この記事では、クエンティン・タランティーノがユマ・サーマンを主演に迎えて製作した日本テースト溢れるチャンバラ超大作「キル・ビル Vol.1」について解説します。具体的に、どの辺りが日本テーストなのか?ということにもシッカリ触れながら、静と動の間に殺陣特有のカブく間とか、画面を彩る色彩の芸術性の高さ等を解説していきます。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
※キル・ビル日本版を対象にしています。
ジャッジタイム (ネタバレなし)
本作における、観続けるか、中断して離脱するかを判断するジャッジタイムは、
- 上映開始から27分20秒のポイントをご提案します。
ここまでご覧になると、本作品のストーリー的背景、いきさつ、どういう風に展開して行きそうかが飲み込めると思います。そして、本作のノリ(あっけらかんと残酷な描写をする世界観)が見えてきます。
「うわっ!いかにもタランティーノ作品。面白そう!」と思うのか、「無理無理、勘弁して!」と拒否反応を起こすのか、この時点で判断されるのが良いと思います。
ここで離脱して時間の損切りするもよし、ドップリハマってみるもよし。
ここで離脱して時間の損切りするもよし、ドップリとハマってみるもよし。完全に個人の好みの問題だと思います。
概要 (ネタバレなし)
本作品の位置づけ
「キル・ビル Vol.1」は、2003年公開のアクション映画。監督、脚本をクエンティン・タランティーノが務めている(第4回監督作品)。
「レザボア・ドッグス (1992)」「パルプ・フィクション (1994)」「ジャッキー・ブラウン (1997)」と、監督デビュー以来 2,3年おきのハイペースで作品を世に送り出してきたタランティーノ。前作から6年を空けて発表したのが本作品。それだけに大変思い入れが強い作品であることは想像に難くない。
アクション映画と一言で言ってもジャンルは幅広いが、本作品では日本映画の殺陣(たて)のアクションを中心に据え、タランティーノが好きで好きで堪らない内容をてんこ盛りにしたようなストーリーが展開される。
タイトルに Vol. 1 (ボリューム・ワン)とあるように、本作は二部作の1作目で、Vol. 2 (2004年)と合わせることでストーリーが完結する構成。もともとは1本の作品であったが、上映時間が4時間を超えてしまうことから、2本に分けて公開された。
端的に言ってタランティーノ色全開の映画で、タランティーノが公私に渡って視聴し、楽しんできた日本・香港・台湾映画のエッセンスを、かなりベタに、そして節操なくオマージュしている。典型的なのが、主演のユマ・サーマンがブルース・リー風の黄色いトラック・スーツに身を包み、日本刀を振り回す演出。
なお、一連の殺陣(たて)のシーンは、血が噴き出る演出なんて朝飯前。手とか首とかポンポンと切られる演出が続出するので、好き嫌いが相当分かれる作品だと思う。
あらすじ (27分20秒のポイントまで)
ジャッジタイム27分20秒までのあらすじの”ざっくり”版と”とにかく詳しく”版を準備しましたので、お好みの方をお読みください。
毒蛇暗殺団という殺し屋集団の一員だった白人女性(通称、ザ・ブライド)。暗殺団のボス、ビルの子供を妊娠したタイミングで暗殺団を抜け、他の男と結婚しようとする。
しかし、結婚式を挙げようとしている教会を毒蛇暗殺団のメンバーが襲撃し、参列者全員を惨殺する。奇跡的に一命をとりとめた花嫁(ザ・ブライド)は、4年間意識不明のまま病院のベッドで過ごす。
しかし、ふとしたキッカケで意識を取り戻した彼女は、自分を襲撃した毒蛇暗殺団のメンバー5人への復讐を誓う。27分20秒のポイントまでには、復讐劇の一環で、ナイフの使い手の黒人女性ヴァニータ・グリーンを殺す姿が描かれる。
復讐を誓ったザ・ブライドが、リストアップした敵を、1人、また1人と追いつめて行く様が描かれて行く二部作。毒蛇暗殺団のボスであるビル。Kill Bill (ビルを殺す)は実現出来るのか・・・
見どころ (ネタバレなし)
とにかくユマ・サーマンがカッコイイ!
