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【あらすじ・ネタバレなし】産業革命の歴史を通してバック・トゥ・ザ・フューチャーPart2を語る

この記事では、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」、すなわち、バック・トゥ・ザ・フューチャー・シリーズの2作目について解説します。

ただし、1作目の解説と同じアプローチを取ります。

それは、バック・トゥ・ザ・フューチャー三部作で描かれた、19世紀から21世紀にまたがる4つの時代(1885年、1955年、1985年、2015年)を初めから念頭に置いて、同時期に人類に起きた第1次から第4次までの産業革命が、この三部作のストーリーにどう反映されているのかを確認して行くというアプローチです。

こうすることで、バック・トゥ・ザ・フューチャー・シリーズが、タイムトラベル映画としていかに各時代をリアルに、そして事細かに描いているかが見えてきます。

例えば、Part3が描いた第1次産業革命直後の1885年の世界では、都市間の移動に蒸気機関車が描かれていたけど、第2次産業革命を経たPart1の1955年の世界では自動車社会が成立し、1985年では高速道路による移動、第4次産業革命を経た2015年にはドローンを想起させる描写になってるよねと言った具合です。「産業革命の歴史を通して『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を語る」とはそういう意味です。

本シリーズは、三部作完結から30年以上の歳月が経過しており、既に優れた解説ブログや、分かり易い解説動画が、世の中にたーくさん存在しているので、それらとは違った目線でこの三部作を楽しむ方法をご提案したいのです。

この映画って、こういう楽しみ方もあるんだ!と思って頂けると嬉しいです1989年に公開された第二作目「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」ではどんな様子でしょうか。是非この作品の世界に足を踏み入れてみてください!

目次

ジャッジタイム (ネタバレなし)

この映画を観続けるか、見限るかを決めるジャッジタイムは、

  • 上映開始から35分10秒のポイントを提案します

結構長めの時間を設定してますが、この辺りまで観て初めて、本作品のプロットが掴めることになるので、この辺りまでまずは観てみるはいかがでしょう?

概要 (ネタバレなし)

この作品の位置づけ

「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」(原題:Back to the Future Part Ⅱ) は、1989年に公開されたSF映画。1985年に公開された「バック・トゥ・ザ・フューチャー (1985年)」(通称:Part1) の続編であり、シリーズ2作目。監督、脚本、製作、製作総指揮の布陣は、前作から変更は無い。

タイトル 公開年 監督 脚本 製作
バック・トゥ・ザ・フューチャー 1985 ロバート・ゼメキス ロバート・ゼメキス
ボブ・ゲイル
ボブ・ゲイル
ニール・カントン
バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2 1989 ロバート・ゼメキス ロバート・ゼメキス
ボブ・ゲイル
ボブ・ゲイル
ニール・カントン
バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3 1990 ロバート・ゼメキス ロバート・ゼメキス
ボブ・ゲイル
ボブ・ゲイル
ニール・カントン
BTTFシリーズの制作陣

ただし、2作品を細かく見比べると、脚本担当のクレジットの仕方が微妙に異なっていて、

  • Part 1:
    • Written by Robert Zemeckis & Bob Gale
  • Part 2:
    • Screenplay by Bob Gale
    • Story by Robert Zemeckis & Bob Gale

と表示されている。Part 2のクレジットのニュアンスを読み取るに、ストーリー展開はロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルの2人で創作したけど、それを脚本という形態にまで落とし込んだのはボブ・ゲイル1人だよってことなんでしょう。

双子作品 Part 2 と Part 3

バック・トゥ・ザ・フューチャー・シリーズは、本作Part 2の後にPart 3 へと引き続いて行く。ただしこれは、通常良くあるような、Part 2 がヒットした(ヒットしそう)なので、Part 3 の制作が決定したという二段階ロケット方式ではなく、これら2作品は(ほぼ)同時に制作された。

というのも、バック・トゥ・ザ・フューチャーのPart 2とPart3は、元は2つに分かれたシナリオではなく、1本の長編作品だった。しかし、これをこのまま映画化してしまうと、見積もりでは上映時間3時間半の長編作になってしまい、興行的に不利になる(映画は上映時間が長くなると1日の上映回数が減って売上がその分落ちる)。

