この記事でご紹介する「トゥルー・ロマンス」は、1993年公開のクライム・ドラマ・ロマンス・スリラー。運命的な恋に落ちた若い男女が、刹那的に危険な賭けに打って出る物語。
「レザボア・ドッグス」(1992) で衝撃のデビューを飾ったクエンティン・タランティーノの脚本を、「トップガン」(1986) のトニー・スコットが監督した作品。
この映画を観るか迷っている方は、後でご提案する ”ジャッジタイム” までお試し視聴する手もあります。これは映画序盤の、作品の世界観と展開が ”見えてくる” 最短のタイミングのことで、作品が気に入らなかった場合に視聴を離脱する目安タイムです。
もし、この映画が気に入らなかった場合でも、このジャッジタイムで観るのを止めちゃえば時間の損切りができます。タイパ向上のための保険みたいなものです。
この映画を初めて観る方のことも考えて、ネタバレなし で、作品の特徴、あらすじ(ジャッジタイムまでに限定)、見どころを書いて行きます。この映画の予習情報だとお考えください。
この映画を観るかどうか迷っている人、観る前に見どころ情報をチェックしておきたい人 のことも考え、ネタバレしないように配慮しています。
主人公の男女の周りを、信じられないぐらい豪華な俳優陣が脇を固め、今現在でもカルト的な人気を誇るこの異色作に、どんな魅力が詰まっているのか?この記事でちょっと予習していきませんか?
ジャッジタイム (ネタバレなし)
この映画を観続けるか、見限るかを判断するジャッジタイムですが、
- 上映開始から17分30秒のタイミングをご提案します。
この辺りまでご覧になると、主人公のクラレンス(クリスチャン・スレイター)がどんなキャラクターで、運命の相手アラバマ(パトリシア・アークエット)とどんな風に出会うのかが見えてきます。同時に本作品のテーストもある程度つかめる頃だと思うので、この先も鑑賞するかを判断する最短のポイントとしておススメします。
概要 (ネタバレなし)
この作品の位置づけ
「トゥルー・ロマンス」(原題:True Romance) は、1993年公開のクライム・ドラマ・ロマンス・スリラー映画。前年公開された「レザボア・ドッグス」で衝撃のデビューを飾ったクエンティン・タランティーノのオリジナル脚本を、「トップガン」(1986) のトニー・スコットが監督した作品。
エルビス・プレスリーに心酔する、コミック・ショップ店員の夢見がちな若い男(クリスチャン・スレイター)と、娼婦になりたての天真爛漫な若い女(パトリシア・アークエット)が運命的に出会い恋に落ち、更に偶然入手した大量のコカインを元手に、大金を得て二人で夢の生活を実現しようとする物語。
評価
Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)では、93%とこの上なく高い支持率を得ている(Rotten Tomatoesでは60%以上が『新鮮』、60%未満が『腐っている』という評価)。そして総評においても、”クエンティン・タランティーノの巧みな脚本と、一風変わった演技の数々によって燃料を搭載された、トニー・スコットの『トゥルー・ロマンス』は、最高の意味で楽しくバイオレンスアクションの小旅行です” と、評されている。
要は、脚本、演技、演出すべて込みで、優れたロード・ムービーということだろうか。
商業的結果
この映画の上映時間は119分と極めて標準的な長さである。制作費についての情報は残念ながら得られなかったが、世界興行収入は1千3百万ドルを売り上げたと報じられている。
制作費の情報が無いため正確なことは言えないが、推察するに、あまり大きな利益率は得られなかったのではないだろうか?記録より記憶に残る作品と言える。
キャスト(出演者)
この映画には非常に多くのキャラクターが登場する。しかし、物語は時系列に沿って素直に線形に進んで行くので、その多さに混乱することは無いと思う。
ただし、こんな端役にこんな名優を当てちゃうの?というキャスティングも含めて、とんでもないほどの豪華キャストである。最大の落差はヴァル・キルマーとブラッド・ピットだろうか?
