リーサル・ウェポンは、1987年公開の刑事もの、バディ物、アクション映画。メル・ギブソン扮する特殊部隊上がりの若手武闘派刑事と、ダニー・グローヴァー扮する家族を愛するベテラン刑事が、上層部の意向でコンビを組まされ衝突し合いながらも命懸けで事件解決に当たって行く様が描かれる。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
本作のヒットにより、人気バディ物映画シリーズとなっていく第1作目であり、2作目以降のようなエンタメ要素が少ない代わりに、より硬派な荒々しさが光る作品。本作公開時まだ31歳だったメル・ギブソンの粗削りな演技を楽しめます。
この個性的な映画をまだ見逃している方は、この記事でちょっと予習してみませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から27分30秒のタイミングをご提案します。
この辺りまでご覧になると、この映画の世界観が掴めてきますし、主人公二人がどういった経緯(いきさつ)で出会うのかも分かります。この映画が好きか嫌いか判断するのに最短なタイミングだと思います。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「リーサル・ウェポン」(原題:Lethal Weapon) は、1987年公開の刑事アクション映画。ロサンゼルスの街を舞台に、メル・ギブソン扮する白人刑事と、ダニー・グローヴァ―扮するアフリカ系アメリカ人刑事が、署の上層部の指示でコンビを組まされ、衝突し合いながらも難事件に当たって行く様が描かれる。
メル・ギブソン扮するマーティン・リッグス刑事は、陸軍特殊部隊の一員としてベトナム戦争に参戦した武闘派。肉弾戦から銃器の扱いにまで長けている。現在はロサンゼルス市警察に勤務しているが、数年前愛妻と死別してからは自らも死に場所を探すような言動が目立ち、誰も一緒に仕事をしたがらないはみ出し者。
一方、ダニー・グローヴァ―扮するロジャー・マータフ刑事は、やはりベトナム参戦経験があり、ロサンゼルス市警察の殺人課に勤務しているが、妻と子供たちをこよなく愛し、家族や同僚、部下からも親しまれている、どちらかと言うと品行方正な中年刑事。
この映画のプロットは、署内で引き取り手が無くなったリッグス刑事と、お人好しのマータフ刑事が無理やりコンビを組まされるという設定が下敷きとなっている。よって、本作、特に本作の前半では、常識人のマータフ刑事の目線を通して、リッグス刑事がいかにイカれた奴なのかを描いて行くのが本作の最大の特徴だ。
Lethal Weapon(リーサル・ウェポン)の意味
Lethal Weaponという言葉の意味だが、”Lethal” とは”死に至る”という形容詞、”Weapon” とは武器、兵器という名詞だ。よって、”Lethal Weapon” とは、死に至らしめる兵器、すなわち殺人兵器というニュアンスになる。
ここまで述べてきたように、主人公の一人マーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)は、自殺願望があるキャラクターとして描かれる。詳細は「あらすじ」で後述するが、リッグスは自殺用の致死性の高い弾丸も常時持ち歩いており、勤務中も自ら望んで自身を死の危険にさらすヤバい奴だ。
加えて、特殊部隊上がりというバックグラウンドなので、素手でも銃器を使っても、人を殺す高度なスキルを兼ね備えている。
すなわち、敵、そして自らに対して、キレたら着実に死を呼ぶヤバい人間兵器、それがマーティン・リッグスという訳だ。これを示唆しているのが、タイトル ”Lethal Weapon (リーサル・ウェポン)” の意味だ。
商業的成功
この作品の魅力はまだまだあるが、アフリカ系アメリカ人と白人のコンビが、反発し合いながらも犯人を追うストーリーが受けて大ヒットした。上映時間は110分と標準的な長さで見やすいことも手伝ってか、制作費1千5百万ドルに対して、世界興行収入は1億2千万ドルを売り上げた。実に8倍のリターンである。
主演のメル・ギブソンに、マッド・マックス・シリーズ(1979年~1985年)に続くヒットシリーズをもたらしたことになる。
一貫したシリーズ展開
リーサル・ウェポン・シリーズは、本作を皮切りにこの後合計4作が公開されて行くことになる(1987年~1998年:5作目制作はずっと噂があったが実現しなかった)。このシリーズ成功の要因の一つに、一貫した制作陣によって作られて行ったというのがあるのでは?
※ 中心人物のリチャード・ドナーが2021年に帰らぬ人となってしまったので、5作目の制作は無いのではないだろうか?
