この記事でご紹介する「ミッション: 8ミニッツ」は、2011年公開のSFアクション・スリラー映画。科学の力で意図的に繰り返されるタイムリープに陸軍大尉を送り込んで調査し、列車爆破テロ事件の真相を突き止めようとする物語。ただし、このミッションで再現される時系列は8分間に限られるため、邦題に”8ミニッツ”という文言も付け加えられている。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(序盤に限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
主人公の陸軍大尉を演じるのは、ジェイク・ジレンホール。監督は、本作が監督3作目となった、ダンカン・ジョーンズ。奇想天外なSFものであり、タイムリープものであり、列車という密室事件が軸であり、非常にスリル満点の本作品を、観るか迷っている方はこの記事で情報を入手してから最終判断を下されても良いと思います。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「ミッション: 8ミニッツ」(原題: Source Code) は、2011年公開のSFアクション・スリラー映画。シカゴに向かう特急列車が爆弾テロにより爆破されることが分かっている状況で、このテロ犯を突き止めるために、陸軍大尉が何度もタイムリープを使って、テロ発生8分前の列車に送り込まれるというストーリー。
ジェイク・ジレンホールが、このミッションを背負う陸軍大尉コルター・スティーブンスを演じている。
監督は、本作品が監督作品3作目となるダンカン・ジョーンズ。ダンカン・ジョーンズの前回監督作「月に囚われた男」を観たジェイク・ジレンホールが、この映画の企画をダンカン・ジョーンズに持ち込み、本作の監督を引き受けることになった。なお、ダンカン・ジョーンズは、故デヴィッド・ボウイの息子である。
原題 ”Source Code” (ソース・コード)
この映画の原題は”Source Code”(ソース・コード)という。
ソース・コードとは、我々がパソコンやスマホで使っているアプリケーションを設計する時に書く、大本の(=ソースになる)文字列の羅列のことである。プログラマーは、決められたルールに従ってソース・コードを記述していくことで、アプリケーションに思い通りの動作をさせることが出来る。
この映画では、天才科学者ラトリッジ博士(ジェフリー・ライト)が書いたソース・コードを基に、タイムリープを起こせるシステムが開発されたという設定になっている。
高いサスペンス性
この映画は序盤から不可解な謎が幾つか撒餌のように設定されている。
タイムリープ(=時系列を再現すること)が自由自在になった理論的・科学的根拠はあまり深く掘り下げられないが、不測の事態であったはずの列車爆破テロについて、どうやって後から事件発生当時の状況を把握したのかとか、どうしてそこに任意の人物(本作では陸軍大尉)を送り込めるのかといった辺りから謎が設定されていく。
爆弾テロの真相を突き止めるという大きな謎の他にも、こういった謎が脇を固めており、非常にサスペンス性の高い作品となっている。
キャスト
本作品の主なキャストは下の表の通りである。
役名 | 俳優 | 役柄 |
コルター・スティーヴンス | ジェイク・ジレンホール | 主人公。意図的にタイムリープを繰り返すミッションを背負う |
クリスティーナ・ウォーレン | ミシェル・モナハン | 列車内で主人公と居合わせる女性 |
コリーン・グッドウィン | ヴェラ・ファーミガ | ミッションを指揮する将校 |
ラトリッジ博士 | ジェフリー・ライト | ミッション用のシステムのソースコードを書いた科学者 |
デレク・フロスト | マイケル・アーデン | 列車に乗り合わせる乗客 |
ハズミ | キャス・アンヴァー | 列車に乗り合わせる乗客 |
マックス・デノフ | ラッセル・ピーターズ | 列車に乗り合わせる乗客 |
ドナルド | スコット・バクラ | コルターの父親 |
物語の大半が列車という密室で展開されるため、主要登場人物はそんなに多くない。
商業的成功
この作品の上映時間は93分と、標準よりかなり短めである。しかし、高い緊張感が維持される作風なので、短いとはあまり感じないかも知れない。製作費は3,200万ドルで、世界興行収入は1億4,700万ドルを売り上げた。実に4.59倍のリターンである。
大ヒットした割には、日本での知名度が低い作品かも知れない。
評価
この作品は、ロッテントマト(Rotten Tomatoes)では91%の肯定的な評価を得ている。トップ批評家(Top Critics)の一人であるロジャー・イーバートも、3.5/4 の星を与え、「『混乱に連れて行かれることで不条理を忘れてしまう』『独創的なスリラー』である」という独特な言い回しでこの映画を賞賛している。
商業的にも芸術的にも高い評価を得た作品と言い切って良いと思う。
あらすじ (序盤のみ)
アメリカ陸軍のヘリコプター・パイロットであるコルター・スティーブンス大尉(ジェイク・ジレンホール)は、眠りから目を覚ますと、時刻は朝7時40分で、全く身に覚えが無いが、どうやらシカゴ行きの朝の特急列車の座席に座っていることが分かった。
しかも、目の前の座席から自分に親し気に話しかけて来るクリスティーナ(ミシェル・モナハン)にも見覚えがないし、あろうことかポケットにあった身分証を確認すると教員ショーン・フェントレスと書かれており、鏡に映った自分もそのフェントレスの顔になっていた。
狼狽えながらも列車内を歩き回り状況を把握しようとするが、一向に事情が呑み込めないスティーブンス大尉。列車は次の停車駅で幾ばくかの乗客の乗り降りをさばきながら、シカゴへと徐々に近づいていく。そして、目を覚ました時刻から8分が経過したタイミングで、列車は乗り合わせた乗客は皆死ぬであろう規模の大爆発を起こす。
次にスティーブンス大尉が目を覚ますと、そこは小さな宇宙船のコクピットのような部屋であり、操縦席のような椅子に座っていた。目の前のモニター画面にはグッドウィン大尉(ヴェラ・ファーミガ)が映り、混乱しているスティーブンス大尉の質問にはまともに応じようとせず、とにかく8分間のミッションを再開するよう促してくる。
果たしてスティーブンス大尉が置かれている状況は何なんだろうか…?このミッションの真の目的はどこにあるのか…?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つの観点に絞って書いてみたいと思います。
総論言えることは、そもそも企画が抜群に面白い。その上で、監督と俳優がその魅力を存分に引き出した、以上!って構図だと思います。
全てネタバレなしで書いていきますので、視聴前の予習情報としてお役立てください。
ジェイク・ジレンホールの演技の幅
筆者は、主人公のコルター・スティーブンスは、ジェイク・ジレンホールにピッタリのキャラクターだと思っています。要はハマり役!
