この記事ではインディ・ジョーンズ・シリーズの4作目「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」について解説します。前作公開から19年の時を経て、本シリーズがどう進化したのか?
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
興行的には大成功を収めたけど、一方では駄作という評判があるのも事実。その辺りを見極めるためにも、この作品の世界に足を踏み入れてみてください!
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムだが、
- 冒頭から13分30秒の時点をご提案します。
ここまでご覧になると、本作で追い求めるお宝の輪郭がおぼろげながらも見え、そして本作の敵役が誰なのかが分かると思います。このシナリオの構図で楽しめそうか、そうでもないかを、ここでご判断いただくと良いと思います。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull) は2008年の冒険アクション映画。インディ・ジョーンズ・シリーズの第4作目。前作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」(1989年) から19年後に公開され、劇中の時間軸も19年後の1957年に設定されている。
インディ・ジョーンズ・シリーズは、前作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」で一応の完結を見せたが、ジョージ・ルーカスは、その後の”インディ・ジョーンズ”の構想を思い描いていたという。
スティーブン・スピルバーグは、1990年代の後半から2000年代にかけて「アミスタッド」(1997)、「プライベート・ライアン」(1998)、「A.I.」(2001)、「マイノリティ・レポート」(2002) と、立て続けにメッセージ性の強い暗めの映画を手掛けていたこともあり、明るい内容のインディ・ジョーンズの続編製作に前向きで、4作連続で監督として参画することになった(スティーブン・スピルバーグの監督作品のリストはこちらを参考にしてください)。
# | タイトル | 公開年 | 製作 | 脚本 | 監督 | 製作総指揮 |
1 | レイダース/失われたアーク 《聖櫃》 | 1981 | フランク・マーシャル | ローレンス・カスダン | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス ハワード・G・カザンジャン |
2 | インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 | 1984 | ロバート・ワッツ | ウィラード・ハイク グロリア・カッツ | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス フランク・マーシャル |
3 | インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 | 1989 | ロバート・ワッツ | ジェフリー・ボーム | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス フランク・マーシャル |
4 | インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 | 2008 | フランク・マーシャル | デヴィッド・コープ | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス キャスリン・ケネディ |
5 | インディ・ジョーンズと運命のダイヤル | 2023 | キャスリン・ケネディ フランク・マーシャル サイモン・エマニュエル | ジェズ・バターワース ジョン=ヘンリー・バターワース ジェームズ・マンゴールド | ジェームズ・マンゴールド | スティーブン・スピルバーグ ジョージ・ルーカス |
スピルバーグ以外にも、主役にハリソン・フォード、製作にフランク・マーシャル、製作総指揮にその妻のキャスリン・ケネディと、いつものメンバーが揃ったことで、製作が決定した。
上映時間は122分と標準的。製作費は1億8千5百万ドルと”ビッグ・バジェット”が投じられ、結果、世界興行収入7億8千6百万ドルという特大のヒット作となった。シリーズ最大のヒット作となった。これはこの年2008年の「ダークナイト (The Dark Knight)」に次ぐヒットであった。
”クリスタル・スカル”について
タイトルにもあるように本作は、『”クリスタル・スカル”の王国』をめぐる話だ。したがって、”クリスタル・スカル”そのものの予備知識無しでこの映画を鑑賞すると多少戸惑うかも知れない。
”クリスタル・スカル”とは、翻訳すると水晶骸骨のことで、文字通り水晶で出来たガイコツ像のことである。ただし、一般に”クリスタル・スカル”と言った場合に、そのガイコツ像は、ミニチュアではなく実際の人間の頭部の大きさのものを想定しており、かつ中南米から出土した考古学的価値があると”思しき”遺物を指している。
この”思しき”というのが曲者で、これまで”クリスタル・スカル”に該当する品は、世界中で20個弱確認されているが、”オーパーツ (OOPARTS)” なのではないか?という論争がある。”オーパーツ” とは、Out of Place Artifacts の略で、言うなれば場違いな遺物。すなわち、”この場所からこんな物が出土するはずがない遺物!”という意味だ。
