話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】世紀の大失敗作?映画「ウォーターワールド」(あらすじも)

この記事でご紹介する「ウォーターワールド」は、1995年公開の近未来SF映画。地球は温暖化に伴う海面上昇で大陸が水没。人類は海上生活を強いられるようになる。洋上に分散する小規模コミュニティは、常に海賊の脅威にさらされているという世界観。そして、ケビン・コスナー扮する一匹狼の主人公は、この世界をどう生き抜いて行くかというストーリーになっている。

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

この映画の世界は、映画公開と同時にユニバーサル・スタジオ・ハリウッドで「ウォーターワールド」というアトラクションとしてもお目見え。その後30年近く経過した現在も常設されたままになっている人気コーナーである。そして今や、ユニバーサル・スタジオのジャパン/シンガポール/北京でも常設されている。

一方で映画そのものは公開時から大問題作(大失敗作?)扱い。この作品が、なぜそんな評価を受けているかを、今から一緒に紐解いてみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から26分00秒のタイミングをご提案します。

ここまでご覧になると、この映画のテーストが分かり、主人公がどんな生活を送り、人類のコミュニティとどんな接点を持っているかが描かれ、物語の端緒が見えます。

この作品に対する好き嫌いを判断するには、十分な情報量だと思います。

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「ウォーターワールド」(原題:Waterworld) は、1995年に公開された近未来を描いたSF作品である。この作品について理解するには、まずはその独特な世界”観”を知る必要があるので、少し厚めに説明してみる。

近未来の地球では、地球温暖化で南極・北極の氷が融解し、その結果海面が著しく上昇して、全ての大陸が水没する。しかし、何とか生き残った人類は、数は圧倒的に減ったものの何百年もの間、海上生活に順応しながら生き伸びて来た。

その ”ウォーターワールド” において、人々は洋上各地に分散し、人工的な陸地 ”アトール” の上で生活している。そして、人類の中には、急速にこの水上生活に適用した結果、水中エラ呼吸も可能になるよう肉体を進化させた者も出現した。しかし、彼らは”ミュータント” と呼ばれ、通常の人類から忌み嫌われている。

生き残った人々は、地球のどこかに残ると言われる伝説の大地、”ドライランド” を夢見ながら、秩序を保って暮らすことを標榜しているが、”スモーカーズ”と呼ばれる海賊集団の被害にも悩まされており、そんな中ミュータントの一匹狼である、ケビン・コスナー扮する”マリナー”という男が、あるアトールに流れ着くという世界である。

独創的なビジュアルと既視感溢れるストーリー設定

上述の世界観を具現化するために、この作品では徹底した海上ロケを敢行したことで知られる。これが興行的には大爆死を生むが(詳細は後述)、視覚効果という観点では、豪華なセットを実際に海上に組むなど、CG が未成熟だった1990年代中盤に、他に類を見ないほどリアルな海上生活を映像化しており、ビジュアル的な独創性は非常に高い。

すなわち、世界”観”の可視化は完璧といってよいほど実現されている。

しかし一方で問題なのはストーリーライン、すなわち世界”線”だ。

流れ者の一匹狼の主人公が、閉鎖的なコミュニティに流れ着くというプロットからして、黒澤明の「用心棒」(1961年) 、クリント・イーストウッドの「荒野の用心棒」(1964年) の流れをくむ、使い古された設定に感じられてしまう。

そして、洋上にポツンと存在する”アトール”と呼ばれる小さなコミュニティは、塀で囲まれ、自警団が周囲360度を常時監視し、よそ者、特にルール無用の悪党集団に対して高い警戒心を示す様が、「マッドマックス2」(原題:The Road Warrior、1981年) に出て来る砂漠に点在するコミュニティと、どうしても重なってしまう。

しかも、能力の突出した一匹狼の主人公が、この荒廃とした世界に現れて、一般人を率いて約束の大地(本作だとドライランド)を目指すというストーリー(詳細は後述)が、やっぱり「マッドマックス2」である。

また、筆者の世代だと、女性の背中に彫られた刺青が、希少性の高いものの在りかを示す地図となっているという設定が、1980年代にカルト的人気を博した日本のマンガ/アニメ「コブラ」をも想起させる。

というわけで、映像(世界観)は凄いけど、ストーリー自体(世界線)は既視感が否めない。そこへ来て海水で濡れると薄くなった頭髪が悪目立ちするケビン・コスナーさんが、真剣な表情で両生類の役を演じる様子が、どうにもこうにも馬鹿げて見えてしまう。何とも構造上の欠陥を内包した作品となっている。

