この記事では、ターミネーター・シリーズの4作目「ターミネーター4」の解説をします。「ターミネーター」の前日譚の創造、英雄 ”ジョン・コナー” の内面の掘り下げと、これまでにない試みが果たしてうまく言ったのか?また、新たな存在マーカスについても、しっかり触れて行きたいと思います。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
ジャッジタイム (ネタバレなし)
本作品を観続けるのか、それとも観るのを中断して離脱するのかを決めるジャッジタイムですが、
- 上映開始から18分10秒をご提案します。
この時点まで観ると、この作品の世界観(色・音・雰囲気・主役の役作り)が見え、最も重要な登場人物3名が置かれている状況が分かるので、ジャッジを下すのに適切なポイントだと思います。
概要 (ネタバレなし)
度重なる製作元の変更
「ターミネーター4」は、2009年に公開されたSFアクション映画。前作「ターミネーター3」(2003年公開・劇中舞台は2004年の世界、以下T3)の続編であり、ターミネーター・シリーズの第1作「ターミネーター」(1984年公開、以下T1)の前日譚を描いた作品である。
ハルシオン・カンパニーという製作会社が、映画化権を買い取り、ターミネーターの新たな世界を心機一転創造しようとした意欲作である。上述のジャッジタイムまで観ただけでも直感的にお分かり頂けるように、本作は「Judgement Day」と呼ばれる核戦争後の未来を直接的な舞台にしており、シリーズ他作品と比較して相当異質な雰囲気に包まれている。残念ながら後にハルシオン・カンパニーが破産したため、この作品の世界観を継承する作品は製作されず、本作品の存在はシリーズ中で浮いた存在である感は否めない。
そんな異端児「ターミネーター4」だが、脚本はT3に引き続きジョン・ブランケート、マイケル・フェリスのコンビが務め、T3で製作に名を連ねたアンドリュー・G・ヴァイナが製作総指揮を務めたこともあり、本作はT3及びT1と矛盾なくストーリーが繋がっている。
あらすじ (18分10秒まで)
2003年のロングビュー刑務所。死刑囚のマーカス・ライト(サム・ワーシントン)は、セレーナ(ヘレナ・ボナム=カーター)の必死の説得に応じ、死後自身の遺体をサイバーダイン社のに実験検体として提供することに合意する。その後、マーカス・ライトの死刑執行が行われる。
2004年に核戦争(通称「Judgement Day」)が起きる(←T3に基づく前提知識)。
2018年、スカイネット率いるターミネーター軍に、人類は抵抗軍を組織して必死に対抗するが戦果は芳しくない。そんな中ジョン・コナー(クリスチャン・ベール)は救世主(=Salvation)だと噂されるが、その真偽は誰にも分からない。
スカイネットの研究施設を急襲する抵抗軍。その攻撃部隊には部隊長であるジョン・コナーも含まれる(ジョンは抵抗軍の中では中堅士官クラス)。急襲軍は首尾よく研究所に潜入し、
- 診察台に横たわったまま動かない裸の男性(←画面をよく見るとマーカス)
- 捕らわれた大勢の人間の捕虜
- 母サラから得た情報よりも早いペースで進捗する新型ターミネーター(T-800)の開発状況
- 急襲目的の敵の秘密データ
を発見する。しかしその後スカイネットの猛反撃に遭い、攻撃部隊はジョン以外は全滅する(この激戦の陰でこっそりマーカスは覚醒する)。
帰還後、強引に抵抗軍司令部を訪れるジョン。最高司令官との激論の末、急襲で得たデータの正体は、スカイネットに遠隔操作される敵マシンの機能を完全停止出来るかもしれない短波の周波数パターンであることを知る。それと共に偶然聞かされた情報は、
- スカイネットが数日後に人類の特定個人の暗殺を計画していること
- リストの2番目にジョン・コナーの名前があること
- リストの1番目には、無名の民間人の名前(カイル・リース)の名前があること
であった。ジョンは、未来の自分の父の身に危険が迫っていることを知る。
T3のその後を矛盾なく描きつつ、このT4で頑張らないとT1に繋がらないじゃないか!という舞台設定が整う訳だ!
