話題の記事続編なのに1作目の質を超えた映画5選

【ネタバレなし】ノーラン映画「インソムニア」 (意味、あらすじ、キャスト)

この記事でご紹介する「インソムニア」は、鬼才クリストファー・ノーランが、アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクの3人のオスカー俳優を迎えて、傑作ノルウェー映画をハリウッド・リメイク。クリストファー・ノーランがハリウッドに本格進出して初の作品で2002年の公開。ノーランが早くも才能を発揮した一級サスペンス

この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。

もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。

この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。

この映画を観るかどうか迷っている人観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人ことも考え、ネタバレしないように配慮しています。

実績のある3人の俳優を相手に回し、若干31歳の監督が撮ったとは思えない巧みな演出。クリストファー・ノーランのファンは必見の一本。それ以外の方も、この記事でこの独特の世界観を予習してみませんか?

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、

  • 上映開始から29分30秒のタイミングをご提案します。
29分30秒

ここまでご覧になると、この映画独特の陰惨な雰囲気がつかめると思います。そして、名刑事ドーマー(アル・パチーノ)の過去の事件、現在の事件で、何が起きて、何が起きようとしているのかが見えてくると思います。

この続きを観るか否かを判断する最適なタイミングとしてご提案します。

概要 (ネタバレなし)

本作品の位置づけ

「インソムニア」(原題:Insomnia)は、2002年公開のクライム・サスペンス映画。Insomnia とは英語で不眠症という意味だ。クリストファー・ノーランが監督(のみ)を務めている。クリストファー・ノーランにとって本作は、

  • 本作製作時31歳
  • 第3回監督作品であり
  • 長編作品としては第2回監督作品

この作品の3年後「バットマン ビギンズ」(2005年)で大きく羽ばたいて行ったことを考えると、前作「メメント」(2000年)で得た自身への高い評価をそのままに、新進気鋭の若手監督としての位を確固たるものにした作品と言える。

グングンと上り詰めて行くノーラン監督

サポート体制も万全で、

  1. 1997年製作の同名ノルウェー映画のリメイク作品なのでストーリーの元ネタは確か
  2. 製作総指揮に、ジョージ・クルーニースティーブン・ソダーバーグが名を連ねている
  3. アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクと3人のオスカー俳優が競演

主役級3人へのギャラを含めた4千6百万ドルの製作費に対して、世界興行収入1億1千4百万ドルを叩き出しており、暗い映画を作ってもキッチリ投資は回収するというノーラン・マジックは、この頃から既に健在だったんだなと今さらながらに感心します。

あわわっち

この映画公開当初(直後)観たんだけど、当時はノーラン作品だなんて全然意識してなかったんだよね・・・

商業的成果

この映画の上映時間は118分と極めて標準的な長さである。製作費は4千6百万ドルで、世界興行収入は1億1千4百万ドルと、2.48倍のリターンである。

2.48倍のリターン

エンタメ作品には程遠いこの陰惨なストーリーで、これだけの絶対額、これだけのリターンを叩き出したのは、流石クリストファー・ノーランと言えるのではないだろうか?

キャスト

この映画のキャストは以下の表の通りである。

役名 俳優 役柄
ウィル・ドーマー アル・パチーノ 不眠症に苦しむ主人公。ロサンゼルス市警からアラスカ・ナイトミュートに派遣される刑事
ウォルター・フィンチ ロビン・ウィリアムズ
エリー・バー ヒラリー・スワンク ドーマーに憧れるナイトミュートの地元刑事
レイチェル・クレメント モーラ・ティアニー 刑事2人が宿泊する地元ロッジの従業員
ハップ・エクハート マーティン・ドノヴァン ドーマー刑事の相棒
フレッド・ダガー ニッキー・カット ナイトミュート市警の現場責任者
チャーリー・ニューバック ポール・ドゥーリイ ナイトミュート市警の署長
ランディ・ステッツ ジョナサン・ジャクソン 地元の高校生。殺された少女のボーイフレンド
タニヤ・フランケ キャサリン・イザベル 地元の高校生。殺された少女の親友
ファーレル ラリー・ホールデン ナイトミュート市警の警官
インソムニアの出演者

あらすじ (29分30秒の時点まで)