邦題 | 原題 | 公開年 | 監督 | 脚本 | 製作 | 音楽 |
リーサル・ウェポン | Lethal Weapon | 1987 | リチャード・ドナー | シェーン・ブラック | リチャード・ドナー ジョエル・シルバー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン |
リーサル・ウェポン/炎の約束 | Lethal Weapon 2 | 1989 | リチャード・ドナー | ジェフリー・ボーム | ジョエル・シルバー リチャード・ドナー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン デイヴィッド・サンボーン |
リーサル・ウェポン3 | Lethal Weapon 3 | 1992 | リチャード・ドナー | ジェフリー・ボーム ロバート・マーク・ケイメン | ジョエル・シルバー リチャード・ドナー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン エルトン・ジョン |
リーサル・ウェポン4 | Lethal Weapon 4 | 1998 | リチャード・ドナー | チャニング・ギブソン | リチャード・ドナー ジョエル・シルバー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン デイヴィッド・サンボーン |
上の表にあるように、監督は4作共通でリチャード・ドナーが務めている。ドナー監督は、オーメン(1976年)、スーパーマン(1978年)、グーニーズ(1985年)をヒットさせた後にこのリーサル・ウェポン・シリーズに臨んでいる。製作も全4作通してジョエル・シルバーとのコンビで務めている。
音楽を、マイケル・ケイメンとエリック・クラプトンのコンビが、やはり4作共通で務めている点も興味深い。本編を実際にご覧になると分かるが、このシリーズには時折ザラっとした哀愁が劇中に漂う。耳を凝らすと、それが(エリック・クラプトンの奏でる)ブルージーなギター・サウンドによるものであることに気付かれるかも知れない。
一方で人気シリーズに成長した成功の秘訣は、1作目の成功パターンに甘んじず、2作目以降主要キャストを随時追加して行きながら、アクションをより大規模に拡大しつつも、エンタメ色、コメディ色をより前面に押し出して行ったことが功を奏したと思われる。
要は、作風をより垢抜けた方向に転換させたと言い換えられるのだが、これは主演のメル・ギブソンのアイデアだったと伝えられる。その辺りについては2作目、3作目、4作目の記事で触れたいと思う。
あらすじ (27分30秒の時点まで)
季節はクリスマス・シーズン。ロサンゼルスの市街地ど真ん中に位置するある高層マンションでは、半裸の若い白人女性が酩酊状態で上層階のベランダから地上に飛び降り、即死する。
事件を担当するのは、この日50歳の誕生日を迎えたロサンゼルス市警殺人課のロジャー・マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)。マータフは、妻と3人の子供に囲まれて暮らす穏やかな人物で、家族には愛され、同僚からも親しみを込めてからかわれたりするイジられキャラである。
投身自殺をしたのはアマンダ・ハンサカ―22歳。現場検証と検死の結果、アマンダは毒を盛られていたことが判明し、仮に飛び降り自殺をしなくても毒殺されていたと推定される。
マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)は、この事実に愕然とする。というのも、アマンダは、数日前からマータフに連絡を取ろうとしていたベトナム時代の戦友、マイケル・ハンサカ―(トム・アトキンス)の娘だったからだ。
一方、マーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)は、ロサンゼルス市警麻薬課の刑事。海岸沿いに駐車した粗末なトレーラーで暮らし、朝からビールを飲むような荒れた生活を送っている。というのも、数年前に愛する妻を事故で失って以来、生きる気力をすっかり失い、死に場所を探しているのだ。
麻薬取引の囮(おとり)捜査を行う時も、チームとの連携を無視して暴走し、売人に殺されに行くような行動ばかりを取る。こうして、リッグスは一緒に仕事をするには危険過ぎる。あるいは退職年金狙いの姑息な奴だと、遂には同僚から疎まれる存在になってしまう。
リッグス刑事(メル・ギブソン)を持て余したロサンゼルス市警の上層部は、リッグスを殺人課に異動させ、マータフ(ダニー・グローヴァ―)とコンビを組ませた上で、アマンダの麻薬事件を担当させる。
ロサンゼルスの某所では、マカリスター将軍(ミッチェル・ライアン)と呼ばれる初老の男性が、ジョシュア(ゲイリー・ビジー)を筆頭とした、自身に絶対の忠誠を誓う屈強の部下たちを従え、地元の売人と大規模なヘロインの取引をしようとしていた。
