「リーサル・ウェポン2 / 炎の友情」は1989年公開の、刑事もの、バディもの、アクションもの映画。前作「リーサル・ウェポン」(1987年) に引き続き、メル・ギブソン扮する若手刑事とダニー・グローヴァ―扮するベテラン刑事というタイプの全く異なるデコボコ・コンビが、独自の友情を武器に難事件に当たって行く様を描く。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
本作からはジョー・ペシ扮するレオ・ゲッツというお調子者キャラクターも加わり、よりエンタメ色が強くなり、”観てて楽しい”作品になって行く本シリーズ。その新しい一歩となったこのシリーズ第二作目の魅力を、この記事でちょっとだけ予習してみませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から23分50秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧になると、シリーズ2作目の本作がどんなテーストなのかが見えると思います。また、主人公の2人がどんな関係性になっていて、本作ではどんな事件が起ころうとしているのかも垣間見えるので、この映画が好きか嫌いか、この先も観ようか観まいかを判断できると思います。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「リーサル・ウェポン2 / 炎の友情」は、1989年公開の刑事アクション映画。前作に引き続きロサンゼルスの街を舞台に、メル・ギブソン扮する若手白人刑事と、ダニー・グローヴァ―扮するアフリカ系アメリカ人ベテラン刑事のコンビの奮闘ぶりを描く。
(前作作中で)コンビを組まされた頃の二人は互いに反発し合っていたが、一緒に死線をかいくぐって来たことで信頼と友情が芽生え、相変わらず性格は違えど相棒に対する強い絆を感じさせる演出となっている。この辺りが邦題に付いている『炎の友情』のゆえんである。
これに伴いメル・ギブソン扮するマーティン・リッグス刑事のキャラクターから陰鬱さが薄まり、作品全体がより明るいテーストのバディ物の比重が強まっている。また、ジョー・ペシ扮するレオ・ゲッツという個性的なキャラクターも新たに加わり、アクションとエンタメ性を強化したシリーズ第二弾というのが本作の位置づけだ。
リーサル・ウェポン・シリーズの制作陣
リーサル・ウェポン・シリーズの特徴として、映画シリーズ4作を通して、脚本家を除いて制作陣が全くと言ってよいほど変更されていない点が挙げられる。以下の表を見て頂きたい。
邦題 | 原題 | 公開年 | 監督 | 脚本 | 製作 | 音楽 |
リーサル・ウェポン | Lethal Weapon | 1987 | リチャード・ドナー | シェーン・ブラック | リチャード・ドナー ジョエル・シルバー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン |
リーサル・ウェポン/炎の約束 | Lethal Weapon 2 | 1989 | リチャード・ドナー | ジェフリー・ボーム | ジョエル・シルバー リチャード・ドナー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン デイヴィッド・サンボーン |
リーサル・ウェポン3 | Lethal Weapon 3 | 1992 | リチャード・ドナー | ジェフリー・ボーム ロバート・マーク・ケイメン | ジョエル・シルバー リチャード・ドナー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン エルトン・ジョン |
リーサル・ウェポン4 | Lethal Weapon 4 | 1998 | リチャード・ドナー | チャニング・ギブソン | リチャード・ドナー ジョエル・シルバー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン デイヴィッド・サンボーン |
4作通して監督を務めたリチャード・ドナーを筆頭に、製作はそのドナーと共にジョエル・シルバーが4作通して共同で務めている。音楽はマイケル・ケイメンとエリック・クラプトンが4作通して務めていることも興味深い。
一方で脚本は、本作「リーサル・ウェポン2」と「リーサル・ウェポン3」はジェフリー・ボームが務めており、一作目のシェーン・ブラックから交代となっている。ジェフリー・ボームは本作「リーサル・ウェポン2 / 炎の友情」が公開された1989年には、やはり脚本を手掛けた「インディ・ジョーンズ / 最後の聖戦」も公開されている。
