「ドル箱三部作って何?」に応える、ドル箱三部作 / Dollars Trilogy 早わかり情報です!
具体的にどの3作品を指すのか?「マカロニ・ウェスタン」との関係は? など、
製作上・演出上の8つの特徴を押さえて、「ドル箱三部作」を一気に理解しちゃいましょう!
ブルーレイ情報も最後に付けておきます。
概要 – 3作品
ドル箱三部作とは、1960年代中盤にイタリアで製作された(撮影地はスペイン等を含む)3作の西部劇映画のことです。
具体的には
- 荒野の用心棒 (A Fistful of Dollars – 1964年製作)
- 夕陽のガンマン (For a Few Dollars More – 1965年製作)
- 続・夕陽のガンマン (The Good, the Bad and the Ugly – 1966年製作)
の3本である。
この3作の間にはストーリー的な繋がりは無いが、後述する製作・演出上の共通的特徴があり、最初の2作に「Dollars」の単語が使われていることから「Dollars Trilogy (ドル箱三部作)」と呼ばれる。
儲かったから(=ドル箱だったから)「ドル箱三部作」って呼ばれてる訳じゃないんだね。実際は興行的にも大成功だったけど。
製作上の特徴4つ
このドル箱三部作には以下4つの製作上の特徴(共通点)がある。
3作とも、
- イタリアで製作されたこと
- イタリアで作られた西部劇、いわゆるマカロニ・ウェスタン (※) の火付け役、代表作だね!
- 監督がセルジオ・レオーネであること
- 無名だったセルジオ・レオーネ監督の地位を一気に引き上げた!
- 主演がクリント・イーストウッドであること
- 同じく無名だったクリント・イーストウッドを、本三部作のアメリカ国内公開後に一躍有名にした!
- 音楽をエンニオ・モリコーネが担当していること
- 「荒野の用心棒」時点では映画音楽の仕事をすることにまだ抵抗があったため「ダン・サヴィオ」という名義でコッソリ担当している。
- でも、実際は3作ともエンニオ・モリコーネがオリジナル楽曲を提供している!
邦題 | 原題 | 制作年 | 監督 | 脚本 | 製作 | 音楽 |
荒野の用心棒 | A Fistful of Dollars | 1964 | セルジオ・レオーネ | ヴィクトル・アンドレス・カテナ ハイメ・コマス・ギル セルジオ・レオーネ | アリゴ・コロンボ ジョルジオ・パピ | ダン・サヴィオ(エンニオ・モリコーネ) |
夕陽のガンマン | For a Few Dollars More | 1965 | セルジオ・レオーネ | セルジオ・レオーネ ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ | アルトゥーロ・ゴンザレス アルベルト・グリマルディ | エンニオ・モリコーネ |
続・夕陽のガンマン | The Good, the Bad and the Ugly | 1966 | セルジオ・レオーネ | フリオ・スカルペッリ セルジオ・レオーネ ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ | アルベルト・グリマルディ | エンニオ・モリコーネ |
※ マカロニ・ウェスタンって言葉は、淀川長治氏が考案した和製英語なんだって。海外の多くの国ではスパゲッティ・ウェスタンって呼ぶんだって。でも、意外とマカロニ・ウェスタンでも通じるっていうんだから不思議だよね。
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ へと繋がって行くレオーネとモリコーネの黄金コンビは、ここから始まったんだね!
モリコーネの映画音楽への逡巡は、映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」でも詳しく語られているよね。
演出上の特徴4つ
上述の製作上の特徴により、ドル箱三部作は以下4つの演出上の特徴(共通点)を帯びることになる。
- 「用心棒」の世界観
- 世界観のベースに「用心棒」(監督・黒澤明、主演・三船敏郎、1961年)がある(「荒野の用心棒」は「用心棒」の無許可のリメイク、要は丸パクリで、東宝から訴えられた関係で、アメリカ国内では1967年まで公開できなかったよ)。
- 浪人を演じた三船敏郎がモデル
- それまでのハリウッド製の西部劇は、保安官モノに代表される善玉・悪玉がハッキリした勧善懲悪が多かったが、ドル箱三部作ではクリント・イーストウッドが無口で無骨で皮肉を連発するアウトローを演じてる(三船敏郎の粗野で皮肉屋な流れ者の浪人がベース)
- ドル箱三部作にはストーリー上の繋がりは無い(その証拠に4人の俳優が別役で2度登場してくる)が、クリント・イーストウッドが演じるキャラクター像は3作とも同じ(お馴染みのスタイルである、同じ形の帽子、細身のジーンズ、くたびれた革のベスト、模様の付いたポンチョを着て、葉巻を口の左側に咥えて登場するのかは、ご覧になってからのお楽しみ!)。特に最初の2作では特定の所作を繰り返す印象が強いかも(浪人役の三船敏郎は片手をよく着物の懐に突っ込んでいる)
- キャラクター描写が細やか
- イーストウッドが演じるこの主人公には、3作を通じてニックネームしか出てこず、本名や出生は描かれない(後に通称「名無しの男」と名付けられ、「名無しの男シリーズ (Man with No Name Trilogy)」とも呼ばれる。三船敏郎扮する浪人が、名を訊かれても偽名しか答えない演出の真似)
- ただし作中で、主人公がどんな性格なのかが解かる細かな出来事を散りばめることで、キャラクターの特徴を丁寧に描写していくスタイル
- モリコーネの音楽
- 無口な主人公が生む空白を埋めるのが、モリコーネの書き下ろした楽曲の役目で、「音で絵を描く、台詞の代わりに音楽にストーリーを語らせる」と評される
粗野で無口で皮肉ばっかり言ってるアウトローって、完全に後のダーティー・ハリー・シリーズのハリー・キャラハンだよね!
「名無しの男」って、クリストファー・ノーラン監督が創った映画「TENET」の主人公みたい!
このドル箱三部作の成功のお陰で、1970年代初頭までに、マカロニ・ウェスタンは500作以上が製作されたんだよ!凄い影響力だよね!
まとめ
「ドル箱三部作」について覚えましたね。
具体的には、
- 3つの映画作品のこと
- 4つの製作上の共通点
- 4つの演出上の共通点
だと分かったね!