本作品は、兎にも角にもユマ・サーマンがカッコイイ、以上!って感じの作品です。長身で長い手足のサーマンが、もはやブルー・スリーのアイコンになっている黄色いトラック・スーツに身を包み、日本刀を颯爽と振り回す。
板についているシーンもあれば、そうでもないシーンもある。でも、それら全部をひっくるめてちょっとオフビートなのがタランティーノ作品の面白いところ。それを全身で体現してくれるのがユマ・サーマンだと思います。
難しいことは考えずに、頭を空っぽにして、この作品を楽しんじゃいましょう!
日本語の台詞では字幕が消えるので、日本語が聞き取れないとそのまま意味不明のままストーリーが進行して行きます!www
タランティーノらしい暴力シーン
タランティーノは、どの作品にも例外なく暴力シーンが出てくるのですが、この「キル・ビル Vol.1」では、銃撃戦よりも肉弾戦を中心に描かれるので楽しみにしていてください。その辺りがチャンバラな訳ですが。ナイフ、日本刀、家庭のその辺にあったもの、そういうものを巧みに織り交ぜられた、タランティーノらしい実に”リアル”な肉弾戦をお楽しみください。
暖色系・寒色系、シーンに合った色彩が鮮やか
上述の黄色いトラック・スーツや、ポスター等に使われている鮮やかな黄色が印象的ですね。衣裳や乗り物、さまざまなオブジェクトの色で構成される画面がとても綺麗なんですよね。一方で、後半寒色系のシーンも出てきたりして・・・ 1つの作品の中で、ストーリーが進むについて、節操も無くテーストを変えちゃうタランティーノ(笑) そんなギャップを楽しめるのも、この映画の見どころだと思います!
千葉真一 (Sonny Chiba) リスペクト
タランティーノ監督の Sonny Chiba へのリスペクトが半端じゃないです。もちろん千葉真一本人も本作品に出演しているのですが、ジャッジタイムの15分10秒までの間に、千葉真一の声でナレーションが入ります。
これは、タランティーノ本人も認めているように「柳生一族の陰謀」のオープニングのテーストそのものなんです。チャンスがあれば聞き比べてみてください!
深作欣二 リスペクト
色んなテーストの殺陣(たて)のシーンが出てきます。その中でも、「これって『仁義なき戦い』風だな」と思わせるシーンも出てきます。映画の冒頭に、”This film is dedicated to master filmmaker Kinji Fukasaku 1930-2003” というテロップが入ります。
仁義なき戦い・シリーズが大好きな我が父子には堪らないです!
残忍な美少女 栗山千明
映画の中盤以降、栗山千明さんが登場してきます。本作公開当時も相当話題になりましたが、彼女の演技が異彩を放ちます。一言で言えば残忍な美少女です。これ以上は申しませんので、是非本編でご確認いただければと思います!
東京都内でのロケ
東京新宿界隈(歌舞伎町の目の前の靖国通り、新宿三丁目)やお台場が出てきます。土地勘がある方からすれば「おお、あそこで撮影したのか!」と妙な親近感を覚えると思います。
ここまで歌舞伎町前をフィーチャーしているのは「深夜食堂」と本作ぐらいじゃないですかね?(笑)
その他の情報
本作品に対する☆ですが、
総合的おススメ度 | 3.5 | 残酷過ぎるでしょ・・・ |
個人的推し | 4.5 | 好き嫌いで言ったら好きです! |
企画 | 4.0 | 思いっきりリソースを趣味に振ったでしょ? |
監督 | 4.5 | 殺陣やバトルシーンの迫力は流石! |
脚本 | 4.0 | タランティーノ本来の面白さが出てるかな・・・ |
演技 | 3.5 | 各出演者はキャラを内面化出来てるかな? |
効果 | 4.5 | 残酷と滑稽の良いラインをちゃんとわきまえてる |
総合的なおススメ度合いは低めに付けさせて貰いました。いくら何でも残酷シーンが多過ぎるでしょ・・・と。個人的には好きですが。ただ、タランティーノ監督の色んな作品と比べると、もっと面白くて良いのにな?と。
企画先行で、監督の趣味的な世界をただただてんこ盛りにして映像化したら4時間超えちゃったというのが本当のところなんじゃなかろうか?4時間映画の前半113分が Vol. 1 です。
製作費は3千万ドルで、世界興行収入が1億8千1百万ドルなので、大ヒット作品なんですよね!タランティーノ監督としてはしてやったりでしょうね。
皆さんは、この超趣味的映画をどんな風にご覧になるだろうか?