このことから、ジェフリー・ボームは、大人のウィットに富んだ会話の掛け合いや、スリリングなストーリー展開を描くことに長けた脚本家であることがうかがい知れる。残念ながら2000年に53歳の若さで早逝してしまったので、脚本家として手掛けた作品は決して多くは無いが、本作(と次回作)の”楽しさ”はの根源はその脚本にあることが分かる。
主演の2人を含め気心知れたメンバーが、その映画制作に対するエネルギーを内部の調整で浪費するのではなく、観客に面白いものを届けたいと外部に向けたのが、この映画がシリーズ全作を通して愛された秘訣なんじゃないだろうか。
商業的成功
この映画の上映時間は114分と極めて標準的な長さである。製作費は2千5百万ドルと前作より多くの予算を獲得(前作は1千5百万ドル)。そして、世界興行収入は2億2千8百万ドルを売り上げ、前作の1億2千万ドルを大幅に更新する大ヒットとなった。実に9.12倍のリターンである。
この成功により、リーサル・ウェポンは完全に人気映画シリーズの地位を確立した。
あらすじ (23分50秒の時点まで)
LAPD(ロサンゼルス市警)の殺人課に勤めるマーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)とロジャー・マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)は、今夜は市街地で、麻薬事件の容疑者が乗っている2台の逃走車を追跡している。
2人の車は同僚刑事の車や複数台のパトカーと連携しつつ、この2台をいよいよ追いつめようとしていた。ところが、容疑者たちは自動小銃で武装していた上に、どこからともなく救援のヘリコプターまで現れたことで、LAPD は容疑者を全員取り逃がしてしまう。
代わりに押収できたのは、容疑者が乗り捨てて行った2台の車と、一方の車のトランクにギッシリと積み込まれていた100万ドル相当のクルーガーランド金貨であった。この金貨は禁輸品であるため、事件の背後には大規模な犯罪組織が暗躍していることが容易に想像できた。
マーティン(メル・ギブソン)とロジャー(ダニー・グローヴァ―)はコンビを組んで2年になろうとしており、マーティンはマータフ家の面々とは家族同然の付き合いをし、精神状態はスッカリと落ち着いている。ロジャーは相変わらず向こう見ずな性格のマーティンに振り回され続けているものの、この相棒を家族と共に受け入れている。
ロジャーの妻トリッシュはマーティンの日々の洗濯物も家族のモノと一緒に洗濯し、マーティンはマータフ家のキッチンで、まるで自分の家のようにマータフ家のために料理を作ったりするほどの仲だ。
一方で、クルーガーランド金貨を残して逃走した犯人は、ドイツ語を話す”領事”と呼ばれる初老の男の命令で、”領事”の部下に銃殺されてしまう。更に”領事”は部下に、事件に関わるロサンゼルス市警の刑事たち、手始めにアフリカ系アメリカ人であるロジャー・マータフから脅迫するように指示する。
そして、ロジャーとトリッシュの夫妻が、ある晩自宅の寝室で寝ていると、覆面をした武装集団4人に押し入られ、手足を縛られた上で「事件から手を引け、さもないと子供たちを殺す」と ”なまり” のある英語で脅迫される。
果たして、”領事”とは何者なのか?彼らはどんな犯罪に手を染めているのか?マーティン、ロジャーとその家族は安全を確保することが出来るのか?そして、ロサンゼルス市警をこの犯罪組織を検挙することが出来るのだろうか?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを4つの観点に絞って書いてみたいと思います。どれもネタバレなしで書いていきますので、安心して読んでください。皆さんが、この映画をより味わい深く鑑賞するお手伝いが出来ると嬉しいです。
明るい作風にシフト・チェンジ
「リーサル・ウェポン2/炎の友情」の最大の特徴は、この作品から一気に作風が明るくなった点だと思います。
前作1作目の「リーサル・ウェポン」(1987年)では、メル・ギブソン扮するマーティン・リッグス刑事は、妻を交通事故で失ったことで生きる気力を失い、常に自殺衝動を抱えて生きる刑事という衝動的な存在でした。この設定が土台となって、”リーサル・ウェポン ≒ キレたら何をしでかすか分からない危ない奴” というキャラクターに説得力を持たせていました。
しかし、そんな陰鬱なキャラクター設定では人気は長く持たない、もしくはより大きな市場の共感は得られないと判断したのでしょうか?メル・ギブソンのアイデアで、本作ではマーティン・リッグスをより明るいキャラクターにシフト・チェンジしています。
その結果、ダニー・グローヴァ―扮するマータフ刑事が相も変わらずリッグス刑事の無鉄砲ぶりに振り回される様は、「またマータフが割を食ってるよ可哀そうに(笑)」という感じでお約束のコメディに昇華し、この映画には無くてはならないキャッチになりました。本作では、是非是非 ”手離しで” これを楽しんじゃってください!
