この記事では、「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」について解説します。1作目の大ヒットを受けて製作された続編。シリーズの中でも、かなり異色なこの第2作が、どんな怪しい魅力に満ちているのか語って行きたいと思います。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
2023年のアカデミー賞で助演男優賞に輝いた、あの当時の名子役のこともお忘れなく!そんなこの作品の世界に足を踏み入れてみてください!
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかのジャッジタイムは、
- 上映開始から13分30秒のタイミングをご提案します!
端的に言うと、ここまでが序盤ですね。序盤の雰囲気をご覧になって頂いて、この映画が好きか嫌いかご判断ください!
概要 (ネタバレなし)
本作品の位置づけ
「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(原題: Indiana Jones and the Temple of Doom) は、1984年に公開された冒険アクション映画。ハリソン・フォード扮するインディ・ジョーンズ(考古学の大学教授であり、同時に冒険家)が、世界中で謎を解きながら冒険をするインディ・ジョーンズ・シリーズの第2作目。
インディ・ジョーンズ・シリーズは、1作目の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」がヒットした段階で、三部作として製作して行くことが既定路線であった。ただ、ジョージ・ルーカスには変な”癖”があると言われていて、それは三部作の2作目を異常に暗い作風にしないと気が済まないという物だ。
スター・ウォーズの初期三部作の「エピソード5/帝国の逆襲」しかり、次の三部作の「エピソード2/クローンの攻撃」しかり、2作目はとにかく暗い。そんなこんなで、この「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」も、暗い内容にするというのが基本コンセプトであった。
監督は前作に引き続いてスティーブン・スピルバーグ。スピルバーグは、シリーズ物の続編の監督を務めるのが、キャリア初の体験だったが、ジョージ・ルーカスは本作の監督を絶対にスピルバーグに努めて欲しかったという。なお、ジョージ・ルーカスは、本作で製作総指揮の他に編集も担当している。
前作で脚本を務めたローレンス・カスダンは、この暗いコンセプトが受け入れられず脚本担当を辞退した(「エピソード5/帝国の逆襲」の脚本家なのにね・・・)。
# | タイトル | 公開年 | 製作 | 脚本 | 監督 | 製作総指揮 |
1 | レイダース/失われたアーク 《聖櫃》 | 1981 | フランク・マーシャル | ローレンス・カスダン | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス ハワード・G・カザンジャン |
2 | インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 | 1984 | ロバート・ワッツ | ウィラード・ハイク グロリア・カッツ | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス フランク・マーシャル |
3 | インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 | 1989 | ロバート・ワッツ | ジェフリー・ボーム | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス フランク・マーシャル |
4 | インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 | 2008 | フランク・マーシャル | デヴィッド・コープ | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス キャスリン・ケネディ |
5 | インディ・ジョーンズと運命のダイヤル | 2023 | キャスリン・ケネディ フランク・マーシャル サイモン・エマニュエル | ジェズ・バターワース ジョン=ヘンリー・バターワース ジェームズ・マンゴールド | ジェームズ・マンゴールド | スティーブン・スピルバーグ ジョージ・ルーカス |
上映時間は118分。製作費2千8百万ドルに対して、世界興行収入3億3千3百万ドルと大ヒット!この年1984年のナンバーワン・ヒット映画である。