かと言って、短縮のために中身を間引くと意味が通じなくなってしまう。そこでシナリオを2つに分割し、2作をほぼ同時に制作した。実際の撮影は、Part2のクランクアップの後、マイケル・J・フォックスには10日間だけ休暇が与えられ、その後すぐさまPart 3の撮影に入った。結果わずか半年の間を空けて2作品は公開された。

本作公開時、筆者は高校生であった。運よくPart 2 の無料試写会に当選し、一般より一足早くこの作品を鑑賞する機会に恵まれた。何の事前情報も無く試写会場でこの話を最後まで観ていたら、何と!”To be Continued” という文字が画面に現れるではないか!そして、引き続いて西部で活躍するマーティとドクの姿。最後には”Coming Summer 1990” (1990年夏に到来!) の文字。

あわわっち

えっ!もう半年待つの?
オチが付かないモヤモヤと、まだしばらく楽しめるという喜びと複雑な気持ちになったのを良く覚えています!

商業的成功

このPart 2 は、上映時間は108分。4千万ドルの製作費で3億3千2百万ドルの世界興行収入を上げた。実に8.3倍のリターンである。ちなみにPart 3 も4千万ドルの製作費であり、2億4千5百万ドルの世界興行収入を上げている。間違いなく大ヒット作品である。

8.3倍のリターン

あらすじ (35分10秒の時点まで)

雷の電力を利用して、1955年から1985年に何とか帰還したマーティ・マクフライ(マイケル・J・フォックス)。恋人のジェニファー(エリザベス・シュー)との再会を喜んでいると、デロリアンで未来から帰還したドクター・エメット・ブラウン(クリストファー・ロイド)が現れる。

そして、急ぎ未来に行かねばならないと告げ、3人で2015年へと向かう。ただし、デロリアンが空中浮遊をする様子をビフ・タネン(トーマス・F・ウィルソン)に目撃され、不可思議な記憶としてビフの脳裏に焼き付いてしまう。車中で事情をドク・ブラウンから聞くと、マーティとジェニファーの2人は無事に結婚し、息子と娘をもうける。だが、その息子マーティ・Jr. が2015年に犯す犯罪を食い止めないと、連鎖的にマクフライ家は崩壊するという。

一連の話でパニックを起こしたジェニファーは機械で眠らせ、到着した2015年の世界で、マーティは息子のJr.になり代わって、息子がグリフ(ビフ・タネンの孫)が主導する犯罪に巻き込まれるのを何とか防ぐ。こうしてマクフライ家の崩壊連鎖を断ち切ったマーティとドク・ブラウン。

一安心したマーティは、スポーツ年鑑(過去のスポーツの勝敗が記載されている)を1985年に持ち帰って賭博で一儲けすることを企むが、この卑しいアイデアをドク・ブラウンに咎められ、スポーツ年鑑はその場にあったゴミ箱に捨てられてしまう。

これらのやりとり盗み聞きしていたビフは、30年前の空中浮遊したデロリアンの記憶と2人の会話から、ドク・ブラウンがタイムマシンを発明したことを確信し、件のスポーツ年鑑をゴミ箱から回収する。

マーティとドク・ブラウンがグリフ対応をしている間に、路地裏で眠らせておいたジェニファーは、警察官の手で2015年の自宅に搬送されてしまう。2015年と1985年のジェニファー同士が対面することで発生する混乱を食い止めるため、急ぎ2015年の自宅へとデロリアンで急ぐマーティとドク・ブラウン。この2人をタクシーで尾行するビフ。2人が、ジェニファー対応の為にデロリアンから離れた隙に、ビフはデロリアンに乗ってどこかに消え、しばらくして戻って来る。

ジェニファーが2015年の自宅で目を覚ますと、そこにはマーティの両親、2人の間に生まれたマーティ・Jr. と娘のマーリーンが居た。仕事から戻ったマーティは、TV電話で高校時代の同級生ニードルズと会話をするが、その内容は次第に怪しげな方向へと進み…

マーティとドク・ブラウンは、無事にジェニファーと合流し1985年に帰れるのか?デロリアンでスポーツ年鑑とどこかへ消えたビフは、一体何を仕掛けたのか?