どういうことかと言うと、最も有名な”ヘッジスのクリスタル・スカル”を例に取ると、この”クリスタル・スカル”は1927年に中米の国ベリーズのルバアントゥン遺跡で出土したと言い伝えられているが、その発掘の経過を記した客観的記録が無い上に、個人の所蔵物であった時期もあり、ますます検証に耐え得る証拠がない。
それではということで、そのスカル自体を1970年代以降、その時代、その時代の最先端の技術で鑑定したところ、2000年代になって、表面にダイヤモンド研磨剤を用いた近代技術による加工痕が確認され、少なくとも古代の遺物ではないことが立証された。
そうなると黙っていないのが”クリスタル・スカル”信奉者で、OOPARTSなのは(=古代では考えられない加工が施されているのは)、人類より科学水準の高い異星人からのコンタクトがあった証拠だ!ということになってしまう。
ジョージ・ルーカスは、本作「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」で、”クリスタル・スカル”をその題材に扱うことで、(ちょっと非科学的な)エイリアンの力を、中南米における考古学的研究という現実的な学問に着地させることで、このシナリオに織り込もうとした節がある。
このアイデアにリアリティを感じられるか、ワクワク感を覚えるか、が本作を好きになれるかどうかの分水嶺だと思う。
あらすじ (13分30秒の時点まで)
1957年、ネバダ州の砂漠。
アメリカ陸軍と書かれた、乗用車1台、ジープ2台、トラック3台が兵士を乗せて砂漠を貫く道を疾走して行く。向かう先は砂漠のど真ん中に位置する基地だ。
基地入り口は数名の門衛兵士たちに門前払いを喰った一行だったが、計画通りの流れるような動きで門衛全員を射殺し、基地の奥へと進んで行く。
基地中央の建屋の前に着くと、乗用車のトランクから2人の男が引きずり出される。1人はジョージ・マクヘイル(レイ・ウィンストン)、もう1人はインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)だ。
アメリカ兵と思われていた兵士たちは、実は全員ソ連兵で、インディは、上官ソ連兵であるアントニン・ドフチェンコ(イゴール・ジジキン)に、目の前の建物に見覚えがあるかと尋ねられる。
回答をはぐらかすインディの前に、今度はその上官のイリーナ・スパルコ大佐(ケイト・ブランシェット)が現れ用件を説明し始める。目的は目の前の建屋(倉庫)に収められたある箱で、そこにはインディが10年前に政府に協力して発見したミイラが収められている筈だという。
この話になり表情が一変するインディ。しかし、スパルコ大佐に剣で脅され仕方が無くミイラの箱を探し始める。しかし、倉庫内はサッカー場並みの広さに、似たような木箱が所狭しと積み上げられているため、目当ての箱の位置は皆目見当が付かない。
そこでインディはスパルコ大佐に火薬を所望して、これを空中散布する。すると、お目当てのミイラが発する強力な磁場で火薬が吸い寄せられる。半信半疑で様子を見ていたソ連兵たちであったが、宙を舞う火薬の向きを頼りに、インディが箱の在りかを効率良く絞り込んで行くのを見て、次第に真剣な顔つきになって行く。
最後は散弾銃の弾をバラし、散弾をまき散らして目的の箱の位置を特定したインディ。表面に散弾銃の散弾が幾つも貼り付いた目当ての木箱が、積み上がった木箱の山の中から発見された。
いよいよ木箱の蓋を変えると、入れ込錠に収められた鉄の箱が現れ、金属を吸い寄せる磁力はますます強くなった。もはや工具や銃や剣やメガネやら、金属製の物は何でも吸い寄せられてしまう。鉄の箱には「ロズウェル、1947年」と書かれており、更にその鉄の箱を開けると、中からミイラ状の生物がその姿の一部を現し、外に飛び出した手が動いているのが見える。
この未知なる生物に目を奪われる全ソ連兵。その一瞬の隙を突いて、インディは兵士の一人から自動小銃を奪いスパルコ大佐に銃口を向け、大佐を死なせたくなかったら銃を捨てろとソ連兵たちを脅す!
果たして、インディはこのままこのピンチを脱出できるのだろうか?引っ張り出されてきたミイラは何の生物なんだろうか…?
見どころ (ネタバレなし)
パラマウント・ピクチャーズのロゴへのオマージュ
映画のオープニングを飾るのは、お約束の”パラマウント・ピクチャーズのロゴへのオマージュ”ですね。
本作でもキッチリと出てきますので、どんなオマージュなのか、そしてその精度をご自身の目で確かめてください!
作品名 | オマージュの手法 |
レイダース | 南米チャチャポヤンから見える山の形状とロゴを重ねる |
魔宮の伝説 | 上海のレストランにある巨大なゴングの模様とロゴを重ねる |
最後の聖戦 | ユタ州(ブライス・キャニオン)の岩山とロゴを重ねる |
アメリカン・グラフィティへのオマージュ
引き続いて出てくるのは、オープンカーで砂漠を疾走する若い男女4人組ですね。このエンジンルームがむき出しになっている特徴的な車。これ、フォードの1932年型のデュース・クーペですよね?正式名称は、フォードB型、通称”デュース”。どこかでご覧になったことありませんか?
そうです!ジョージ・ルーカス監督の出世作「アメリカン・グラフィティ」(1973) に出てくる車ですね。こちらでは黄色い車体でもっと印象的でしたが。
開けた郊外を横切る対向2車線の道路で、デュース・クーペともう1台の車が両車線に広がってスピードレースを繰り広げる構図は、まさにアメリカン・グラフィティその物です。
これはスピルバーグからルーカスへのリスペクトの現れなんでしょうかね
エイリアンにワクワクできるか?