前作に引き続き、アカデミー視覚効果賞を受賞している。
あらすじ (13分30秒の時点まで)
舞台は1935年の上海。高級クラブで、白いタキシードに身を固めたインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は、現地の暗黒街のボス、ラオ・チェ(ロイ・チャオ)と、中華料理の丸テーブルを挟んで取引をしようとしていた。
その取引内容は、インディ側が差し出す、小さなガラスの壺に入った清の初代皇帝ヌルハチの遺骨と、ラオ・チェ側が差し出す大粒のダイヤモンドを交換するというもの。
ラオ・チェは、前日には息子のカオ・カン(リック・ヤン)をインディの元に差し向けて、力づくでこの遺骨を奪おうとしていた卑劣漢で、この日の取引においても、最後の最後までインディを銃で脅して遺骨を一方的に奪おうとする。
インディは機転を利かせて、たまたまテーブルに挨拶に来ていた、店の看板歌手ウィリー・スコット( ケイト・キャプショー)をとっさに人質に取り、取引を五分と五分に引き戻すことに成功。中華の丸テーブルに乗せられ回ってきた大粒のダイヤモンドを受け取る。
代わりに約束通りにヌルハチの遺骨の壺を、テーブルの反対側に回すインディ。ついに成立した取引に油断したのか、インディはグラスに入れて供されたシャンパンを飲み干してしまう。ところが、そのシャンパンにはラオ・チェ側が毒薬を仕込んでいた。
ラオ・チェは解毒税を餌にインディからダイヤを取り戻そうとするが、店に潜伏していたインディーの助手や、ラオ・チェの息子カオ・カンを巻き込んで銃撃戦が勃発し、クラブの中は大混乱になってしまう。
すったもんだした挙句、解毒剤を手にしたのはウィリー・スコット(ケイト・キャプショー)だったので、インディはウィリーを連れてクラブの外に脱出。中国人の少年ショーティー(キー・ホイ・クァン)が大慌てで運転してきた車に、インディとウィリーは飛び乗り、クラブの建物から逃走する。
車中で解毒剤を飲み、追っ手を銃で追い払い、何とか無事空港まで到着。予めチャーターしておいた飛行機にそのまま3人で乗り込み、空港の前まで追いついたラオ・チェに対して「Nice Try (よく頑張ったが、残念だったな)」と大見えを切って飛行機の扉を閉めるインディ。
ところが、その飛行機の機体には”ラオ・チェ航空”と書かれていた。
ほくそ笑みながら「Good bye, Dr. Jones (さよなら、ジョーンズ博士)」と呟くラオ・チェ。
果たして、インディたちの身にどんな危険が待ち受けているのか?インディたちは、このピンチを切り抜けることが出来るのか?
みどころ (ネタバレなし)
パラマウント・ピクチャーズのロゴへのオマージュ
このシリーズのお楽しみの1つは、冒頭のパラマウント・ピクチャーズのロゴへのオマージュですよね。本作でもキッチリ出てきますので、どんな内容なのか?ご自身の目でお確かめ下さい!
作品名 | オマージュの手法 |
レイダース | 南米チャチャポヤンから見える山の形状とロゴを重ねる |
とにかく暗い舞台設定とロケ地
既に書いたように、本作品はとにかく暗いです。結果的に暗いストーリーになった訳ではなく、こちらも既に書いたように、暗くすることを目的として様々な舞台設定を詰めたような節があります。この辺りが、本作品に対する好みが物凄く分れるところだと思います。「インディ・ジョーンズは好きだけど、2作目はキモイから嫌い」という声も結構聞きます。
女性はあんまり好きじゃないですね(自分調べ)
舞台設定がどういう経緯で決定したかを整理すると…
前作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」で敵役に設定されたナチス・ドイツを、本作でも繰り返し敵役に使うことは飽きられるだろうということで避けられた。時代背景に鑑みて、前作(1936年の世界)より後の時間軸で、ナチス・ドイツ抜きで世界を描くことは非現実的と判断され、本作品は前作より前に時間軸に置くこととした。すなわち、いわゆる前日譚となった(1935年設定)。
ジョージ・ルーカスが、本作はアジアを舞台にしたストーリーにすることを標榜し、中国の万里の長城をバイクで駆け抜けるような絵を多い描いたが、中国政府から撮影許可が下りず、舞台をインドに変更。
しかし、出来上がったシナリオは、インドに対する誤解を招く恐れがある設定となり、やはりインド政府から撮影許可が出ず、ストーリー上の舞台はインドのまま、ロケはスリランカで行われた。
ルーカスが、インドにまつわるどんなストーリーを具体的に思い描いたのかは本作を観てのお楽しみということにさせて貰いますが、一方でスピルバーグは、この暗さとのバランスを取るために、とにかくコメディ要素を盛り込むことに努めたという。結果、これは大成功したんじゃないかと思う。
設定は暗いけど、要所要所が面白いから好き!