ロサンゼルス市警のウィル・ドーマー刑事(アル・パチーノ)と相棒のハップ・エクハート刑事(マーティン・ドノヴァン)は、アラスカの田舎町ナイトミュートで起きた地元女子高生殺害事件の捜査を手伝うため、空路アラスカへと向かう。

現地で受け入れを担当するのは地元の若手女性刑事エリー・バー(ヒラリー・スワンク)だ。エリ―は、ポリス・アカデミーの教材にも取り上げられるような伝説の刑事ドーマーを大変尊敬しており、ドーマーの捜査手法を間近で見られることを内心喜んでいる。

事件は、地元の女子高生ケイが何者かに撲殺されたというもの。遺体には複数の古いアザが付いていたこと、ケイと同じ高校に通う恋人ランディ・スティッツ(ジョナサン・ジャクソン)と、ケイが揉めていたという証言も得られたことから、事件は早期に解決するように思われていた。

しかし、安置されていた遺体を再度用心深く検分したドーマー刑事(アル・パチーノ)は、遺体の髪の毛が入念に洗われていたことや、爪が切られていたことを見逃さない。続いて、ケイの自宅の自室を訪れると、ケイが女子高生にしては高価な衣服や装飾品を所有していたことを不審に思う。

こうしてドーマー刑事は、高校生の容疑者ランディ以外の存在、すなわち、経済力があり、冷静沈着な犯人像を思い浮かべていく。

舞台はアラスカ州ナイトミュート

ドーマー刑事(アル・パチーノ)は、実はこの出張中も、ロサンゼルス市警の内務調査を受けている最中であった。嫌疑は証拠の捏造。彼はかつて起きた幼少年殺害事件において、犯人が証拠不十分で釈放されることに耐え切れず、証拠を捏造していたのだ。

この事実を知る相棒のハップは、ドーマーへの尊敬と、捏造に対する一定の理解を示しながらも、自身の家族の生活を守る必要から内務調査課との司法取引を決断し、その旨をドーマーに伝える。こうして、2人の関係は険悪な雰囲気になってしまう。

そんな中、ケイ殺害事件に進展が起きる。ケイの遺留品であるカバンが、湖畔の小屋で見つかったのだ。

そのカバンには教科書や読みかけの小説、警察がこれまで探していたケイの日記が収められていた。ドーマー刑事は、遺留品の検証は進めるものの、カバンは一旦発見した箇所に戻すことを指示し、並行して地元のマスコミを通して、警察はケイの遺留品を依然として捜索していると公表させる。一種の罠である。

こうして真犯人を意図した通りに湖畔の小屋におびき寄せることに成功したドーマーたちであったが、一緒に張り込んでいた地元警官の初歩的なミスや、犯人も拳銃で武装していたこと、そして突然濃霧が立ち込めた混乱などにより、ドーマーはあろうことか相棒のハップを撃ってしまう。

ハップは死ぬ間際にドーマーに対して、”あんたが、この僕を、殺そうと撃ったんだ” という言葉を残して息を引き取る。結果的に、ドーマーはハップの口封じに成功した格好になってしまう。

この一件が片時も頭から離れなくなるドーマー刑事。過去の事件、今回の事件。良心の呵責にアラスカの白夜が加わり、ドーマーは連夜の不眠症(インソムニア)に苦しめられていく・・・

見どころ (ネタバレなし)

この映画の見どころを4つの観点で書いてみたいと思います。

どれもネタバレなしで書いていきますので、安心してお読みください。皆さんがこの映画をより味わい深く鑑賞するための一助になれると嬉しいです!

3人のオスカー俳優

まずは何と言っても3人のオスカー俳優の競演が見ものです。撮影時の年齢とそれ以前のオスカー受賞歴を以下にまとめてみました(ヒラリー・スワンクは本作の後、「ミリオンダラー・ベイビー」で2度目の主演女優賞の受賞を果たす)。

俳優名撮影時年齢受賞アカデミー賞受賞作
アル・パチーノ61歳主演男優賞セント・オブ・ウーマン
ヒラリー・スワンク27歳主演女優賞ボーイズ・ドント・クライ
ロビン・ウィリアムズ51歳助演男優賞グッド・ウィル・ハンティング
3人の撮影時年齢と過去のオスカー受賞歴
3人のオスカー俳優揃い踏み!