本作では「あらすじ」に書いたわずか13分30秒の間に、エイリアンっぽい超生命体の存在が示唆されます。既にご説明した様に、”クリスタル・スカル”に考古学的な存在意義を持たせようとすると、それは”エイリアンからのコンタクト”でしか辻褄が合わない訳で、要は”地球外生命体”にリアリティを感じるか否かで、この映画に入り込めるかどうかが決まってしまいます。
もしそこに共感できないのであれば、本作はとっとと見限って、時間の損切りをするのもアリかと思います。
筆者は本作を公開時に映画館で1回観て、それ以来今回この記事を書くために視聴するまで、一度も観ませんでした。
シャイア・ラブーフの演技
シャイア・ラブーフの演技に特に不満はありませんが、前作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」でリバー・フェニックスの演技を観てしまっている筆者たちの世代からすると、彼の演技に何の正統性も感じなかったというのが正直なところです…
端的に言うと「コレジャナイ感」が凄いのです・・・詳細は、こちらの記事でも書いています。良かったらご覧ください。
この辺りは、シャイア・ラブーフ本人も自覚しているようで、2010年9月に”the INDY cast“というウェブサイトで配信されたインタビューで否定的なコメントを残したと言われていますね。
人々に愛されている名作を失敗させてしまった。脚本家やスティーヴン・スピルバーグ監督のせいにすることもできるけど、与えられたものをよく見せるのが俳優の仕事。僕はそれができなかった。ハリソンとも話したけど、彼も出来栄えには満足していなかったよ
the INDY cast “Shia LaBeouf talks Indy 5?” 2010年9月より
これって、凄く悪意のある解釈の仕方をすると、”悪いのは脚本と監督だけど、とりあえず俳優としての俺の責任ってことにしておくよ”とも聞こえちゃいますね・・・
ケイト・ブランシェットの演技
ケイト・ブランシェット扮する”イリーナ・スパルコ大佐”の演技が、この映画の救いでしょうか?ソ連軍、KGBの女エリートという複雑なキャラクターを、緻密な計算によって演じ上げたと思います。
不気味、でも魅力的に見せないと”女大佐”である意味が無いというバランスが重要な役柄を、目付き、表情、話し方、動作から表現して、当時の東側色の軍人って、(少なくとも西側の我々からは)こう見えてたよなっていうのを体現してくれます。
一方で、美人でクールで、妖艶な雰囲気が、インディとの闘いにスリルを加えてくれます。もっともっと観ていたいキャラクターです。
役名 | 俳優 | メモ |
インディ・ジョーンズ | ハリソン・フォード | 主人公。考古学教授にして冒険家 |
マリオン・レイヴンウッド | カレン・アレン | インディに婚約破棄をされた元恋人 |
マット・ウィリアムズ | シャイア・ラブーフ | マリオンの息子 |
ジョージ・マクヘイル | レイ・ウィンストン | イギリスの元MI6の局員。インディの同志 |
オックスリー教授 | ジョン・ハート | インディと共にアブナー・レイヴンウッド教授(マリオンの父)の下で学んだ同門考古学者 |
スタンフォース学部長 | ジム・ブロードベント | 大学の学部長。立場の悪くなったインディを必死にかばおうとする |
イリーナ・スパルコ | ケイト・ブランシェット | ソ連軍の女大佐、KGBエージェント |
アントニン・ドフチェンコ | イゴール・ジジキン | スパルコの部下、冒頭からインディ直接的に乱暴に扱う |
音楽
音楽は引き続きジョン・ウィリアムズが担当しています。Soundtrack には、”Raiders March”として、”Finale”として、お馴染みのメロディーが出てきます。
まとめ
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 3.0 | オススメ出来ません・・・ |
個人的推し | 2.5 | シリーズ物なので1回は義務として観るべきか? |
企画 | 2.0 | ジョージ・ルーカスの企画が全ての間違い |
監督 | 4.5 | 「与えられたものを良く見せた」のは監督 |
脚本 | 3.0 | 荒唐無稽・・・ |
演技 | 3.5 | ケイト・ブランシェットが唯一の救い |
効果 | 4.0 | 普通に凄い |
端的に言うと駄作ですよね。
ジョージ・ルーカスが ”エイリアン”の存在を企画に盛り込んだ段階で終わってたのかも知れません。考古学との相性が悪くないですか?最初にボタンを掛け違えているので、後から頑張ってもどうにもならないっていう・・・
本作は、ラジー賞の「最低リメイク及び続編賞」を受賞している。
最新作に期待しましょう!