この記事では、「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」について解説します。1981年に公開されてから現在まで40年以上続く超大ヒット冒険シリーズ。その記念すべき第1作目。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
世界中の多くの考古学者に、考古学に興味を持ったのはこの映画がキッカケと言わしめる、この冒険活劇の魅力について語って行きます。ぜひこの作品の世界に足を踏み入れてみてください!
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかの判断をするジャッジタイムは、
- 上映開始から21分00秒のタイミングをご提案します!
ここまでご覧いただくと、このストーリーがどういう経緯で始まるのかが見えます。ここまでご覧になって、この映画が好きか嫌いかご判断いただくのが良いと思います。
概要 (ネタバレなし)
本作品の位置づけ
「レイダース/失われたアーク《聖櫃.》」(原題: Raiders of the Lost Ark) は、1981年に公開された冒険アクション映画。ハリソン・フォード扮するインディ・ジョーンズという名の無骨な大学教授、兼冒険家の男が、障害を乗り越えながら考古学の謎を解いて行くシリーズ。その記念すべき第1作目がこの「レイダース」だ。
この個性豊かな主人公の名が”インディ・ジョーンズ”であること、続編以降は「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(原題: Indiana Jones an the Temple of Doom) といった感じで、タイトルに必ず”インディ・ジョーンズ (Indiana Jones)”と入るようになったことから、本シリーズは通称”インディ・ジョーンズ・シリーズ”と呼ばれる。
インディ・ジョーンズあるあるだけど、1作目は”インディ・ジョーンズ”で検索してもヒットしないので気を付けよう!
シリーズ名に2作目の名が使われるのって、バットマンのダークナイト三部作みたいですよね
監督は、本作を牽引した2人の内の1人、スティーブン・スピルバーグ。シリーズ第4作目まで直接メガホンを取って行くことになる(下の図参照)。製作には「予算と撮影期日を必ず守る男」と評判だったフランク・マーシャルが起用されている。これは当時、「予算と撮影期日を必ず超過する男」として評判だったスピルバーグに対する文鎮の役目である。
脚本には、詳細は後述するが、プロ脚本家のローレンス・カスダン採用され、ジョージ・ルーカスは製作総指揮に回っている。ただし、ルーカスはセカンド・ユニット/第二班(主要登場人物が登場しない景色等を並行して撮影する部隊)の監督を務めている。
# | タイトル | 公開年 | 製作 | 脚本 | 監督 | 製作総指揮 |
1 | レイダース/失われたアーク 《聖櫃》 | 1981 | フランク・マーシャル | ローレンス・カスダン | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス ハワード・G・カザンジャン |
2 | インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 | 1984 | ロバート・ワッツ | ウィラード・ハイク グロリア・カッツ | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス フランク・マーシャル |
3 | インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 | 1989 | ロバート・ワッツ | ジェフリー・ボーム | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス フランク・マーシャル |
4 | インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 | 2008 | フランク・マーシャル | デヴィッド・コープ | スティーブン・スピルバーグ | ジョージ・ルーカス キャスリン・ケネディ |
5 | インディ・ジョーンズと運命のダイヤル | 2023 | キャスリン・ケネディ フランク・マーシャル サイモン・エマニュエル | ジェズ・バターワース ジョン=ヘンリー・バターワース ジェームズ・マンゴールド | ジェームズ・マンゴールド | スティーブン・スピルバーグ ジョージ・ルーカス |
上映時間は115分と標準的。製作費は1千8百万ドル。世界興行収入は3億3千4百万ドルを売り上げ、文句なくこの年のナンバーワン映画に輝いている。
アカデミー美術賞、視覚効果賞、音響編集賞、編集賞、特別業績賞の5部門を受賞している。
本作、シリーズ誕生の経緯
1944年生まれのジョージ・ルーカスは、少年時代に、自分の世代もしくは自分より上の世代が慣れ親しんでいたアメリカン・コミックが大好きで、そこに登場するような古風なキャラクターを主人公とした冒険活劇を、いつか映画にしたいと思っていた。