見どころ

まずは普通に見どころ解説

増築部分の整合性

このPart 2(およびPart 3)において、我々視聴者が安心して楽しめる工夫の1つに、付け足された世界観がPart 1 とちゃんと整合性が取れているというのが挙げられる思う。

まず、ビフ・タネン(トーマス・F・ウィルソン)のキャラクター。Part 1 の1955年でマーティの父ジョージが反旗を翻したことで、世界線が変りスッカリ更生したと思われていたビフ・タネン(1985年)は、やっぱり悪の心を隠し持っていたという点が愉快だ。これは人によって感じ方は様々だろうけど、筆者は「そうでなくっちゃね!」と思っちゃう派だ。

そして、その悪人DNAは2015年の孫グリフ・タネン(トーマス・F・ウィルソン)に引き継がれていく。これらシリーズの流れの中で、ジョージ・マクフライ vs. ビフ・タネン という一代限りの対決の構図が、マクフライ家 vs. タネン家 の複数世代に跨る因縁の歴史に増築されるのが見どころになっていく。

これに呼応するように新たに登場するのが、マーティ(マイケル・J・フォックス)の ”チキンはNGワード” という設定。既述のあらすじ(37分15秒まで)の範囲でも描かれるが、マーティは「チキン (腰抜け野郎)」と呼ばれるとカチンっと変なスイッチが入って、かならず挑発に応じてしまうキャラクター付けが増築された。

これはどうやら、マクフライ家の中でもマーティ固有の属性で、DNAという訳ではないようだ。だが、何せストーリー上マーティは、1855年、1955年、1985年、2015年の4つの時代を行ったり来たりするので、その先々で挑発に応じていたらマクフライ家の歴史に暗い影を落としてしまう。

にも関わらず、その4つの時代それぞれでマーティを挑発するのが、その時代、その時代のタネン家の人間という、需要と供給のバランス(?)が取れたシナリオになっている。

出演俳優の交代の影響を最小限に抑えてくれていることも見逃せない。いや、俳優交代を見逃せたことが良かったと言うべきか?

まず、マーティの恋人ジェニファー・パーカー役が、クローディア・ウェルズからエリザベス・シューに交代している。公開当時、筆者はこの交代に全く気付かなかった。後で知ったぐらいだ。Part 1 ではあまりフィーチャーされなかったジェニファーというキャラクターが、Part 2 以降重要度を増したというのも手伝って、ジェニファー = エリザベス・シュー という印象だ。

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それから、マーティの父親ジョージ・マクフライ役が、クリスピン・グローヴァ―からジェフリー・ウェイスマンに交代になった。こちらも、新たな撮影が避けられないシーンは、背格好が似てるジェフリー・ウェイスマンを、腰痛理由で宙釣りにさせて出演させるという荒業で乗り切っている。

それ以外については、出演シーンを最小限に抑えるようにシナリオを変更し、それでも避けられないカットはPart 1のクリスピン・グローヴァ―起用時の素材(動画・写真)を流用して凌いでいる。ただ、これは後に揉めたらしい。今では考えられないような出来事だけど。

何でも、製作側はこれら素材をグローヴァ―側に無許可で再利用したらしい。これを承服できないグローヴァ―が裁判所に訴え、最終的に示談で落ち着いたとのこと。現在だったら、Part 1 契約時に続編での肖像権の扱いについてYes or No をハッキリさせた契約を結ぶはずなので、これも時代ですかね。

いずれにせよ、ジョージ役の交代について、その影響を最小限に抑える工夫をしてくれたのは大きい。

マーティとドクの人間的な成長

Part 2 と Part 3 が付け足されて、単にドタバタ劇が増築されただけではなく、マーティとドク・ブラウンという年齢が異なる2人の主人公が、それぞれの文脈に沿って、人間的に成長して行く様が観ていてとても楽しい。

もちろん、それをここで説明しちゃうような野暮なことはしませんが、単に事件やトラブルを継ぎ足して、成立済みのお約束のシーンを繰り返すだけのシリーズ物だってある中で、愛すべき2人キャラクターが色んな事を学んで行くところが、この映画が単なるSFアクション物に収まらない所以だと思うんですよね。

あわわっち

ワクワクするだけじゃなく、ホロっと来るんだよね・・・

産業革命を通して眺めるバック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2

では本題の、「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2」を産業革命の歴史を通して眺めるというアプローチをしてみよう!

