話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】ブルース・ウィリスとブラピ共演「12モンキーズ」(キャスト・あらすじ)

この記事でご紹介する「12モンキーズ」は1995年公開の近未来モノSF作品。主演はブルース・ウィリスだが、共演のブラッド・ピットの怪演も公開当時かなり話題となった。ストーリーは、2035年の近未来から、人類50億人がウィルスで死滅した1997年にタイムマシンで原因究明に行くというスリリングな内容。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

12モンキーズ
https://www.facebook.com/12MonkeysMovie/ より

時系列が複雑に交錯する上に、テリー・ギリアム監督の味付けが濃い、ハッキリ言って奇怪な作品。初見の方も含めこの映画を観ようとしている方に、この記事で本作鑑賞の一つのスタンスをご提示してみたいと思います。

予習情報として必要最小限の情報を頭に入れてから、いざこの映画の世界に足を踏み入れてみるのはいかがでしょう?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から30分00秒のタイミングをご提案します。
30分00秒

ここまでご覧になると、この作品のテイスト、世界観が掴めるのみならず、このストーリーがどのように進んで行くのか(あるいは、進んで行かないのか?)が掴めると思います。

この辺りまではご覧になってみて、この続きも観るのか、切り上げるのかを判断されるのが良いと思います。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「12モンキーズ」(原題:Twelve Monkeys) は1995年公開の近未来SF作品。2035年の未来世界を描いたディストピア映画(=大災害が起きた後の未来を描く映画のジャンル)。本作劇中では、1997年に謎のウィルスが世界中に拡散し、人類の99%に当たる50億人が死滅したという世界線が物語の下敷きとなっている。

Covid-19を本当に経験した今の我々にはとても実感を伴う前提世界。劇中では囚人ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)が登場し、タイムマシンを駆使して1996年~1997年の過去に飛び、ウィルス拡散の経緯(いきさつ)を特赦と引きかえに体を張って追求する様が描かれる。

ブルース・ウィリス扮するジェームズ・コール
https://www.facebook.com/12MonkeysMovie/ より

ジェームズ囚人は物語を通して、2035年(現在)、1996年~1997年(パンデミック発生時)のみならず、それ以前の幾つかの時代を行き来するが、より過去で起こした小さな出来事が、より未来の出来事に影響を及ぼしていくという関連性が生じるため、初見でこれらをスッキリ理解するのはなかなか難易度が高い。

なお、タイトルの”12モンキーズ” とは、死のウィルスを世界にバラまいたと目される、謎の活動家集団の名称である。

商業的な成功

この映画の上映時間は130分と標準的な長さだ。製作費は2千9百万ドルで、世界興行収入は1億6千9百万ドルを売り上げたとされる。実に5.8倍ものリターンをもたらしたことになる。

5.8倍のリターン

これだけ独特の世界観を持つ映画で、売上の絶対額という観点からも、利益という相対額という観点からも、大きな収益をもたらしたのは、やはり客を呼べる人気俳優ブルース・ウィリスとブラッド・ピットに拠るところが大きかったのだろうか。

特にブラッド・ピットにとって、1995年は本作「12モンキーズ」と「セブン」の2本のみ、翌1996年は「スリーパーズ」のみに出演した2年間であり、極めて独特な世界観を持つ映画に好んで参画していた時期である。

芸術的評価

詳細は後述するが、ブラッド・ピットの積極果敢なチャレンジが認められてか、ブラピは当該年のゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞している(アカデミー助演男優賞にもノミネート)。

あらすじ (30分00秒の時点まで)

映画は、以下の予言から始まる。

1997年、50億の人間が死のウィルスにより死滅するだろう。

生き残った者は、地上を捨てて地下生活を送ることになる。

世界は再び野生動物たちによって支配されるだろう。

ある分裂病患者の問診記録より – 1990年4月12日 ボルティモア群病院

2035年。地下刑務所に終身刑で服役するジェームズ・コール囚人(ブルース・ウィリス)は、毎夜夢の中でフラッシュバックする映像に悩まされていた。それは、まだ人類全体が地上で生活していた少年時代に空港で目撃した思い出だ。拳銃を片手に走る白人男性が警官に撃たれて倒れ、そこに心配そうに白人女性が駆け寄るという光景。

そんなコール(ブルース・ウィリス)は、たびたび刑務所側から名指しで指名され、地上での危険な任務に送り出される。それは、貸与されるゴムやビニールで出来た完全防護服で身を固め、地上で野生動物に襲われないようにしながら、昆虫を採集するという活動だ。昆虫の研究が、拡散されたウィルスへの対抗措置に役立つと考えられている。

危険を冒して地上で昆虫採集をするジェームズ・コール
https://www.facebook.com/12MonkeysMovie/ より

刑務所側は、この活動をボランティアと称したり、特赦をチラつかせたりしながら、この命懸けの任務を囚人に実質的に強制している。コールと同房の囚人ホセ(ジョン・セダ)は、任務による特赦を熱望しているが、コールは刑務所サイドを信用していない。

