この記事でご紹介する「リーサル・ウェポン3」は、1992年公開の刑事アクション映画。リーサル・ウェポン・シリーズの3作目。前2作に引き続き、メル・ギブソン扮する無鉄砲な若手刑事とダニー・グローヴァ―扮するベテラン刑事のデコボコ・コンビが本作でも難事件に立ち向かいます。
ただし、前作に引き続きひょうきん者レオ・ゲッツ(ジョー・ペシ)も登場するのみならず、本作では新たにレネ・ルッソ扮するやり手の女刑事も登場し、物語は更にスケールアップして行きます。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
公開当時、エルトン・ジョンが歌う主題歌も話題に!そして、撮影監督は後に自らがメガホンを取って「スピード」(1994年) を世に送り出したヤン・デボン。
アクション、コメディ、ヒューマンドラマと、全方位的にパワーアップし、よりリーサル・ウェポンらしさが増した「リーサル・ウェポン3」。前2作を上回る興行成績を記録した本作の魅力を、ちょっとだけ一緒に予習してみませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から29分00秒のタイミングをご提案します。
この辺りまでご覧になると、この三作目のテイストがつかめ、また本作の事件の怖さが見えてきます。好きか嫌いかを判断するのにはこの辺りまで眺めて判断頂くのが良いと思います。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「リーサル・ウェポン3」(原題:Lethal Weapon 3) は、1992年に公開された刑事もの、バディもの、アクションもの映画。無鉄砲な若手白人刑事のマーティン・リッグス(メル・ギブソン)と家庭的なアフリカ系アメリカ人ベテラン刑事のロジャー・マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)のデコボコ・コンビの活躍を描く。
野性的な直感で行動するリッグス刑事の暴走に、常に冷静で合理的であろうとするマータフ刑事が振り回されっぱなしというお約束の構図は本作でも健在。いや、むしろスケールアップして描かれるのがこの3作目の特徴。
また、前作で組織犯罪の重要証人であったおしゃべり会計士レオ・ゲッツも、本作にも引き続き登場し、どういう訳か警察署にも出入りしているレギュラー状態。
加えて、これまでのシリーズでは、一貫して女性はか弱く守るべき対象と描かれてきたのが、1990年代に入り新たな時代を意識してか、ローナ・コール(レネ・ルッソ)という強い女性キャラクターを新たに登場させ、新たな女性像、新たな人間関係を開拓して見せた。
リーサル・ウェポン・シリーズの制作陣
リーサル・ウェポン・シリーズは、映画4作の制作陣に変動が少ないことが大きな特徴だ。以下の表を見て頂きたい。
邦題 | 原題 | 公開年 | 監督 | 脚本 | 製作 | 音楽 |
リーサル・ウェポン | Lethal Weapon | 1987 | リチャード・ドナー | シェーン・ブラック | リチャード・ドナー ジョエル・シルバー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン |
リーサル・ウェポン/炎の約束 | Lethal Weapon 2 | 1989 | リチャード・ドナー | ジェフリー・ボーム | ジョエル・シルバー リチャード・ドナー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン デイヴィッド・サンボーン |
リーサル・ウェポン3 | Lethal Weapon 3 | 1992 | リチャード・ドナー | ジェフリー・ボーム ロバート・マーク・ケイメン | ジョエル・シルバー リチャード・ドナー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン エルトン・ジョン |
リーサル・ウェポン4 | Lethal Weapon 4 | 1998 | リチャード・ドナー | チャニング・ギブソン | リチャード・ドナー ジョエル・シルバー | マイケル・ケイメン エリック・クラプトン デイヴィッド・サンボーン |
監督と共同製作の2役を務めるリチャード・ドナーを筆頭に、もう1人の製作者のジョエル・シルバー、音楽のマイケル・ケイメン、エリック・クラプトンという ”イツ面(いつものメンバー)” がこの3作目も担当している。
また、脚本をジェフリー・ボームが前作に引き続いて担当することでシリーズ物の一貫性を保ちつつ、ロバート・マーク・ケイメンも執筆に加わることで、新キャラクターについての新たな視点を取り込むことに成功したと思われる。