役名 | 俳優 | 役柄 |
クラレンス・ウォリー | クリスチャン・スレーター | 主人公。デトロイトにあるコミック・ショップの店員。エルビス・プレスリーに心酔する夢見がちな若い男 |
アラバマ・ウィットマン | パトリシア・アークエット | 娼婦になりたての美女。天真爛漫な性格 |
エルヴィス・プレスリーの幻想 | ヴァル・キルマー | クラレンスの妄想。彼が重大な決断を下す時に現れる |
クリフォード・ウォリー | デニス・ホッパー | クラレンスの父親。元警官。デトロイト近郊で犬と暮らしている |
ドレクスル・スパイビー | ゲイリー・オールドマン | デトロイトのポン引きかつ麻薬の売人。アラバマの売春の元締め |
ビッグ・ドン | サミュエル・L・ジャクソン | ドレクスルの取引相手 |
ヴィンセンツォ・ココッティ | クリストファー・ウォーケン | デトロイトのイタリアン・マフィアの幹部(コンシリオーリ) |
ヴァージル | ジェームズ・ガンドルフィーニ | ヴィンセンツォの手下 |
ディック・リッチー | マイケル・ラパポート | クラレンスの親友。ハリウッドで俳優を志している |
フロイド | ブラッド・ピット | ディックのルームメート。定職にも就かずプラプラしている |
エリオット・ブリッツァー | ブロンソン・ピンチョット | ディックの俳優学校の級友。リーの助手の仕事もしている |
リー・ドノウィッツ | ソウル・ルビネック | 有名映画プロデューサーで大富豪 |
コーディ・ニコルソン | トム・サイズモア | ロサンゼルス市警の刑事 |
ニッキー・ダイムス | クリス・ペン | ロサンゼルス市警の刑事 |
警部 | エド・ローター | ロサンゼルス市警の警部。コーディとニッキーの上司 |
あらすじ(17分30秒の時点まで)
デトロイトでコミック・ブックの店員を務めるクラレンス・ウォリー(クリスチャン・スレイター)は、エルビス・プレスリーに心酔しているちょっと夢見がちな青年。
今日、彼は誕生日であったので、毎年のルーティンに従って、バーでビールを一杯ひっかけ、その後映画館に映画を観に行った。
選んだのは、大好きなソニー・千葉(千葉真一)の殺人拳シリーズの3本建てである。
ところが、ガラガラの映画館で一人映画をゆったりと鑑賞していると、ブロンドの美女(パトリシア・アークエット)が近付いて来て、強引に隣席に座ってきた。
2人は仲良く3本建ての映画を鑑賞し、すっかり意気投合したところで、クラレンス(クリスチャン・スレイター)は、アラバマという名のこの美しい女性を、自身のアパートに連れ帰り、2人はその晩愛し合う。
そのままベッドで眠りに就いたはずの2人であったが、日付も変わって朝方になり、クラレンスがふと目を覚ますと、アラバマがベッドに居ない。心配になって窓の外の屋上に探しに行くと、アラバマはそこで悲しげに佇んで(たたずんで)いた。
クラレンスが訳を尋ねると、実はアラバマは、クラレンスの勤務先の店長が今晩一晩買ってくれた娼婦で、サプライズ・バースデー・プレゼントだったというのだ。でも、アラバマはクラレンスの優しさに触れて彼のことを本気で大好きになってしまったと言う。
クラレンスもアラバマのことを既に大好きになっていたので、2人は日が明けると早速裁判所に出掛け、婚姻届けを提出して、晴れて夫婦となった。
さて、今まさに本能の赴くままに刹那的に生きようとしているこの若い男女を、どんな運命が待ち受けているのだろうか・・・?
見どころ (ネタバレなし)
この映画の見どころを3つの観点に絞ってご紹介してみたいと思います。全てネタバレなしで書いていくので安心してお読みください。皆さんがこの映画をより味わい深く鑑賞するお手伝いが出来ると嬉しいです。
スタイリッシュな映像と音楽
この映画は、とにかく映像がスタイリッシュなんですよね。これが第一の見どころです!