地上に送り出されたコールは、完全に廃墟と化した街並みの中で、熊やライオンといった野生動物を避けながら、慣れた手つきで昆虫を採集して行く。街の中では随所で、”12モンキーズ”による「やったのは我々だ」という看板を見掛ける。

任務を終えて地下刑務所に戻ると、毎回拷問のような全身消毒を施された上で、血液検査による検疫を終えてから生活区域に戻される。しかし、今回はいつもの手順の後、自身の収用房に戻される前に、刑務所内で強大な権力を持つ科学者たちとの面談が行われた。

面談の目的は、より難易度・危険性が高い任務の打診であり、コールのこれまでの昆虫採集の実績を通して、彼の観察眼の高さと強靭な精神力を高く評価しての物だった。より大幅な減刑をチラつかせつつ、強制的に任務に就かされるコール。それはタイムマシンで1996年に飛ばされ、ウィルス拡散の経緯を探る任務だった。

タイムマシンで過去に送られるジェームズ・コール
https://www.facebook.com/12MonkeysMovie/ より

時空は1990年4月のボルティモアに移る。キャサリン・ライリー博士(マデリーン・ストウ)が緊急で警察署に呼び出されると、そこには警官5人がかりでようやく取り押さえたジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)が鎖で繋がれ拘束されていた。

薬物テストは陰性だったが、身なりが奇怪で、身分を証明するものを一切持ち合わせず、再三ウィルスの危機について言及するコールは、誇大妄想の精神異常者とみなされ、ボルティモア郡に勤務する精神科医のライリー博士が呼び出されたのだった。

ライリー博士の問いかけにも取り乱して粗暴な対応をしてしまうジェームズ・コール
https://www.facebook.com/12MonkeysMovie/ より

1996年10月に送られて”12モンキーズ”の情報を収集するはずだったコールは、自身が誤って1990年4月に送られことをライリー博士との会話で知り、狼狽えてますます粗暴な対応・言動を取ってしまう。ライリー博士の差配で刑務所入りは免れたものの、一連の異常な言動により、精神病院に収容されてしまう。

コールは精神病院から、2035年の科学者たちから覚え込まされた電話番号に救援依頼の電話を掛けるが、1990年現在は、その番号はありふれた黒人一家の自宅であり、コールの誇大妄想の疑いはますます強まってしまう。

1990年でますます窮地に陥っていくジェームズ・コール
https://www.facebook.com/12MonkeysMovie/ より

そんな中、同じ病室に収容される若い患者、ジェフリー・ゴインズ(ブラッド・ピット)にも、1996年から97年にかけて、人類の99%に当たる50億人がウィルスで死滅する未来を伝えるも、「良いアイデアだ」と聞き流されてしまう。

未来で起きた出来事を「良いアイデアだ」と受け止めるジェフリー
https://www.facebook.com/12MonkeysMovie/ より

果たしてコールは、この精神病院から脱出することが出来るのだろうか?2035年の科学者たちから強制される使命を果たし、死のウィルスをばら撒いたと思しき”12モンキーズ”の情報を収集することが出来るのだろうか・・・?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころを3つの観点に絞って書いてみたいと思います。どれもネタバレなしで書いていきますのでご安心ください。

第一義には、作品のストーリー性をシンプルに楽しんで頂くのが良いと思います。それに加えて、この作品の世界観を味わい尽くすために、こんなところに目を配るのはいかが?というご提案だとお考えください。

というのも、テリー・ギリアムという一筋縄では行かない監督は、どうもこの作品を通して視聴者や世間に向けた示唆があるような気がしていて、そこに目を向けてみようというご提言です。

独特な歪な世界観

とにもかくにも、世界観が独特です。モンティ・パイソン出身のテリー・ギリアム監督の超趣味的な世界観が、全編にわたって具現化されて行きます。特に、作中で”現在”に設定されている2035年の未来世界が独特な異臭を放ちます。

「あらすじ」にも書きましたが、生き残った1%の人類は、20世紀末に地上から逃れて地下生活を余儀なくされています。人類が逃げ去った後の地上世界はというと、野生動物が跋扈(ばっこ)しているという点を除けば、街の廃墟の描写は、割とオーソドックスです。まあこんなもんかなという感じです。

しかし、地下世界の描写は何だか屈折しています。実に異質なテーストです。「未来世紀ブラジル」(1985年) 、「バロン」(1988年) 、「フィッシャー・キング」(1991年) と、物珍しい世界、見慣れない都市、言動が異様な人々を描いて来たテリー・ギリアム監督が、そのビジョナリーとしての才能を結実させたのでしょうか。

その2035年の地下世界では、建物の内壁は金属製の無機質な打ちっぱなし、照明はどこも暗く、至る所から蒸気が吹き出しています。そして、統治権力の頂点には科学者が君臨しており、歪んだ知性主義を感じます。そんなねじれた価値観の下で生活する囚人が、主人公のジェームズ・コールな訳です。その抑圧された生活はいかばかりか?