前日譚による3部作構想
ハルシオン・カンパニーは、この前日譚T4を皮切りに三部作を製作することを構想していたらしい。つまり、Star Warsのエピソード4-6の後に、エピソード1-3が製作された目論見に似ている。筆者個人としては、このT4の試みは非常に上手く行ったと思うんだけど、皆さんの目にはどう映るだろうか?
本作の製作費は2億ドル掛ったと言われている。ターミネーター・シリーズは、「Judgement Day」以降の荒廃した世界を直接的な舞台にすると、CGやセットが大掛かりになってコストがかさむので、ターミネーターがタイムマシンでやってくる設定により舞台を現代社会にしてきた。こうして製作費を抑えてきたのだが、T4では遂にそのご法度を破っちゃったことになる。
シュワちゃんが(殆ど)出ないこのターミネーター4は、世界で3.7億ドルの収入しか上げられず、興行的には大失敗となってしまった。結果、ハルシオン・カンパニーは破産し、続編の「ターミネーター:新起動/ジェニシス」にアーノルド・シュワルツェネッガーが復帰して、リブート作と位置付けられることになった。T4がまるで黒歴史のように…
前後の経緯に疎い我々の世代が、先入観無しでこの作品を観ると、非常に面白いと思うんだけどな・・・
見どころ (ネタバレなし)
憑依型俳優によるジョン・コナー
本作では、ジョン・コナー役にクリスチャン・ベールが起用されている。前3作までは、著名な(=既に色の付いた)俳優は起用されてこなかった役柄だが、本作品では有名な、しかも憑依型俳優で有名なクリスチャン・ベールが起用された。皆さんはどのように評価されるだろうか?
キャラクターの作り込みや、抵抗軍の優秀なソルジャーとしての身のこなし、そしてサイボーグに抵抗する人類としての矜持のようなものを遺憾なく表現してくれたと筆者は思っているので、本作が興行的に失敗に終わったことが残念で仕方がない。
クリスチャン・ベール好きなんで、どうしても肩入れしちゃいます。
マーカス・ライトの存在
サム・ワーシントン扮するマーカス・ライトが本作には出てくる。もっと言うと、映画の冒頭はこのマーカスの物語から描かれる。ターミネーター・シリーズはこれまで、命を狙う者、狙われる者、そして、狙われる者を守る者のハッキリした三軸で描かれてきた。果たしてこのマーカス・ライトという存在はどういう位置づけを担うのだろうか?
また、生き残ろうとする人間と、無慈悲な殺人鬼であるスカイネット。その中間の存在に、死刑囚であるマーカスが配置されている辺りも非常に興味深いです。ご注目です!
前日譚 x タイムトラベル
本作の主人公ジョン・コナーは、シリーズ1作目「ターミネーター」で起きるカイル・リースとサラ・コナーの運命的な出会いにより誕生する。2人が出会うためには、未来から過去へカイルがタイムトラベルすることが前提条件となる訳だが、そのタイムトラベルを指令するのはジョン自身だ。よって、予定通りT1の世界線でジョンがカイルを過去にタイムトラベルさせるためには、ジョンもカイルも本作ターミネーター4の世界線を生き抜く必要がある。さもないと、ジョン・コナーが存在ごと時系列上から消滅してしまう。
2人は無事に生き抜けるのか?このハラハラするストーリーにどんどん引き込まれちゃうと思うんですが、皆さんはどうだろうか?
その他の情報
筆者の本作に対するおススメ度合いは、 4.0 です。
いつもの如く、暴力シーンがあることについては減点対象ですが、本作は全般的にスリリングで面白く、クリスチャン・ベールとサム・ワーシントンの演技も手堅く、人間に焦点を当てた意欲作だと思う。
この映画が興行的に失敗した理由が、筆者には良く解らない。アーノルド・シュワルツェネッガーが(まともに)出演していないからなのか?皆さんには是非最後までご覧になっていただいて、冷静な評価を下して頂きたい作品です。
映画作りって本当に難しいでですね。秀作とヒット作は別物なんだもの。