戦友マイケル・ハンサカ―(トム・アトキンス)に、面と向かって事件の報告をするマータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)。マイケルは、娘のアマンダは生前悪い仲間たちとポルノビデオを撮影していたと告白した上で、アマンダを死に追いやったのは複数人の仕業で、そいつらに復讐して欲しいとマータフに懇願する。
果たして、アマンダを死に追いやった者たちは誰なのか?リッグスとマータフのコンビは、その黒幕を見つけ出すことが出来るのか?そして、事件を解決することが出来るのか…?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを、4つのテーマに絞って書いてみたいと思います。どれもネタバレなしで書いていきますので、安心してください。この映画を存分に堪能するための予習情報だと捉えて頂けると嬉しいです。
反発し合う2人の主人公
この作品の最大の魅力は、反発し合う2人の主人公キャラクターの化学反応に他なりません。
一人はメル・ギブソン扮するマーティン・リッグス。人を殺すスキルを徹底して仕込まれた、特殊部隊上がりの若手刑事。そんな不遜な青年が妻の不幸から自暴自棄になっているというキャラクター設定。
もう一人はダニー・グローヴァ―扮するロジャー・マータフ。家族思いで同僚からも慕われ、常に正しくあろうと自らに言い聞かせる心優しきベテラン中年刑事。
シリーズ1作目の本作では特に、冷静なマータフの目を通して情緒不安定なリッグスを描写するという構図を取ることで、単なるアクションシーンがより危なっかしいスリルを帯びることになります。このケミストリーが、この映画に視聴者を引き付ける最大のフックになっていると思います。お見逃しなく!
刑事バディ物の金字塔
血気盛んな白人警官と、冷静沈着なアフリカ系アメリカ人警官のコンビという、両者の性格の違いに、人種の違いを掛け合わせるプロットは、実はこのあと「ダイ・ハード」(1988年)、「セブン」(1995年)に少なくない影響を与えて行きます。
少し話が逸れますが、本作の翌年に公開された「ダイ・ハード」とは、製作のジョエル・シルバー、音楽のマイケル・ケイメンが共通なこともあり類似点が多いです。
どちらも物語がクリスマス・シーズンに描かれていること、BGMに流れるクリスマスソングがその雰囲気を高めつつ、正体不明の犯罪集団が静かに忍び寄って来て、ホリデーシーズンのハッピーな空気とのギャップを強調し、結果としてより不気味さを演出する展開は、とてもよく似ています。
順番は不問で、この辺りを気にして「リーサル・ウェポン」「ダイ・ハード」「セブン」の3作を観てみると面白いかも知れません。
リチャード・ドナー監督のバランス感覚
ここまで述べたように、「リーサル・ウェポン」は人物像の掘り下げ、彼らの関係性の描写に大変深みがあって、人間ドラマとしても十分楽しめます。だからと言ってアクション・シーンの手を抜いている訳ではなく、大小さまざまな銃撃戦を始め、アクション映画としても存分に楽しめます。
要は、バランス感覚が抜群なリチャード・ドナー監督が、テンポ良くストーリーを進めて行くのがこの「リーサル・ウェポン」なので、大いに期待してください!
ヒットするのも頷けます!
音楽
再三述べてきましたが、音楽をマイケル・ケイメンとエリック・クラプトンの2人が担当しています。エリック・クラプトンが映画音楽?と思われるかもしれませんが、友人のケイメンの誘いに応じてクラプトンは参画しています。
この映画を初見の方は気にせず、2回目以降の方はちょっと気にして本作をご覧になると、「確かにクラプトンっぽいわ!そして、この映画のこの独特な雰囲気は、このサウンドによって醸成されているのね!」と思われるかもしれません。見どころの一つです。
まとめ
いかがでしたか?
大ヒット映画シリーズの第1作目であり、他の映画にも多大な影響を与えた本作を、観てみたいなと思って頂けたら幸いです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.0 | シンプルに面白いアクション映画 |
個人的推し | 4.0 | 一作目のこの暗さが好き |
企画 | 4.0 | 異人種バディ物の先駆的作品 |
監督 | 4.0 | テンポが良い! |
脚本 | 3.5 | やや粗削り |
演技 | 4.0 | メル・ギブソンのヤベー感じが… |
効果 | 4.0 | スリル感を出すためのチームワーク |
このような☆の評価にさせて貰いました。
一言で言っちゃえば「面白い作品」ということです。
ただし、マーティン・リッグスというキャラクターを定義して行く作業。それをより際立たせるためのマータフ刑事という鏡が起き、そこからはスリル感を出すという最終ゴールから逆算して緻密に設計したらこういう作品になりましたという感じでしょうか。
是非この1作目だけでも観て頂きたいです!