主題歌・音楽
それから、主題歌にエルトン・ジョンが「Runaway Train」という楽曲を提供しているのも興味深い。その一方で映画のオープニングはスティングとエリック・クラプトンによる「It’s Probably Me」で幕が開けるのも、一風変わったテイストである。
商業的成功
本作の上映時間は118分と極めて標準的な長さである。これは、ここまでのシリーズ3作共通の特徴であり、ヒットの一つの要因と言えるかもしれない。製作費は3千5百万ドルで、シリーズを通して順調に予算が積み増されていることが窺い知れる。
作品 | 制作費 | 世界興行収入 | リターン |
1作目 | 1千5百万ドル | 1億2千万ドル | 8.0倍 |
2作目 | 2千5百万ドル | 2億2千8百万ドル | 9.12倍 |
3作目 | 3千5百万ドル | 3億2千2百万ドル | 9.2倍 |
世界興行収入は3億2千2百万ドルを売り上げを記録し、シリーズ最大のヒットとなった。実に9.2倍のリターンである。
上記の表にもあるように、絶対額の観点からも、利益率の観点からも最大のヒットとなったことが分かる。
あらすじ (29分00秒の時点まで)
ある夜、ロサンゼルス市内のオフィスビル内で時限爆弾が発見される。この報を聞きつけ、ロサンゼルス市警のマーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)とロジャー・マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)のコンビは現場に急行する。
爆弾に興味津々のマーティンは、引退を8日後に控えたロジャーが制止するのも聞かず、爆弾が仕掛けられたビルに入って行ってしまう。マーティンの暴走が心配なロジャーは不本意ながら彼の後に続く。
時限爆弾を目の前にしたマーティンは、爆弾処理班を待つべきだと主張するロジャーの忠告を無視して、ついに我流で爆弾処理を行ってしまう。その結果、時限爆弾のタイマーが早まり爆弾は見事に爆発する。
幸い2人に怪我は無かったものの、彼らはこの件で巡査に降格され、翌日から制服警官として街のパトロールを命じられる羽目になる。ロジャー引退まで1週間。
すると、パトロール中の彼らの目の前で、偽の現金輸送車が大量の現金を詐取し、そのまま逃走しようとする詐欺事件が起ころうとしていた。この状況を察知したマーティンとロジャーは、即座にこの偽輸送車を追跡し、何とか強盗団の1人は現行犯逮捕できる。
するとこの事件が思わぬ方向に転がる。逮捕した強盗団は”コップ・キラー”と呼ばれる特殊な弾丸を所持した銃に装填していたのだ。”コップ・キラー”は、先端を特殊加工した銃弾で、これにより防弾チョッキをも貫く威力を具備する。そして、どうやらこの恐ろしい銃弾が既に街で取引されているらしいことが署内で周知される。
果たして、マーティンとロジャーは刑事に復帰することが出来るのか?逮捕拘留中の強盗から”コップ・キラー”を流通させている黒幕を聞き出し、これを捕まえることが出来るのだろうか?そして、警官の身を危険に晒すこの凶弾を街から一掃することが出来るのか?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つの観点に厳選して述べてみたいと思います。全てネタバレなしで書いていくので、初見の方も含めて予習情報として読んで頂ければと思います。皆さんがこの作品をより味わい深く鑑賞する一助になると嬉しいです。
リッグス – マータフ・コンビの進化
この映画シリーズを語る際に、まずは何と言っても最初に言及すべきはこの2人についてでしょう。マーティン・リッグス刑事(メル・ギブソン)とロジャー・マータフ刑事(ダニー・グローヴァ―)のデコボコ・コンビです。この映画シリーズの凄いところは、そのコンビの描き方を常に進化させている点です。
というのは、1作目では、自殺願望のあるアブナイ男マーティンと、そんな彼に人間として本気でぶつかって行く情感豊かなロジャーという、人と人が真正面から対峙する1対1の構図が見どころでした。
それが2作目では、そんなコンビの面白さに胡坐(あぐら)をかくのではなく、レオ・ゲッツ(ジョー・ペシ)というコケティッシュなキャラクターを新登場させることで、要所要所で コンビ vs レオ という2対1の構図を作り出し、それがコンビ間の個性の違い、あるいは息の合ったコンビネーションを浮かび上がらせる見事な触媒になっていました。
そして、本3作目でも、制作陣はやはり慢心すること無く、今度はローナ・コール(レネ・ルッソ)という女刑事キャラクターを新たに投入し、コンビ vs ローナ という2対1の対決の構図を前面に押し出すことで、コンビの成長を描いていきます。
