この記事では、ターミネーター・シリーズの5作目「ターミネーター:新起動/ジェニシス」について解説します。「ターミネーター」「ターミネーター2」の前日譚を描き直そうとしたこと、アーノルド・シュワルツェネッガーを完全復帰させたこと、どの辺りが上手く行ったのか、行かなかったのかを中心に書いてみたいと思います。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
ジャッジタイム (ネタバレなし)
本作品を観続けるか、それとも中断して離脱するかを決めるジャッジタイムですが、
- 上映開始から、23分50秒をご提案します。
この時点まで観ると、この作品のストーリー設定が、過去のターミネーター・シリーズ作品とどう異なるかが見えてくるので、この世界観に身を委ねられそうか、そうでもないかの判断が付くと思います!
なるほど本作品では、ターミネーターの世界をこうイジるのか!と膝を叩くと思います!
概要 (ネタバレなし)
本作品の位置づけ
「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(以下、T5)は、2015年に公開されたSFアクション映画。ターミネーター・シリーズの5作目に当たるが、基本的には(←何が基本的でないのかは後述)1作目の「ターミネーター」(以下、T1)の前日譚が描かれているので、前4作の内のどれかのストーリーを時系列的に引き継いでいる訳ではない。そういう意味では独立した作品。
T1とT2を観ておかないと、本作T5がストーリー的に異色な点を楽しめないから、両作品の事前視聴は必須だよ。
上記の背景としては、前作「ターミネーター4」(以下、T4)が2009年に公開された後、これを製作したハルシオン・カンパニーは破産してしまった。T4もT1の前日譚だったが、こうした経緯もあり、最終的に映画化権を移譲されたスカイダンス社は、本作T5をシリーズのリブート作品として位置付け、再度前日譚を製作した。
製作陣も、脚本、監督、製作等、T4とT5の両方に携わっている関係者は、筆者が確認した範囲では見当たらない(注:引き続きジェームズ・キャメロンとゲイル・アン・ハードはキャラクター創造という名目の原作者と位置づけられている)。
邦題にも原題にも含まれるジェニシス(Genisys)という単語は、劇中に出てくるコンピューター・システムの固有名称で造語と思われる。世界中のデジタル端末と接続し、これを一元運営・管理するような大規模システムで、現実社会のGoogleとAppleとMicrosoftが1つになったような圧倒的なシェアを持つ超巨大システムを想像すれば良いだろうか。本作品は、既述のように新たなターミネーターのストーリーを前日譚から描き直そうとしているので、genesis(=起源、発端)という英単語と掛かっているんだと思う。
なお興行面だが、製作費が1.55億ドルで興行収入が全世界で4.4億ドルなのでヒット作である。ターミネーター・シリーズの中でも、全世界で5.21億ドルの興行収入を得た最大のヒット作T2に次ぐ2番目の稼ぎ頭である。やはり、ターミネーターにはアーノルド・シュワルツェネッガーは欠かせないということだろうか。
結構売れた作品の割には、イマヒトツ知名度が低いような気がするのは筆者だけ???