「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2」の舞台となるのは、1955年と1985年と2015年のヒルバレー(カリフォルニア郊外という設定の架空の町)だ。

1955年については、Part 1の記事でも書いたし、実はPart 2のネタバレに繋がる恐れもあるので、この記事では2015年に照準を合わせたい。Part 1 の記事にご興味のある方は下の記事をご覧ください。

まずは、この1985年と2015年の間に起きた、第3次産業革命と第4次産業革命を簡単におさらいをしておこう。

産業革命とBTTFシリーズの関係

第3次産業と第4次産業革命のおさらい

第3次産業革命とは、1990年代に起きた革命で、一言で言うとWindows 95とインターネットの登場のことだ。それ以前はコンピュータは上級者向けの専用ツールだったのが、ダウンサイジング・簡素化・廉価化が一気に進み、”パソコン”という市販製品として一般の人にも広まった。

これにより、一家に1台、オフィスでも1人1台割当てられるようになっていき、それまで紙と電卓で計算していたような業務がパソコン上で簡便に行えるようになった。オマケにその結果をインターネット・イントラネットを介して直ぐに相手に送信できる。人と人がネットワーク回線で随時交信しながら仕事をしたり生活したりする。そんな時代が到来した。

インターネット時代の到来

第4次産業革命とは、2010年頃からのデジタル化を指しており、携帯電話のスマホへの進化、モバイル・インターネットの普及と高速化、ビッグデータ技術の進歩(音声とか映像など、明確な文字になっていないデータからの意味の読み取りや、整理されず分散放置されているデータの統合整理技術の進化)、人工知能の進化等に支えられている。

みんなが常時インターネットを使うから、爆発的にデータ量も増えたけど、それを上回る速度でそれを処理・理解する技術が進化したので、人だけじゃなくて、街や会社や工場に設置されたセンサーから得られるデータもどんどん自動処理できるようになった。

こうして、機械でも出来る作業は機械に任せて無人化できるので、人間はユーザーが喜んでくれるサービスを創造することに軸足を移すことになった。新しいサービスとして、遠隔地にある在庫をワンクリックで購入したら、数日で自宅に届くようになったり、銀行振り込みがスマホで数分で済ませられるようになったり、多地点に散っている参加者で一同にビデオ会議が出来たり、自分にあった商品やサービスがリコメンドしてくれるようになったり(パーソナライズ化)した。

本格的デジタル社会の到来

同時に”持続可能性”という概念が意識されるようになり、特定の誰かの犠牲の上で成り立つビジネスや、地球に過剰な負荷を掛けるようなサービスは、使わないし、無くして行くという意思や、それを表明することに重きが置かれるようになってきた。

こういった革新的な世の中の変化を念頭に置きつつ、1989年に描かれた未来予想図である「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2」は何を描写していたのか、ある意味答え合わせをしてみよう。

BTTF2 における通信技術の未来予想図

まずは気になる通信技術の描写。残念ながら劇中で携帯電話、もしくはスマホに該当する描写は見受けられない。また、マクフライ”家”に掛かってきた電話を、マーティが書斎で取るという描写があるので、通信のパーソナライズ化の概念はない。すなわち、電話・メール・チャットを家対家で行うのではなく、個人対個人で行うステージに発展している発想は、1989年当時には持ちにくかったみたいですね。

一方で、その着信は同僚であるニードルズ(フリー)からのものであり、書斎のテレビでビデオ通話する描写は、まるでZoomの画面を見ているようで、これは流石としか言いようがない!

また、ドク・ブラウンが「天気予報はあと5秒で雨が止むと告げている」と言って、自身の腕時計をチェックするシーンがあるが、(残念ながら盤面はただのアナログ時計っぽいですが…)もしあれが今のアップルウォッチ的なウェアラブルデバイスをイメージしているんだとすると驚異的である。

BTTF2 におけるビッグデータ技術の未来予想図

また、そもそも2015年の天気予報の精度が驚異的に向上している。これは実は伏線回収で、Part 1 の1955年11月12日の落雷の日に、とても嵐が起きそうもない空模様に対して不安になるドク・ブラウンに対して、「天気予報が当たった試しがある?」と諭すマーティのセリフに対する回答だ。

今現在(2023年)の天気予報の精度が20世紀と比較して大幅に向上したのは、従来型の天気図配置に基づく”プロの読み”だけに頼るのではなく、膨大な天気の過去データを、効率良く確率統計処理できるテクノロジーの進化に負うところが大きい。一言で言えばビッグデータ技術である。こうした未来の来るべくイノベーション(現実には、ビッグデータの活用は第4次産業革命で起きた)の恩恵も、多少は意識していたのだろうか?