まずは何はともあれ、アル・パチーノの存在感が凄いです!凄いっていうか、ちょっと映画全体のバランス崩してませんか?(笑)ぐらいに思う。撮影時アル・パチーノは61歳。60歳を超えた刑事と言うのは現実的にあり得るんでしょうか?

アメリカでは多くの場合、定年という絶対年齢ではなく、退職者年金が満期を迎える相対年齢で退職のタイミングが判断されると聞きますが、この時期の俳優アル・パチーノのフェロモン過剰な感じが、良くも悪くもこの作品の色を決定付けているように思います。

あわわっち

この頃のアル・パチーノが発す過剰な男の色気みたいなのがちょっと苦手・・・

27歳とは言え、既にオスカー受賞歴があり、その高い演技力には疑いの余地が無くなっていたヒラリー・スワンクが、本作品で渦中の人間とは異なる目線を観客に提供してくれます。ノーラン作品特有の、難解な主題の投げかけが本作品でも炸裂する中で、アル・パチーノ扮するウィル刑事に心酔する彼女の葛藤が本作品に第三者的な軸を加えてくれるのが楽しめると思います。

ロビン・ウィリアムズがエグイっす。この人がいるお陰で、アル・パチーノの一本足打法にならないで済みます。この作品が公開された2002年は、ロビン・ウィリアムズは「ストーカー」という作品にも出演しており、51歳にして大いなるキャリアの転機だったのかも知れません。

手堅い映像表現

早い話画面が暗い!(←サブスク・サービス登場後は、何がしかのリマスターがされたのでしょうか、大分改善されていました)ってことなんですが(笑)、ただ画面の輝度を落とせばよいって話ではない訳で、アラスカの大自然を背景に、このストーリーが浮き彫りにしようとしている、人間の、特に正義の番人であるはずの刑事の内面の陰鬱さを、映像からも表現していますね、キッチリと。

そして、殺人事件を捜査していく映像の中に、被害者の生前の姿や犯行時の様子がサブリミナル的に挿入されることで、緊張感が物凄く高まります。

アラスカという大自然と、人工的な映像技法のある種のミスマッチを用いて、我々観客をストーリーに引き込む工夫が施されて行きます。こうした優れた映像表現に、素晴らしい俳優陣の演技が加わる。当たり前のことが当たり前のようにキッチリ噛み合う映画っていうのは、やっぱり観てて楽しいですね。期待してください!

音楽によるサポート

この映画の音楽はデヴィッド・ジュリアンが担当しています。クリストファーノーランのデビュー以来、ずっと音楽監督を任せてきたジュリアンも、タッグを組むのは本作が3作目となります。その音楽が、映画の緊張感を高めるのに一役買っています。意識を傾けて視聴しても良いですし、意識しなくても否が応でも緊張感は高まるので、それはそれでOKです(笑)

テーマ (主題)

何故?何故?何故?というクエスチョン・マークが頭に付きまくる作品です。だって、誰からも尊敬される超優秀な刑事であるウィル・ドーマーの2つの証拠隠滅に関して、我々観客は共犯者にさせられちゃうんですもん。

それで不眠症 (インソムニア) になってしまう。現実と幻覚の境目も分からなくなってします。この Why?Why?Why?を追っていくのが、本作の正しい楽しみ方なんだと思います。

あわわっち

とにかくイライラしますけどねwww

ポニーキャニオン
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その他の情報

本作品に対する☆ですが、

総合的おススメ度 3.5死体の描写とかエグいクライムサスペンスです
個人的推し 4.5個人的にはかなり好きな作品です
企画 4.5不眠症とアラスカの白夜!
監督 4.5手腕を存分に発揮!
脚本 4.5テーマを追うのが楽しいです
演技 4.5パチーノの憔悴、スワンクの葛藤、ウィリアムズの不気味さ
効果 4.0ちょっと狙いすぎ?
こんな感じで☆を付けさせて貰いました

総合的おススメ度合いですが、ノーラン作品の独特な雰囲気が好きか嫌いか、アル・パチーノの中年の魅力が好きか嫌いか、個人の好みが分かれるところだと思うので、3.5 と辛めの採点とさせて貰いました。

なお、ストーリーの舞台となっているアラスカのナイトミュート (Nightmute) は架空の町なんだそうです。

あわわっち

夜(Night) が無音 (Mute) になるなんて、不眠症の映画には出来過ぎた名前だと思ったんだよなぁーwww

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