要約すると、本作品は近未来SF映画なんですが、ハッキリ言って全くカッコ良くないんです。むしろ、滑稽で不格好で歪(いびつ)な世界です。閉鎖社会における人、集団、組織を、テリー・ギリアムが皮肉を込めて描いているように思えます。何と!ここがこの作品の出発点なんです。

あわわっち

正直ここで好き嫌いが分かれると思うんですよね・・・

人間全般に対する皮肉

「あらすじ」にも書きましたが、ブルース・ウィリス扮する主人公のジェームズ・コールは、タイムマシンで2035年を出発するものの、目的の年代とは異なる1990年に誤って流れ着き、その混乱から精神病院に収容されてしまいます。

その病院には、ブラッド・ピット扮するジェフリー青年を筆頭に、様々なヤベぇ患者たちが収監されています。ただその患者たちの姿は、ある程度想像の範囲です。ここで特筆したいのは、そこに勤務する精神科医たちの挙動です。

この一連のシーンにおいては、ブルース・ウィリス扮するコールと、マデリーン・ストウ扮するライリー博士の目線で描かれて行きますが、この2人の主要キャラクターに、私たちが共感すればするほど、精神科医たちの一癖も二癖もある振舞いが、どんどんどんどん我々を不愉快な気持ちにさせていきます。要はウザいんです。

これこそが、テリー・ギリアム監督が示唆したい風刺なんじゃないでしょうか?

つまり、ある人物が正常か異常かなんて、その人物を見る立場が決めるんであって、自分はマトモだと思っている奴だって、見ようによっては偏執的な存在になりうるんだ。そんな逆転の仕掛けを、精神病患者と医者とを鏡にしてギリアム監督はコッソリと仕掛けているんじゃないでしょうか?

筆者の目に映った、ギリアム監督の風刺。皆さんはどんな気持ちでご覧になるでしょうか?

ブラッド・ピットの演技と曖昧模糊とした現実

ブラッド・ピット扮する、イカれた青年(ジェフリー・ゴインズ)の演技が強烈です。ただしこれは、その目で観てご確認頂くしかないので、皆まで申しません。

視聴を続けると、ぼんやりとと浮き彫りになって来るのが、ブラッド・ピット扮するジェフリーと、ブルース・ウィリス扮するジェームズの立場の対比です。

ジェフリー(ブラッド・ピット)は完全なイカれ野郎キャラですが、常に自信満々に振舞います。一方のジェームズは、本来は頭も良く強靭な肉体と精神を誇る人物ですが、誤って収監された精神病院で強制投与された鎮静剤や、度重なるタイム・トラベルの影響で、徐々に現実と妄想の区別が曖昧になって行きます。

自信満々のイカれ青年ジェフリー・ゴインズ
https://www.facebook.com/12MonkeysMovie/ より

この二人の対照的なキャラクターが絡めば絡むほど、この映画を鑑賞している我々も現実と虚構の区別が曖昧模糊となって行きます。これが実に気持ち悪いです。この心理戦こそがギリアム監督が描きたかった、社会全体に対する皮肉なんじゃないでしょうか?世間で事実と思われていることも、それはあなたの思い込みかも知れないよ?と。

以上3つの観点で書いてみました。テリー・ギリアム監督が目論んだと思しき”仕掛け”を、なるべく端的にお伝えできていると嬉しいです。

あわわっち

皆さんは、この作品をどんな楽しみ方をするでしょうか?

まとめ

いかがでしたか?

この奇怪な映画をどう捉えたら良いか?について、一つの見解をお示しできたとしたら嬉しいです。こういう目線で鑑賞すると、ある程度スッキリ理解できるのではないか?というご提案をしたつもりです。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 3.0 好き嫌いが分かれる・・・
個人的推し 3.5 ギリアム監督独特の世界観を楽しむ
企画 3.5 今観るとパンデミックの恐怖に震える
監督 3.0 趣味的過ぎるような・・・
脚本 3.5 現実と妄想が交錯し一つの像を結んでいく
演技 4.0 主役級3人の演技が秀逸!
効果 3.5 一周回ってチープな美術が癖になる
こんな感じの☆にさせて貰いました

このような☆の評価にさせて貰いました。

演技を楽しむ、ストーリーを楽しむ、風刺を楽しむ。複眼的な楽しみ方が出来る作品だと思います。ただし、妙に不愉快な味わいなので、好き嫌いは分かれる作品だと思います。

この記事が、皆さんがこの映画をより味わい深く鑑賞するお手伝いが出来ると嬉しいです。

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