芸術的評価

本作品は、アカデミー音響賞にノミネートされた一方で、ゴールデンラズベリー賞(アカデミー賞の対極で、その年の最低映画決めるアワード)で、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞の4部門にノミネートされ、見事(?)デニス・ホッパーが助演男優賞を受賞している。

商業的成果

この映画は上映時間136分と結構長めの構成・編集である。ちなみに特別編というものも存在し、そちらは176分という長編作品となっている。これ以上この話に何を足すんだ?というのが本音ではあるが、劇場公開時にカットされたシーンが追加されている。

世界興行収入は2億6千4百万ドルと、ここだけ見れば超大ヒット映画である。しかし、製作費が1億7千5百万ドルもかかっており、これでは1.51倍のリターンにしかならなかった。

1.51倍のリターン

映画の製作費とは、端的に言うと映画を作品として完成させるまでのコストを指すため、配給の費用や、広告宣伝費は含まれていない。よって世界興行収入は通常、出資者としては製作費の3倍。最低でも2倍は確保したいところであり、そういう意味で言えば、この作品は興行的には大コケである。

では何でこの作品はこんなにも高コストだったかと言うと、一言で言えば、上述の通り豪華な海上セットを組んで、海上ロケを敢行したからである。海上ロケは通常の陸上ロケと比較してクルーに危険度が増すので、彼らには通常以上の特別な保険を掛けることが必要で、これが製作費を押し上げたと言われている。

しかも、海上は天候が荒れやすく、思うようにロケが進まなかったために、撮影は度々中止・延期された。大掛かりなセット、それに伴う大人数のクルー、特別な保険、そして長期化した撮影の日数という要因が掛け算で重なり合って、ここまで製作費を押し上げたと言われる。

あらすじ (26分00秒の時点まで)

地球温暖化に伴い海面が上昇した近未来の地球。遂に全ての大陸が水没し、生き残った数少ない人類は、洋上に点在する”アトール”と呼ばれる人工的な島の上で、肩を寄せ合うように生き延びるのが精一杯であった。

そんな中、ある男(ケビン・コスナー、『海の男=マリナー』と呼ばれる)は、古い三胴船を独りで操舵し、洋上を旅していた。

3つの胴体を繋ぎ合わせた帆船である三胴船

いかに航海に慣れたマリナーであっても、水を始めとする生活必需品は定期的に入手する必要があり、マリナーは最寄りのアトールに立ち寄ることにする。周囲を高い塀で覆い、可能な限り要塞化したアトールは、マリナーの入港を拒むが、マリナーが土を持っていることを示すと、渋々入港を許可した。

アトールを始めとした人類社会においては、今や土が何よりも貴重品で、マリナーは丼一杯程度の量の土との交換で、必需品を幾つか入手し、早々にこのアトールを後にしようとする。

ところが、去り際にある父親が娘を連れてマリナーに近付き、マリナーに娘と性交することを要求する。アトールはコミュニティがあまりにも小さいため、マリナーのような余所者との限られた接触の機会を利用して、外部の血を入れないと、血が濃くなり過ぎてコミュニティが崩壊すると考えられていたのだ。

マリナーがこの依頼を断ると、一人旅を続ける航海士が性交のチャンスを断るのは不審だと父親が断罪し、数人の男がマリナーを取り押さえようとする内に、マリナーはエラがあるミュータント両生類であることが発覚してしまう。そのまま、マリナーは身柄を拘束され、ミュータントであるという理由だけで小さな牢屋に監禁されてしまう。

翌日マリナーの即決裁判が行われ、死刑判決が下ろうとしていた時、洋上には武装した高速船や、水上バイクが突如として無数に現れ、このアトールを襲撃しようとしていた。それは、ディーコン(デニス・ホッパー)率いる ”スモーカーズ” という海賊集団であった。

果たしてこのアトールは、スモーカーズの襲撃を跳ね返すことが出来るのだろうか?牢屋に閉じ込められたマリナーは、この状況を脱することが出来るのだろうか?