ルーカスは、スター・ウォーズに本格着手する前に、フィリップ・カウフマンと上述のアイデアをより具体的に練り込み、冒険家が南米やアフリカなど世界を股に掛ける姿や、実は考古学者の顔も持つキャラクター設定など、色々と構想を出し合ったが、映画化にまでは至らなかった。フィリップ・カウフマンが本作に”原案”としてクレジットされているのは、こうした経緯からである。
1977年、ジョージ・ルーカスは「スター・ウォーズ 」を完成させるも、その興行的な成功に大いなる不安を感じ、居ても立っても居られないなり、公開前にサンフランシスコを離れハワイに逃避行をする(「スター・ウォーズ」の公開日は1977年5月25日)。
旧知のスティーブン・スピルバーグが、同じ時期にたまたまハワイで休暇を取っていたため、映画にまつわる将来の夢を語り合う(ルーカス33歳、スピルバーグ30歳)。その一環で、”007”のような映画を撮りたいと語るスピルバーグに、「君のための007があるよ」と上述の冒険活劇のアイデアをルーカスが披露したことから、本作の製作がスタート(フィリップ・カウフマンは、別のプロジェクトを優先させたために不参加)。
この時、ルーカスが持つ「スター・ウォーズ」の印税1%分の権利と、スピルバーグが持つ「未知との遭遇」の印税1%分の権利を交換する約束をして、収入のポートフォリオの分散を本気で図った話は、とても生々しい。
スピルバーグは、あの交換は本当に良い取引だったって言ってますねw
「スター・ウォーズ」(後のいわゆる「エピソード4/新たなる希望」・1977年)、「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲・1980年)を立て続けに大ヒットさせたジョージ・ルーカスは、「帝国の逆襲」の脚本を担当したローレンス・カスダンを巻き込み、スピルバーグと3人で「レイダース」の脚本を練り上げて行く。
この作業により沢山のアイデアが出された。この映画はヒットしたら三部作にしたいという思いが当初からあったため、1作目に入りきらなかったアイデアは2作目以降に回されている。
予算超過が懸念されたため、配給会社が中々決まらなかったが、撮影期日と予算を絶対に厳守することを条件にパラマウント映画が配給を引き受けた。予算・期日超過を防ぐ方策として、本作では脚本に加えて、通常より精緻な絵コンテが描かれた。これが、特殊撮影を引き受けたILM(Industrial Light & Magic、スター・ウォーズの特殊撮影のためにジョージ・ルーカスが立ち上げた専門集団の会社)が、効果を立案するのに大いに役立つ。
芸術的評価
この映画は、「アメリカ国立フィルム登録簿」(National Film Registry) に登録されている。これは、連邦政府国立フィルム保存委員会(The United States National Film Reservation Board)が毎年25作品を選定するもので、本作品が、アメリカの文化的、歴史的、芸術的に、後世に多大な影響を与えたことが公的機関からも認められた証である。
あらすじ (21分00秒まで)
時は1936年。第二次世界大戦前夜で、ヨーロッパではドイツ軍の活動が活発化している時代だ。
考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)の次のターゲットは、南アメリカのチャチャポヤン遺跡に眠る黄金の像である。彼は、考古学上の貴重な宝を自己の利益のために収拾するのではなく、博物館に収めることで考古学の更なる発展に寄与しようとしている。
遺跡の奥深くへ進む中で、予め調査済みの罠を何とかクリアし、見事黄金の像を入手する。
ところが、現地のホビット族を、堪能な言語で欺瞞的に操るライバルのフランス人考古学者ルネ・べロック(ポール・フリーマン)に不意を突かれ、彼に操られるホビット族に包囲されてしまう。べロックは私利私欲のために貴重な宝を集めるような考古学者である。
黄金の像をべロックに手渡した隙に包囲網を脱出したインディ・ジョーンズは、川面に待機させていた水上機に命からがら辿り着き、空路でチャチャポヤンを脱出する。
数日後、プリンストン大学で教鞭を取るインディ・ジョーンズ(←考古学教授の顔も持つ)。講義も終わりに近づいた頃、大学の副学部長でインディの上司であり、かつ友人であるマーカス・ブロディ(デンホルム・エリオット)が教室に現れる。講義終了後、ブロディは、インディの下に来客があると伝える。
人気のない大講義室でインディとブロディを待ち受けていたのは、アメリカ陸軍情報部より派遣されてきた男2人だった。彼らが言うには、アメリカ軍はドイツ軍の電報を傍受したという。そこには、エジプトのカイロのタニスで、ラーの杖飾りを頼りにアーク(聖櫃)の発掘をしているという。そこには、レイヴンウッドの名も挙がっていたという。
アブナー・レイヴンウッドは、インディの恩師でシカゴ大学の教授だった男だが、インディとも過去10年間連絡を取り合っていなかった。
情報部の2人は、この領域の権威であり、レイヴンウッドの関係者であるインディ・ジョーンズに、聖櫃とは?ラーの杖飾りとは?そしてレイヴンウッドの消息を訊きに来たのであった。
未知の脅威の武器となり得る聖櫃を、何とかナチスより先に入手したいアメリカ陸軍は、その日の夜、インディ・ジョーンズを聖櫃の奪取隊に指名し、現地に派遣することにする…
聖櫃とは何なのか?どんな力を秘めているのか?果たして、インディ・ジョーンズは、ナチスに先んじてこれを無事に奪取することが出来るのか…?