深みのあるいジェフリー・ボームの脚本
既に述べたように、このシリーズ2作目と後の3作目の脚本は、「インディ・ジョーンズ / 最後の聖戦」の脚本も担当したジェフリー・ボームが手掛けています。
リーサル・ウェポン・シリーズが元々持っている清々しさは、白人のマーティン・リッグスと、アフリカ系アメリカ人のロジャー・マータフの対立を、人種の違いによる諍い(いさかい)として描くのではなく、一個人と一個人が人間対人間で、本気でぶつかり合う姿を描いているところにあるように思います。
だから2人の間に友情や絆が芽生えることに説得力が生まれ、我々を惹きつけるんだと思います(特に本作では、マーティンがまるでマータフ一家の一員のようにマータフ家でくつろぐ様を目にすると、とても温かい気持ちになります)。
そこへ来てこの2作目では、(ネタバレ防止のため最小限しか書きませんが、)マータフ刑事がアフリカ系アメリカ人であることを意識せざるを得ないプロットが加わります。また、リッグス刑事の妻が数年前に交通事故で死んだ経緯も語られたりします。
既存の設定に、更なる深みが加わるような設定を多層的に重ね合わせて行くことで、更にこのシリーズを楽しめるよう工夫されているので、是非味わってみてください。
第3の男 ”レオ・ゲッツ”(ジョー・ペシ)
マーティンとロジャーのバディ物として船出をしたリーサル・ウェポン・シリーズに、2作目から早くもレオ・ゲッツ(ジョー・ペシ)という第3の男が加わります。
レオ・ゲッツは、甲高い声でしゃべり倒す小柄な会計士という憎めないキャラクターで、彼をキャストに加えることで、この映画はオモシロ要素を各段に引き上げることに成功しています。マーティンとロジャーが、レオ・ゲッツを叱り飛ばす時に絶妙なコンビネーションを発揮する様は至極のコメディです。
ジョー・ペシは、1980年に「レイジング・ブル」で映画デビューを飾って以来ずっとシリアス路線で邁進してきましたが、「リーサル・ウェポン2」の前年に制作されたマイケル・ジャクソン主演の「ムーンウォーカー」で、マイケルの敵役となる、どこか憎めない悪の軍団のボスを演じたあたりからコメディ路線への転換を図っていたように思われます。
この後「ホームアローン」(1990年) 、「リーサル・ウェポン3」「ホーム・アローン2」(1992年) に繋がる先駆けとして、「リーサル・ウェポン2 / 炎の友情」(1989年) でコメディの才能を開花させています。リーサル・ウェポンの新たな触媒レオ・ゲッツをお楽しみください。
役名 | 俳優 |
マーティン・リッグス | メル・ギブソン |
ロジャー・マータフ | ダニー・グローヴァー |
レオ・ゲッツ | ジョー・ペシ |
アージャン・ラッド | ジョス・アクランド |
ピーター・ヴォーステッド | デリック・オコナー |
リカ・ファン・デン・ヴァールス | パッツィ・ケンジット |
エド・マーフィ | スティーヴ・ケイハン |
ティム・カバナフ | ディーン・ノリス |
エディ・エステバン | ネスター・セラーノ |
トム・ワイラー | ジュニー・スミス |
トリッシュ・マータフ | ダーレン・ラヴ |
リアン・マータフ | トレイシー・ウルフ |
カリー・マータフ | エボニー・スミス |
ニック・マータフ | デイモン・ハインズ |
ハンス | マーク・ロルストン |
ド派手なアクション
言うまでもないことかも知れませんが、もちろんアクションも大きな見どころです。よりド派手なアクションが皆さんを待ち受けているので楽しみにしてください。肉弾戦、カーチェイス、爆発シーン、銃撃戦と、アクション映画のあらゆる要素が詰まっています。
まとめ
いかがでしたか?
1作目の成功に慢心するのでも、柳の下のドジョウを狙うのでもなく、勇気を持って作風をアップグレードし、新たなキャストを追加する。2作目が1作目の品質を上回った数少ない映画シリーズだと思っています。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.0 | 是非観て頂きたい! |
個人的推し | 4.0 | 1,2と立て続けに観て欲しい! |
企画 | 4.0 | バディ物に慢心しない貪欲さ! |
監督 | 4.0 | 相変わらずテンポ良し! |
脚本 | 3.5 | 変わらず粗削り(笑) |
演技 | 4.0 | キャストの息の合った演技 |
効果 | 4.0 | スリル感変わらず高い |
このような☆の評価にさせて貰いました。
メル・ギブソンは、この作品でマッドマックス・シリーズに続いて2つ目の大ヒットシリーズを手にしたことになります。そして、どちらかという悪役だったダニー・グローヴァ―を人気俳優にし、ジョー・ペシにキャリアの転機をもたらしました。是非お見逃しなく!