集は、「インソムニア」まで採用されてきたドディ・ドーンを止めて、「バットマン ビギンズ」からリー・スミスを採用し、これが「ダンケルク」まで続いて行くことになります。
どんな基準、どんな契機で採用、交代が決まるんでしょうね???