冒険の相棒
ルーカスが目指す暗さを体現するためには、前作に登場したマーカス・ブロディ(インディの大学の上司、デンホルム・エリオット)とサラー・モハメッド・ファイセル・エル=カヒール(エジプトの発掘王、ジョン・リス=デイヴィス )は、キャラクターが明るすぎるという理由で出演はなくなった。
前作に引き続きカレン・アレンをマリオン・レイブンウッド役で出演させるつもりでいたが、カレンの家族の健康問題で、これは実現せず。
そこで考え出されたのが、10歳の中国人の男の子を冒険の相棒にするというアイデアだ。ロサンゼルスのチャイナタウンで行われたオーディションで、見事この役を射止めたのがキー・ホイ・クァン。彼は、元々中国系ベトナム人で、ベトナム戦争終盤のサイゴン(現ホーチミン)陥落に伴い国を離れ、香港を経由してアメリカ合衆国に移り住んだ移民家族の子だ。
ちなみに、今年(2023年)報道でも大々的に報じられたように、キー・ホイ・クァンは、2022年に公開された「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス (原題:Everything Everywhere All at Once)」でのウェイモンド・ワン役で、第95回アカデミー賞・助演男優賞を獲得しましたね。
この作品はアカデミー作品賞も受賞したんだけど、そのプレゼンターに登場したのが幸運にもハリソン・フォード!トロフィー受け渡しのセレモニーの際に、フォードとクァンが最高の形で再会(Reunion)した姿がとても感動的でした!
話を元に戻すと、冒険に巻き込まれて不平不満を述べる女性役(ウィリー・スコット役)も必要だろうということで、ケイト・キャプショーがオーディションでこの役を射止めた。ネタバレを避けるために詳細は割愛しますが、このウィリーというキャラクターはステレオタイプ的な”金髪のあまり思慮深くない女”という感じで描かれており、ケイト・キャプショー本人も、この役柄はあまり好きではなかったらしい。
ただし、スティーブン・スピルバーグとケイト・キャプショーは、この出会いをキッカケに後(1991年)に結婚。お互い再婚同士だったこともあり、2人の間にはそれぞれの連れ子も含めた7人の子供がいる。今から20年以上前に「アクターズ・スタジオ・インタビュー」にスピルバーグが出演した際に、恒例の”10の質問”で、
- 第5の質問:好きな音はどんな音? → 子供たちが一斉に上げる笑い声
- 第6の質問:嫌いな音はどんな音? → その子供たちが一斉に上げる泣き声
と答えて爆笑をかっさらったのを筆者は今でも覚えている。
麗しいオープニング・シーケンス
上映開始から3分弱続くオープニング・シーケンスは、ブロードウェイ初演が1934年というロングラン・ミュージカル「エニシング・ゴーズ (Anything Goes)」へのオマージュですね(現在の日本でも定期的に公演されている演目です)。
ミュージカル「エニシング・ゴーズ」の主題歌は、コール・ポーターという人が作詞作曲した”Anything Goes”。
この映画のためにジョン・ウィリアムズが準備したのも”Anything Goes”。劇中では、ケイト・キャプショー扮するウィリー・スコットが、中国語を交えながら楽しく踊りながら歌っていますね。
スピルバーグは、1940年代とかに隆盛を極めたミュージカルを、是非映像化したいとずっと思っていたらしくて、この映画のオープニングで、後の妻ケイト・キャプショーを主人公に据えて、ちょっとコメディ・テーストも加えながら、ショート・ミュージカル映画評論家上映し、夢を実現した格好になりますね!
このシーケンスだけでも、何回も観たくなります!
隠れキャラ
先程述べたように、スピルバーグは、この作品にコメディ要素を盛り込むことに腐心したと言います。その内容を述べちゃうとネタバレになっちゃうので差し控えますが、カメオ出演による隠れキャラの出現がこの映画では随所で楽しめるので、是非それを探して頂きたいです!