BTTF2 における交通事情の未来予想図

続いて交通事情。乗り物は流線形のフォルムを持つ自家用車が登場する。それはステレオタイプ的な近未来感の演出だと思うので脇によけておいて、特筆すべきは道路が空中に設置され、車はその空中道路を当たり前のように行き来していること。残念ながら、自動車が直接空を飛ぶ未来を現実の人類は実現出来ていないが、有人飛行を実現する”ドローン”は既に登場している。

町の中心地ヒルバレーから、2015年のマクフライ家が居を構えるヒルデイルへと移動するに当たって、この空中ハイウェイを使うという描写も流石としか言いようがない!

ちなみに劇中で、陸上用の乗用車を空中浮遊できるように改造する費用が「たったの4万ドル」という宣伝がなされており、4万ドルあったら新車が買えちゃうじゃん!って思ったけど、それは物価上昇をちゃんと描写してるってことなんでしょうね。

アメリカの交通網の発達とBTTFシリーズ

アメリカの交通網の発達の歴史を整理しよう。

西部開拓時代以来、町と町の往来の基本は馬か馬車だった。これが、第一次産業革命により蒸気機関車が発明され、19世紀に東部から西部に向けて徐々に鉄道が開通し始めると、開通した町の発展は加速した。何故なら、人、物、情報の往来が活発化するからだ。

19世紀の町の発展の仕方

これがPart 3の1885年のヒルバレーの状態だ(次の記事で詳しく書きたいと思います)。

20世紀も半ばになると、車が各家庭に普及する。これにより、町の中心地から多少離れて暮らしても、通勤、通学が可能になるので、町は急速に放射状に発展して行く。これがPart 1の1955年の状態だ(前の記事で詳しく書きました)。

更にハイウェイが開通すると、より頻繁に人・物・情報が行き来するようになり、町の発展を加速する。これは劇中では描かれていないが、おそらく1955年と1985年の間にヒルバレーにも同様のことが起きたと思われる。

20世紀の町の発展の仕方

更に、そのハイウェイが空中ハイウェイに置き換わっているのが、このPart 2における2015年の描写だった訳です。

こうして振り返ると、1885年→1955年→1985年と3つの時代に渡って、本当にアメリカ社会で起きた交通網と町の発展が、ちゃんと劇中で矛盾なく描写されていることが分かりますし、1985年→2015年では、その上に未来予想図まで書き足してくれていたことが分かります。

一方で、夕方の渋滞に巻き込まれるという描写もあった。コロナ禍を思い出して頂きたいのだが、労働者の多くがリモートワークをすれば、出勤者も減って渋滞自体が無くなる訳なので、パンデミックを経験した今の我々なら、ビデオ会議通話の進化と絡めて渋滞知らずなんて描写も面白かったかも知れない(と後出しジャンケンで思ったりもする)。

BTTF2 における自動化・無人化の未来予想図

機械による自動化、無人化がそこかしこで描写されていますね。犬の散歩まで機械がやっていたり、Cafe 80’s にマーティが入ると、接客してくれるのはTV画面の中でポリゴン化されているマイケル・ジャクソンやロナルド・レーガンだったり。

マイケルやレーガンは、音声ベースのインタラクティブなインターフェースになってますね。現実世界で実現されている接客ロボット(例えば、”ペッパー”君)と本質的に同じものなので、アメリカでは1980年代に、こういうユーザーフレンドリな人工的なアイコンが、人に代わって接客するという未来を、既に予見していたんでしょうか?

また、マーティの母ロレイン(リー・トンプソン)が、電子レンジで冷凍ピザをチンするシーンがありますが、あれも音声インターフェースでした。現実社会と照らし合わせると ”Alexa、 ピザをチンして!”みたいスマート家電を想起しました。

Texaco(テキサコ)のガソリンスタンドも、接客は完全自動化・無人化されていましたね。Part 1の1955年の描写では複数の人が車のお世話をしていた姿から振り返ると、有人 → セルフサービス → 完全自動化の流れが完成したような気がします。

自動化ばっかりしていると、人の雇用が奪われるという危機感が募りますが、ちゃんと優しい面も描写されていましたね。マーティの服が濡れたら勝手に乾燥モードが動作していました。本来服には”乾燥機能”は想定されていない訳で、こうした複合機能を集約して実装するイノベーションは、高付加価値に繋がるので、「人間はこういう知恵を絞る仕事にシフトすれば良いんだよ!」と示唆しているのでしょうか。

マーティのジャンバーの袖の長さが自動でアジャストされていました。平均的サイズを無理やり”One size fits all”と言い張るのではなく、本当の意味で個人の属性にジャストフィットする姿が描かれていました。まさに”パーソナライズ”ですよね。既製品なんだけど、自動化を上手く活用して、一人ひとりに寄り添う。どんどん推進して欲しい考え方ですよね。

マーティ・Jr. が自宅でTVを視聴する際に、複数のチャンネルを画面に出して、そこから好みの物を選ぼうとしていました。これって完全にYouTubeのトップページだよなと思ったのは筆者だけでしょうか?