あらすじ (23分50秒まで)
注:前日譚として「基本的ではない」点は(T5が異色な点)として以下に明記してます。
1997年8月29日に「審判の日」と呼ばれる世界的な核戦争が起きた。これは「スカイネット」と呼ばれる高度な人工知能システムが、独自の意思を持って人類を攻撃したことにより勃発したものだった。
その後スカイネットが一元制御する「ターミネーター」や「ハンターキラー」と呼ばれる殺人マシン軍団と、予言者との呼び声高いカリスマ・リーダー、ジョン・コナーが率いる人類の抵抗軍の戦いは、マシンの急所を的確に攻撃する術を身に付けた(←T5が異色な点、その1)抵抗軍の勝利に終わった。ただし、ジョン・コナーは、抵抗軍がどのように勝つかを元々具体的に知っていたようだった(←T5が異色な点、その2)。
スカイネットは、この敗北の直前にギリギリでタイムマシンを完成させており、T-800型(要は、アーノルド・シュワルツェネッガー型)のターミネーターを1984年に送り込む。目的は、ジョンを生む前の母親サラ・コナーを殺害し、不利な形勢を時系列ごと一気にひっくり返すこと。
抵抗軍側もこれを阻止すべく志願兵を1984年に送り込むことにするが、選ばれたのはジョンとサラに心酔するカイル・リースだ。ところが、カイルはタイムマシンで時空転送される直前に、タイムマシンの前で見守るジョンがスパイに背後から襲われる(←T5が異色な点、その3)のを目撃する(が、そのまま過去に飛ばされてしまう)。また転送中に、実際には体験したことが無い映像を、幼少期に実体験した記憶のように思い出す(←T5が異色な点、その4)。その内容は「ジェニシスがスカイネットだ。ジェニシスが2017年に起動する前に止めないと審判の日が始まる」と、鏡の中の自分に言い含められるという記憶だった。
1984年の世界において、先行して送り込まれたT-800の前に立ち塞がるのは、「待ちくたびれた」と告げる別のT-800と謎の凄腕狙撃手のコンビ。また、カイルの前に現れたのは警官に擬態したT-1000(T2に出てくる液体金属型ターミネーター)。
カイルは、ジョンから何度も何度も聞かされていたのと全く状況が異なる1984年に来たようだ(←T5が異色な点、その5)。
という訳で、T5はT1の前日譚であるのと同時に、T1とは異色の1984年に塗り替えていく意欲的なリブート作なのだ!
見どころ (ネタチラあり)
シュワちゃんの復帰
何と言っても、本作の最大の見どころは、シュワちゃんの完全復帰だろう。この影響は、ストーリーや世界観の出来不出来とは別に、興行成績にもハッキリ表れている。「ターミネーター3」では、サイボーグっぽい演技がちょっと空回りしていたような気がしたけど、本作ではどうでしょう・・・ 是非楽しみにしていただきたいです!
異なる世界線の併存を前提
既に述べたように、本作はT1とは異色の1984年を描いて行く大変意欲的なリブート作です。その前提となる考え方は、過去の出来事によって未来の世界線がすり替わる。だがしかし、その際にそれに伴って登場人物の記憶はその世界線ごとに完全に入れ替わってしまう(その結果全くの別人のように振舞うことになる)のではなく、新たな記憶が後付けで脳内に芽生え、世界線の移行がグラデーション的に行われるという大変柔軟な設定が採用されている。
この独特な(=悪く言うとご都合主義的な)設定のお陰で、世界線が切り替わっても共通同一のキャラクターが、突如として自分を取り巻く環境が変わっても、その状況に馴染もうと奮闘しながら敵とも死闘を継続するというシナリオに繋がって行きます。この新たな試みを素直に楽しんで頂きたいです!
お約束の台詞
新たな機軸を打ち出している本作ですが、「Come with me if you want to live」など、お約束の台詞はちゃんと出てくるだろうか?
新たなT-1000 像
冒頭の上述のジャッジタイムまでの間に、T-1000 (液体金属型ターミネーター)が出てきます。あの不気味な感じをまた楽しめますぞ!
液体金属ファンは喜びで、こちらも溶けそうですw
その他の情報
筆者の本作に対するおススメ度合いは、 3.5/5.0 です。
いつもの如く、暴力シーンがあることについては減点対象ですが、個人的にはとっても面白い作品だと思います。上映時間も126分とコンパクトにまとまっているので全然飽きないし。
ちょっと難癖を付けたくなる点は、キャラクターの描写が全般的に甘いかなーって言う点と、既述の世界線をスイッチすると記憶がグラデーション化することが受け入れられるかという点です。それでこのおススメ度合いにさせて貰いました。繰り返しになりますが、個人的には好きです。
このリブート路線で続編が出来ていたら、ミッション・インポッシブル・シリーズのように結構面白かったんじゃないかな?ギャンブル性が高いかな???