というのも、まず1点目として、ジェイク・ジレンホールは、サスペンス/スリラー作品においてシリアスな演技をさせると、作品の緊張度が必ずグググって増量する名俳優だと思うからです。
本作品の前には「ゾディアック」(2007年)。後には、「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年)、「ナイト・クローラー」(2014年)、「ギルティ」(2021年)と、その現象はキャリアを通して証明されて来ていると思います。
一方で2点目としては、ジレンホールさんの場合単にスリルを増量させるだけではなく、演じるキャラクターに血の通った人間らしさもまぶしてくれるので、事件や事態や状況に翻弄される登場人物が、人として葛藤する苦味みたいなものも滲み出てきます。これによって私たちは、そのキャラクターに強く、強く感情移入できるようになります。
ジェイク・ジレンホールによる、スリルと葛藤。この演技の幅を是非お楽しみください!
“タイム・リープ” x “パラレル・ワールド”
既に再三書いたように、この映画は”タイム・リープ”ものです。主人公がミッションとして列車爆破直前の8分間を繰り返すタイム・リープです。
タイム・リープ繋がりで、この作品を「恋はデジャ・ブ」(1993年)と比較する向きがあるようですが、それはちょっと筋違いではないかと、筆者は個人的に思っています。
というのも、「恋はデジャ・ブ」では、物語は主線となる時間軸を繰り返すだけです。主人公の中年男性が、夜眠ると、必ずその日の朝に時間的に戻ってしまうタイム・リープ(=タイム・ループ)。そして、そこから抜け出せない苦労を描く世界観です。
一方でこの「ミッション: 8ミニッツ」は、タイム・リープは意図的・限定的なものであり、かつ、そのリープの外側にある元の世界から、そのリープの状況を俯瞰的に観察します。つまり、現実世界の主線から、リープの副線を派生させるイメージです。言うなれば ”パラレル・ワールド”をコントロールする感覚です。
ここが、この作品が他の一般的なタイム・リープものと一線を画す点であり、ある世界を外の世界から俯瞰するという意味においては、マトリックス・シリーズなんかの方が構造上似ているかも知れません。
なお、この”パラレル・ワールド”(=並行世界)という観念が、この作品を正しく理解する上で、重要な要素になって来るので、ちょっと気に留めておいてください。
ダンカン・ジョーンズ監督の手腕
この映画の何が凄いって、この複雑な内容を93分にキュっとまとめたことじゃないでしょうか?
スリリングなサスペンスあり、人間ドラマありで、かつ設定も複雑なのにテンポ良く進んで行って90分強に収まっている。特に説明臭さがないのが素晴らしいです!
副線となる列車車内は密室サスペンスとして、犯人に逃げ場がない代わりに、8分間というタイムリミットが設定されている。その緊張感が堪らないですね。
一方で主線となる、このミッション指揮所は、少し冷めた目でこの状況を俯瞰している。
この辺りの温度差がとてもさりげなく、そして巧みに演出されていて、鑑賞者はやきもきすること請け合いです!
物語は更に広がりを見せて行きますが、その辺りも期待して観てみてください。ダンカン・ジョーンズ。もっともっと色んな作品を撮って欲しい監督さんです。
蛙の子は蛙って、こういうことなんでしょうかね。
まとめ
いかがでしたか?
めちゃくちゃ多額な製作費を費やしている訳でもないのに、色んな要素があり、かつそれがコンパクトにまとめられているこの秀作を是非ご覧になって頂きたいと思い、この記事を書きました。ちょっとでも興味を持って頂けると嬉しいです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.0 | 面白いので是非! |
個人的推し | 4.0 | J・ギレンホールさんの作品はどれも面白い! |
企画 | 4.5 | タイムリープ x パラレルワールド!! |
監督 | 4.0 | 非凡な才能を発揮! |
脚本 | 3.5 | 説明臭くなくて凄い! |
演技 | 4.0 | 主要登場人物の演技が素晴らしい! |
効果 | 3.5 | 十分な特殊効果! |
このような☆の評価にさせて貰いました。
ジェイク・ジレンホールさんには、これからもどんどんこういう面白い作品に出て欲しいです!
スウィフティーズ以外の人達は応援してください!