この記事では、マーティン・スコセッシ監督の代表作にして、ギャング映画を語るうえで欠かすことのできない名作、『グッドフェローズ』の解説をします。ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、レイ・リオッタが、男臭い演技を繰り広げて行きます。一部実話に基づいている描写もあり、非常にリアルな作品です。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
映画界に衝撃を与えた数々の革新的な制作技法についても詳しく紹介していきますので、是非この作品の世界に足を踏み入れてみてください!
ジャッジタイム
本作品における、見続けるか中止するか判断するジャッジタイムは
- 上映開始から16分00秒のタイミングをご提案します。
ここまでご覧いただければ、本作品のテンポ感や作品そのものが纏う雰囲気をご理解いただけるでしょう。
概要
『グッドフェローズ』について
「グッドフェローズ」(原題:Goodfellas)は、1955〜1980年のニューヨークマフィア界を生きた実在の男、ヘンリー・ヒルの半生を描いた小説『ワイズガイ』をもとに作られており、著者のニコラス・ピレッジと監督のマーティン・スコセッシが共同で脚本を制作している。
タイトルである「グッドフェローズ」は、原題が「Goodfellas」であり、分解すると”Good” + “Fellows” で、これは「気のおけない親しい友達」という意味であり、「同じ組織に属する同胞」というマフィア界の隠語であるとされている。
マーティン・スコセッシはその後、本作にも出演したロバート・デ・ニーロやジョー・ペシとともに『カジノ』を制作したが、この作品もニコラス・ピレッジの同名小説を原作としており、彼が再び脚本制作に関わっている。
公開年 | 作品名 | あらすじ |
1973 | ミーン・ストリート | 3流ギャングの主人公だけは問題児ジョニーボーイを庇っているが… |
1976 | タクシードライバー | 不眠症に悩まされる主人公がタクシードライバーとなり、社会を嫌悪していく |
1977 | ニューヨーク・ニューヨーク | 主人公のサックス奏者と恋人の関係は彼の短気な性格のせいで変化していく |
1980 | レイジング・ブル | ボクシング王者のキャリアと引退後の人生を描いたドラマ |
1982 | キング・オブ・コメディ | コメディの王様になることを夢見る男が次第に常軌を逸して行く様を描く |
1990 | グッドフェローズ | ニューヨークを舞台に実在のマフィアの半生を描いたクライムドラマ |
1991 | ケープフィアー | 弁護士家族と彼らを付け狙う男を描いたサイコスリラー |
1995 | カジノ | カジノの支配人とその仲間のマフィアを描いたクライムドラマ |
2019 | アイリッシュマン | 実話をもとに労働組合とマフィアの関係を描いたクライムドラマ |
スコセッシとデニーロは一緒に9本の映画を撮っているし、いろんな相棒がいるんだね!
作品の評価
1991年のアカデミー賞のおいて本作は、ジョー・ペシが助演男優賞を受賞したほか作品賞、監督賞、助演女優賞にノミネートされた。また、マーティン・スコセッシは本作で、ヴェネツィア映画祭銀獅子賞を受賞しており、作品の評価は非常に高い。
アメリカ映画協会が2008年に発表した、アメリカ映画名作ランキング・ギャング映画編では、『ゴッドファーザー』に次ぐ第2位を獲得している。
この映画は、「アメリカ国立フィルム登録簿」(National Film Registry) に登録されている。これは、連邦政府国立フィルム保存委員会(The United States National Film Reservation Board)が毎年25作品を選定するもので、本作品が、アメリカの文化的、歴史的、芸術的に、後世に多大な影響を与えたことが公的機関からも認められた証である。
あらすじ(16分時点まで)
ニューヨークでマフィアに憧れる少年ヘンリー・ヒルは、11歳からマフィアの使い走りを始め、裏社会に身を投じていく。
ヘンリーは、若くしてすでに伝説となったジミー・コンウェイ(ロバート・デ・ニーロ)と出会い、密造タバコの裁判で口を割らなかったことでジミーに認められる。
ヘンリー、ジミー、そしてヘンリーと同年代のトミーの3人は、大金を掴み、大物になるためマフィア社会でのし上がっていく…
見どころ
テンポ感
本作品が公開された1990年以前のギャング映画といえば、『ゴッドファーザー』『スカーフェイス』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などに代表されるように、ダークな映像とシリアスな展開が定番だった。しかしマーティン・スコセッシはその常識を打ち破り、本作品をポップで単調な作りにして、ギャング映画の新しい形を作り上げた。スコセッシ本人が「街頭ドキュメンタリー」と語るこの技法は、俯瞰での視聴を促し、見ている人が感じる精神的負担や疲労感を大きく減らした。つまり本作品は、苦手な人が多いギャング映画というジャンルを、エンタメとして楽しむことができるレベルまで昇華させた作品だと言える。
音楽
そしてその効果を促進させるもう一つの要因が、DJ的な音楽起用である。現在となっては珍しくもないが、本作の制作当時、「時代背景」「ストーリーの舞台となった土地」など、劇中のバックグラウンドを意識せず、現実の世界ですでに有名な曲を挿入歌として取り入れる手法は革新的だった。スコセッシは『ミーンストリート』からその手法を採用し、本作においても本人の趣味嗜好が色濃く溢れ出る選曲をしており、それが視聴者に”感情移入させすぎない”という意味で先述したドキュメンタリー調の作りを際立たせている。
ストーリー構成
最後に、マーティン・スコセッシ映画のプロトタイプとも言えるストーリー構成に注目していただきたい。起承転結が見えづらく、主人公のナレーションと共に淡々と進むストーリー構成は、本作品以前の『ミーンストリート』『タクシードライバー』ではそこまで強くは感じないが、以後の『カジノ』、新しいもので言うと『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などではどこか既視感を感じるほどスコセッシ特有の描き方となった。その効果はやはり先述したドキュメンタリーチックなテイストを作り出す要素の一つであるが、この雰囲気が好きになる方は、スコセッシ映画にどっぷりとハマっていくことになるだろう。
いわゆるスコセッシ節というやつだね!
その他の情報
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.5 | ギャング映画好きは絶対見るべき! |
個人的推し | 4.5 | デニーロが好き |
企画 | 4.5 | 実話ベースがすごい |
監督 | 4.0 | 巨匠はいかにして巨匠になったか |
脚本 | 4.0 | スコセッシとピレッジのタッグ |
演技 | 4.0 | ジョー・ペシの怪演 |
効果 | 5.0 | 特殊技法が素晴らしい! |
「事実は小説より奇なり」とはよく言ったもので、ヘンリー・ヒルの壮絶な人生を忠実に描ききれば、そもそも面白い映画ができることは間違いないでしょう。しかし、散々語ったスコセッシの技法なしでは、ギャング映画界に新たな風を吹かせるほどの名作にはならなかったかもしれません。そう言った意味で「効果」の部分を5.0とさせていただきました。