人間が機械に合わせるのではなく、機械の側が一人ひとりの個人の嗜好に合った物やサービスを提供する。すなわち、ヒューマン・セントリックな社会の実現というのが、第4次産業革命の隠れた使命だと思います。この”パーソナライズ”に「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2」はコッソリ焦点を当てていたのでしょうか。

BTTF2 における個人情報保護

路地裏で眠らされていたジェニファー(エリザベス・シュー)を見つけた警官が、何がしかの生体認証を使って(指紋?)、身元不明の女性が”ジェニファー・パーカー・マクフライ”であると一意に特定し、住所まで割り出していましたね。また、その警官たちがジェニファーをマクフライ家に担ぎ込む時に、玄関のカギを開けたのはそのジェニファーの指紋でした。

マイナンバーの仕組みみたいなものを想像すれば良いと思うんだけど、一つの情報であらゆる個人情報が芋づる式で分かっちゃう社会。便利な側面と危険な側面を感じました。既にこうゆう未来を1989年に予見していたんでしょうか?

BTTF2 における環境に優しい持続可能な世界

21世紀でドク・ブラウンが改造したデロリアンは、プルトニウムどころかガソリンすら要らない仕様に改良されていました。しかも、飲みかけのビールやその空き缶を燃料に出来るという、持続可能エネルギーのお手本のような改良でした。今現在の世相を当時から予言してたのでしょうか?

一方で、現状の日本も同様ですが、町中に選挙用の紙ポスターが貼られていましたね(ゴールディー・ウィルソン3世候補)。あれって資源の無駄なんじゃないかと。第3次、4次産業革命を経て、情報はデジタルを介して取るモノになっている訳ですから、町中に上質な紙でポスターを貼るなんて時代錯誤だなと。

結論

多少脱線もしましたが、第3次産業革命と第4次産業革命をおさらいし、1989年段階で思い描いた劇中の2015年の未来予想図が、その産業革命目線で評価しても、結構その通りになっていたということを一緒に確認しました。

既に検証されているホバーボードや、ナイキの靴、あるいはプロジェクション・マッピングについては割愛しましたが、それでもこの「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part 2」には、語るべき要素、検証に値する描写が沢山あることに、書いた本人が驚きました。これで、あらすじを書いた上映時間35分10秒までですから。

   

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まとめ

本記事では、通常の映画解説に加えて、産業革命の歴史を通してバック・トゥ・ザ・フューチャー Part2 を語るという試みをしてみました。1989年時点の2015年を見通した未来予想図が、実際に2015年を経験した我々から見て、合ってたかどうかを、第3次産業革命と第4次産業革命に照らし合わせながら検証しました。

引き続いて「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part3」の記事に続きますので、よろしくお願いします!

この作品に対する☆評価ですが、

総合的おススメ度 4.0 作品単体としては中継ぎ感がありますね
個人的推し 4.0 108分なのにちょっと長く感じるんですよね…
企画 5.0 Part 3との併せ技ですが企画は最高です!
監督 4.0 もう少し交通整理できなかったのかな???
脚本 4.5 描写が超細かいですよね
演技 4.5 同じテンションを4年後に良く再現しましたね!
効果 4.5 特殊効果が更に進化していますね!
こんな感じの☆にさせて貰いました

バック・トゥ・ザ・フューチャー・シリーズとしては、もちろん最高の映画なんですが、このPart 2単体で評価した時は、ちょっと中継ぎ感が否めないですね。起承転結で言うと、承がずーっと見せられているような感じですね。

ただ、この記事で散々記述して行きましたが、アメリカ社会の実態を事細かに描写していて、ホントにリアルだな。このリアリティがタイムトリップ物には必要不可欠なんだろうなぁと思います。

あわわっち

是非、三部作全部観てください!

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