興行成績と比して、遥かに多くの熱狂的なファンを生んでいる最大の要因はこれなんじゃないかと思います。
クリスチャン・スレイターが演じるクラレンスのダサカッコ良いファッションも印象的ですし、
パトリシア・アークエットが演じるアラバマは、完全なるファッション・アイコンと化しています。
そして、砂漠をキャデラックのオープンカーで疾走する様は、トニー・スコットの兄リドリー・スコットが本作の2年前に監督した「テルマ&ルイーズ」と通ずるものがあるように感じるのは筆者だけでしょうか。
そして、音楽はハンス・ジマーが担当しています。美しい色と音がこの作品の大きな魅力です。
超豪華キャスト
既に「キャスト(出演者)」の節でも触れましたが、とんでもなく豪華なキャストがこの映画には登場します。こちらも大いなる見どころです。
主人公クラレンスにだけ見える幻のエルビス・プレスリー役でヴァル・キルマー。
クラレンスの父親クリフォードをデニス・ホッパー。
麻薬の売人の役に、ゲイリー・オールドマン(とサミュエル・L・ジャクソン)が登場します。
イタリアン・マフィアの幹部の役でクリストファー・ウォーケンも。
そして、主人公クラレンスの親友ディックのルームメート、フロイド役(超端役!)でブラッド・ピットが登場します。
その他にも、ソウル・ルビネックやジェームズ・ガンドルフィーニ。トム・サイズモア、クリス・ペンといった、見覚えのある面々が次々と登場してきます。見ものです!
タランティーノ脚本
この作品は、クエンティン・タランティーノがオリジナル脚本を書いた作品です。
タランティーノはそのキャリアにおいて、監督業の他にもプロの脚本家としても活動をしており、クレジットはされていないものの、他人が書いた映画脚本の書き直しの仕事も請け負ったりしていました。例えば「ザ・ロック」(1996) がその代表例です。
一方で、自身が書き下ろしたオリジナル脚本のほぼ全ては、自身が監督も務めて世に送り出してきました。
したがって、タランティーノが書き下ろしたにも関わらず、他人が監督をした脚本というのは非常に珍しく、本作を含めてもう1作品しかなく、それは「フロム・ダスク・ティル・ドーン」(1996) – ロバート・ロドリゲス監督です。
そういう意味においては、この「トゥルー・ロマンス」は、タランティーノ脚本を他の監督が料理をするとどんな映画に仕上がるのか?という楽しみ方が出来る貴重な作品です。
既に述べたように、トニー・スコット監督は非常にスタイリッシュな映像に本作を仕上げていますが、随所にタランティーノ脚本らしい、無駄に長いセリフ回しがあったり、銃器の細かな描写や、千葉真一の映画に対する愛情が表現されていたりと、タランティーノの欠片(かけら)を探しながら鑑賞するのも楽しいかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
公開から30年が経った現在でもカルト的な人気を誇る本作の、出色の魅力を少しでもお伝えできていると嬉しいです。
この作品に対する☆評価ですが、
総合的おススメ度 | 3.5 | 一度は観てみるべきでは? |
個人的推し | 4.0 | タランティーノ・ファンは必見です! |
企画 | 4.5 | 純愛逃避行という企画が貴い |
監督 | 4.0 | ただただスタイリッシュでカッコイイ |
脚本 | 3.5 | 色々無理があるのはご愛敬 |
演技 | 4.0 | 細かな演技より豪華俳優陣の存在感 |
効果 | 4.0 | 映像の美しさに見とれる |
このような☆の評価にさせて貰いました。
映画作品としてのバランスは決して良くはないんだけれども、スタイリッシュでカッコイイ作風と、駆け抜けていくような刹那的な純愛と伴走したくなるような作品です。2024年5月現在、配信サービスでは視聴できないので、未見の方は是非レンタルDVDで鑑賞ください!