カメオ出演しているのは、
- ジョージ・ルーカス
- スティーブン・スピルバーグ
- ダン・エイクロイド
- オビ=ワン・ケノービ
オビ=ワンはちょっと変わった登場のしかたをしますよ!
音楽
音楽を担当したのは、前作に引き続いてジョン・ウィリアムズ。主題歌はもちろんあの曲です。ただし、この映画「Indiana Jones an the Temple of Doom」のSoundtrack では”End Credits”というタイトルになっており、構成もエンドタイトルの流れに合わせて大分編曲が加わっています。
特殊効果
2作連続でアカデミー視覚効果賞に輝いた本作も、特殊効果が素晴らしい!この作品の特殊効果は、ILM(Industrial Light & Magic、スター・ウォーズの特殊撮影のためにジョージ・ルーカスが立ち上げた専門集団の会社)が請け負っており、その様子はDisney+ で視聴できる「ライト&マジック」の第4話『仲間をみつけた』の後半(37分 ~ 39分)で少しだけ語られています。
まとめ
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.0 | 暗い、キモイ要素があります・・・ |
個人的推し | 4.5 | 個人的には大好きです、推しです! |
企画 | 4.5 | 一風変わった作風で良いアクセント! |
監督 | 4.5 | コメディ要素がホントに微笑ましい |
脚本 | 4.0 | ウィリー・スコットはこの後どこ行った? |
演技 | 3.5 | 良い面、悪い面混ざってます・・・ |
効果 | 4.0 | 今観るとちょっとショボく見えちゃう… |
基本的に大好きな映画です!ただし、グロテスクな描写もあったり、ゴニョゴニョゴニョゴニョ(←ネタバレ防止)で、好き嫌いが分かれる作品だと思います。なので、手放しでおススメは出来ません。
三部作を通して考えると、2作目が異常に暗いというアクセントは、個人的にはアリだと思っています。そして、一方で何度も述べているようにコメディ要素が多くて良いです!特にキー・ホイ・クァンとハリソン・フォードの掛け合いがホントに微笑ましくて、楽しいです。
ただ、本作品が前作の前日譚だということを考えると、時系列的には後になる前作で全く言及されていないウィリー・スコットは、存在ごとシリーズから消えちゃうことになるので、その不自然さは残念・・・
本作は、前作に引き続いてアカデミー視覚効果賞を受賞してます。してるんですが、今観ると特殊効果がちょっとショボく見えちゃうんですよね。前作「レイダース/失われたアーク」の特殊効果は、今観ても素晴らしいのに。この差は何なんだろう?
出演キャストの情報を以下に整理しておきます!
役名 | 俳優 | メモ |
インディ・ジョーンズ | ハリソン・フォード | 主人公、冒険家、考古学教授 |
ウィリー・スコット | ケイト・キャプショー | 上海のクラブの歌手 |
ショート・ラウンド | キー・ホイ・クァン | インディの相棒 |
モラ・ラム | アムリッシュ・プリ | 司祭 |
チャター・ラル | ロシャン・セス | 宰相 |
フィリップ・ブランバート | フィリップ・ストーン | イギリス軍大尉 |
ラオ・チェ | ロイ・チャオ | 上海暗黒街のボス |
ウー・ハン | デヴィッド・ヴィップ | インディの友人 |
カオ・カン | リック・ヤン | ラオ・チェの息子 |
チェン | チュア・カー・ジョー | ラオ・チェの手下 |
ウェバー | ダン・エイクロイド | カメオ出演なので内緒です! |
シャマン | D・R・ナーナヤッカーラ | 長老 |
族長 | ダーマダサ・クルップ | 現地の族長 |
ザリム・シン | ラジ・シン | 幼いマハラジャ |
チーフ・ガード | パット・ローチ | |
独房の少年 | アルジャン・パンドハー | |
独房の少年 | ジア・ゲラニ | |
商人 | フランク・オレガリオ | |
商人 | アーメッド・エル・シェナウィ |