見どころ (ネタバレなし)
冒険活劇感
40年以上前のこの作品を、現在(2023年)から観てみると、確かに画質は現代の物より見劣りする。しかし、そんなことが全く気にならないぐらい、敢えてしつらえられた冒険活劇的な画面の色合いが、堪らなく観る者を惹きつけるように思います。初っ端から何故か懐かしさを覚えるような雰囲気を是非お楽しみいただきたい。
そのせいもあってか、良く言及されることですが、スピルバーグに多大なる影響を与えたヒッチコック風の構図が随所で見られます。
「あらすじ」を述べた箇所の範囲でも、台詞を述べているのはデンホルム・エリオット扮するマーカス・ブロディなのに、画角はハリソン・フォード扮するインディ・ジョーンズを追い続けることで、インディの動きに緊張感と共に観客の注目を集めるテクニックなど、ヒッチコック風だなぁと思しき箇所を探しながら観てみるのも、一つの楽しみ方かも知れません。
インディ・ジョーンズというキャラクター
ジョージ・ルーカス、フィリップ・カウフマン、スティーブン・スピルバーグが散々アイデアを出し合い、それをローレンス・カスダンが脚本にまとめ上げた”インディ・ジョーンズ”というキャラクターは、1作目の冒頭からキャラクターが出来上がっているように思います。
冒険している時の、ジャケット、胸をはだけさせたシャツの着こなし、ズボンにブーツ。そして何と言ってもトレードマークの帽子に鞭。このスタイルで、洞窟の中、蜘蛛の巣の下、そして水の中と、汚れたり怪我したりすることを厭わず、考古学的なお宝のためならズンズンと進んで行く。まさに冒険活劇ですよね!
一方で、大学教授としての顔も持つ、かつ考古学の分野では高名な学者さんと来てる。そんな時はキチンと着飾って、髪の毛もセットして知的なメガネも掛けている。そりゃ女の人にもモテますよね、という設定。
ハリソン・フォードって、超2枚目って訳じゃない。そして男臭い。でも、ニヤっと笑った時のニヒルな感じとか含めて、親しみの持てる憎めないキャラクターを演じさせたら天下一品ですね。
ハリソン・フォードの凄いところは、こうして被る部分がたーくさんあるのに、ハン・ソロ船長とは全く別人として演じ分けていること。是非是非、インディ・ジョーンズをまずは中心に据えてこの物語を楽しんでください!
ジョージ・ルーカスは、ギリギリまでハリソン・フォードの採用を拒んだそうですが・・・
世界を飛び回るインディ・ジョーンズ
冒頭は南米奥地。続いてニュージャージー州プリンストン。この後更にインディ・ジョーンズはエジプトに向けて旅立っていきます。1936年が舞台なのに、何と世界を飛び回ることか!
演出もちゃんと雰囲気を描き分けているので、次から次へと主人公が世界を飛び回っている楽しさがあります。でも、既に述べたように、その親しみやすいキャラクターから、ヒーローとして我々から遠い存在になっちゃわないところが、この作品、このシリーズの人気の秘密なんじゃないでしょうか?
特殊効果
当時最先端の特殊効果が凄いですね!確かに今のCG技術と比較すると見劣りする面もあるけど、アナログ感によるリアリティがとても楽しいです。
この映画の特殊撮影にはILM(Industrial Light & Magic、スター・ウォーズの特殊撮影のためにジョージ・ルーカスが立ち上げた専門集団の会社)が大きく関与しているんだけど、その様子はDisney+ で視聴できる「ライト&マジック」の第4話『仲間をみつけた』の前半(2分20秒 ~ 10分20秒)で詳しく語られています。
その内容は、ネタバレ満載なので、本作品を視聴後、かつDisney+を視聴できる方は是非覗いてみてください!
主題歌・音楽
主題歌を含めた音楽は、ジョン・ウイリアムズが担当しています。言わずもがなですが、各シーンで情緒を盛り上げたり、緊張感を高めたりするのに、ウイリアムズの音楽が大活躍している。
主題歌のタイトルは”インディ・ジョーンズのテーマ”ではなく、”レイダース・マーチ”です。これも間違いやすい”インディ・ジョーンズあるある”ですね。
幼いころから、この曲を家でどれだけ聞かされたことかwww
この曲には誕生秘話があって、スピルバーグから主題歌の作曲を依頼されたジョン・ウイリアムズは、候補として2曲を作曲して提示した。ところがスピルバーグは、このどちらもいたく気に入ってしまったので、両者をくっ付けた曲として完成された。
聴いてみるとお分かりいただけると思うが、0秒~40秒と40秒~1分25秒とで、似て非なるメロディーが奏でられているのはその為である。なお、インタビューでこの話をする時のスピルバーグはとても嬉しそうで、説明の際にはこの両方のメロディーを口笛で綺麗に奏でてくる。
スコアが世に出回っているというのもあるんでしょうけど、日本中、いや世界中の吹奏楽団、金管楽団がこの曲をコピーしてますよね。それを聴いても胸が躍ります、マジで。
まとめ
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.5 | 文句の付けようがありますか? |
個人的推し | 4.5 | 強く、強くオススメします! |
企画 | 5.0 | 最高です! |
監督 | 4.5 | このワクワク感! |
脚本 | 4.5 | 初めからキャラが出来上がってるんですよね! |
演技 | 4.5 | キャラを完璧に演じ切ってますよね |
効果 | 5.0 | 初めて観た時の衝撃と来たら! |
もう、文句ないでしょ、この作品は。1ヵ所だけ気に入らない箇所があるんですが、それは黙っておきます。
いずれにせよ、企画、脚本、監督、演技、最高の作品です!それを支えている効果も素晴らしいです!
繰り返しになりますが、アカデミー美術賞、視覚効果賞、音響編集賞、編集賞、特別業績賞の5部門を受賞しています!