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころ、素晴らしいところを3つ挙げてみたいと思います。一方でイマヒトツな面も2つ。

世界観の具現化

英語には、apocalyptic という単語あって、”終末的な”という意味です。核戦争や気候変動、地球外からの生物襲来や隕石の衝突など、人類や地球が何がしかの壊滅的なダメージを受ける状況を apocalyptic (終末的な)と修飾します。文化的背景に聖書があるハリウッド映画には、こうした終末的な激甚災害後に人類がどう生き延びて行くか?を描くジャンルが存在し、Post-Apocalyptic 作品と言います。

核戦争後の人類の闘いを描いたターミネーター・シリーズや、寒冷化により雪と氷に覆われた地球での人類の生き残りを描いた「The Day After Tomorrow」(2004年) 、最近だと「Don’t Look Up」(2021年) がその代表例な訳ですが、本作「ウォーターワールド」も Post-Apocalyptic 作品なわけです。

そして、そのPost-Apocalyptic な世界である ”ウォーターワールド” を描写するに当たり、大規模な海上セットから、衣裳や小物に至るまで、徹底したリアリティとディティールを追求した演出はお見事としか言いようがありません。

周囲360度を見渡す限りの水平線に囲まれ、孤立無援の状況で血も涙もない海賊からの襲撃にも自警団で備えなければならないアトールの力強さと脆さ、そして奇異さが、画面を通してもバッチリ伝わって来て、皆さんもこの映画のビジュアルの強さは本物だと感じられると思います。

マリナー(海の男)であるケビン・コスナー

ケビン・コスナーのマリナー(海の男)の役作りが見事です。ケビン・コスナーの演技力の高さは言うまでも無いので、ここではその役作りにフォーカスしたいと思います。

本作では、ケビン・コスナーは”マリナー(海の男)”と呼ばれる両生類の役を演じていますが、三胴船を独りで操船する様が実に見事です。余程訓練を積んで撮影に臨んだんでしょうか、劇中の三胴船を我が家のように慣れた手付き(足つき)で操る姿は実に見事です。

ラダー(舵)を握って船を操舵する様、ラダーを大きく動かしてタック/ジャイブ(船の向きを風上/風下に大きく変えること)する様、接岸時に船を岸に括りつけるロープワーク、ペダルウィンチを漕いで帆を高速で張る様、ロープにぶら下がって空間をあっという間に移動する様。

全てが ”当たり前のこと” としてさりげなくなされていて、メチャクチャカッコいいです。

見事なアクション・シーン

これは、ジャッジタイム以降の時間帯をご覧になってからのお楽しみですが、アクション・シーンが実に見事です!

構図、カット、編集、全てがお見事なんですが、特筆すべきは、立場の差を巧みに描き分けていることです。

海賊がアトールを襲撃するシーンにおいては、海賊の首領であるディーコン(デニス・ホッパー)、ディーコンを盲信する部下の軍団(”ヒャッハー”って言いそうな頭の悪そうな武装集団)、襲撃されて逃げ惑うばかりの平民、平民の中でも強い思いの下行動する者、そして一匹狼の主人公といった感じで、騒乱の中でも立場の違いを見事に演出して行きます。

既視感・二番煎じ感

こうして素晴らしい側面が沢山あって、お金もたっぷり掛けたのに、どうしても既視感が拭えない、どうしても二番煎じに観えてしまうのがこの映画の痛いところです…

デニス・ホッパーの存在

デニス・ホッパーが、”スモーカーズ”という海賊集団の首領ディーコンを演じているのですが、何ともネタ的な存在にしか見えないんですよね。見た瞬間、コメディ枠なのか?みたいな。

そこにグロテスクな演出が重ねられていくので、悪い冗談みたいに見えちゃうんですよね。前年の「スピード」(1994年) とは、不気味さが各段の違いで、残念な感じです。

出演:ケビン・コスナー, 出演:デニス・ホッパー, 出演:ジーン・トリプルホーン, 出演:ティナ・マジョリーノ, Writer:ピーター・レーダー, Writer:デイビッド・トゥーヒー, 監督:ケビン・レイノルズ, プロデュース:チャールズ・ゴードン, プロデュース:ジョン・デイビス, プロデュース:ケビン・コスナー

まとめ

いかがでしたか?

ついネタ扱いしたくなってしまう本作なんですが、素晴らしい面についてもお伝え出来たかと思います。

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 2.5 無理に観なくても良いかも
個人的推し 2.0 話のタネに1回は観てみますか?
企画 2.0 企画の段階で独創性が…
監督 3.5アクション・シーンはお見事!
脚本 2.5 企画が悪いから…
演技 3.5 空回り感が皮肉な感じ
効果 4.0 リアリティとディティール!
こんな感じの☆にさせて貰いました

このような☆の評価にさせて貰いました。

とにかく企画が二番煎じなので、その後の工程が頑張ってもどうにもならないと思うんですよね。オマケにデニス・ホッパーが斜め上の方向に役作りしちゃっているので、益々ネタっぽい映画に収束して行ってしまうという。

ケビン・コスナーさんは相変わらず素晴らしいんだけど、エラと水かきが付いていると思うと、どうにも苦笑いが…

あわわっち

洋上生活を舞台にした終末観。もっと上手に料理できなかったのかな…?

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