マーティン・リッグスという人物の成長、ロジャー・マータフという人物の成長、そして両者の関係性の成長を描くにあたって、常に新たな第三者を置くことで主人公たちに深みを加えて行くこのアプローチは、やりとりを観てるだけでも面白いですし、脚本、監督の見事な手腕に感心しきりでもあります。是非その目でお確かめください。
女優レネ・ルッソの覚醒
そんなローナ・コール役を演じたレネ・ルッソさんですが、本作で1990年代の時代の要請に合った”強い女” を演じておられます(本作公開は1992年)。これが見どころです。
この意義を正しく理解するためには、当時の時代の流れを読む必要があるので、順を追って書いてみます。
2020年代を迎えた現代においては、多様性、ダイバーシティ、ジェンダーフリーといった言葉や概念は(実際実現されているかは別にして)当たり前に耳にします。しかし、今から30年前の1990年代というのは、それ以前から提唱されてきたウーマン・リブの考え方がようやく一歩前進し、”女性はもっと独立した存在として自分の道を生きて良い” という考え方に目覚め始めた時代でした(ザックリ言うと)。
そして、そういう世間の流れを反映させた映画も頻繁に作られるようになります。これをハリウッドで牽引してきたのはシガニー・ウィーバーさんで、「エイリアン」(1979年)「エイリアン2」(1986年)の段階から、自分の意思で自分の運命を決めるエレン・リプリーという強い女性像を演じていました。
そして、本題の1990年代に入ると、「ターミネーター2」(1991年) のサラ・コナーを演じたリンダ・ハミルトンや、
女2人の自由への逃避行「テルマ&ルイーズ」(1991年) でのスーザン・サランドンとジーナ・デイヴィス。
再度シガニー・ウィーバーさん自身の「エイリアン3」(1992年) と続き、本作「リーサル・ウェポン3」(1992年) のレネ・ルッソと、強くて自立した女性像を描く作品の系譜が醸成されて行きます。
これを、レネ・ルッソのキャリアの目線で紐解くと、「メジャーリーグ」(1989年) で映画デビューをして以来、その端正な顔立ちから ”芯の強い女性” を演じてはいましたが、彼女の役柄は常に男性主人公のガールフレンドという立ち位置だったように思います。
それがこの「リーサル・ウェポン3」からは ”独立した” 女性キャラクターとして描写されます。
これが後の「ザ・シークレット・サービス」(1993年) 、「アウトブレイク」(1995年) での、自立した女性を演じるキャリアに繋がるのだと思いますが、この流れは本作「リーサル・ウェポン3」でのローナ・コール役を演じたことが転換点だったのではないでしょうか?
強い女性を演じる女優レネ・ルッソの覚醒が、ストーリーに第三、第四の軸を確立し、上述のリッグス ー マータフのコンビ芸に新たな刺激となっています。これが本作の見どころの一つだと思うので、楽しみにしていてください!
スケールアップしたアクション・シーン
スケールアップしたアクション・シーンが圧巻です!1990年代前半は、まだCG(コンピュータ・グラフィックス)が一般的でなかったので、アクション・シーンは全て実写(か特撮)です。この時代特有のアクション・シーンのリアリティを是非その目でお確かめください!
これを言葉で説明するのは野暮なのでここまでにしておきます。シリーズ開始から1千万ドルずつ製作費を増やして来たこの3作目では、どんなところにお金が費やされているのか是非ご注目ください!
公開当時、派手だなーって感心しました!
まとめ
いかがでしたか?
シリーズのお約束は守りつつも、新たなキャラクターによる新たな構図を生み出し続けるリーサル・ウェポン・シリーズの三作目、その魅力が少しでも伝わったのなら幸いです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 4.0 | 面白いアクション映画 |
個人的推し | 4.0 | エンタメ性が強化! |
企画 | 4.0 | 作風のアップグレードが素晴らしい |
監督 | 4.0 | テンポが良いのがシリーズの良さ |
脚本 | 3.5 | 細かいところは気にしない (笑) |
演技 | 4.0 | 成熟した団体芸 |
効果 | 4.0 | ド派手でスリリングなアクション |
このような☆の評価にさせて貰いました。
過去の成功に慢心せず、新たに取り込もうとした要素や構図が、自然とストーリーテリングとして物語に溶け込んでいるので、シッカリ没入して楽しめるんじゃないかと思います。おススメの作品です。
ホップ・ステップ・ジャンプとここまで綺麗に決まるシリーズも珍しいですよね!